『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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結構久しぶりの更新となっちゃいましたね、申し訳ありません。
連載作再開1作目がコレっていうのも正直どうかとは思ったんですけど……前から書き進めてたのを完成させたため一番最初に出来てしまいましたので一先ずは更新させて頂いた次第です。

今話で原作2巻目のイベントは完全に完結です。次話から3巻目の臨海学校編に突入しますのでご承知おきのほどを。

注:原作で描かれてた部分は原作読めばわかるため文字数節約で飛ばしました。
*:最初の件で分かりにくい文章になってたため少しだけ変更しました。


IS学園のひねくれ少女 第20話

 織斑さんデュノアさんチームVS篠ノ之さんボーデヴィッヒさんチームとが戦いあって、篠ノ之さんが呪われた聖杯の泥でも被ってしまったみたいに黒化したことでトーナメントが中断された日の夜のこと。

 私は今日の事件とは別件について話があるからと、織斑先生から呼び出しを受け、学校終わった夜に相手が過ごす場所である寮長室に赴いて説明を受け終えていた次第です。

 

 その話によれば。

 

「私のルームメイトと、ボーデヴィッヒさん双方を部屋替え、ですか?」

「そうだ」

 

 織斑先生はデスクに座ったまま両腕を組んで顎を軽く添える――まっ、いわゆる碇ゲンドウ姿勢とも呼ぶべきポーズを取りながら(私が今勝手に命名しただけですが)私の顔をまっすぐに見つめ返すと、短い単語でそう答えられたのでありました。

 

「正直なところ、ボーデヴィッヒの状態変化に対して学園執行部側は、早い時期から意見が割れて扱いかねていたのが実情でな。

 当初の予定では、奴のルームメイトになることが決まっていた生徒からも『もう限界です』という嘆願書が十枚を超えたということもあり、今日の事件での事後処理に併せてお前のルームメイトと奴のルームメイトを同じ部屋にし、奴をお前の部屋へ正式に入れ替えて調整した方がよいと判断した訳だ」

「なるほど」

 

 私は特に含むところもなく、芸もなく、ごく普通の態度と対応で織斑先生からの説明に相づちを打って納得しました。

 別に反対したい理由も目的もない話題に関する話でしたし、実質私の部屋に入り浸りでしたしね、お子様モードでのボーデヴィッヒさんの時はずっと。

 

 ・・・って言うか、あの状態になってからの彼女によく今まで保ちましたね、ボーデヴィッヒさんの同室になってた女生徒さんは・・・。

 彼女たち双方に悪い評価を与えているわけじゃないんですけど、冷厳な軍人モードと前世知識持ちのお子様モードとが突然入れ替わってスイッチどこにあるかも分からないような女の子ですのでね。

 

 ・・・情緒不安定すぎるのにも程がある・・・その程度の表現で済んでくれてたらラッキーなレベルでしたし。・・・いや本当によく保ちましたね本当に・・・。死んだら英霊に昇華されそうな名もなき女戦士さんに敬礼。

 

「もともと今の奴は、貴様と同じ部屋にいないと落ち着かなくなるときが増えてきていたからな。学園上層部もようやく重い腰を上げて、変更の決断をしようという気になったようだ」

「たしかに、日本人がもつ当初たてた計画を途中で変えられない民族性は、よく問題視されてましたからねぇ・・・」

 

 前世でも話題になってた部分ですし、日帝軍の戦略でもインパールでも色々ありまくってた部分ですからねー・・・。もっとも別に外国人だったら同じ失敗しないほど柔軟性がありまくってる別けでも全くないのですけれども。

 所詮、民族性は民族性でしかありませんのでね。その心理的傾向ありこそすれ、絶対になれるわけもなし。血液型での性格診断みたいなものなんでしょうよ。やったことないので多分ですが。

 

 まっ、それは別にいい些事として。

 私的に、この件で聞いておきたい話があるとすれば、せいぜいが一つだけ。それを質問させてもらうだけで部屋割りの了承と説明を受けて部屋に戻るといたしましょ。

 

「とはいえ、IS学園は国立学校で内装なども税金でまかなっているのでな。あとあと面倒が起きぬよう双方合意の上でおこなうため、一応は書類にサインしてもらう必要があったので来てもらった。署名だけしてくれたら後はやっておいてやるから帰ってよし」

「はぁ、それではお言葉に甘えさせていただきますけど・・・・・・一つだけ質問してもよろしいでしょうかね?」

「ふむ? なんだ、言ってみるがいい。私は貴様のクラス担任で寮長でもあり、お前も一応は寮に所属している生徒の一員ではある」

 

 ・・・うぉ~い、「一応」ってなんですか一応って。使われてる単語おかしいでしょうよ。

 この人の昔から続く性癖である、身内に厳しく接しすぎるという形での特別扱い、いい加減に止めてもらいたいんですけれども・・・

 

「では、それもお言葉に甘えさせてもらって。――私のルームメイトって誰だったんです? 入学してから一度も会ったことなかったので気になってたのですが・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 ・・・うぉ~~いパート2ー・・・。黙るなー、目をそらすな担任教師ー。

 現実から逃げ出しても、どこに行く場所ないですので黄龍にうたれる前に戻ってこーい。渇を入れてくる魔王勇者様には同じ日本刀使いでも勝てないでしょ貴女じゃ絶対にです。

 

「・・・って言うか、その反応からして姉さんがまた、コネだの何だの使ってなんかやった結果だったのでしょう? 織斑先生自体は被害者の一員ですので、そこまで気にしてくれなくても別によいのですが・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 ・・・また無言での返答ですかよ・・・。しかも、この会話の流れで無言だったら肯定してんじゃないですかよ・・・。

 直接的に言いたくないことを、間接的に相手に伝わるよう仕向けることで、自分は『直接その言葉を言ってないこと』にする事ができてしまう気遣いという名の意訳文化は私好みじゃないんで止めて欲しいんですけど。いや本当に切な願いとしてガチで。

 

「――質問はそれだけだな? では話は以上だ、帰ってよろしい」

「は~~い・・・・・・」

 

 白っぽい目つきで書類にサインし終えた後(一応さらっと流し読みだけは毎回しておりますが)私は一礼して部屋を出て、割り当てられた自分の部屋へと戻る道筋を歩み出します。

 

 ボーデヴィッヒさんの子供返り事件があって以降、私は基本的に彼女の相手をしなければならない回数が多くなり、姉さんがパラサイトしている宿直室には帰っていなくなってたのですけど、昼間に色々あった今日ぐらいは顔見せにいこうかな? ・・・などという気まぐれを起こすこともなく普通の判断として部屋に戻るだけ。

 

 誰だって疲れてるときに、余計な精神的疲労を加えてくるような人とか出来事には関わりたくないですもんな。ひねくれ者だろうと、私もその点では一般的な凡人と何ら変わるところはありませ・・・・・・って、おや?

 

「あ、セレニア。こんばんは、こんな所にいたんだね」

「デュノアさん・・・? どうしたんです、こんな所で・・・」

 

 意外なことに、部屋へと戻る途中の廊下ですれ違った相手とは、金髪碧眼のフランス人男装美少女であるデュノアさんでした。

 本来なら、これはおかしくもなんともないことです。

 ここはIS学園の廊下であり、彼女はIS学園生です。悪くすれば地位を失ってた可能性も多分にある行為に手を染めかけてた彼女ですけど、何事もなく刑事事件に発展することもなかったならば普通に今もIS学園生徒の一人。ならば別にIS学園の寮の廊下を歩いていたところで出くわしても何らの不思議も一切なし。

 

 単に彼女と織斑さんは、昼間の事件について教師陣から事情聴取受けさせたいとかの理由でしょっ引かれてから今の今まで寮内に姿を見かけた記憶がなかったものですからね? 

 だからこそ『少しだけ意外』そういう感覚。

 

「事情聴取の方は、少し前に終わって一夏と二人で遅めの晩ご飯を食べ終えてきたばかりなんだ。それでたまたまセレニアを見つけたから、走ってきちゃった」

 

 そう言って、「ペロ☆」とイタズラっぽく舌を出して片目をつむって見せてくるデュノアさんには、先日フランスであった過去の問題と親との確執について打ち明けられたときの重さや暗さ、気負いすぎてるところは微塵も感じられません。

 もちろん、そう見せようと努力している部分もあるのでしょうけどね。取り繕う余裕すら失うまで追い詰められていたときよりかは余程マシになったというべきでしょうよ。

 空元気でも、無いよりはマシです。暗くて重い本音なんか正直に晒されても見せられてる方が正直困るだけですからねぇー。

 

「実はキミのこと探してたんだ、今日が終わる前に会えて良かったよ。

 本当なら一夏と一緒のときに話した方がいい話題なんだろうけど、どうしても僕個人としてキミに一言お礼を言っておきたかったからさ・・・」

「お礼、というとデュノア社の経営問題に関する話ですかね? アレでしたら別にお気になさらず。

 会社の方はともかくとしても、お父さんの方との問題はデュノアさん自身がこれから時間かけて地道にやってく類いの問題ですので、役目の終わった私にお礼言う必要性なんて些かもありませんからね」

 

 そう言って肩をすくめながら、私は自分が今回の一件に関与していた部分についてはアッサリと認め、自分がやれない部分を具体的にデュノアさんに語って聞かせるのでありましたとさ。

 

 普通だったら、ここは『自分は何もしていない。君自身が勇気を出したから手に入れた結果だ誇っていい』とか言うのが正しく王道になるシーンなんでしょうけれども。

 あいにくと私の場合は、救ってあげても救ったことにはしたくないタイプのヒーロー主人公目指してるわけではないものでしたのでね。

 『救えた部分』については素直に認め、私では救いようがないデュノアさんが自分がやってくしかない部分については別々に語って聞かせる事をよしとするのが私流のやり方です。

 

 『これでは本当の意味で救ったことにならない』とか、あるかどうかも分からない『本当の救い』なんて正体不明の代物と比較して、完コピできてなかったから救いじゃない論を吐きたがる教条主義的に完全完璧さを要求しまくってたアンチ派の方々と、私は前世の時点から相性が悪いのですよ。ハンッ。

 

 

「わかってる・・・。僕にとって本当に大変なのはこれからだってことも、お父さんとの問題は最初の一歩を踏み出せただけで、今よりもっと悪くなる可能性があるんだってことも・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「でも、それでもセレニアには一言お礼を言っておきたかったんだ。お礼を言っておかなきゃいけないんだって、僕にはそう思えて仕方なかったんだよ。だから言いたいんだ。

 本当に、僕とお父さんのことを――“ありがとう”って・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 ――しょーじき。

 ・・・・・・めっちゃ目を逸らしたくて仕方がない展開が続いちゃいましたね、私が思うことはの話として・・・。なんて言うんでしょうかね、こういうのって・・・。

 自分でもキャラじゃない反応してるって分かりますし、普段の私だったら今の私見て色々言いそうなセリフが幾つも幾つも思いつくのに言おうという気が全然してくれません・・・・・・あと今、鏡とか窓とか超見たくありません。

 床のたうち回るか自殺するかの二択しか自分の人生の選択肢なくさせるような行動を、私は自分で選び取りたくないのですよ。ええ、絶対に。絶対にです。あ~・・・暑い・・・。

 

「・・・・・・そういう言葉は、織斑さんにでも言ってあげてください。あの人だったら素直に喜んでくれるでしょうからね。照れ隠ししながらでしょうけれども・・・」

「もちろん、一夏にも言うつもりだよ? でも一夏とセレニアは、二人とも“ありがとう”って伝えたい言葉の意味が違うから・・・」

 

 デュノアさんはそう言って、胸の前で両手を合わせて軽く握りしめるようなポーズを取りながら、続けながら、

 

「今になって思うと・・・、僕はお父さんに対して血の繋がりに甘えてたんだなって、そう分かったんだ。

 僕の気持ちも考えずに、父親だからって理由だけで自分の都合だけを押しつけるなんてヒドい。あんまりだ。少しはお母さんが死んだばかりで悲しんでる僕の立場や気持ちも考えてよ!・・・・・・って、そういう風に怒りを感じてたんだってことが、一夏が声に出してくれたときにようやく分かったんだ。

 そして、その後にセレニアが色々教えてくれて、考える時間をくれて、その中で僕も色々考えるようになっていって、ようやく気づいたんだ。

 ・・・・・・そういえば僕は、“お父さんの立場とか気持ちとかを考えた事って一度もなかったな”・・・・・・って」

「・・・・・・」

「気づいたときには正直、ショックだったし愕然とさせられたよ。

 自分がお父さんに思ってた不満とか怒りとか理不尽な言葉とかが、ぜんぶ自分にも当てはまってるものばかりだったなんて、気づきたくなかったし認めたくもなかった。

 セレニアや一夏と出会ってなくて、ラウラと戦うために別の目標に集中することができてなかったら、たぶん僕一人で気づけてたとしても認めることは今でも出来なかったんじゃないかって・・・・・・そう思えるぐらい本当に、ショックだった・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「正直に言えば、今でも蟠りはあるし、お父さんとの仲がこれだけで良くなるなんて気持ちは少しも抱けないくらい・・・恨みも残ってる気持ちもある。・・・・・・でも」

 

 そこまで言って、重々しい言葉の内容とは裏腹に、どこかストンと憑いていたものが落ちたような晴れ晴れとした笑顔を浮かべながら語られていたデュノアさんが私の方へと視線をまっすぐ向けてきて――私は逆に目を逸らすのでありました。

 

 ・・・いや、こういうシチュエーション本気で苦手なのでね?

 ときめきメモリアルな展開だったら意外と軽いので有りなんですけど、ダ・カーポ的なノリは出来ればご遠慮頂きたいものなのですよ。せめてメモリーズオフに――あんま変わりそうにねぇでしたな・・・。

 

「こう思える自分になれたのは、間違いなくセレニアと一夏のおかげだから。だからお礼を言いたくなったんだ。

 こういう自分になれたことが、僕の未来にとって不幸なことなのか幸運な変化なのかは、それはまだ分からないけど・・・・・・でも今の僕は、今の僕になれる切っ掛けをくれた一夏とセレニアにお礼を言いたい気持ちになってたのだけは確かだったから、だから・・・・・・」

 

 

「ありがとう――。

 一夏が“ここにいろ”って言ってくれて、居場所を失っていた僕に少ない時間でも考えるだけの場所と時間を与えてくれて。

 セレニアが“僕はどうして欲しいのか”って僕の気持ちを聞こうとしてくれて、自分で自分の答えを見つけ出せるまで考えるための心の余裕を守り続けてくれてたから・・・・・・だから今、僕はこうしてここにいられる。

 居場所が見つかるまで、ここにいたい。いさせて下さいって・・・・・・胸を張ってお願いできる自分になれたことが本当に嬉しく思っているから・・・・・・だから、“ありがとうセレニア”すっごくすっごく嬉しかったよ」

 

 

 

 ・・・・・・う~~~~~わ~~~~・・・・・・マジしんどーい・・・。精神的にマジしんど~~い。

 ひねくれ者は綺麗なものだけで出来た世界に3分以上居続けると死んでしまう悪いウルトラ星人みたいな生き物なんですので、早々にこの場を立ち去りたーいです。

 自分でも全然自分っぽくないこと言ったりやったりしている現状を自覚できまくるせいで余計に恥ずかしすぎますから本気でどっか行かせて下さい。マジお願い、本当に死にます。死にそうです。

 主な死因は恥死による自殺。・・・恥ずか死ぬ前に、撤退許可を・・・・・・早く・・・ロボス大将の総司令部~~~・・・・・・。

 

 

「あ、ごめんね。セレニアもどこかへ行く途中だったのに長く引き留め過ぎちゃって。

 ・・・本当はもう一つ伝えておきたいことがあるんだけど、こっちの方は一夏に伝えた後に言いたいから、セレニアにはその次に・・・ね?

 じゃ、じゃあ僕はそれを伝えるために一夏が待ってるところに行ってくるから。それじゃあねセレニア。また明日、学校でね! おやすみなさい!」

「・・・・・・は~~い・・・おやすみなさーい・・・・・・」

 

 ヒラヒラと、疲弊しきった体と心で何故か赤い顔してソワソワし始めたデュノアさんの去って行く背中に別れの挨拶を送りながら、私はようやく訪れた心の平穏時間にホッと一息つけて安堵しておりました。

 

 ふ~~・・・嵐のような人でしたね。春に吹く嵐のように優しい勢いしかありませんでしたけども。

 比較対象が激しすぎる戦乱の時代全体だった場合には、教化の名のもと行われた拡張政策で武力衝突や制圧も多く見られていたローディス教国の時代が『春の海のように穏やかな時期だった』と表現されるゲームがあったぐらい、強い弱い優しい厳しいなんて基準は比べる相手次第でどーとでも変わる代物ですからね。

 なのでデュノアさんの優しげな春の嵐も、私にとっては夏のオウェス島に訪れる主人公達の船を座礁させた嵐ぐらい激しいものに感じられても不思議ではな・・・・・・止めときましょう。

 自分もマニアックすぎると自覚できる知識持ち出さないことには冷静さを保ち得なくなってるのだとハッキリ認めた方が、まだスッキリしそうな気がしてきました故に・・・・・・。

 

 ・・・あ~~、しんどい。

 マジ恥ずかしか―――って、あれ?

 

 

「・・・待って下さい。たしか織斑先生から呼び出し受けて寮長室に行く前に誰かと会って、何かの話を聞かされた記憶が、妙に何かとチグハグになって違和感があるような気が・・・?」

 

 先ほどの衝撃により、脳みそが一時期にピンク色の侵略を受けていたせいか、記憶畑が爆撃受けて焦土と化しており、耕し直して記憶再統合するまでに時間がかかりましたが今ようやく復旧作業が完了しました。

 

「そうでした。たしか山田先生にあったんでしたね。それで連絡事項を伝えてもらったんでしたわ」

 

 あ~、ようやく脳が通常運行に戻ってきましたわ。記憶も回復してきましたよ。

 たしかあのとき山田先生は、こう仰っていたはずです。たしか。

 

 

『――異住さんも知ってると思いますけど、今日は大浴場のボイラー点検日です。

 ただ点検作業自体は、いつも通り9時前までには終わる予定ではいるんですけど、今日は普段なら大浴場を使えない織斑君とデュノア君の男子二人だけに使ってもらうことになったんです。

 試合の後に事情聴取まで付き合わせてしまって、二人には申し訳ないことをしてしまいましたからね。せめてものお詫びの印です。

 ですから異住さん? 織斑君たちがお風呂に浸かっているときにいい、一緒に入ろうなんてしたらダメですからね!? 一部の生徒たちさんたちの間で、そういう風潮が流行っているらしいんですけど、そ、そういうエッチなことはいけないと先生は思います! 断固!』

『・・・・・・やりませんて・・・』

 

 

 ――たしか、こんな風な内容の連絡事項。

 んで。今この場にいる私が立ってる廊下は、寮長室から学園寮に着いている廊下の中途ぐらいで、あんまり複数の通路を伝って四方八方から同時に一人だけの寮長先生の元へ押しかけるようなことがない作りになっており、基本的には一方通行な廊下の一つ。

 

 そして今さっきデュノアさんが『織斑さんを探すために去って行った方向』にあるのは、生徒たちと会わずに先生方がたまに大浴場を使うときとかに用いられている、使用者が限定的で人目を避けて『今日は男子専用の貼り紙貼られていて堂々と入れるようになったはず』の大浴場へと続いており。

 

 そして、それ以外の場所だと教員関連が使っている部屋が多い、寮長室周辺の教員用スペース。

 

 この二つの情報を組み合わせて導き出される結論はと言いますと―――。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

「・・・・・・気のせいですね。私らしく考えすぎただけでしょう。疲れてるみたいなので部屋に戻って今日は寝ることにしましょうかね・・・・・・」

 

 

 ・・・・・・と、言うことにしておくのが賢明そうだなという結論です。

 私は何も気づいていません。私は何かに違和感を感じただけで、結局なんの答えにも至れなかったのです。

 

 自分が得する意見に賛成し、自分が損させられる意見だから反対し、感情論で言ってるだけでないと見せかけるためにも尤もらしい理屈を付け足すことで正しさ貫いてるように見せかけて美談にする。

 それが救済系ラノベ主人公の主張なのだと気づいたあの日から、気づかなければ綺麗に終われる話は綺麗なままで終わらせてあげるべきだと考えるようになったのが私という人間。――面倒くさそうでしたのでね?

 

 ですので私は絶対―――織斑ラバーズのによるスーパーイチャラブ大戦には、二度と巻き込まれたくありません。

 他人の色恋沙汰とか、色恋沙汰から発展した泥沼争奪劇とか、そういうラブコメ風味なイベントに巻き込まれることはノーサンキュー。

 私の人生に恋愛要素は一切必要ありませんと、中学時代から付き合いのある原作主人公の旧友時代に誓ったのです!

 

 

 だから知らん! 気づかん! 興味もない! ・・・・・・ってあれ?

 

 

 今度は廊下の隅で見覚えのある、中くらいのサイズと小さいサイズの二つの色した人たちが、何やら密談されておられるのが見えたような気がしたような、しなかったような―――

 

 

 

 

『ふふふ・・・・・・夏ね』

『ええ・・・ウフフ。夏ですわね』

『夏と言えば臨海学校。臨海学校と言えば海。海と言えば・・・・・・フェアに行きたいわよね? お互いに・・・』

『ええ、もちろんですわ。わたくしも礼儀とマナーの国の貴族として、貴族らしくルールを守り、ファアな勝負をと思っております。・・・海においては特にお互いに・・・・・・』

 

 

 

『『正々堂々、手段を選ばず、真っ向から不意打ちして望むものを手に入れた側が勝者となる。それが恋愛(戦争)!!

  さぁ、あたしたち(わたくしたち)の恋愛戦争(奪い合い)を始めましょう!!!

  くふ、クフフフ・・・・・・ふはぁーっはははははっ!!!!』』

 

 

 

 

 

 ・・・・・・。うん、まぁアレですよあれ。

 

 

「私は何も気づいていませんし、見ていません・・・・・・そういう事にしておきましょう・・・」

 

 

 起きることを知ってるだけで避けられない不幸な未来の知識など、100パーセント的中する予言と同じで全く何の役にも立たない意味がない。

 だから忘れます、なかった事にしておきたいのです。

 

 避けられない未来なら・・・・・・恨むのも後悔するのも、その時が来てからでも遅くないですし、早めたところで辛いだけで意味ないっス・・・。マジで、本当に・・・・・・(ToT)

 

 

 

つづく

 

 

 

おまけ【この頃の束さん】

 

束『ふんふんふ~ん♪ 臨海がっこう♪ 臨海がっこう♪ そこはパライゾ、ドリームランド、全ての願いが叶うと言われる理想郷の夢幻は~、愉しみだゾっと♪♪』

 

ク『束様・・・失礼ながら、鼻血を拭かれないままのフィギュア制作は、大変キモく思われますが・・・』

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