嫌がられた時には言って下されば削除しますね。
尚、タイトルの語尾が意味わかる人はどれだけいてくれますかな~♪
「大事なのは、既成事実だと思うのよね」
断言した少女の姿は愛らしかった。実年齢より幼く見える低い背丈と、両側に垂れた長いツインテール。
口元から覗く八重歯がチャームポイントの彼女が、姿勢を崩しながら強い言葉で断言する様子は、生意気盛りの幼い少女が大人を相手に我を張っているようで苛立ちよりも可愛らしさを感じさせるものがある。
・・・・・・言ってる内容は、全然子供っぽくなかったが。
「その通りですわね。
愛は略奪という諺が、ニホンの伝統にもあると聞いたこともありますから」
と、少女の声に応える声は上品さで満ちていた。
格調高い傲慢さを感じさせながらも、穏やかさと優雅さを感じさせる口調が印象を柔らかいものへと変化させ聞く者に不快さを残さない。
他人に傅かれることに慣れた者だけが持ちうる気品と伝統に満ちあふれた声。
・・・・・・言ってる内容は気品や伝統を一切感じさせない、野蛮極まるものだったけれども。
「ああ、そんな言葉もあったわね。諺だったかまでは忘れたけど、都合がいいから諺だったってことにしときましょう。
偉人の名言なんて、今の日本人にとっちゃそんなもんだし」
「ですわね。大衆にとって過去の歴史など、今の自分たちの行う主張を肯定してくれる正当性の根拠にさえなってくれれば、それでよいものですから」
平然と、そして穏やかなる、聞いてる人によっては激怒しそうな会話を交わし合う少女たち二人の名は、凰鈴音とセシリア・オルコット。
どちらもIS学園一年生の女子生徒にして各々の国から転校してきた国家代表候補生たる専用機持ちの二人組。
普段は諸事情あって、あまり仲がよいとは言いがたい二人であったが今日に限っては――否。
普段は仲が悪い二人“だからこそ”今日は仲良く話し合うための会合を交わさなければならない意味がある二人組だったのである。
「――何はともあれ、今回だけは軍事同盟といきましょう。
アタシはあんたのアプローチするのを邪魔しない、あんたはアタシが何しようと見て見ぬフリする。そういう条件でいいのよね?」
「・・・・・・そうですわね。このまま互いに、アプローチをしようとするたび邪魔し合って不発に終わり続けていたのでは話が始まることすらできません。
ここは一時休戦して、自分たちそれぞれの事情を優先すべきでしょう。
“夏休みが終わるまでは”という期限付きで」
即ち、恋愛戦線における対立者同士の不可侵条約を期間限定で結ぶためである。
夏休みが明けて、学校の教室で再会したとき「夏休みデビュー」を飾るため、互いに同一人物へと同じ思いを寄せている少女たちは日頃の啀み合いを棚上げにして手を取り合い「無視し合う」という協定を結び合うことに遂に成功したのであった。
「ええ、その通りよ。
夏休み終わってクラスメイトから『ウッソー!? 印象全然変わってるじゃない! 休み中になんかあったの? 正直に言えコノコノ~☆』とか言われるような関係になるためには、高校一年生の夏を戦いに費やしてる余裕はアタシらにはないのよ。
一生で一度の高校一年生として過ごせる夏は、あまりにも短いんだから・・・ッ」
互いに、恋敵という名の敵は憎い。できれば敵の目標達成を邪魔したいという本心に変わりはないが・・・高校一年生として相手と共にアバンチュールを過ごせる機会は一度しかないのだ。一秒たりとも無駄にはできない。
そのためにも夏休み開始直前の今ここで、呉越同舟の軍事同盟を締結し合っておくことは必須条件だったのだ。
鈴もセシリアも、その心に嘘偽りは一切なく、交わされた条約内容は互いに遵守するつもりでいる。
・・・・・・とは言え、互いに敵を同じくするが故の利害計算のみで結ばれた同盟である以上は、双方共に互いに対して含むところがないなどあるわけもなく。
(大事なのは、既成事実を作ることよ! 後は形式がついて回るようになるわ!
そうなった後にセシリアが何を言ってきたところで全て手遅れになっているから無問題!)
(要は最終的にわたくしがセレニアさんの心を奪い取れば、それで良い話なのですわ!
手順や形式など所詮は社交辞令・・・恋愛は戦争であり、戦争は勝った者が綺麗に飾れば問題なくなるものなのですから)
と、そういう内心を胸の内に隠したまま、笑顔で手を握り合い、右手で握手を交わして左手で何かを握りつぶす少女たち二人組。
((手を結ぶのは、アタシ(わたくし)がセレニアと(さんと)結ばれるまで!
この手で相手のハートを鷲掴みにする、そのときまで・・・ッ!!))
互いに自分の都合だけで交わし合わされた、利己的な同盟関係。
そうである以上、自らの目的が達成された暁には同盟は自ずと無意味化し、互いに次なる戦いの始まりを迎えることに繋がるわけだが・・・・・・それは、そうなった後に考えれば良いことでもあった。
一先ず今は、目下の敵を倒すことに専念し合う。その点では完全なる一致を見た二人の少女たちは、笑顔で再会を約し合いながら各々の帰るべき場所へと戻るための準備を始めていく。
まぁ・・・敵が同じで目的も一致するからというだけで結ばれた絆なんて、所詮こんなものである。
自分が利益を得るため妥協し合あった、盗賊同士の約束事に誠実な履行を求める方がどうかしている。
――彼女たちの思い人が、もしこの場で話を聞いていたなら、そんな感想を漏らしたやもしれない盟約がIS学園校庭の一角にある小さな森の中で結ばれていた・・・・・・ちょうどその時。
「・・・、・・・・・・?? へ――へぷちッ」
「ん? どうしたセレニア? 風邪か? ・・・っていうか今のクシャミだったのか・・・?」
「いえ、風邪というわけではないはずなのですが、なんか一瞬だけ寒気がしちゃいまして・・・。
なんて言うかこう、夏前なのに秋雨が来る寸前のような、そんな悪寒がちょっとだけ・・・」
「??? まぁ、なんかよく分からんが身体の健康には気をつけろよ?
お前って中学の時から結構その手の危険は多かったのに自覚してないだけだったからなぁ。その内、後ろから刺される事態になっても知らんぞ?」
「・・・織斑さんにだけは言われたくないんですけどね・・・・・・へくちッ! うぅ・・・何で今日に限ってだけこんな寒気が・・・。
あと何故だか急にリップシュタット戦役が見直したくなってきたし・・・なんなんでしょうね? これって一体・・・」
「おい、本当に大丈夫か? 病院行くか? 歩けそうにないなら俺がおぶって運んでやってもいいんだぞ?
お前小さいし軽いから、大した苦労とも思わないから遠慮はいらん」
「・・・・・・死にますよ? あなたが。あなた一人だけが、その内絶対に・・・」
「なぜっ!?」
知らぬは本人たちばかりな、少年少女たちの恋愛という変わることなき歴史が、また今日も1ページ・・・・・・。