『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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更新止まってた作品の続き、その2です。
よく考えたらコチラの作品も半端なのを繋ぎで出しただけでしたので…。

ハイドと束さん初邂逅のお話しです。
変なテンションの時に書いた変なテンションの主人公のお話しですので、常識的なテンションは持ち込まないで読むことをお勧めいたします(どういうテンションかは知らんですが(;^ω^))


『我が征くはIS学園成り!』第20章

「あ痛たた・・・・・・まったくヒドい目に遭った。鈴のヤツ、無茶しやがって・・・」

 

 片耳をポンポンと上から叩きながら俺は、臨海学校先の旅館に隣接している砂浜を一人で歩いていた。

 俺たちIS学園1年生メンバーは、開放空間での新装備テストのため臨海学校に来ていた―――そのはずだったのだが。

 

 ハイドの褌一丁騒動で上半身晒すところから始まって、鈴に息切れてる状態で海中へと引きずり込まれて溺れ死にかけ、そこから生還した後にはセシリアからサンオイル塗ってくれるよう頼まれたから引き受けたら鈴がやらかして、セシリアが上半身を晒す羽目になり、その直後にはハイドが再びやってきてポージングしながら上半身を晒して、それで・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 ・・・おかしい。俺たちIS学園1年生組は、新装備の性能テストのために臨海学校に来たはずなのに、到着した当日から女の子たちの肌色ばかり見ているような気がしなくもなくなってきちまった・・・。

 

 い、いやそんな事はない。事故だ事故、俺は五反田じゃないから、そういう目的で俺以外の生徒は全部女子のIS学園に入った訳じゃないんだし、今さっきまでのは不可抗力で不慮の事故で人の力では抗いようのない超自然的なナニカが俺の運命を無理やり改変しただけであって、俺自身にそう言うのを望む意思はなく―――いかん。

 自分でもワケワカラン状態にになってきちまった。少し海にでも入って頭冷やした方がよさそうだなコレは…。

 

「あ、一夏。ここにいたんだ」

「ん? ああ、シャルか。お前もなにか俺に用事か・・・・・・って、なんだそのバスタオルのお化けは・・・」

 

 ふと、声に呼ばれて振り向くと今度は本当の性別を明かしたばかりのフランス代表候補のシャルロット・デュノアがオレンジ色の水着姿で立ってたんだが――その隣に妙な存在がいた。

 

 全身をバスタオル数枚で頭の上から膝下まで覆い隠している、ハイドとは違う意味で奇妙奇天烈な格好した変な奴だ。

 な、なんだコイツは・・・脱衣系の次は着衣系のヘンタイファッションでも流行りだしてでもいたのか・・・?

 

「ほら、出てきなってば。大丈夫だから」

「だ、だ、大丈夫かどうかは私が決める・・・」

 

 そのお化けにシャルが話しかけて返事が返ってくるのが聞こえる。

 今の声は・・・ラウラか? しかし、いつも自信に満ちてたラウラにしては随分と弱々しい声に聞こえたんだけど、何かあったのかな? どういう状況なのか、さっぱり分からん。

 

「ほーら、せっかくお詫びのためにも水着に着替えたんだから、一夏に見てもらわないと」

「そ、それは分かっている。だが、私にも心の準備というものがあってだな・・・」

「もー。そんなこと言って、さっきから全然出てこないじゃないか。ラウラが出てこないんなら、僕ももう一夏と遊びに行っちゃうよ? それでもいいの?」

「う、ぐ・・・ええい、もう分かった! 脱げばいいのだろう!? 脱いで見せればッ!!」

 

 叫んで、ややヤケグソ気味な声音と一緒にかなぐり捨てたバスタオルの下から現れたもの―――それはラウラの水着姿だった。

 

「わ、笑いたければ笑うがいい・・・・・・私にはその・・・前回の貴様に借りがある身なのだからな・・・」

 

 真っ赤になってモジモジしながら恥じらっているラウラが身につけていたのは、黒いレースがふんだんにあしらわれたセクシー・ランジェリーにも見えるもので、普段は飾り気がなく伸ばしたままの長い銀髪も今日は左右で結んだアップテールになっていた。

 

 どうやら転校してきた直後から俺に絡んできてたことと、タッグマッチでの一件を気にしてくれてたらしく、そのお詫びに自ら恥をさらしに来た―――そういう経緯による行為だったらしい。

 

「また笑うだなんて・・・おかしな所なんてないよね? 一夏」

「お、おう。ちょっと驚いたけど、似合ってると思うぞ?」

「なっ・・・!? しゃ、社交辞令ならいらん・・・・・・」

「いや、世辞じゃねぇって。本当だって。なぁ、シャル?」

「うん。僕も可愛いって褒めてるのに全然信じてくれないんだよ。あ、ちなみにラウラの髪は僕がセットしたの。せっかく可愛い格好見せて謝るんだからオシャレしなきゃってね」

「へぇ、そうだったのか。ん、シャルも似合ってるぞ」

「う、うん・・・ありがと」

 

 褒められて照れくさそうに髪をいじるシャルと、俺の言葉に狼狽したように両手の指をもてあそぶラウラ。

 うーん、普段とは雰囲気違って最初は驚かされたけど、こういうのも新鮮な感じがして慣れてくると中々いい気がしてきたな。

 

 そう思ってたら、ふとシャルの手首に俺が先日の買い物でプレゼントしたブレスレットが光っているのが見えて、ラウラの方にもそのうち誕生日プレゼントか何かでも送ってやろうかなという気になってくる。

 

「――う~ん・・・、何がいいだろうなぁ。今の髪型だと耳が出ているからイヤリングとかも似合いそうだな。可愛いと思うし」

「かっ、かわいッ・・・・・・!?」

 

 あ、いけね。また思ってたことが声に出ちまっていた。

 まぁ、悪口思ってたわけじゃないし褒めてたんだから問題ないな・・・・・・って、あれ? なんかラウラの態度がさっきまで以上に普段とまったく違う反応示してきたような――

 

 

「か、かわ、可愛いと・・・・・・言われると、わ、わた、私は・・・・・・私は・・・・・・っ。

 うっ、うう・・・・・・ううぅぅぅ・・・・・・・・・こ、これで勝ったと思うなよォォォォォッ!!」

 

 

「何がだよ!? 何の話なんだよ!? そしておーい! どこ行くんだラウラーっ!?」

 

 

 俺と目が合った瞬間に、何故だかボッと顔色が赤くなったラウラが捨て台詞(?)を残して脱兎の如く逃げるように走り去っていって、そして―――――

 

 

 

 ざッぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッん!!!!!

 

 

 

「ふははははははははははははははッッ!!!!!

 悪い子は、蝋人形にしてやろうぞォォォォォォォォォォォッッ!!!!」

 

 

「ふんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?

 ば、ば、化け物がァァァァァァァァッ!?」

 

 

 

 ・・・・・・そして海から波しぶきを上げて涌いて出てきた妖怪海坊主もとい、年齢三万数百数歳の悪魔閣下でもなく。

 ラウラと同じドイツの代表候補生で専用機持ちでもあるロリ仲間同士のシュトロハイド・フォン・ローゼンバッハに驚かされて悲鳴上げて腰抜かされる、と。・・・踏んだり蹴ったりだな、今日のラウラは・・・。

 

 まぁ、頭から海藻やらヒトデやら貝やら昆布やら、色々と体中にへばりつけて海の中から浮上してきたクラスメイトを間近で見せつけられちまったら、誰でも同じような反応するかもしれんけどな。

 千冬姉から言われて着るの承諾したTシャツも、すっかりズブ濡れで意味なくなりかけちまってるし。

 

 胸の部分とか透けかけちまってんだけど・・・・・・なぜだろう? セシリアの時みたいに目を逸らなさきゃって気分に全然なれなくて、別の意味で目を背けたいこと山のごとしな気分になっちまいそうな俺がいるのは・・・。

 つーかハイドの奴、さっきから姿見えないと思ってたら海の中にいたのか。そりゃ姿見えないはずだわ、姿海の中に隠してたんだし。

 

「お、おま、お前・・・・・・お前ハイドか!? 何やっているのだこんな所で!?」

「無論! 怪獣ゴッコで遊んでおる!

 海底を歩いて進軍し、海より上陸して日本首都東京へと攻め込んでこそ、日本征服を志す海から生まれてパワーアップした全ての生物たちの宿命でありマナーというもの!

 日本国外で生まれた者として日本の砂浜へと上陸した以上、やらねばなるまい!!」

「知らんわーッ!? そんな非常識存在のことなど知らん!! お前は海でくらい普通に登場することができんのかーッ!?」

 

 

 ラウラ、腰抜かしながら涙目で全力ツッコミ。・・・多分だけど、自分の情けない現状を誤魔化したい気持ちも混ざってんだろうな・・・。

 こっちの方は素直に、気づかないフリして目を逸らさなきゃ気持ちになれたから、俺は立ち上がらせるため手を貸そうとラウラの方に近づいてって、シャルの方は苦笑しながらでもハイドの方を相手してくれるため近づいてってくれたらしい。・・・シャル、グッジョブ!

 

「えーと・・・あのさ。ハイドは、海の中で何やってたのかな?」

「うむ。話せば長くなるのだが―――日本の海というのは存外に深くてな・・・・・・。

 陸より離れ約200メートル程までは緩い傾斜が続く大陸棚があり、その切れ目より大陸斜面と呼ばれる急激な傾斜となり、深さ三千四百メートルまで降り立ちし深海の底より尚深き、地の底まで続くかと思われるほどの暗い穴が口を開く日本海溝が広がっている・・・・・・なかなかの絶景であった」

「・・・え? いや、ちょっと待ってちょっと待って。その理屈は色々とおかしかったから」

 

 そして即座にツッコミ入れざるを得ない情報提示されて慌て出す声が背後で聞こえてくる。

 当然だろう、だって今の話が本当だったら完全に国境侵犯しちまってるし。どこまで行ってんだよコイツは。あと微妙に海の知識手に入って、ちょっと興味涌いたぞこの野郎。

 

「そしてその後、ハワイ・オアフ島基地近くにある太平洋中央階段を超え、マリアナ海溝まで行ってみたところ――――なんかデッカくて面白い魚を見つけたのでな!!

 それに、鋼鉄のような皮膚を持ったカッパの如き姿を持つ人々もいた!!

 面白かった故、織斑君やデュノア君も一緒にどうかと思い誘いに戻ってきた次第である!!」

「そ、そうなんだ・・・うん、ありがとう。気持ちだけ受け取っておくから僕はいいかな・・・」

 

 と、シャル特有の貴公子的お断りの仕方によって、やんわりとハイドにお茶漬け出してやってるのを聞かされながら、俺はラウラに手を差し伸べて助けてやって。

 

「ほら、立てるかラウラ? 立てないようだったら手を貸してやるから」

「うぅ・・・借りを返すつもりが、また借りを増やしてしまう羽目になるとは・・・・・・コレもそれも全部アイツが悪いんだ・・・アイツさえいなければ今頃私は・・・・・・グスン・・・」

 

 なんか最後ら辺で、今までで一番普段のラウラっぽくない言動が混じってたようなもん見た気がするけど―――気のせいだ。

 俺は何も見ていない。即座に目を逸らしたから何も見ていないんだ。それが日本人の礼儀であり気遣いであり、優しさってもんなんだ。俺は異常な外国人の友人から、それを学んでいる。反面教師としてだけれども。

 

 

「まぁ、そのような些事はおいとくしてだ。―――織斑くん!! そしてデュノア君&ボーデヴィッヒ君も!

 海に来たからには、まず何をすべきだと君達は思っているのかね!?」

 

 そして、等の元凶本人自身はまったく何にも気づくことなく悪意もなく、朗らかな笑顔と共に俺たちに尋ねてくる始末。

 分かってたけどな。コイツはこういう奴だって、自分でも分かってはいたんだけれども。

 

「そりゃお前、海って言ったら・・・・・・遊ぶんじゃないか?」

「うむ。まさに、その通りだ」

 

 って、当たってんのかよ。

 お前の思考が読めなかったから、無難なこと言っただけだったのに当たってたのかよ。まさに当たってた俺が、普通の答えすぎて一番ビックリだったよ。

 

「という訳で織斑くん&ラバーズの諸君、共に海へ来た戦友同士として遊ぶとしよう。戦友と共に!!」

「それは別にいいんだが、何して遊ぶんだ? あと、さっきからお前【トモ、トモ】って同じ言葉ばっかり言い続けるのは、なんか意味あるのか? そしてラバーズってのは誰のことで何の話だ?」

 

 なんとなくだけど、ハイドが言ってる言葉の意味が微妙に気になったので確認しておく俺である。

 文章で書かれてたら判別しやすそうなんだけどな。

 残念だが現実の人間関係に字幕はない、相手がどういう意味で言っている言葉だったのか聞いている奴自身が理解するしか相手の思いを知る術は存在しないのが現実の人間社会ってものなんだぜハイド。

 だからせめて、もう少し分かる言葉で喋ってくれ。最低でも人間に分かるレベルの言語を使えるようになってから。

 

「フッ・・・愚かな。海に来たものにとって遊び方など一つしかあるまい?」

「ほう? 大きく出たな、その一つってのは何なんだ?」

「フフフ・・・・・・それはだな――――海の大ウツケ者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

「そっちかい!?」

 

 いきなり海へ向かって叫びだしたハイドに向かって、俺も叫ぶ!

 まさか本当に、海へ向かって大声で罵倒する女子高生がいると思ってなかった俺には、叫ぶことしかできねぇ!!

 スゲぇ! まさか本当にやる奴いるとは思ってなかった! 昭和ドラマみたいなのを生で見ちまった!

 嬉しくねぇけど超レアだわ! 全然嬉しくないけれども!!

 

「海の愚か者―――ッ!! 世界を滅ぼす怪獣王が生まれて還る場所――ッ!! 邪神を祀る神殿の眠る地――ッ!!!

 安徳天皇の入水心中させられた呪われし海――――ッ!!!!」

「しかも言ってる内容がヒドすぎる! 歴史とかサブカルチャーとか色々混ざってるけど全部が全部ヒドすぎる!!

 そこまで言われると海も流石に怒るから止めとけハイド! 海にだって人権はある! 多分だが!!」

 

 相変わらずギャーギャー騒ぎながらハイドに振り回されつつ過ごさせられる、臨海学校到着直後の俺の学校風景。

 疲れた・・・そして、空しい。いつもいつもこの調子で、いい加減よく耐えきれるようになったものだと自分を褒めてやりたくなる俺には、なんとか終わったという気しかこの時にはなく。

 

 ・・・・・・後々になって自分が、この時言った言葉を思い出しながら深い後悔と一緒に、悔やまざるを得なくなっちまうことになるとは、この時点での俺は想像もしていなかった。

 

 もっと強くハイドを制しておけば良かったかもしれないな・・・って。

 やっぱ全ての命を生み出した海をバカにしちゃいけないということを、海からの復讐に迎撃に向かうことになる明日の昼頃の俺の気持ちを、今のオレはまだ知らない・・・・・・。

 

 

 

 

 

 ―――そして、まだ未来の危機が来てないから何も知らない俺が迎える平和な翌日の朝のこと。

 

「ようやく全員集まったな。それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。

 専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え」

 

「御意! 全ては神聖なるオリムラ帝国のために! ジーク・ハイル!!」

『ジーク・ハイル!!! 全ては神聖なるオリムラ帝国のために!!!』

 

「違うぞ!? 私は悪の秘密結社総帥じゃないし、ここは悪の軍団の秘密兵器工場とかではないからな!?

 右手を掲げるな! 唱和をするな! 私は日本の教育施設を軍事教練施設に変えた覚えはなーい!! ローゼンバッハは煽るな! 扇動にも乗るなーッ!!!」

 

 キャー☆と、クラスメイト一同の女子生徒達が、千冬姉の檄に応じて黄色い悲鳴を上げながら散っていって、各々の作業へと向かっていく。

 ハイドとの遣り取りが常態化してしまったせいで、千冬姉に対するクラスの女子たちとの距離感が縮まったのは良いことなんだろうけれど、舐められてるようにしか見えないのは良いことなのか悪いことなのか俺にはサッパリ判別できん。

 

「あ、あの織斑教官にあれほどの態度を取って、平然と生きていられるだと・・・っ!? 日本の平和ボケしたIS学園生徒共はバケモノなのか!?」

 

 そしておそらく、ドイツで教官時代にイヤと言うほど恐ろしい思いを味わってたラウラだけが驚愕の表情で、周囲で作業しているクラスの女子達を畏怖するように見つめている。

 

 疲れたらしく、山田先生に肩叩かれてる千冬姉からすればコイツみたいな反応の方がいいのかもしれないけど、ハイドと同じクラスメイトで居続ける限りはいつまで保つか分からないのが微妙だよな。

 相手のことを余り知らないってのは、存外に相手からも喜ばれる時があるらしい。

 

「・・・・・・ああ、それとだが篠ノ之。お前はちょっとこっちに来い」

「はい。・・・ただあの千冬さ――いえ、先生。大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、問題ない・・・」

 

 千冬姉、あまり俺は詳しく知らないけど五反田が言うには、それはアウトな一言らしいぞ?

 

「お前には今日から専用ISが与えられ――――」

 

 千冬姉が、そこまで言った。

 その次の瞬間。

 

 

 

 

「ちーちゃ~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!!!」

 

 

 

 ずどどどどど!!!っと、砂煙を上げまくりながら物凄い速さで走って近づいてくる人影が現れたことにより、千冬姉の言葉は途中で途切れ、呆れたような表情で黙りこくったまま走って近づいてくる人影へと身体を向け直して待ち構え、

 

「・・・・・・束」

 

 と呟く。

 ISっぽい何かをつけてるとしか思えないほど、無茶苦茶速い速度で近づいてきてる、その人の名前を、そう呼んだのだ。

 

 

「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、ハグハグしようハグハグを!! 二人で愛を確かめようぜェ~イ☆」

 

 この場所が国有地で、立ち入り禁止であっても何のその。

 希代の天才である彼女、篠ノ之束さんが威風堂々と臨海学校に乱入してきて、千冬姉に抱きつくため、全力疾走してから飛びかかってきて―――――

 

 

 

「織斑教官くん! 危な―――――――ッッい!!!!!」

 

 

 

 ドバキィィィィィィィィッン!!!!!

 

 

 

「ぐぶっへえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」

 

 

 

 ・・・・・・飛びかかって抱きつこうとした寸前に、横から超猛スピードで瞬間移動してきたハイドに肘鉄食らわされて、反対側の岩壁へと猛スピードで突っ込まされていって頭から激突して

 

 

 ドンガラガッシャァァァァァァァァッン!!!!!

 

 

 激突した岩壁崩れて崩落して生き埋めになってしまった・・・・・・って、えぇぇぇぇぇ!?

 

「って、え、ヤバ!? 無事か束ぇぇぇぇぇぇッ!? しっかりしろ―――ッ!?」

「大丈夫ですか束さん!? しっかりして下さい! 救急車―――ッ!!!」

「近寄るな二人とも! まだ敵は生きている!!」

「いや、生きてなきゃ困るだろ!? 死んでたら駄目だろうが!?

 何やっとんじゃお前は―――ッ!?」

 

 流石にこれは予想外すぎる事態だったので、俺だけじゃなく千冬姉も大声を上げ、慌てて崩落現場に駆け寄って救助作業を開始しようとしたのに、邪魔しようとしたハイドに詰め寄らざるを得ない状況! ホントに何がどうしてこんな事になってんの!?

 

 だが、動揺する俺たちの心情に一切全く構うことなく、ハイドは妙な格闘技みたいなポーズを取りながら束さんが生き埋めになった岩壁もとい元岩壁に向かって構えを取って警告を発する!! そして!!

 

「おのれ曲者め! 我らがIS学園警備主任へと襲いかかり亡き者にしようとは大それた事を!

 この場所をIS学園関係者以外立ち入り禁止と知っての狼藉か! 貴様一体どこの国の手の者だ!?

 メリケンの刺客か! それとも伴天連から送り込まれし宣教師なる侵略者の先兵によるものか! 名を・・・・・・名を名乗れいッ!!」

 

 

 ものすげー時代錯誤なことを言い出しやがった!?

 え、コイツ本当にそんな理由で束さんぶっ飛ばしちゃってたの!? あと、お前の国籍はどこの国で代表やってる何奴さんだったかを思い出せぇ!!

 

「ぐ・・・あ・・・頭が割れるように痛いィぃ・・・、ちーちゃんとの決戦用に細胞を強化していなかったら死んでたかもしれなかったよ・・・っ」

「無事だったか束! ――え? 今なにか私との決戦と聞こえたような気が―――」

「それはともかく!!」 

 

 ズビシィッ!!と、復活した束さんがハイドに向かって指を突きつけながら宣言をする。

 不思議の国でアリスが着ているような青と白のワンピース姿で、エプロンと背中につけた大きなリボンが人目を引く。

 箒の実姉だけあって顔立ちは似ているけれど、もうずっと安らぎのある眠りを経験してないせいで目の下には大きなクマが付いたまま。

 

 妹と違って剣術はおろかスポーツを全くしないインドア派の研究者タイプだけど、体つきはスラッとしてて均整が取れたプロポーションをしていて、妹と同じで、その・・・・・・ブラウスのボタンがギリギリまで引っ張られるほどサイズが合ってない身体の一部が何より目立っちまって目のやり場に困らせられる時がたまにある・・・。

 

 そして彼女の『一人不思議の国のアリス』とも呼ぶべき一番の理由になってる、頭に被ったメカニカルな形状をしたウサミミ・カチューシャ。

 相変わらず、よく分からないファッションテーマをしている人だが・・・・・・今はそれより少しだけ気になる部分が付け足されているため、今一そんなに特殊な印象が持ちづらい・・・。

 

 

 ・・・・・・・・・頭から盛大に血をダクダク流し続けてる状態だと、ちょっとなぁ・・・・・・。

 機械っぽいウサミミの白さを徐々に浸蝕していきながら、青と白のエプロンドレスを後ろから、タラッ、タラッと上から落ちてくる赤黒い液体が少しずつ少しずつ色を変えちていっちまってる光景は、不思議の国のアリスっぽい雰囲気と相まって―――

 

 ・・・・・・グリム童話臭いんだよな・・・・・・今の束さんの見た目って。

 悪いとは思うけど、軽く引くわ。そして彼女と初対面のIS学園一般生徒の女子たちは皆ドン引きしてるわ。後ずさってる人までいる始末だわ。

 本気で少しだけその・・・・・・怖い。

 

「誰だよ君は!? このIS関係者というなら一番はこの私をおいて他にいないという常識すら知らない癖して偉そうに説教してくれちゃって! だから外人は図々しくて嫌いなんだよ!

 そもそも今は箒ちゃんとちーちゃんといっくんと数年ぶりの再会なんだよ!そういうシーンなんだよ!どういう了見で君はしゃしゃり出て来てるのか理解不の―――」

 

「こぉぉぉぉぉの、愚か者めがァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

 

 ズボォォォォォォォォォォッン!!!!!

 

 

「ふべっはァァァァァァッ!?」

 

 

 また全力で殴り飛ばされて吹っ飛ばし戻って行かされたー!? また岩に激突させられて、また岩崩されて生き埋めにされちまった束さん!

 って言うかコレ死なないか!? 普通は死ぬだろコレ普通なら絶対に!!

 

 

 

「言い訳とは見苦しいぞ不審人物の三十路前女性くん!

 君のような“奇妙奇天烈珍妙極まりない姿格好をした国籍不明の怪しい変な生き物”が、国立エリート学校IS学園の警備主任という立派な肩書きを持つ公務員と知り合いだ、などという嘘を誰が信じると思っているのかね!?

 分際をわきまえ、鏡を見て、身だしなみを整えてからものを言いたまえ!!!」

 

 

「フンドシ穿いてる外人女にだけは言われたくないわァァァァァァァァッ!!!???」

 

 

 

(た――――確かにッ!!!!(×ほぼ全員))

 

 

 

 思わずIS学園一年生一同が心の中で全員がほぼ一致で賛成してしまうほど、尤もすぎる正論を言い合う束さんとハイド! 本人同士がそれだから全面的には賛成しにくいのが難点ではあるけれども!

 うんまぁ、この二人同士で互いのファッションテーマについて正当議論したところで多分「自分はいいが相手のはダメ」以外の結論は出てこないんだろうなぁ・・・。

 

 

「あ~・・・、すまんがローゼンバッハ。お前の言い分はよく分かるし、正直その意見には私も常々心から同意したい限りではあるのだが・・・・・・アレの言っていることは本当だ。

 本当にアイツは私の知り合いであり、IS関係者の中では最も縁の深いISを生み出した開発者本人でもある篠ノ之束なんだよ・・・」

「なんですと!? それは真ですかな織斑教諭君!!」

 

 驚愕の真相を聞かされ、驚いて目を見開いて千冬姉を見つめ返すハイド(今更過ぎる驚きだけれども)

 

「事実だ。誠に遺憾だとは私自身も思っているし、甚だ不本意の極みではあるのだが・・・・・・コイツが私の知り合いで、ISの生みの親でもある篠ノ之束なのは紛れもない事実なんだローゼンバッハ。残念なことだがな・・・」

「う~~む・・・・・・そうだったのですな・・・・・・だとすればやはり―――」

 

 ハイドの肩にポンと手を置きながら、こういう時の対応パターンとして千冬姉が束さんの身元を保証して仲裁に入り、たいていの場合はコレで終われる。

 千冬姉の名前は世界的に有名だし、束さんが今みたいに行方知れずになる前から顔と名前を知ってる人は結構いたから信頼があり、束さんの名前は知ってても顔は見たことがないって人からも二人分合わせれば大方は納得してもらえる。それが昔から続く俺たち織斑姉弟と篠ノ之姉妹のパターンだった。

 

「いやあの、ちーちゃん? なんか今スッゴい勢いでフォローするフリして思いっきり、束さんのことディスってなかったかな?

 ちーちゃんの親友であるらぶりぃ束さんと久しぶりに再会した時に言う言葉じゃなかったよね? ちょっと、ちーちゃんコッチ向こう!?」

 

 ・・・まぁ、今回の場合にはハイドが色々と言い過ぎてしまったため、千冬姉も色々あって色々口が滑っちまったってだけで、そこまで仲が悪い二人って訳じゃあない。

 むしろ良い方なんだろう。こうして臨海学校まで会いに来てくれるぐらいなんだし、好きじゃなければやっていられない。

 これだけ証拠がそろえば流石のハイドも納得するしかなかったらしく、「成る程・・・」と小さく呟きながら何度も頷くと、スゥゥ・・・っと頭をゆっくり上げながら仲直りの握手をするためなのか、右手を束さんの方へと静に伸ばしていって、そして――――

 

 

 

「やはり――――不審人者であったか! 君の悪行三昧すべて見抜いた!

 大人しく成敗されるためお縄に付くがいい! この大悪人めが!!!」

 

「なんでだよ!? ちーちゃんの話を聞いてなかったのかい君は! これだから外人は嫌いなんだよ! 日本人もどうでもいいけど!

 箒ちゃんとちーちゃんといっくん以外の日本人はみんなどーでもいいぐらいに、ハグハグしたがっちゃうほど想い合ってる親友同士の束さんとちーちゃんの熱く激しい愛の話を、君は少しも聞いていなかったのかい!? この外国人バカ!!」

 

 

 ハイドが指突きつけながら目をカッと見開いてから吠えて、束さんも吠え返して再び事態は逆戻り。

 やっぱりハイドに今まで通りの一般的パターンは無理だったよな・・・。うん、分かってた。分かってたけど少しだけ期待してしまった自分が空しい・・・。

 

「黙りたまえ悪党くん! 織斑教諭くんの優しさにつけ込み、学生時代に友人だった級友のツテを頼って学校教員として雇ってもらおうと目論む悪友とは、君のような者を言うのだよ!

 友情を利用し、かつての友さえ定職に就くため悪用せんと欲する悪行の数々、もはや見過ごすことはできん! 成敗してくれる! いざ尋常に勝負ゥゥゥッ!!!」

 

「人を、大学受験に失敗して落ちこぼれた碌でなし元エリートみたいに言わないでくれるかな!? 束さんは高校どころか幼稚園の頃から超優秀で、学校だって超大天才生まで卒業してるよ!君みたいなのと一緒にすんなアホ!!」

「ええい! 日本男児のくせに南蛮人が如き細かいことをッ!! これだから伴天連という者は何を言っているのか訳が分からぬのだと言うことを自覚したまえ! ピンク色の髪をした国籍不明の南蛮人くんよ!!!」

 

「髪の色はカンケーねーッ!? 染めてるだけだよーッ!!! 言わなくても分かるでしょ人として当たり前の常識として!?

 こんな髪色が地毛の人間いるかァァァァッ!!!」

 

 

 ―――あ、自分でも一応は自覚あったんだ・・・・・・。

 と、いう心の声が箒の方から感じられたような気がした俺である。なんかもう、子供同士の言い合いみたいになってきちまってるってゆーか、初っぱなからガキの口喧嘩しかしてないような気がしてきたなこの駄会話は・・・。

 

「まったく日本人の名を名乗りながら言い訳とは聞き苦しい! 百歩譲って仮に君の言うことが間違っていなかったとしてもである!

 “ISを生み出した開発者”が君であるとするならば、【IS操縦者育成のIS学園】となんの関係もない部外者である事実に変わりはないであろうがァァァァァァッ!!!!!」

 

 

(た――――確かに!! それは確かにッ!!!(×全員))

 

 

 再び今度は全会一致でハイドの言い分に賛成を見た、俺たちIS学園1年生組の感想。

 今回のは千冬姉も同意せざるを得ないらしく、「う、う~むそう言われると一理あるが・・・」とうなりながら腕を組まざるを得なくなってしまっている。

 

 まぁ確かになぁー。IS造ったの日本人だから責任取れよって理屈で某合衆国とかから要請受けて、日本人の血税費やして建設したのがIS操縦者育成機関のIS学園なわけだから、『ISの関係者』と『IS学園の関係者』とでは、あんま関係してねぇよな本当に・・・・・・基本的にお役所の管轄なような気がするし、微妙じゃねぇかと。

 

 って言うか、この二人と千冬姉って対応が妙なところで似てる部分多くないか?

 このまま行くと、また海来た時みたいに【第二次スーパーISバトル超えてる生身の人間大戦~科学者編~】とかに発展しちまうことにならないかな? ・・・・・・今のうちに巻き込まれないよう離れといた方がいいかもしれん・・・。

 

 

「だ~か~ら~、束さんはISを造った生みの親の天災科学者で、ISの関係者って言うんなら私をおいて他にいないって、さっきからずっとそう言ってるんだよ! 何度言えば分かるかな!?

 これぐらいサル並みの低脳あれば分かる当たり前のことなんだから君にも分かるでしょ!? って言うか分かれ!!」

 

「???? つまり、君とIS学園とは無関係という話ではないのかね?」

 

「だ! か! ら!! あーもー! コイツ面倒くせぇ~~~ッ!!!

 ――よし、こうなったら実力行使だ!! ISを造った束さんの科学力を痛みと一緒に教えてあげるよ!! 証拠品と一緒に味わっちゃえ!! 

 《天災束さんお手製ものスッゴいニンジン爆弾》発射ぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 

 そして、やっぱこうなったか! さすが千冬姉の親友! ハイドへの対応まで似ていやがる!!

 束さんが頭掻き毟ってから取り出したスイッチのボタンを押した瞬間、空がピカッと光って見えた瞬間、どこからともなくニンジン型のロケットミサイルが超高速で飛来してきてハイドの後頭部に突き刺さり、そして―――ッ!!!

 

 

「とうッ! ハーイド・スルゥゥゥゥゥッ!!!」

「なんだって!? 細胞を改造してない生身の人間ボディでアレを躱せるはずが――!?」

 

「フッ! 当たらなければどうと言うことはない! 君が今まで勝利できてきた所以は、性能差のおかげだと言うことを忘れたか!?

 そのように驕り高ぶった愚か者には、性能の違いが戦力の決定的な差ではないことを教えてやろう! 上には上がいることを知り、人間として大きく成長するが良い!

 さぁ、不審人物くん!! カマ――――ッン!!!」

 

「ムッキ―――――ッ!!! この束さんの才能をバカにしやがって! 思い知らせてやる思い知らせてやる!! 《天災束さんお手製ものスッゴいニンジン爆弾MKーⅡ》!!

 続いて《MKーⅢ》!!! 《MKーⅣ》!!! 《MKーⅤ》!!!

 とにかく全部全部、発射発射発射―――ッ!!!」

 

「ふはははははッ!! 見える! 私にも敵が見えるから当たらんなぁー! 不審者くん!!!」

 

「ムッキッキ――――――ッ!!!!! こうなったら開発中だから暴発する危険があってコントロールできる確率30パーセント未満だけど威力はメガトン級の最終兵器爆弾ミサイルを試すしかない!!

 《必殺必中ハイパーνオーラフィンISミサイル》はっしly――――」

 

 

「やめんかアホ垂れ共――――――ッ!!! 地球を人の住めない星にでもするつもりか!? このアホォォォォォッ!!!」

 

 

 ドゴォォォォォォッン!!!

 

 

「ちーちゃんごもっともへぶひッ!?」

「ハッハッハ! 久しぶりに互角に近いライバルと出会って熱くなりすぎたようですな。

 お許しあれ織斑教諭くん! いつの世も強敵との出会いは心躍る!!!」

 

 

 

 そして今回もようやく千冬姉の鉄拳仲裁入ったお陰で収束するスーパー人外大戦。

 何というか、人類の限界超えてる大人たちほど大人げない時がある、それが俺たちIS学園1年生が臨海学校先にまで持ち込んで来ちまった問題です。

 

 

 ・・・・・・とにかく疲れた・・・・・・今回もだけれども・・・・・・。

 

 

 

つづく


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