その間、ヒマすぎましたのでヒマ潰しに書いてただけの今作が最後まで出来てしまったので投稿しておきますね。
…ただし、ヒマ潰し目的で変なテンションの中で書いてましたので、原作との整合性とかまで気に掛ける意思が欠けてます。そこはご了承の上でお読みくださいませ…。
*別けて投稿してた【番外編 同じ日の他メンバーたち】も、今話に纏め直しました。
自分で読んでみたら、読み辛かった次第です…。
「はぁ・・・・・・、今日もよく晴れましたねぇ・・・」
週末の日曜日、天気は快晴。・・・ウザったい・・・。
来週からはじまる臨海学校の準備を手伝ってもらうという名目も兼ねた、織斑さんへの謝罪の気持ちを行動で示すため町での待ち合わせをしていた私は、雲一つ無い空を見上げながら呟きを漏らして、ため息を一つ吐いておりました。
まったく・・・ただでさえ気温が高くて熱っ苦しくジメジメしてるのが高温多湿な日本の夏だというのに・・・・・・せめて週に2度だけの町へ出られるIS学園生にとっての土日ぐらい雨が降って涼しくなればいいものを・・・。
気の利かない天邪鬼な天の神様など呪われてしまえと罰当たりなことを考えながら、暇つぶしに時計を見上げる私、インドア系の整備科志望なIS学園生徒・異住セレニアでありましたとさ。
「・・・・・・あと、14分と36秒・・・」
微妙な数字でした。長いとも短いとも言いがたい、すごく表現しがたい微妙すぎるリアルな約束の時間までの残り時間を、時計の針は示しておりました・・・。
約束の時間の十分前には目的に到着しておく日本人の美徳を守って、約束の時間の十分前に到着できるよう出発予定時間よりも5分ぐらい早く家を出て、バスとか電車とかが予想よりも速く到着してスムーズに進みまくったせいで、結果的に予定よりもスッゴく早く目的地に着いちゃった事って経験あったりしませんでしょうか? 私はあります。今が丁度それをしている最中だからです。
「・・・暇です・・・・・・こんな事ならボーデヴィッヒさんでも連れてきてあげたら良かったかもしれません・・・」
主目的が、先日の失言で迷惑をかけてしまった織斑さんへの謝罪だったこともあり、町へ遊びに行きたがってたボーデヴィッヒさんには無理を言って我慢してもらい、来週連れて行く約束をしてあげて納得を得てから出発してきた私ですけど・・・・・・こんな事なら纏めて終わらせてしまえば良かったかと思えてしまうのは、人間が持つ業の一環。
結果論で自分の選んだ選択が根底から間違ってたように思いたがるのは、方向性が真逆なだけの願望に過ぎないと分かってはいても考えてしまう・・・・・・そんなマイナス思考に陥りたくなってしまうほど・・・・・・暑すぎる。そして暇すぎます。早く来てください織斑さ~ん・・・。
「ねぇねぇ、そこの小っちゃいカーノジョッ♪」
「・・・・・・はい?」
「今日ヒマ? 今ヒマ? どっか行こうよ~♪」
と、なんかやたらと暑っ苦しい真夏の太陽の下でニコヤカな笑顔を浮かべ続けてる、見るからに『遊び人』といった風情の割には根性ありすぎな男性が、私に向かって話しかけてこられたのでした。
「・・・・・・私はあまり、そういう誘いを受け入れられても周囲から良い目で見てもらえる見た目はしてないと思いますけど・・・?」
「いやいや、最近そう言うの人気あるから! ダイジョウブ! イケル☆
小っちゃくてカワイイのは正義だよ君~♪」
要するに、ソッチ系の趣味の方というみたいですね。
私に声をかけてくる男性は昔っから、こういう人たちばっかなので今更どうでも良いんですけど、昼日中の町中で堂々と性癖をさらせる辺りは、やっぱ根性ありますよね。この手の人たちって本当に・・・。
「俺、車向こうに留めてるからさぁ。どっかパーッと遠くに行こうよ! フランス車のいいところいっぱい教えてあげるから!」
「ほう・・・? フランス車ですか。それは良い車を持っていますね、興味があります。試しに聞いてみたいですけど、メーカーと車種はどんなお車に乗ってらっしゃいますので?」
「お? 聞く聞く? 君もイケル口だったりする? いいよいいよ教えてあげる~♪ 俺が乗ってる車はねぇ~♪」
「ほほぅ~」
薄らと微笑みを浮かべながら(私的には全力の作り笑顔ですが。顔面筋肉筋あんま動かないので)私は彼の話に愛想良く相づちを打ちながら―――暇つぶしの雑談に付き合ってもらう報酬とさせていただきましたとさ。
IS時代に入ってから女尊男卑が敷かれ、各国が女性優遇の社会へと移行したことから男性の地位は急転直下で下落していって久しい昨今のIS世界地球時代ではありましたが、『顔や見た目が良い男性や女性』だけは、どんな社会体制の世界であっても例外扱いしてもらえるのは全ての人間社会で普遍の常識というもの。
男尊女卑が徹底してた大昔の時代にだって、美貌と床上手で権力者に取り入って大半の男の人たちより偉くなった女性なんて掃いて捨てるほどいまくりましたからねぇ~。
銀河帝国皇帝フリードリヒ四世の寵姫第一号さんだったベーネミュンデ侯爵夫人なんて、皇帝からの寵愛をグリューネワルト伯爵夫人に奪われた後まで絶大な権力振るってましたし。
男尊女卑の時代には、美貌で男に媚びうる高級娼婦が成り上がり、女尊男卑の時代になったら高級ホストっぽい男性が権力者の女性に美貌で媚び売り成り上がる、と。
そして権力もなく、地位もなく、媚び売ったところで得が得られそうもない私みたいな一般庶民を相手にする時には、体と顔と特定の部位だけ目当てでやってきて上から目線で接してくる・・・・・・変わりませんよね人間って。いつまで経っても大昔と何も変わらず同じ文化と社会を再現し続けるばっかりで。
「それでさぁ~、君って、いだだだだだだだッ!?」
「おい、俺の連れに何してんだ?」
そうこうしてる間に待ち合わせ時間になって、基本的に時間に律儀な日本人らしい織斑さんが到着して暇つぶし終了~。お疲れ様でしたー。
「な、な、なななんだよアンタ一体!?」
「そりゃ、俺の台詞だよ。お前こそ何やってんだよ? どー見たって変態にしか見えてなかったぞアンタ」
「お、俺が俺に好意を示してくる女の子とどーいう事するかなんて個人の自由だろ!?かか、勝手に俺と彼女の問題に他人が口挟んでくるんじゃねーよぉッ!」
「女だろうと男だろうと、人の心をもてあそぶってんなら死ねばいい」
「ヒぃッ!?」
そして織斑さんなりの人の道って言うか、男道とでも呼ばれて然るべき信念を語って、結果論的に怯えさせてる私の級友。
悪気はなくても一般人相手にはキツい信念ですからね、織斑さんの男道って。
・・・・・・ちなみにですが、ナンパ男さんの気持ちを暇つぶしのため利用してた私自身も、織斑さん基準では死ねばいいカテゴリーに分類されちまう事やってた訳ですが・・・・・・言わなければノーカンなので大丈夫です。
殺人事件は殺された死体が見つからない限り、人が殺されても事件にならない。基本です。
「うっぎゃああああ!? す、すすすスイマセンデシタ―――ッ!!!
ですから、どどどど、どうか命ばかりはお助けをぉぉぉぉッ!!??」
「え? そこまでっ!? ちょ、ちょっとアンタ待っ――ッ!?」
「ひぃぃぃぃえぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!????」
そして、ドドドドドドド――ッ!!と。全力疾走して織斑さんの元から逃げ出していくナンパ男さん。
あまりの逃げっぷりに言い過ぎたかと感じたのか、織斑さんが声かけてるのにも気づかずに遙か遠いお空の彼方まで飛んでくような勢い出して猛スピードで全力逃走。
ラディカル・グッドスタンピードとでも名付けたくなる良い逃げっぷりで御座いました。
「な、何だったんだ? 今のヤツは・・・」
「車自慢したくて話しかけてきた方です。フランス車の豆知識をいっぱい教えて頂きました」
「??? どういう事だ?」
「さぁ?」
そう答えを返して肩をすくめながら、座っていた噴水から立ち上がってお尻の後ろをパンパンと軽くはたいた後、私は織斑さんへと向き直ると。
「では、待ち合わせ時間ちょうどになった事でもありますし、そろそろ出発しましょうか? いつまでも待ち合わせ場所でお見合いしてる仲でもないでしょう? お互いに」
「まっ、そうだな。ここで考えてても無駄なだけだし。まずどこから行くか決めてるか?」
「とりあえず、臨海学校で必要なものは最後に買うことにして、テキトーにそこら辺グルッと回りません? さすがに学校外で待ち合わせして、いきなり男女別で別れてる水着コーナーとかはちょっと・・・」
「たしかに・・・・・・それはちょっと、流石にな・・・」
お互いにうなずき合って納得し合い、臨海学校で必要なもの関係は後でってことにして、二人で一緒に中学時代と同様ショッピングモールを無意味にぶらつく、友達同士の遊びに出かける事になりましたとさ。
―――と、その前に。
「とりあえず・・・・・・織斑先生にご報告を。ポチッと」
先ほどの男性から自主的に教えていただいた個人情報その他を、IS学園警備主任の織斑先生へと密告もとい、IS学園生徒の義務として生徒の安全確保のためご協力申し上げるため携帯電話をピッポッパと。
女尊男卑は、こういう時に便利ですよね。女性の体で、男性を排除するためには条例使えば済むだけですので楽でよろしい。
その為に自分の所属を明かさなかった私が有名になったら、後世から悪女と呼ばれるようになるのでしょうけれども、被害者を守らず被害出てから犯罪者の人権だけは守りたがる“自称”人道主義者の非人道主義者たちからのレッテルなど私は歯牙にもかけてあげる気はございません。キッパリとね?
「おー、しかしよく晴れたよなぁ」
週末の日曜。天気は快晴、素晴らしい。
来週からはじまる臨海学校の準備も兼ねたものだからという事で、俺は女の子からの謝罪と賠償を仕方なく受け入れて、とある女子と二人で街へと繰り出していた。
その女子というのが―――
「・・・・・・・・・」
何故だかいつでも表情があんまり変わらないらしい女の子、異住セレニア。俺の中学からの級友である。
「・・・ところでだなセレニア。あのときは言わなかったが、俺はお前からの謝罪は受け入れると言ったとはいえ、男として――」
「分かってますよ。“女に奢らせるのは男じゃない”のでしょう? 最初から諦めていますので食事は割り勘で十分です。
それ以外の部分で女の私にできそうな事があった時だけ、任せてほしいと思っただけですので気楽にどうぞ」
「そ、そうか。分かってるなら、それでいい・・・」
アッサリと、俺の言おうとした言葉の意図を汲んでくれて、先回りして気を遣ってまでくれてる中学時代からの女友達。
普段は性別を気にする必要なくて楽でいいとは思うのだが・・・・・・こういう時には、なんかちょっと気恥ずかしいな・・・。
なんて言うかこう、言わなくても思いが伝わり合ってる以心伝心の関係みたいなのは、少しやりづらい・・・。
いないとは思うけど、五反田とかに見られて誤解とかされたら面倒くさ過ぎるからイヤなんだよな。
「じ、じゃあ、どこからまわる? 希望があったら聞くぞ」
「そうですねぇー。じゃあ、あそこで」
そう言ってセレニアが指さした先にあった店は――金物屋さん。
包丁とか鍋とか、色々な調理器具とか扱ってる店なわけだが・・・・・・って、オイ。
「・・・お前、そんな料理好きだったっけ・・・? それとも最近になって目覚めたわけ?」
「私に限って、そんなはずないでしょう? 単に母の誕生日が近いので見ておきたかったのですよ」
「あ、なるほど。それなら納得だ」
俺は大いに納得してうなずいて、むしろ良い事だと母ちゃん思いなセレニアのことを褒めてやる。
・・・正直、自分の両親の件がある俺にとっては、親ってのは微妙な存在でもあるんだが・・・・・・ただ、セレニアの母ちゃんはあんまし、母ちゃんって印象は受けづらい見た目の人だったからなぁー・・・。
何度か家に遊びに行かせてもらったときに見た、あの人の見た目は―――うん、まぁ世の中は不思議な事がいっぱいだってことだ。今はひとまず忘れておこう。
んで、店の中を一通り見回った後。
「さて、次はどこ行く?」
「では次は、あそこのお店を」
そう言って店を出た俺たちが、次にセレニアが指さした先にあった店へと向かうと。
【ディスカウントショップ ドンキホーテ・ド・シマ~ヅ】
「・・・・・・」
「なんか最近、鹿児島の方から新規出店してきたそうでしてね? パチモンくさいところが好みでしたので見てみたかったんですよ。潰れる前にですけどね?」
「・・・さいですか・・・」
・・・・・・何というか、日本人のパクリ商法もここまで来たかって感じがして微妙な気持ちにさせられてしまった気がするな・・・。
ただ、品揃えは意外と良くて最新型の万能包丁が欲しくなってしまった。
さっきの金物屋でも、いい鍋があったんだよな。値段も手頃だったし。単なるセレニアの付き添いのつもりだったが思ったより得してしまった。
既にお詫びされてしまった身として、セレニアによる『先日のお礼ショッピングのため付き添い』にどう対応していくのが正しいのか。少し考え始めていた丁度その時。
「ふむ。織斑さんのおかげで必要な情報はあらかた集め終わりましたし、ここまでお手間をかけさせてしまった身として流石に手ブラで帰すというのは道理に悖るというもの。
――という訳ですので、何か奢らせて下さいませ♪ 織斑さん☆」
「・・・・・・おい?」
いけしゃあしゃあと、「してやったり」という悪戯っ子みたいな笑みを小さく浮かべながら言ってきたセレニアに対して、俺は思わずツッコミを入れずにはいられない。今さっきまで思っていた感謝すべきか否かの葛藤返せコラというノリで。
「なに最初と言ってること違えときながら道理とか言い出してんですかね? この我が悪級友さんは・・・」
「それを言われると辛いのですけど、私にも女としての面子とか社交マナーとか色々とありまして。私の顔を立てるためと思って受け入れて頂ければありがたく思う次第です、我が悪しき竹馬の友よ。
それと老婆心ながら言わせてもらえば、女に恥をかかせるのはどうかとおもいますよ? 男の子としてね?」
「く・・・っ!? き、汚ねぇ・・・・・・っ。流石セレニア汚すぎるぜッ!!」
「フフフ・・・“勝敗を決めるのは戦術ではなく戦略だ”・・・誰の言葉でしたかな?」
小悪魔のように勝利の笑みを浮かべてくるセレニアに、俺は男として女に奢らせる事への抵抗意識と、女に恥をかかせるのは男として許せない想い。
そして、セレニア相手に口で言い勝てる自信と実績がまるでない過去の思い出話を走馬灯のように思い出させられながら、何か打開策はないかと周囲に視線をさまよわせて―――あった。
「・・・そうだな。男として女から“お礼の気持ち”として贈られる品を公衆の面前で押し返すのは、相手に恥をかかせる行為じゃあるからな。――その代わり」
俺はニヤリと笑いながら、指をゆっくり持ち上げながら商店街の一角に建つ店へと振り下ろし。
「――俺からも今日の買い物に付き合ってくれたお礼の品のお礼をもらってもらうぞセレニア! 互いにプレゼントを贈り合うだけなら俺だけじゃないからノーカンだ!!」
「ぐ・・・っ。こ、こちらの手を逆手に取るとは卑怯な・・・」
「ふふふ、悪く思うな? 驕り高ぶって油断していたお前が悪いのさセレニア。驕れる者は久しからず、盛者必衰の理なり」
「ぐぬぬぅ・・・・・・」
思いっきり悪者っぽい作り笑顔で言い切ってやると、セレニアもしばらくの間はわざとらしく唸っていたものの、やがて肩を落として小さな笑みを浮かべ直すと。
「・・・・・・仕方がありませんね。それで互いに妥協案とするとしましょう」
「よっし、話は決まったな。なら、そこの店で好きなもん選ぶといい。高いのは無理だが、出来るだけお前が欲しいヤツ買ってやるぞ?
なにしろ、女に奢られるものより安いんじゃ格好がつかん」
「ホントに拘りますね、その点に・・・・・・。とは言えプレゼント選びの方は織斑さんが良いと思ったものでお願いしましょう。
“感謝の気持ちを伝える”とは、そういうものです」
「なるほど、たしかに。それなら俺が選ばさせてもらうけど、後で文句言うんじゃねぇぞ?」
「了解です。
・・・しかし、次からはそういう気遣いは他の方々――特にデュノアさんとかにやってあげるようにして下さいね?
先日の一件でもある家族の事情がまだ燻ってるのは彼女だけなんですから・・・」
「お、応。そうだな・・・じゃあ折角だしシャルの分も買っていってやるとして――どれが良いと思う? 俺、正直言って女の子の好みとかまるで分かんねぇんだけど・・・」
「・・・・・・はぁ・・・・・・私も得意じゃないんですけどね、そういうの・・・今の立場だと断れないから逆に困ります・・・」
そうやってアクセサリー店でセレニアとシャルロット分のプレゼントを購入した後。
俺たちは当初の予定だった臨海学校の準備のため総合ショッピングセンターへと向かい、その場所で千冬姉とか山田先生とかと偶然であって一悶着あって、途中でクレシア先生が乱入してきたせいでドタバタして、いつも通りに楽しい休日のお出かけを満喫して帰宅する旨と相成った訳であるが。
・・・・・・しばらく後に、今日やってたことが周囲の人たちの目には『仲の良すぎる恋人同士がイチャついてる』ようにしか見えなくかったとかで、激しく嫉妬させられまくったと五反田から事細かに詳細説明付きで語られたときには床のたうち回らされることになる未来を、休みが終わった直後の俺はまだ知らない・・・・・・。
中学時代は、弾と鈴の二人も一緒に四人組でばかり来てたから気づかなかった・・・・・・迂闊だった・・・・・・驕れる者は久しからず、油断大敵。以後は気をつけよう・・・。
流石に、弾の口から語られた俺自身がやってり言ったりしてたことを客観視させられたときは、死にたくなるほど恥ずかしすぎたから・・・・・・。
・・・・・・一方で、セレニアの心境はどうだったかというと。
「――ふむふむ。“お鍋”に“包丁”、あと織斑先生に着せるらしい水着にも目を向けていましたが、コチラは時期的に間に合わないから無理として。
織斑さんの誕生日プレゼント候補は、こんなもんでいいでしょう。ああいう特別なイベントを口実にでもしないと女からの一方的なプレゼントはもらってくれない人ですからね~。
やれやれ、プレゼントするだけでも手間のかかる級友を持つと大変です。フゥ」
「あ! お母様、今とってもお母様みたいだったですよ! なつかしいです!
ヘンタイさんにプレゼント送られるときに、いつも同じこと言ってましたです!
ラウラも欲しいです! 毎年お母様がヘンタイさんにプレゼントしてたのと同じプレゼント、ラウラもお母様から欲しいですお母様ッ♪」
「ぐふゥッ!?」
・・・・・・変なところから巡り巡って、ダメージ受けたらしい。
どんな形でも、因果は巡るものである・・・・・・。
つづく
番外編『同じ日の他メンバーたち』
――光あるところに影はある。
戦場で雄々しく敵と戦う武人たちの戦の影にも、彼らを支える忍びたちの活躍があった。
そして、それはISという超兵器が生み出された現代の日本でさえ、変わることはない――。
「では、待ち合わせ時間ちょうどになった事でもありますし、そろそろ出発しましょうか? いつまでも待ち合わせ場所でお見合いしてる仲でもないでしょう? お互いに」
「まっ、そうだな。ここで考えてても無駄なだけだし。まずどこから行くか決めてるか?」
『・・・・・・』
『・・・・・・・・・』
一夏とセレニアが並んで商店街へ向かって歩き出したのと同じ頃。
二人の姿を草陰に身を隠しながら、ソッと見つめ続けていた四つの光る眼があった。
一夏たちが信号が青になって横断歩道を渡りはじめた姿を確認すると、二つの眼は懐から取り出したコンパクトの蓋を開くと角度を微妙に傾けながら、ピカッ、ピカッ、ピカッと三回光らせてから蓋を閉じ直す。
すると、バイブレーションモードに変更しておいた携帯電話が震えだし、通話ではなくメールが届いたことを持ち主に告げる。
『――ボギー1の追跡任務を引き継ぐ。次の観測地点はポイント02を予定』
広場を見渡せるよう、横断歩道の両側にある二カ所の建物それぞれに別れて観測を行っていた相方から、目標の現在位置と移動速度、そして周辺の地図を頭の中に思い描き終えると、次の観測ポイントに指定された場所まで発見されることなく最短距離を通っての移動を開始する。
その際、草陰に潜んで狙撃用スコープから対象を観測していた監視者の姿が白日の下に晒され、長い優雅なブロンドヘアーが風に靡かせられながら―――裏口に回って建物の死角から地面まで飛び降りるという常人離れしたスゴ技をやってのける勇姿が見て取れた。
次の監視員交代ポイントで姿を現した、もう二つの眼の持ち主である躍動的なツインテールと合わせて、四つの眼を持つ二人の少女たちはハンドサインと文明の利器を使って速やかなる尾行を展開しながら、目標の最終目標地点を割り出した後に先んじて合流。
互いの見解と意見を交わし合う、即席の作戦会議を開始させることにした。
「・・・・・・どうでしたか?」
「手は・・・繋いでいなかったわね」
「なるほど・・・・・・では、現時点での判定は情状酌量の余地ありと?」
「ええ、そうね。あたしの見間違いでも白昼夢でもなく、確実に“やった”と確信できる、あたしだけの証拠が得られない限りは一応はね」
草陰から飛び出し、草陰まで移動して少女と少年二人に気取られることなく尾行し続ける二人の少女たち。
一応は国家代表候補生として、エリートとしての肩書きと社会的地位を与えられている彼女たちであったが、今この時の姿だけを見ただけなら百人が百人中同じ答えを結論として出すだろう姿を見せ合いながら会話は進められていく。
「一夏は白だと、あたしの全ての本能と思考が教えてくれているけど・・・・・・それを証拠立てるものはなにもないわ。
あたしたちの心に初めて灯った暗い炎のような灯を消すためにも、一夏が白だという絶対的な真実が必要なのよ。
あたしたちだけに通用して、納得できるだけの事実がね・・・・・・」
―――不審者だと。早く通報して警察呼べと。
百人が見たら百人ともがそう返すであろう言葉を発して、中国代表候補生にして第三世代IS【甲龍】の操縦者・凰鈴音は、どっかの百発百中精力絶倫凄腕スナイパーみたいなことを言い出しながら、真顔でうなずく。
彼女たち二人は、今回の“セレニアと”一夏が休みに二人だけで出かけるという話を、盗聴器とか盗撮カメラとか色々な場所のどこかからか仕入れてきて、念のため二人の後をそっと付けてきて、悟られぬよう付いていくため仕方なく目的地に先んじて到着しておいた。只それだけの気遣いをしただけである。
決して、共通の友人である一夏が男の獣欲に駆られて若さ故のリビドーを暴走させた挙げ句、過ちを犯してしまう危険性を本気で危惧していた訳ではないのだが。
・・・・・・万が一と言うこともある。
念には念を入れて警戒し、次善策を講じておくことは良好な人間界関係を維持していく上で重要なことであり、友人をこの手にかけなくて済むよう寸前で留められる位置にいておくこともまた、彼女たちなりの一夏に対する気遣いだった。
同性であっても、恋する少女の乙女心というものは恐ろしい・・・・・・。
しかし、彼女たち二人は決してストーカーなどではなかった。断じて違う。全く異なる概念が、自分たちには当てはまると確信している。
同じくイギリスの代表候補であり、第三世代IS【ブルー・ディアーズ】を駆る専用機持ちセシリア・オルコットもまた、同じ人への思いを共有する恋敵であり、同じ人への自分たち以外が接触する危険性を排除したい者同士でもある鈴の言葉に深くうなずき同意を返す。
「わたくしたちは“常に”セレニアさんを見守り、守護するため選ばれた聖なる戦士たち。
セレニアさんの魅力的な肢体と、主に大きなお胸を守る使命を負った聖戦士としての義務を果たすため、やむを得なく尾行という手段をとっているだけのこと。
きっと一夏さんも話せば理解してくれるはずですわ。一夏さんとの友情を保ち続けるためにも必要なことだったのだと、言えば許してくれる方だと私は信じていますから」
「その通りよセシリア。一夏は、この程度のことでグダグダ文句言ってくるほど肝っ玉の小さい男に育てた覚えはないヤツよ。きっとあたしたちの大義を理解して賛同してくれるに違いないわ。
だから事情は告げずに尾行してもOKよ。言えば許してくれると分かってる相手に、事前説明は不要」
ものすっげー理論を飛躍させまくった、詭弁家の『“性”戦士』たち。
またの名を『愛の戦士』別名をヤンデレストーカー・・・・・・って、やっぱストーカーじゃん。言い方変えても、肉食ライオンは猫になれない宇宙の法則。
それでも『言い方を変えることが大事』なコミュニケーション術という時代になってから十数年が経過しているIS世界の日本にあって、彼女たちの理屈は通るかどうか分からないけど、とりあえず推し進めていくことにしたらしく今日の行動に至っている次第である。
「あ! そろそろ臨海学校準備のため、水着売り場に移動するみたいだわ! 先回りするわよセシリア!」
「合点承知ですわ鈴さん! セレニアさんの安全を守るため、試着室に先回りして危険物が仕掛けられてないかを確認し、念のため監視カメラと盗聴器と擬装用ダミーを複数個しかけておくんですわね!?」
「フフフ・・・・・・いやぁねぇ、セシリア・・・・・・そんなハッキリ言っちゃうのは日本の文化と流行りに合わないわよ?
今は言い方と気遣いが大事な時代なんだから、“業”に入って“業”に従わなくちゃダメじゃないの・・・・・・ウフフ・・・・・・ぐふふ・・・・・・♡♡」
「あら失礼。わたくしとした事が、なんてはしたない言葉を・・・せめて、“キジ撃ちの場所にも”と言い換えた方が良かったですわね。
聴いた人にストレートに伝わらぬよう、言い方を変えてオホホホ・・・・・・♥♥♥」
二人の白い制服をまとった、黒い少女たちが、『昨日の敵は今日の友』という諺のごとく、『敵の敵は利害が一致する間は味方』という現実論を実行するため、誰にも気づかれぬよう物陰から物陰へと走り去っていくショッピングモール。
公の正しさよりも、感情によって自らの行為を正当化したがる二人に対して、彼女たちの思い人だと、こうなります。
「そこのあなた、男のあなたに言ってるのよ。そこの水着、片付けておいて」
「なんでだよ。自分でやれよ。人にあれこれやらせるクセがつくと人間バカになるぞ」
「ふぅん、そういうこと言うの。自分の立場がわかっていないみたいね。
私が今ここで警備員を呼んで、『暴力を振るわれました』って言ったら、あなたどうなるか分かって―――」
「ああ・・・失礼。それは多分、あなたの方が危なくなるので辞めた方が良いのでは思われますが・・・」
「・・・? 誰よあなた? コレ、あなたの男だったの? だったら躾ぐらいしっかりしときなさいよね」
「違います、不名誉な。――っていうか躾どうこう以前に、あなたはテレビぐらい見るようになった方が良いと思いますよ? 時代に乗り遅れてます。完全に・・・」
「なんですって!? 女尊男卑の時代に女である私がどう時代に乗り遅れてるって言――」
「彼は“織斑一夏”です。
先日に発見されて騒ぎとなった、世界で唯一の“男性IS操縦者”である織斑一夏さん。
たかが女性に生まれただけの貴女と、IS適正者で専用機持ちの男性。政府と国際社会はどちらの機嫌を取るため庇ってくれますかね・・・?」
「・・・・・・へ? お、オリムライチカって・・・織斑一夏って・・・・・・まさか!? まさかまさかまさかぁっ!?
す、すすすすすいませんでしたァッ!! どうかお許し下さい織斑一夏様! どうか追放だけはご勘弁を!!
私にはまだ、年老いた母親と幼い子供と僅かな種籾のためモヒカンに襲われた祖父とローンが残っているんで御座いますぅぅぅぅぅッ!!!!」
「・・・・・・おい、セレニア。どうしてくれるんだコレ? ものすっげぇ俺の方が後味悪くなっちまったじゃねぇか・・・」
「・・・・・・ごめんなさい。コレについては本当に、ごめんなさいでした・・・貸し一つプラスでお願いいたします・・・」
――そして、ほぼ同じ頃の女性用水着売り場では。
「お、織斑先生・・・。わ、私の水着姿、どど、どうでしょう・・・・・・?」
「ああ、悪くはないと思うぞ? ――もっとも、流石にその年齢で学園が教員用に用意だけはしてあった競泳用水着で臨海学校に行くつもりだったと聞かされた身としては、判定基準に困らなくもないのだがな・・・」
「そ、そそそれはもういいじゃないですか! 忘れて下さいっ!!」
「ふん、まあいいだろう。――ところでだ、山田先生。私は私で、どっちの水着がいいと思う?」
「シンプルなデザインの白色と、セクシーなく――ゴホンゴホン。え~と、ではなくて、スポーティーな黒色の水着のどっちがいいと思うか、ですよね?
で、でしたらその・・・し、白の方で・・・・・・(////)」
「―――山田先生。その指さした先にあるのは黒の水着なのだが・・・」
「はうあッ!? し、しまいました! 見ないようにしながら選んだら、つい本音がっ!?」
「まったく・・・・・・他人に対しては気遣いが上手いのに、自分の事にはどうしてこうもミスが多いのか・・・・・・そんな事では――――」
「オオカミさんに襲われちゃっても知らないから無視するから食べちゃっていいってさ、真耶ァァァッ♡♡♡」
「きゃあああああッ!? く、クレシアちゃん!? どうしてここにッ! 呼んでないよね確か!?」
「デカパイある所どこへでも、クレシアお姉さんは必ず現れる!
とゆーわけで久々にハグしようハグ♡ セレニアには劣るけど、大きさでは勝る真耶ちゃんと女同士でオッパイハグハグ♡♡
試着室は女の子にとって秘密の楽園、密室レズハーレムなんだよぉ~♡♡」
「やぁっん! 試着室に二人で入るなんてダメですぅッ! ――アッ♡ そ、そこはダメだって昔から言って・・・・・・ア♡ アッ♡ アアぁぁ~~ッ♪♪♪」
「ホレ! どうだどうだ!? コレがええのかッ♪ コレがいいんでしょうが☆ 真耶ちゃんはイヤらしい女の子やのう~ッ☆♪」
「―――イ、ヤ、ら、し、い、の、は、お前だ!!!
この中年親父バカ後輩ぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッッ!!!」
「ごもっともチゥゥゥゥフゥゥゥゥッ!?」
バッコ――――――ン!!!と。
一夏たちが到着するより先に、こんなコントが発生していた事を本編の住人たちは知らない。本人たちが教える事もない。
こうして影に潜む者たちの物語が、光の下に晒される事なく闇へと沈んで消えていくのが歴史というものである。・・・・・・たぶん。