勇者が断つ!   作:アロロコン

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皆様どうも、社畜にございます。今年の大晦日はバイト先で過ごしそうな今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
いえね、同じバイト仲間の外国人の娘がいきなりお国に帰ってしまいましてね。その穴埋めに奔走している訳ですよ。
社員がやれ!!!

と、愚痴はここまで、本編を、どうぞ




 朝。それは一日の始まりの時間であり、人によっては就寝時間でもある。

 

「…………」

「どうした、タツミ。朝から面が死んでるぞ。アイツに朝まで搾られたか?」

「ヌマさん下品っすよ。何か緊張して寝れなかったらしいっす」

「成る程、お前もチェリーか」

 

 朝からそんなやり取りをするのは、ヌマセイカ、ウェイブの二人であった。

 その間ではタツミがショボショボとする目でぼんやりと宙を見つめている。

 彼は昨晩、エスデスと一夜を共にした仲なのだ。

 中身はアレだが、外側は美人であり、プロポーションも良く、寝るときはかなりの軽装というチェリーな青少年にはキツいモノがあった。

 

(ヌマ・セイカ…………)

 

 ボーッとする思考の中でタツミは昨晩の一件を思い返す。

 はっきり言って規格外だ。何だあの刀。自分の持つ帝具も敬愛する兄貴分から受け継いだモノであり、強いことは知っているが、あの刀を受け止められるとは到底思えない。

 いや、刀がスゴいだけで本人の実力はそこまで高くないのでは、とか現実逃避していたりもしたのだが、剣士として剣は大きく重ければその分扱いも難しい事を思い出し頭を抱えてしまった。

 そう、彼の寝不足はチェリーによる要因が8割。残り2割は、この化け物じみた勇者様への対策を考えての事だったのだ。

 

「あの、ヌマ・セイカさん」

「あー、タツミ?その呼び方は止めようぜ。ウェイブみたいに呼ぶか区切らずに呼んでくれ」

「…………じゃあヌマさん」

「どした?」

「ヌマさんは北方異民族の出身、ですよね?」

「よく知ってるな。そうだが?それがどうかしたのか?」

「…………いえ、何で帝国軍に居るのかなぁ、と」

 

 寝不足のせいかタツミはなかなかに思いきった質問を投げ掛けていた。

 ウェイブもそれを止めようとはしない。どうやら彼も気になるところであったらしい。

 そして、問われた当人はというと、いつも通り死んだ目でコーヒーを啜っていた。

 

「ま、大した理由はないさ。単に帰れる所は無いしな」

「故郷は…………」

「今ごろ雪の中じゃないか?アイツらには他の土地で生きていけって言ったし」

「…………」

「そんな顔すんなよ。だいたい、国は人だ。人が居なけりゃ王も無いし、国もない。アイツらなら生きていけるだろ」

「…………革命軍には入らないんすか?」

「お前なぁ、自分で言ったじゃねぇか。オレはお前らが言うところの北方異民族だぞ?別に帝国が終わろうが存続しようがどうでも良いのさ」

 

 言い切った。

 帝国の人間である二人は絶句である。

 

「ま、本格的にヤバくなれば雲隠れも辞さないな。その時は探してくれるなよ?」

 

 ニヤリとそこで冗談めかして笑うと、ヌマセイカはカップ片手に部屋を出ていった。入れ違いでエスデスがやって来る。

 

「タツミ、フェクマに…………どうした?」

「あ、いや…………」

「ヌマさんの事でちょっと…………」

「大方、帝国はどうでも良い、とでも言ったのだろう?」

「まあ、そっすね」

「単純な話だ。アイツにとって大切なものは存在しない。私と同じく、人としてならば欠陥も良い所だろう」

「欠陥、ですか?」

 

 ウェイブが問い、エスデスが首肯く。

 

「私は闘争に焦がれている。戦いこそが私の全てだ。そして、アイツは空虚だ。雲のような男、と言えば良いか」

「「あー…………」」

 

 何となく二人は納得した。

 確かに、どことなくヌマセイカは雲のような気紛れさを感じる事が二人にはあった。

 比較的長めに留まることはあれども絶対的にその場に留め続けることは不可能だ。

 

「何れアイツは何処かに行くのだろう。それまでに私はアイツともう一度戦う。ふふっ、その時はお前が側に居ることを願っているぞ、タツミ」

 

 

 ■★▲■★

 

 

 街を行く黒髪青年。その背には剣と槍を組み合わせたような槍を背負い、長く伸びた髪を雑に纏めた彼はあちこちを見回しながらのんびりと歩を進めていた。

 まあ、ヌマセイカである。

 特に目的があるわけではない。ただ、まあ、サボりである。

 エスデスはクロメ、ウェイブ、タツミを連れてフェイクマウンテンへと出向いており、他の面々は書類やら、鍛練やらに精を出すなかで彼はのんびりと散歩に興じていた。

 少しは経験無いだろうか?知らない町を歩き回るというのは意外に楽しい。更に暇潰しにもなる。

 それにこの都市は平和という薄皮を一枚剥いだ下は地獄なのだ。他人の不幸は蜜の味。少なくとも第3者として見る分には十二分な見世物と言えるのかもしれない。趣味は悪いが。

 

「外も地獄なら、中も地獄か。危険種に食い殺される方がまだマシだな」

 

 広場で見せしめに殺される者達を遠目に見ながら彼はいつも通りぼんやりとした死んだ目をしている。

 そこに同情のどの字も浮かんではいなかった。

 ウェイブ達に語ったように彼は帝都がどうなろうとも興味はない。

 ただ、冷めたようで何処か甘さを残しているため、自分に甘く、身内に甘く、そして他人には冷たい、それがヌマセイカという男であった。

 いや、それは人として当たり前ではなかろうか。

 とにかく、そんな処刑の光景を後にして、彼はのんびりと大通りを進んでいく。

 その思考は通りの左右に展開する出店を幾つも渡りながら、ついでに革命軍に関することも考えていた。

 タツミは十中八九、黒。証拠は無いが、革命軍に関する話を切り出した際に微妙に期待していた事は明らかだったからだ。

 

「革命軍、ナイトレイドねぇ………」

 

 興味の有る無しで聞かれれば興味はない。

 だが、周りの事を考えると少し悩むところではある。

 懸念事項はエア達3人娘やスピアの安全面。

 エスデスに揶揄されたように、拾ったのだから、自分で面倒見るのは当たり前だ。

 問題点は、今は自分やエスデスの傘下に居るためにちょっかい程度で済んでいるが、もしもどちらか或いは両方に何かあれば顔立ちの整う少女達の行く末など慰み物以外に無いだろう。

 さすがにそれは気に入らない。というより、気分が悪い話だ。

 

「革命軍、か…………いけるか?」

 

 一つ言っておこう。

 革命軍は託児所ではない。

 

 

 ★■▲■★

 

 

 翌日。イェーガーズの割り当てられた部屋では、折檻を食らうウェイブの姿があった。

 というのも、タツミを逃がした罰である。

 罰の内容は、パンツ一丁で石抱き、下には尖った波形の板がありそこに正座、更に火の点いた蝋燭だ。

 ドM歓喜の責め苦は暫く続き漸く終わる。

 

「そ、そういえば、ヌマさんは何処に?」

 

 倒れ伏したウェイブが問う。先程まで居た筈の彼の姿は忽然と姿を消していたのだ。

 

「さてな。存外、アイツは自由に動き回る奴だ。まあ、明日には帰ってくることだろう」

 

 

 ★■▲■★

 

 

「…………えっきし!…………?」

「師匠、風邪ですか?」

「いや、そんな筈ないんだが…………どうなんだろうな」

 

 夜道を歩く、ヌマセイカとスピアの二人。そして彼らに引っ付くように辺りを見渡しつつ進む3人娘。

 彼らはそれぞれにフル装備の状態だ。

 エアとルナの二人は護身用の特別製なナイフ。蹴りの得意なファルにはシルバーのメタルブーツ。

 そしてスピアの手には、ヌマセイカ愛用の槍があり、代わりにヌマセイカの手には塵外刀があった。

 ここはフェイクマウンテンから少し離れた森の中にある道。足場が悪い。

 

「ヌ、ヌマセイカ様!?ま、前!前見てください!」

 

 焦ったように声をあげたエアが指差す先。そこには

 

「巨人?」

 

 武骨な、いや、醜悪とも取れる、胎児のような半分機械の巨人が出現していた。

 恐らく危険種討伐数だけならば帝都でもトップクラスであるヌマセイカすらもその姿は見たことがない巨大さ。

 

「…………デッカイな」

「いや、師匠、危機感薄すぎませんか?」

「見た感じ、特殊な能力は無さそうだしな。デカイだけなら単なる的だろ」

 

 いや、それはおかしい。

 弟子と従者はジト目を彼へと向ける。

 本来、その大きさこそが厄介なのだ。蚤に刺されても痛みを感じないように、自分より大きく頑強な相手はそれだけで強敵と言える。

 

「…………ま、やりようにはよるわな。帝具があるならその特性で勝てるだろうし、無いなら無いでやりようは幾らでもある」

 

 あんな風に、な。とヌマセイカが指差す先では、件の巨人が倒れ伏すところであった。

 

「あんな風に最初にバランスを崩せばでかさは関係無い。後は生物の急所でもある目とか狙えばダメージは十分だ」

 

 そのまま、急ぐぞ、と四人を抱えるとヌマセイカは夜空へと飛び出した。

 

 

 ★■▲■★

 

 

 それは唐突に現れた。最初に感知したのは帝具によって五感が強化されたレオーネと、糸の結界によって広範囲索敵をしていたラバックの二人。

 彼らはある一点へと視線を止めて微動だに出来ない。特にレオーネはその頬を冷や汗が伝っていた。

 

「姐さん?」

 

 タツミが問うも答えは無し。

 次に感知したのは元暗殺部隊として鍛えているアカメ。彼女もラバックやレオーネと同じ方向を向き帝具の鯉口を切りいつでも抜刀できる体勢となる。

 そして、それは来た。

 突如、大地を砕く盛大な破砕音と共にナニかが落ちてきたのだ。

 そこでアカメの動きは速かった。

 

 一斬必殺 村雨

 

 斬りつけると同時に刀身に宿った呪毒が相手へと流れ込み、心臓に到達すると死に至る、という帝具だ。

 そこにアカメ本人の技量も合わさり、神速の抜刀術による死の刃が舞い上がっていた土煙を巻き上げ───────止められた。

 刀身を伝って手に伝わる硬質な感触。

 

(止められた…………!)

 

 追撃を避けるために後ろに飛び下がる。

 その間にもナイトレイドの面々が警戒した様子で、周りを取り囲んでいた。

 果たして

 

「ちょ、師匠!跳ぶなら跳ぶって言ってくださいよ!舌噛むところでしたからね!?」

「と、というか人四人も抱えてあんなに跳べるものなの?」

「…………主様、やっぱり、変」

「み、皆!言い過ぎだよ!ヌマセイカ様は私達のために…………」

 

 土煙が晴れて現れるのは五人の人影。

 その内一人は、タツミの顔見知りであった。

 

「ヌマ・セイカ…………!」

「よお、タツミ。お前さん、やっぱりナイトレイドだったんだな」

 

 四人を下ろしたヌマセイカは塵外刀を地面に突き立てるとそうアッサリと挨拶を行うのだった。




さて、ナイトレイドの初邂逅となりましたが、どうなりますことやら

…………何となくスタイリッシュを主人公にしても良かったかな、と思う今日この頃
パーフェクターの万能性半端無いですし、体鍛えて、専用装備を揃えればワンチャン…………ありませんかね?
では、次でお会いいたしましょう
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