勇者が断つ! 作:アロロコン
私は、開けっぱなしで放置していたココアピーが中りました。お腹痛いです
キャベ○ンのお世話になりつつ、本編をどうぞ
「アデデデデデ!?ちょ、嬢ちゃん!?か、髪は止めてくれ!?」
「キャハハハハ!おじちゃんおもしろーい!」
少女を肩車したヌマセイカは、その無駄に伸びた髪を引っ張られ悲鳴をあげていた。
その隣では鴛鴦夫婦がのろけており、青年少女がおいてけぼりを食らっている。
「ぬ、抜ける…………!オレの頭皮が…………!」
「こら、ローグ!副隊長から降りなさい!」
「パパ!だっこ!」
満面の笑みでボルスに抱きつく少女を見送りヌマセイカはその場に座り込む。そして念入りに髪の毛を確認していた。
「では皆さん。お仕事頑張ってください」
「ヌマおじちゃん、またねー!」
「…………おー」
ボルスの妻子を見送った面々は、三者三様なれども、チラッと先程まで子供の元気に振り回されていたここ最近の残念担当へと目を向ける。
「チクショー…………抜けたか?つーか、おじちゃんってなんだよ。オレまだ十八なんだがなぁ」
ブツブツと呟くヌマセイカ。老けてるのか?等と首を傾げていたりする。
「あ、あのすみません、副隊長。娘が粗相を…………」
「ん?あ、いや、子供はあれぐらい元気な方が良いだろ」
「し、しかし…………」
「子供を構ってやるのも大人の責務だろ。子は宝だ、大事にする方が当たり前だろ」
「…………」
「それに、子は鎹とも言ってな。まあ、夫婦が共にあることにも必要だったり、な?」
そこからも朗々と語っていくヌマセイカ。常にも増してペラペラとよく回る舌である。
流石にそんな彼の様子から察することができるだろう。
(((子供、好きなんだ)))
何故だか妙にホッコリする3人。
そして、この前のナイトレイドの時から何故か生暖かい視線をもらうことが多くなったヌマセイカは顔をしかめた。
「何だよ、その目。止めろ見るんじゃない」
らしくないな、と頭を掻いてヌマセイカはそっぽ向いてしまった。
そこを追撃するのは
「副隊長、親戚のオジさんみたいでしたよ」
「おう、クロメ。オレの精神削って楽しいか?うん?」
「…………わりと」
「ほ~う」
頷いたクロメ。それが間違いだ。
ギュッと握られた両手。
たったそれだけの動作だったが、危機察知に優れたクロメは反射的に逃げ出した。
投薬によって強化人間となっている彼女、その身体能力や反射神経は常人のソレを遥かに上回る。
のだが
「残像だ」
「!?」
ギャグ補正なのか、ヌマセイカは彼女を超える身のこなしにより、見事背後をとって見せた。
戦慄するクロメ。そして
「あぅうううう~~」
「O・SI・O・KI・☆だ」
蟀谷を左右から拳で挟んでグーリグーリ。
黒髪も相俟ってか二人の姿は兄妹にも見えることだろう。
「どうした?ウェイブ。物欲しそうな顔しやがって」
「は?」
まさかの飛び火した。
ブレるヌマセイカ、解放されるクロメ、呆然とするウェイブ。
「ホラよ」
「アッーーーーーーー!?」
宮殿に野太い男の声が木霊した。
▽▲▽▲▽▲▽▲
「はあ?アイツが帰ってこない?」
夜遅く、夕食も湯浴みも終わったヌマセイカのもとへとやって来たランの報告に彼は眉をひそめた。
アイツ、とはエスデスの事である。
何でも夜の捜索、もとい散歩に出てそのまま帰ってきていないらしい。
「何処を見に行ったんだ?」
「山のほうですね。タツミもちょうどそちらの方で消息を絶ちましたから」
「…………」
ランの言葉にヌマセイカは露骨に顔をしかめ、頭を掻く。
危険種に殺られた、とは思わない。
むしろ、超級危険種ですらエスデスに勝てるか怪しいところなのだ。何より、将軍クラスに勝てる危険種が居るならば有名になっている。
「帝具、か…………」
その発想は自然と出た。
対人戦でも殆んど手傷を負わないエスデスだ。殺されるとは考えにくい。ナイトレイドが総出で襲い掛かった、とも考えられるが、少し前に会った彼らはヌマセイカから見て粒揃いだが、勝てるかは微妙といった見立てのため、それもない。
となると、残るのは帝具による何かに巻き込まれた、といった所だろう。
「ラン、お前の知識のなかに移動系の帝具は幾つある?」
「私としても全容は把握していませんから、何とも。しかし48の帝具全ての記録があるというわけでもありませんから、恐らくは…………」
「存在する、か」
これまた再び考える。
何故、珍しくもこの男が頭を働かせているかと言えば、自分の役職のせいであった。
“副隊長”である。認めてはいないが副隊長なのである。
そして、隊長の居ない今、上と面談するのは副隊長の仕事であった。
(デブとの顔合わせとかごめん被る…………!)
内心、これ一色である。
あの不摂生の塊でありながら、その実、中身はギッチギチなオネストがヌマセイカは心の底から苦手であった。
何より、搦め手ばかり使ってくる相手など、面倒くさい。ソレならば正面から武力行使された方がマシである。
そんな感情が読み取れたのか、ランは苦笑いして口を開く。
「大臣との折衝役は私がしましょう」
「良いのか?」
「ええ、私は元々文官ですからね。目的達成にも権力は必要ですから」
「…………そうか。んじゃ、たのむぜ?」
「お任せを」
そこから、二、三言今後の打ち合わせを終え、この密会は幕を閉じる。
部屋から出ていくラン。その背にヌマセイカは最後言葉をかけていた。
「復讐したいなら止めないが。無駄死にだけはするんじゃねぇぞ」
「!…………」
いつもの柔和な笑みが消え驚いた顔でランは食わせ者な副隊長を見る。
当の本人は今は背を向けておりその表情は窺い知れないが、何となくいつも通りのヘラヘラとした笑いは浮かべていないことは容易に想像できた。
「…………はい」
自分が今、どんな顔をしているのかは分からない。
ただ、どうにか一言だけ短く返事を絞り出し、ランは部屋を出た。
夜の宮殿は灯りがあれども静かなものだ。
そんな静寂の中でカツカツと自分の足音が嫌に耳につく。
思考はあの男についてだ。
この部隊に所属する前、当然ながら候補者の情報は集めた。その中にはエスデスの事やヌマセイカの事も当然あった。
どちらも書類上ならば、特筆すべきはその武力の高さ。正に一騎当千、万夫不当。
そして、面と向かって話してみれば他にも様々な発見があった。
エスデスが意外に乙女であることを知った。
ウェイブが存外人を見ており、観察眼に長けていることを知った。
クロメが異常なほどに仲間を大切にしていることを知った。
ボルスが妻子持ちであり、苦悩を抱えて生きていることを知った。
セリューが正義にとりつかれていることを知った。
そして、ヌマセイカが常に反して食わせ者であることを知った。
「…………つい、目的を忘れてしまいそうになりますね」
ふと、見上げた窓の外の月。
煌々と輝く、その光を暫く眺めランは王宮の奥へと消えていくのだった。
ヌマさん、おじさん認定食らいましたね。
でも、仕方ないんですよ。少女の笑顔のためならば野郎のプライドその他諸々、ゴミ箱に捨てられたガチガチのティッシュ以下の価値しかありませんから(熱弁)
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内容によっては例えば質問などにはなるべく返しますのでその点、よろしくお願いいたします
それでは、次話にてお会いいたしましょう