勇者が断つ!   作:アロロコン

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今年度も残すところ二日となりましたね、はい
今日も明日もバイトな私。新年をバイト先で過ごすとか嫌ですけど…………夜遅くのほうがお客さん多いんですよねぇ…………
コンビニでホットスナック等で済ませたほうが安上がりでしょうに
そもそも十時以降に食べると太るとか何とか
お陰で私もデブの道に片足突っ込んでる始末ですよ!
仕方ありませんよね、フォンダンショコラ美味しいです

そんなこんなで、本編を、どうぞ


十三

 エスデス消失事件(ヌマセイカ命名)が起きて数日間、それは命名者にとってあまりにも幸福な時間だった。

 それはもう、我が世の春が来た、と言わんばかりの天国っぷりだ。

 オネストへの折衝はランに丸投げし、彼が持ってきた命令書と資料を片手に作戦を練り、危険種討伐や悪人捕縛等、とにかく、普通?の警察仕事に精をだし、ドSからのストレスもない。

 このまま帰ってこなければ良い、と何度思ったことだろうか。

 えてしてそういう思考はフラグとなるのが常である。

 

「ここ数日の業務は滞りなかったようだな」

「…………まあな」

 

 椅子に座るエスデスを見ながら、ヌマセイカはここ数日の天国を振り返っていた。返事もおざなりだ。

 

「休暇はどうだったんだ?」

「ふむ…………悪くはなかった。タツミと共に南の島に居たのでな」

「…………そうかよ」

「お前も随分と羽を伸ばしていたらしいが?」

「鬼の居ぬ間に洗濯、て言うだろ。怖い怖い鬼が居ないなら羽を伸ばすのも当たり前だ」

「ほう、鬼、か…………」

「ああ、鬼だ」

 

 第三者から見れば、この空間が歪んでいると錯覚しそうなほどの濃密な覇気のぶつかり合い。

 

「失礼しま…………ッ!」

 

 その犠牲となったのは報告を持ってきたラン。圧倒的な覇気のぶつかり合いに自然と喉が鳴り、頬を冷や汗が伝っていく。

 同時に、自分の隊長たちの化物さ加減を改めて理解する事となる。

 

「よお、ラン。どうした?」

「…………報告です。東のロマリー街道沿いにてアカメ、マインを含めたナイトレイドと思われる一団が目撃されました」

「…………そうか」

 

 その報告に立ち上がったエスデスは帽子を深く被り直して歩み出す。

 

「────イェーガーズ集合だ」

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「絶対罠だろ」

 

 馬を走らせぼやくヌマセイカ。彼の前を行くのはイェーガーズの面々、先頭はエスデスだ。

 そして、彼の懸念も最もだった。

 これまで、マトモに影すら捉えることが不可能だったナイトレイドが途端に姿を見せる。

 確実ではないだろうが、それは可能性的にこちらを殺せる算段がついているということに他ならないのではないか。

 それは当然ながら、ランやエスデスも考え付いている。

 その上での進軍だ。罠だろうと何だろうと踏み潰す心算らしい。

 何となく胸の内に浮かんだ嫌な予感が消えないヌマセイカは自然とその表情を引き締めた。

 いざとなれば、と握る塵外刀の柄を更に強く握りしめ固く誓う。

 人間とは何もない、と自分で思っている者こそ他人に依存し、そこから価値を見出だそうとする。

 彼の決意はソレに近い。北方で、一人殿として残った時のように。

 特に深く考えることなく、一人、捨て石となることだろう。

 他人が死にその周りを悲しませることを嫌うこの男は、常に自分の命は勘定の外だ。

 言わば、端数。いつでも切り捨てる蜥蜴の尻尾切り。しかも尻尾自体が自分の意思をもって切り離れていく機能付き。

 チリリ、と空気が鋭く尖る。

 面々がチラリと振り向けば、そこにいたのは、見慣れた、しかし初めて見る副隊長の姿があった。

 いつも通りの死んだ目だが、その瞳の奥には冷たく、しかし猛るような炎が揺らめいているように見えたのだ。

 

「─────」

 

 両軍衝突まで、後僅か

 

 

 ▽▲▽▲▽▲

 

 

 翌日、ロマリー街道噴水広場にて集合したイェーガーズの面々。

 

「やっぱ罠だって」

 

 噴水の縁に座り、クレープをがっつくヌマセイカはそう切り出した。

 聞き込みをした結果、ナイトレイドは二手に分かれているらしい。

 だが

 

「誘いだな」

「誘いですね」

「だろ?」

 

 作戦立案や人間観察に秀でた3人の意見が一致する。

 

「どうする?帰るか?」

「罠を正面から叩き潰すぞ」

「超脳筋じゃねぇか」

「お前好みでもあるだろう?」

「鬼と一緒ベプッ!」

「鬼が、何だって?」

「…………食い物を粗末にすんな」

 

 顔面にベットリとついたクリームやらを噴水の水で流し、ヌマセイカは黙りこむ。次茶々を入れると確実に、エスデスの片手にある辛し入りのケバブを顔面にシュートされてしまうだろう。

 

「私とヌマセイカの二組に分けるぞ。セリュー、ランは私と来い。ボルス、クロメ、ウェイブはヌマセイカにつけ」

 

 このチームの良い点は締めるところを確りと締める点だろう。

 

「良いか、お前たち。無駄死には許さんからな。相手の数が多いならば退け。ヌマセイカ、分かっているな?」

「リョーカイ。ま、やれるだけ殺るさ」

「よし。では、帝都に仇成すネズミの駆除だ。着実に追い詰め仕留めて見せろ!!!」

『了解!』

 

 

 ▲▽▲▽▲

 

 

 駆ける駆ける、四騎の騎馬。

 

「んじゃ、お前ら。確認だ」

 

 先頭を走るヌマセイカがポツリと切り出した。

 

「いいか?今回の第一はナイトレイドの討伐─────じゃねぇからな?」

 

 まさかの副隊長が戦闘放棄である。何か言いたげな周りだがソレを手で押し留め言葉を続ける。

 

「生き残れ。例え意地汚く見えても、往生際が悪くても、とにかく生き残れ。死ぬ覚悟じゃねぇ、最後まで生にしがみつけ。死にそうなら死ねない理由を思い出せ」

「「「…………」」」

「そして、これが一番重要だ。いざとなれば、──────」

 

 最後のその言葉に、3人は目を見開いた。

 何かを言う前に目の前にあるものが現れる。

 そう、それは先程までのシリアスな空気を見事にブレイクしていく代物。

 

 案山子であった、しかもムキムキである

 

 その大胸筋には池面の文字が書かれていた。

 

「「「「…………」」」」

 

 明らかな罠だ。

 無駄口は叩かない。ハンドサインで一斉に馬から降り、四人はゆっくりと近づいていく。

 そこを狙うはピンクの髪をした少女。

 狙うスコープ、その銃口の先には、仲間の面影を残す少女。

 

 浪漫砲台 パンプキン

 

 精神エネルギーを衝撃として撃ち出し、ピンチになるほどその威力は増していく。

 狙撃だけでなく連射もこなせる万能銃。メンテナンスに手間が掛かるがソレさえクリアすれば戦闘向きと言える。

 

(せめて、一発で…………‼)

 

 引鉄に指をかけ、一つ息を吐く。

 そして、それは放たれた。

 一直線に突き進んでいく光のライン。人体程度ならば容易く撃ち貫ける一撃だ。

 

「嘘でしょ!?」

 

 狙撃手、マインは驚きの声をあげて思わず立ち上がる。

 クロメの話は、彼女の姉であるアカメに聞いていた。薬による強化人間である、と。

 だが、その回避は明らかに人の範疇を逸脱している。

 仕留め損ねた。しかし、ナイトレイドの作戦は進行中だ。

 突如、案山子が膨張した。中から飛び出してきたのは、棍棒を持った角の生えた男。

 狙うは狙撃によって体勢の崩れたクロメだ。

 

「危ねぇ!」

 

 そこに割り込むウェイブ。帝具の鍵である剣を盾にクロメの身代わりとなり

 

「…………」

 

 盛大な金属音が辺りに響き渡る。

 

「…………ッ!ヌマさん!」

「割り込むなら万全に、な」

 

 塵外刀を地面に突き立てギチギチと棍棒を抑えるヌマセイカは空いていた右手で拳を握る。

 

「歯ァ食いしばれェ!!!」

 

 ゴッ、と振り抜かれた鉄拳。

 まさしく鉄塊で撲られたに等しい一撃。それによって角の生えた男の頭蓋骨が陥没し、殴り飛ばされていた。

 

「やった!流石ヌマさんだぜ!」

 

 歓声をあげるウェイブ。だが、そこまで甘くはない。

 

「逆再生かよ」

 

 ボコボコと殴られた部分が再生していき、男は立ち上がる。

 

 電光石火 スサノオ

 

 彼は帝具人間だ。セリューの持つコロと同じく生体型帝具であり要人警護をその目的としているため全体的にポテンシャルが高い。イケメンである。

 当然、人では、いや完全な生き物ではないため、核を破壊されなければ再生し続ける。

 

「狙撃は失敗、不意打ちも意味無し、か。さすがは北方の勇者だな」

 

 そして現れる暗殺集団ナイトレイド。

 

「!これは全員、ですね。東はフェイクだったみたいだね」

「となると、援軍は期待できんな。アイツ相手にどれだけ足留めできるか知らんが、距離がある」

 

 ナイトレイドはこの場には6名。対してイェーガーズは4名だ。今のところ数では不利。

 まあ、その数を欠片も気にしない者が一人いるが、とりあえず人数差がある。

 ナジェンダが義手を鳴らして指を指す。

 

「ボルス、クロメ、お前たちはイェーガーズの中でも標的だ。狩らせてもらおう」

 

 標的。その言葉に、クロメとウェイブがボルスへと視線を送る。

 

「数えきれない程、私は人を焼き殺してきた…………」

 

 言いつつ、ボルスは自身の帝具へと手をかける。その動きに一切の迷いはない。

 

「刺客を向けられることも覚悟してきたのだけど──────」

 

 脳裏を過るは家族の顔。その事実が力を与えてくれている。

 

「私は、死ぬ訳にはいかない!!!」

 

 その姿にヌマセイカはニッと笑みを浮かべる。

 同時にその頭も作戦を弾き出してくる。

 

「ウェイブ、お前にはインクルシオの相手を任せる。抑え込め」

「う、うっす!」

「クロメ、八房発動だ。先ずは数の有利を捻り潰す」

「うん」

「ボルス、お前は距離を測りつつ範囲攻撃で機動力を削いでやれ」

「はい!」

 

 短く、端的に指示を飛ばしたヌマセイカは彼自身も前線に立つと、全身から濃密な殺気を放ち始めた。

 牽制であるが、それだけでも三流ならば気絶しそうな殺気の奔流。

 これこそ、北方にて北伐を一人で食い止め続けた化物の面目躍如である。

 誰よりも最初に先陣を切り、敵を刻む、北の勇者。

 

「塵外刀“釵の型”」

 

 彼の戦術は【開幕ブッパ】であった。




流石ヌマさん汚い。相手との会話など丸々踏み潰していくスタイル
そこに痺れる、憧れるゥ!

唐突ですが、ここでこの作品の塵外刀に関する設定擬きを載せます。サーヴァントステータスはもう少しお待ちくださいませ

吸獣斬界 塵外刀
【キュウジュウザンカイ ジンガイトウ】
ヌマセイカが独自に造り出した、帝具擬き。
彼以外が触れると、素材となった危険種の怨念によって祟り殺される
全長は九メートルあり、刀身が柄よりも長めに作られている。
その大きさ故に重量もそれなりだが、鍛えた彼にはちょうど良い重さ。
切れ味に秀でており、岩を豆腐のように切り捨てる。

奥の手 塵外刀変化
吸収した危険種の能力を刀に付与しその見た目を変えた状態
メモリー&ストックという方式であり、一度でも吸収すればその能力は自由に引き出し扱うことができる。
ただし、銃の弾丸のように変化を使う回数分他の危険種を吸収しエネルギーを溜めておかねばならない。

今後の展開次第では改善の可能性有り
何せ、最大の特徴は変化ではなく、その進化性だからだ。
見た目は今のところ、原作最初の塵外刀のまま。今後、打ち直せば変わるかも?

とまあ、こんな風に簡易的なモノですね
では、皆様次のお話でお会いいたしましょう

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