勇者が断つ!   作:アロロコン

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明日は大晦日ですね。どうにも年を取ると新年が嬉しくなくなる今日この頃いかがお過ごしでしょうか?

今回は、いつもの面白くもないギャグはあまり無いですね

という訳で、本編を、どうぞ


十四

 軋み響く鎖の音。元の大きさへと戻り、近接武器ながら圧倒的な射程を誇る塵外刀の刀身は柄分割によるリーチ延長の状態で、正面を思いきり薙ぎ払っていた。

 完全に不意を突かれたナイトレイドだったが、彼らも歴戦の暗殺者だ。間一髪でその一撃をかわしていく。

 その間にイェーガーズの3人は戦闘準備を進めていた。

 

「グランシャリオォオオオオオ!!!」

 

 大地に剣を突き立て、魂で呼ぶ鎧の帝具。

 

 修羅化身 グランシャリオ

 

 インクルシオの後に出来た帝具とされており、同じく鎧型の帝具だ。

 こちらは使用者に対する反動などを削ったモノであり、インクルシオのように成長性は無いがその分使いやすい仕上がりとなっている。

 仕掛ける相手は指示通り、インクルシオ。

 

「ゼァッ!」

 

 放たれる剛速の蹴り。空中に浮いていたインクルシオは直撃を避ける事は出来たが踏ん張ることなど出来る筈もなくガードの上から蹴り飛ばされる。

 

「皆、来て」

 

 こちらはクロメ。八房を掲げ、能力を発動。地震と紛う揺れが起きて7体の屍人形が姿を見せた。

 人型はそのなかで5体、残り2体は明らかに危険種のソレ。

 

「ねぇ、見てよお姉ちゃん。今ではこの子も私のお人形なんだよ?」

 

 超級危険種 デスタグール

 

 インクルシオの素材となっているタイラント等と並んで伝説クラスの危険種だ。

 その見た目は巨大な骨の龍。屍人形でありながら、その体からはすさまじい威圧感を放っていた。

 それだけではない。ウェイブに呼応するように、猿型の危険種がインクルシオへと襲い掛かる。

 

 特級危険種 エイプマン

 

 大型の猿のような見た目の危険種だ。オツムはアレだが力が強く、耐久力も特級というだけあって申し分無い。

 これはクロメの判断だ。即ち、ヌマセイカからの指令である、数の有利を潰すためのモノ。

 そんな数的有利を作り出す八房の屍人形だが、その中にふと、ヌマセイカは知った顔を見付けた。

 ドーヤという名の女ガンマン暗殺者である。

 とはいえ、親しいか、と問われれば首を振り、屍人形にされたことも特に気にはならない。

 死人にまで心を割くほど彼は人情に溢れてはいないのだ。

 ドーヤの場合は過激派に送り込まれた刺客であり、ヌマセイカとは折り合いが悪かったというのも理由に挙げられる。

 故に一瞥したのみで、ヌマセイカは止まらない。

 引き戻した塵外刀をもとに戻して高々と掲げ、一足飛びにてボルスに襲い掛かった、アカメへと肉薄していく。

 

「塵外刀“瀑布”ッ!!」

「ッ!?」

 

 名の通り、膨大な水が降り注いだかのような超重量の一撃。

 本来スピード型のアカメにとっては反応することこそ出来たが、受け止めることなど不可能であり、木っ端の如く弾き飛ばされてしまう。

 

「アカメッ!」

 

 地面に叩きつけられる直前に割り込むは黄金の影。

 

 百獣王化 ライオネル

 

 それがレオーネの帝具だ。装着者の体を獣とし、身体能力や五感を強化する。奥の手は“獅子は死なず”。所謂リジェネレーターと呼ばれる超治癒能力だ。

 今も、アカメを受け止めた反動で負った細かい擦り傷が再生していく。

 

「イタタタ…………アカメ、大丈夫かい?」

「あ、ああ。すまない、レオーネ」

 

 返事をしながらアカメは未だに痺れ震える両の手から目を逸らせない。

 ソレほどまでに重い一撃だったのだ。

 

(指先の感覚が薄れてる…………この戦闘で回復できるか…………)

 

 そこが気掛かりだった。

 剣術は腕前が上がれば上がるほど、繊細な技術を指先で行なう。何より、握力の要だ。

 

「どうした?来ないのか?」

 

 肩に武器を担ぐという余裕な態度のヌマセイカ。

 だが、彼に対してレオーネもアカメも切り込めずにいた。

 一対二という数的有利、屍人形と違い心臓が有り、村雨で倒せるという点。

 それらを考慮した上で彼女たちは攻めあぐねていた。

 

「ボルス!」

「“岩漿錬成”!」

 

 唐突にブレたヌマセイカの姿。その残像を突き破り飛び出してくるのは極炎の塊。

 

 煉獄招致 ルビカンテ

 

 火炎放射器の形状の帝具であり、その炎は一度燃え移ると水でも消すことができない。

 岩漿錬成はそんな炎を球状に圧縮して撃ち出し、遠距離を攻撃するという奥の手。

 そして彼の防備に着くのは、透明な盾を備えた護衛と巨大バタフライナイフを武装としたバン族の二人組だ。

 このままヌマセイカの相手をする覚悟を決めていた二人は思わぬ横槍に動きが鈍ってしまう。

 その間に件のヌマセイカは別の場所へと動いていた。

 イェーガーズの面々は気付かれぬように全員で大きな三角形を描くように散開している。その中央にヌマセイカが陣取り、それぞれ危なくなれば横やりを入れるという形だ。

 彼が次に突っ込んだのはウェイブの場所。共闘に回っているエイプマンが思った以上に脳筋猿であるため、意外に繊細に戦うウェイブの動きを阻害していた為だった。

 

「ウェーイブくーん、あーそーぼー!」

 

 そんなふざけた事を叫びながら、インクルシオの脇腹へと叩き込まれる流星のような飛び蹴り。

 

「ガッ!?な、何が…………」

 

 そのまま岩壁へと叩きつけられたインクルシオは眩む視界に最悪の敵が映ることに気付く。

 巨大な刀に、風に揺れる長い黒髪、死んだ目をしたナイトレイドはおろか、革命軍でも特記事項の一人。

 

「ヌマ・セイカ…………!」

 

 この状況は不味い。

 彼は自分の未熟さを嫌というほど知っている。

 いってしまえば、エイプマンとウェイブ二人相手ですら攻めあぐねていたのだ。

 それほどまでに、屍人形の耐久力とグランシャリオの防御力は侮れなかった。

 そこに、素手ですら化物クラスのバグが割り込んでくるとか、悪夢という他無い。

 

「くっ…………!」

 

 インクルシオの差し出された手に光が集り、一本の紅い槍が現れる。

 副武装 ノインテーター。防御に秀でた鎧型の帝具の武装に相応しい強度を誇る槍だ。

 通常なら、ソレこそエイプマンやグランシャリオを相手取るならば十分に機能を果たしてくれる。が、今回は少々分が悪い。

 実力云々の問題ではなく、もっと根本的な所。即ち、槍の利点、リーチのアドバンテージだ。

 ノインテーターのその大きさは一般的な槍と同程度。

 対して塵外刀は柄の長さですら、成人男性二人分と少し。刀身に至ってはソレよりも長い。

 そして、日本刀は切るだけでなく突く事も可能な万能武器。引っくり返せば打撃も可能。

 塵外刀もでかくはあるが、強度は折り紙付きであり、同時に刀だけでなく、槍や矛、斧、棍棒、と様々な武器の扱いを当てはめることが出来る。

 まあ長々と語ったが、端的に言って

 

「ハッハーッ!」

「ぐおあ!?」

 

 相性が悪かった。

 槍を折られこそしないが、その縦横無尽に振るわれる塵外刀に全く距離を詰められないのだ。

 武器の宿命として、周りが岩場であるため動きが制限されそうなものだが、塵外刀の刀身にそれは意味がない。

 

「ホラホラ、頑張らねぇと、胴体が上と下で泣き別れるぞ!」

 

 荒々しい言葉と共に振るわれるのは、刀身──────ではなく、分裂した柄の部分。

 塵外刀はその刀身にこそ目が行きがちだが、柄とてヌマセイカが一から製作に携わっているのだ。振るわれた柄は鞭のようにしなり、その先端のヘッドスピードは目視の限界を容易く超える。

 インクルシオは寸前で勘にしたがってその場を飛び退いていた。

 そして、彼の先程まで立っていた地点が、文字通り爆散した。更に、

 

「“グランフォール”!!」

「…………ッ!?」

 

 避けられても問題はなかった。

 そも、数の有利があるのだから一対一に拘る必要もない。

 逃げられることも想定内、その為に足元を狙っていたのだから。

 上空からのウェイブの蹴りにより叩き落とされるインクルシオ。その先に待つのは力をためるエイプマン。

 背を強かに撃ち抜く、剛腕。

 白銀の鎧は崩れた岩の先へと消えていった。

 

「さって、追撃を…………お?」

 

 盾に回された塵外刀に響く重い手応え。

 

「超級危険種相手ならもう少し掛かると踏んでたんだがな。甘かったか」

「貴様、本当に人間か?」

「生憎と、これでも人間、さ!つーかイメチェン?」

 

 ヌマセイカに襲い掛かったのは角は黒く、髪は白へと変わったスサノオ。

 奥の手“禍魂顕現”である。

 これはコロの奥の手“狂化”と同じものだ。

 違う点はコロが内部エネルギーを燃焼するのに対して、スサノオの場合はマスターの生命力を燃料とする点。3度使えば確実にマスターを殺す、というデメリットがある。

 しかし、その力は絶大だ。超級危険種の攻撃を跳ね返し、一撃で戦闘不能へと追い込む事が可能となる。

 だが、問題はあった。

 

「…………」

 

 スサノオの目の前に立つ男、ヌマセイカ。

 本来の歴史では彼という存在はとっくに失われ、記憶の角にも残らないような存在だった。

 だが、異質な魂が入ることで歴史は歪みこの状況。

 ボルスは護衛二人を含めて数的有利で優勢。クロメは離れた位置でナタラに守られつつ戦況把握につとめ、ウェイブはエイプマンとのペアでインクルシオを追い詰めている。

 

「“天叢雲剣”ッ!!」

 

 呼び出された長大な剣。超級危険種すらも一太刀で一刀両断に仕留めた一撃である。

 

「塵外刀変化───────」

 

 呟きながら、ヌマセイカは塵外刀を持たない左手を前へと突き出した。

 盛大に巻き起こる衝撃と、天まで昇る土煙。

 それは各戦場のそれぞれの手が止まるほどの一撃だった。

 

「ヌマさん!?」

 

 最初に反応したのはウェイブ。慌てて駆け寄ろうとする、がそこに割り込むインクルシオ。

 折角、有利に運べそうな状況をムザムザ渡す気もない。

 他のナイトレイドも同じく、イェーガーズの足止めに尽力する。

 だが、忘れることなかれ。ここ、この場に立つ元北の勇者は(笑)等ではなく、バグであることを。

 

「──────型式“揚羽”」

 

 聞こえた、声。同時に風が吹き抜ける。

 

「バカ、な…………」

 

 禍魂顕現の反動で倒れていたナジェンダはその光景に目を見開く。

 ヌマセイカは無事だった。彼の突き出した左掌の前には掌と同じ大きさの六角形の薄いプレートが複数枚浮かんでおり、それが天叢雲剣を押し止めて防いでいたのだ。

 更に彼の塵外刀の刀身にも変化が起きていた。

 

 それは言い表すならば【純黒】

 

 真っ黒な細身の刀身へとその姿を変えており、彼の周りには黒い球体が複数、浮かんでいた。

 

「隠し芸は得意なんでな。少なくとも、そこらの奴より手札が多い自信はあるぜ?」

 

 言いつつ、開いていた手を閉じて、人差し指だけをたてて見せる。

 

「襲え、“黒丸”」

 

 数十にも及ぶ破壊の黒丸は、大砲のような速度でナイトレイドへと襲い掛かる。

 その標的は相対するスサノオだけに留まらない。

 アカメ、レオーネ、インクルシオ、マインもその対象となり、黒丸は追い回していた。

 

「くっ!こんなストーカーは勘弁だね!?」

「…………速い!」

「気を付けろ!この珠、形が変わるぞ!」

「…………ッ!全員アタシの後ろに来て!」

 

 マインの言葉に全員が彼女の後ろに集結する。そこに殺到する黒丸の群れ。

 

「私にとってピンチはチャンスよ!」

 

 引かれるパンプキンの引鉄。その特性により放たれるのは、銃口を超えた極太レーザーであった。

 飲み込まれる黒丸。舞い上がる土煙。

 

「逃げ足の速いことだな」

 

 土煙が晴れる頃には、ナイトレイドの姿は消え去っているのだった。

 

 

 ▲▽▲▽▲▽

 

 

「……………………はぁ、どうにもオレはツメが甘いな」

 

 逃げ去ったナイトレイドを見送り、ヌマセイカは変化した塵外刀を片手に頭を掻いた。

 

「やっぱスゴいっすよヌマさん!あのナイトレイド相手に一人で勝てたんじゃないですか!?」

「副隊長のその剣、スゴいね」

「お疲れ様です」

「…………まあ、お前らが生き残ってるから、良いか」

 

 ため息をつき、周りを探ってもう残ってないことを確認して、変化を解く。

 

「──────型式“変獣”」

 

 刀を縮めいつもの姿へ。すでに屍人形も納められ、グランシャリオも剣へと戻っている。

 四人とも有利で事を進めてはいたが、特にボルスは相手がアカメだ。

 かすっただけでも致命傷な相手とタイマンなどごめん被るだろう。

 

「とりあえず、帰るか。これから追い掛けても追い付かねぇし。こっちも少なからず疲れてるだろ」

 

 異論は出ない。メンバーとしてもこんな化物副隊長でなければナイトレイド全員を相手に出来るとは思えなかったからだ。

 

「…………副隊長」

「仕留めるなら、手早くな」

 

 そんな短いやり取りが行われ、クロメの姿がフワリと消える。

 

 

 ▽▲▽▲▽▲

 

 

 ナイトレイド 残り7人

 イェーガーズ 残り7人




戦闘シーン難しいです(-_-;)
漫画の利点がハッキリしますね。文才がないと、戦う場面を迫力をもって伝えるのに難儀しますから

今回の犠牲者は…………まあ、彼女ですよね
帝具が厄介すぎるのが悪いです
スタイリッシュもそうですが、帝具は補助系の方が厄介だと思える今日この頃
では、次のお話でお会いいたしましょう
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