勇者が断つ! 作:アロロコン
皆さんも食べ過ぎや、食中りには十分にご注意くださいませ
さて、気づけば原作も半分を越えておりますね
肩の力を抜いて片手間に本編を、どうぞ
荘厳で大きな扉の前。
そこで、胡座をかき塵外刀で扉を塞ぐように座り込むヌマセイカは何度めかのため息をついていた。
「眠…………」
首を捻ればゴキリ、といい音が鳴る。
長い時間同じ姿勢で座っているせいだ。
今回は外見回りをクロメ、ウェイブ、セリュー、羅刹四鬼の最後の一人がそれぞれペアで担当し、ボリックを同じ部屋でエスデス、部屋の外でヌマセイカ、更に廊下をボルスが空をランが固める布陣である。
「こうも、暇だとオレも外回りにすれば良かったか?」
暇が過ぎれば独り言も増えるというもの。口数が多いか少ないかで言えば多い方の彼は暇だと口がペラペラ回る回る。
「……………………辞め時って事か?いい加減、あのデブのちょっかいもウザいんだよなぁ。けど、仕事辞めて何処に行くか。北は出身だし、定番で真逆目指して南か?よくよく考えれば世界は未知で満ちてる…………洒落じゃねぇぜ?」
面白くもない洒落を言いながらも何度めかのため息。流石に三桁まではいかないが、50近くは行っているかもしれない。
「ぁ~…………暇…………ん?」
それは唐突だった。遠くに響く、大きな音。
いつもならば直ぐにでもその場に向かうのだが、今は護衛の真最中。少なくとも自分の射程の外には出られない。
ならばボルスを急行させる事も考えるが、イェーガーズの中で彼とクロメ、それからエスデスは革命軍のブラックリストに載っている。単独行動させるには不安が残る。
一瞬浮かしかけた腰を下ろし、塵外刀を胡座の上に乗せ某オサレ漫画の刃禅の体勢となった。
横になった刀身の腹に肘をおきつまらなそうに、ぼんやりと虚空を見つめる。
北で本人からすれば勇者(笑)をやってたときも似たような事があったのだ。
その時、彼は間に合わなかった。
そして今、似たような感覚が彼の中に芽生えている。
こんなとき思うのだ。自分の地位やら名声やら、とにかく他者と違う権力というものが煩わしい、と。
「やっぱり…………枠組みが邪魔だ」
集団も、部隊も、軍も、街も、国すらも、こういうときそれらが邪魔だと思う。
彼は思う。自分は何もかもが遅いのだと。
だが、そうは思えど先手が取れない。
まず、先手はどうとる?と彼は先手の取り方をよく知らない。政も謀も門外漢であるからこそ、ステ割り振りの大半がフィジカルに割り当てられている弊害だった。
そのせいで、もう王城を斬り倒した方が早いのでは、と血迷ったことも何度かあった。
らしくない思考をグチャグチャとかき混ぜて練り上げる。まあ、出来上がるのは素人がろくろ回した結果出来上がる粘土細工程に、グッチャグチャだ。
「…………ぐぬ」
慣れないことはするもんじゃない、と頭を掻きヌマセイカはふと、廊下の一部に設けられた窓から空を見上げた。
いつの間にか、空が白んできている。
「─────副隊長」
「ん?ランか。どうした?」
「報告です。隊長とご一緒でよろしいですか?」
「……………………誰が死んだ?」
立ち上がったヌマセイカは肩に塵外刀を担ぎランに背を向けるとそう問う。
朝になりかけていることこそ気付かなかったが、耳は何度も爆発音を捉えていた。そしてそれが急に聞こえなくなったことにも、気付いていた。
それは戦闘が終了した、ということ。
ここまで派手だったのだから、恐らく帝具戦。帝具使いがぶつかると高確率でどちらかが死ぬ。
そしてランはポーカーフェイスを心掛けていたが、それでも漏れでる気配である程度は察することが出来た。
「…………………セリューさんです」
「そう、か…………」
ガリガリと頭を掻くとヌマセイカは扉を押し開けた。
なぜか中にはエスデスしか居なかったが、ボリックが死のうともどうでも良い彼はその事を口に出すことなく入室する。
そのまま、塵外刀を床に突き立て近くの壁へと腕を組んで寄りかかった。
何やら二人が何かを話しているが、彼の耳には届かない。
転生して18年。強くなった。それはもう、掠れ摩耗した前世と比べれば比較にならないほどに強くなった。
だが、今までの歩みは流されるだけではなかったか。
北で産まれ、世界を見て最初に絶望した。
そこからは我武者羅に強くなるため、死なないために進んできた。
いつの間にか、勇者等と呼ばれて地位や権力がその背に付いて回るようになった。
治める側に回るとその杜撰な政に日本の一般人気質だった彼は耐えきれずに、様々な意識改革を行った。
人とは国であり、国とは人である
前世からの心情らしく、口に出せば酷くシックリと馴染んだ。
彼はその心情を民の根底に据えようと奔走した。
だが、それは僅かに遅かった。一歩間に合わずに、幾つかの集落に蜂起を許してしまったのだ。
彼は要塞都市を守るために、その手で同族を討つこととなった。
その後、彼は更に死ぬ気で奔走した。結果として民にそれらの思想を植え付ける事にも成功した。
肥えていく国。ここまでは良かった。
次の問題は彼の周りで、力に目が眩んだ者達だ。
クロメの屍人形の中にドーヤという暗殺者が居たが、彼女もその問題の犠牲者と言える。
元より、北と帝国は小競り合いがあった。
それが暗殺者を送り込んだことから悪化、北伐を呼び込む始末だ。
結果、自分の広めた思想に首を絞められる形で殿を務めることとなった。
その事に関しては思うところは彼にはない。
曲がりなりにもその地で生きてきたのだから、結果的に故郷を失ったことに変わり無い気がしないでもないが後悔はない。
いや、そこで漸く肩の荷が降りたという所か。
そもそも、国レベルの期待を一般人が背負いきれる筈もない。
その一身に善悪問わず多くの人の感情が押し寄せ、蹂躙していく。その様はあまりにも惨いものでは無いだろうか。
何せ勝手に期待されて、その期待通りに動けなければ勝手に失望されるのだ。それも本人の預かり知らぬところでだ。
ヌマセイカはそんな中で生きてきた。精神の代わりに目が死んでいった。
流れ流され此処に居る。だからこそ大事な時に遅く、間に合わない。
だからこそ彼は同族に刃を突き立てる羽目にあった。
過去にボルスに背負う命は自分と家族にしておけ、と言った当人が一番何もかもを捨てられずに居る。
エスデスに昔語ったように、死人に縛られている、というわけではない。
現に彼は幻覚をみたりはしていない。ただ、忘れられないのだ。
彼は切った同族全ての顔を記憶している。それこそ似顔絵を描けと紙とペンを持たされれば写真のように正確に描けるほどに脳に、瞼の裏に焼き付いていた。
後悔して、諦めて、けれども強くなったその体は容易に死を運んできてはくれなくて、だから惰性で生き続ける
それが今のヌマセイカである。
惰性の根本は死ねない自分と、周りの存在。
少なくとも部下が居る内は自暴自棄にもならないことだろう。
「──────副隊長?」
「…………寝かせておけ。他のメンバーにも休息を伝えろ」
壁に寄りかかったまま眠るヌマセイカを一瞥し、エスデスはそうランに指示を飛ばす。
彼が部屋を出るのを確認し、彼女も椅子に腰掛け、手近なテーブルへと頬杖を付くと、窓から外を眺める。
激突まで2週間
イェーガーズ 残り6人
ちょっとヌマさんの過去を肉付けしてみました。
あれ?矛盾してない?とか思われたかたは作者の技量低っと鼻で嗤って済ませていただければ幸いです
それはともかく減っていくお気に入りの数々。ですが私はこの作風を変えませぬ
元より二次創作は自己満足のモノですからね一人でも読んでいただけるだけで私は満足なのです
では、皆様次のお話でお会いいたしましょう