勇者が断つ! 作:アロロコン
ここ数日、私を含めてバイト先はてんやわんやしております。
というのも、続かないんですよねぇ。
若者は根性無いとか言われる時代ですが、年配の方々も根性ネェですよ。せめて半年は続けてほしいものです
さて、愚痴は程ほどに、片手間に本編を、どうぞ
2週間。それがボリックの計画までに要する日数だ。
そしてナイトレイドの面々の狙いはボリックであり、彼らはそこまでの下準備も既に済ませている。
更に今夜、大聖堂にて儀式が行われる事が決定しており、当然その情報は外に漏れている。
「今夜、か?」
「ああ。ナジェンダならばこの機会を逃さんだろう」
「配置はどうしましょうか」
「ランは今まで通り上空だ。ウェイブ、ボルスは大聖堂正面。内側は私、ヌマセイカ、クロメで当たる」
「オレも中か?武器的に外じゃないか?」
「いや、中だ。外はボルス、ウェイブ、ランの3人で十分だろう。何せ奴等の狙いはボリック一人だからな」
「…………疲弊させて態と抜かせるのか」
「それだけでは無いがな。やつらは二面作戦を採る筈だ」
「陽動と奇襲ですね」
広げられていた大聖堂の地図にエスデスとランが幾つかの駒を置いていく。
「陽動は耐久力と突破力のあるメンバー、そして奇襲は村雨を持つアカメを主軸とした暗殺特化のメンバーでしょう」
「陽動にはボルスが主体で当たれ、そして少し戦闘後、自然と抜かれれば良い」
ナイトレイドは全員が帝具使い。となると、仮に一人で全員を相手取れば確実に死ぬ。
イェーガーズならば、隊長、副隊長の化物コンビ位しか居ない。
可能性で言えば、ウェイブやクロメも候補に上がるが、前者は精神的に、後者はここ最近の体調不良によって難しい。
「で、オレらで迎撃か」
「そうだ。とはいえ、私達の任務はボリックの護衛。気は乗らんがな」
戦闘狂であるエスデスからすれば護衛任務は性に合わない。
だが、やらねばならない。それが権力の傘下に居るという意味なのだから。
「相手は夜闇に紛れて来るだろう。それまで、英気を養っておけ」
▲▽▲▽▲▽
「……………………」
大聖堂、屋根の上にてヌマセイカは仰向けに寝転がって空を見上げていた。
ここでタバコでもあれば、彼の横には灰の山ができている事だろう。
ボンヤリ、という言葉がそのまま形を象ったかのような表情である、彼はそのスポンジばりにスッカスカの脳味噌でこれからの事を考えていた。
ぶっちゃけ、ボリックが死のうがどうでも良い。むしろ死ね、とすら思っているほどだ。
問題点は、その責任問題が何処に飛び火するか。
しかし、よくよく考えれば羅刹四鬼が潰れた今、大臣が武力的後ろ楯を捨てる可能性は低いことに思い至った。
ならば、更に先、このまま帝国に残るか否かの選択だ。
正直に言って直ぐにでも逃げて良いのかもしれない、が部下の顔がちらつく。
そこまで至ると自然とため息が漏れ出ていた。
非情に成りきれない甘い男からすれば帝国と革命軍、どちらに味方したいか、と問われれば後者だ。
いや、これ以上背負いたくは無いため、本来はどちらでもない、というところだが、選べ、と言われた場合は革命軍なのだ。
既に前世で死んだ身だ、今さら死ぬことはどうとも思わない。
だが、部下は違う。これ以上死なれると寝覚めが悪い。
「ボリック殺して、部下は殺らせない。…………オレの今の選択肢ではマシ、か」
ベストでは無いだろう。しかし、これがギリギリだ。
やれやれ難儀だ、と首を振りつつ身を起こし体を捻る。
小気味良い音が鳴り、ついでに肺から空気が絞り出された。
「やることやって、生きてたら、恩の字、てな」
グッと拳を握る。その瞳には薄暗い光が灯っていた。
▽▲▽▲▽▲
時は流れて、夜。深夜一時。
大聖堂の中庭は荒れに荒れていた。
「“岩漿錬成”ッ!!」
駆け抜ける炎の塊、ナイトレイドはそれを全員が紙一重でかわしていた。
放たれた炎球は壁に当たると見事に焼き溶かして貫通していった。
4対1。普通ならは数の暴力で簡単に突破されそうだが、ボルスは広範囲にルビカンテの炎を撒きつつ、時折狙撃することで五分に持ち込んでいた。
本来ならここにウェイブが加わる手筈だったが、そこはヌマセイカの指示。
村雨対策に彼を回していた。
「近付けん…………!」
ナジェンダはこの状況に歯噛みする。
警備の者達は粗方潰した。だが、一定距離から前へと進めていなかった。
インクルシオやスサノオならば進めそうな気もするが、ルビカンテの炎は一度燃え移ると水でも消せない特性を持つ。
そうなるとスサノオは再生に手をとられ、インクルシオは奥の手が封じられてしまう。
いや、後者ならばその適応力でどうにかできそうだが、適応する前に鎧の中で蒸し焼きにされるのが落ちだ。
火炎放射器はその特性上、広範囲に炎を撒けるため、拠点防衛や殲滅戦に向いている。
つまり、この配置は必然とも言えるのだ。
だが、長々と引き留める気はない。相手がそろそろ焦れてくる事は長年の経験でボルスも分かっている。
そして、そのときは来る。
(分かりづらいけど目配りしてる…………作戦変更かな)
火炎のお陰で夜でも視界を確保できるボルスはナジェンダと他三人のほんの一瞬の目配せを見逃さなかった。
そこからは、自然に隙を作る。
四人の中で一番動けないであろうナジェンダ狙いのようにみせて、炎の嵐の中に空白を作ったのだ。
相手から見れば勝負を焦って悪手を放ったように見える様、細心の注意を払っての動き。
「ッ!しまった!」
狙い通り、四人はその隙間を縫って、ボルスを抜いていった。狙い通りだ。
炎の壁を突破したナイトレイド。ここでインクルシオは奥の手を発動する。
効果は透明化。完全に視界に映らなくなる。が、問題点は気配等は消えないこと、更に透明化が解除されると強制的に鎧も解除され、再装着が必要となることだ。
大聖堂内部、対面するのはエスデスとナイトレイド。
体調の悪いクロメはヌマセイカと共にボリックを直に護衛する。
「久しいな、ナジェンダ」
「エスデス…………」
因縁の二人だ。ナジェンダの右腕と右目はエスデスに奪われた。
これはある種の雪辱戦。
その隅では、透明化したインクルシオが機会を窺っていた。
彼の役目はドンパチに紛れてボリックの首をとること。
だが、それが一番難しい。
透明化によって視覚は騙させるが、その他の感覚はまだまだなのだ。
何より、クロメはまだマシだが、ヌマセイカは不味い。
ロマリー街道での一戦はそれほどまでに鮮烈すぎた。
まさか全員がかりであそこまで押されるなど誰が予想しようか。
(どうにか引き離さねぇと。最悪、アカメが来るまで俺も時間稼ぎに…………)
思考を進めていると不意に、ヒヤリとした冷気が漂ってきた。
そちらを見れば巨大な氷塊が今まさに三人へと襲いかかるところだ。
その一撃はどうにかスサノオが捌くことで難を逃れる。
「そら、次だ」
次に襲うは氷の刃。それも真横に雨が降るかのように何本も飛んできている。
スサノオはそれを棍棒のギミックである仕込み刃を回転させて防ぐ、が何本かに脇腹を貫かれていた。
だが、ナイトレイドとてやられっぱなしではない。
エスデスの背後に気配を消して、レオーネが忍び寄っていた。
(首を掻き切る…………!)
ギシリ、と筋繊維が、骨が、軋むほどに力を込めて爪を尖らせ飛び掛かりながら腕を振るった。
「私に触れる事はオススメせんぞ?」
だが、相手は危険種よりも危険種しているドS隊長だ。
「ガッ…………!?」
鋭利な爪は空を切り、その腹部を背後からサーベルの刃が刺し貫く。
そこに迫るはナジェンダの義手によるワイヤー付きロケットパンチ。
再び両者の距離が空いた。
その光景を離れた舞台の上から見ている3人。
「…………ッ……………………」
「大丈夫か、クロメ」
「…………うん」
息の荒いクロメは見るからに具合が悪そうである。
ここ最近彼女は“オカシ”を口にしていない。
その根底にはウェイブ、そして彼から情報提供をうけたヌマセイカやボルスがこの件に噛んでいる。
簡単に説明すれば、ウェイブが隠れてクロメのオカシを口にして、そのひどさを二人に伝え、更にヌマセイカからエスデスに伝わり、摂取量を制限される事となった。
結果、この体調不良だ。
だが、クロメとしては部隊の皆の優しさを一身に受ける形となり満更でもなかったりする。
さて、戦闘は激しさ増す一方だ。
そしてその影響で、土埃が舞っていた。
「ん?」
それは一瞬の事だ。土埃がほんの一瞬だけ何かを避けるように流れたのだ。
確認のために、ナイトレイドへと目を向け、違和感の正体に何となくの辺りをつける。
(インクルシオか。となると奥の手、透明、もしくは空間移動。物理的な砂埃に反応するから前者か)
やる気のヌマセイカほど相手にとって厄介なものはない。
いつも休み気味の脳ミソがフル稼働している。
暫く、先程の違和感のあった地点を観察し目だけでなく、耳や鼻もフルに使って情報をかき集め、インクルシオの次の動きを予想。そして、跳んだ。
突然の行動。だが、ナイトレイドには直ぐにその行動の意図が分かってしまう。
まさか、そんな、など彼らの脳裏には否定の言葉が浮かぶが、それを嘲笑うようにヌマセイカはある地点まで進み、左廻し蹴りを放った。
普通ならば空を切る意味の無い、一撃。
だが、今回は違う。彼の足に伝う硬質な手応えと、ギシリと軋む鋼の音が聞こえ、エスデスとやりあっていたスサノオへと勢いよくナニかが飛んできた。
同時に透明化が解除され、現れるのは白銀の鎧。
「ビンゴだ」
エスデスの隣に立ったヌマセイカは肩に塵外刀を担いで頭を掻く。そして横目でチラリと上司の顔を盗み見た。
「良いものを引き当てたな」
「…………てっきり下がれ、とか言われると思ってたんだが?」
「それは奴等次第だろう。私としては一人で殺りたいがな」
「…………さいで」
そこまで話して、ヌマセイカは一歩下がる。彼の今回の目的はクロメを守ることであり、ついでにボリックを護衛すること。
そのまま更に下がり、舞台と戦場の丁度中間辺りでその足は止まった。言外に、手は出さない、という意思表示だ。
それをエスデスは汲み取った。元より彼女は一人で戦うつもりだったのだから、彼の申し出を断る理由もない。
「さて、抗ってみせろ」
第2ラウンドの幕が切って落とされた。
いよいよ、私の嫌いなワイルドハントが出てくる場面が近付いてきますね
少し原作を見返していたのですが、ボルスの奥さんと子供のシーンで危うく単行本を引き千切りかけました
余談ですが。あの鎌の帝具を使ってたチンピラを主人公にしたお話とか、どうなんでしょうね
アカメに瞬殺されたギャグキャラみたいな終わりかたでしたし
まあ、ヌマさんも原作はアレでしたからねぇ
では、皆様次のお話でお会いいたしましょう