勇者が断つ! 作:アロロコン
本日は成人式ですね。毎年派手な事も多くて騒々しい一日です
では、そんな日ですが本編を、どうぞ
帝都処刑場。そこは広々としたコロッセオのような見た目である。
「…………はぁ…………ホントオレはお前が嫌いだよ、オッサン」
「奇遇だな、小僧。私も貴様が嫌いだ」
観客の居ない観客席。その中央広場で睨み会う、ブドーとヌマセイカの二人。
ブドーは王宮で本気を出せず、ヌマセイカとしても折角引いたエスデスを刺激する気にならなかった為に妥協案として場所を移したのだ。
「さて、と」
ジャキリ、と塵外刀が軋み、アドラメレクの回りには火花が散り始めていた。
「……………………」
問答はこれ以上は無用。
ヌマセイカの姿が一瞬にして掻き消える。
衝撃、そして火花
上段から降り下ろされた塵外刀とアドラメレクに装備された鉄芯がぶつかり合う。
「フンッ!」
パワー勝負では若干ながらブドーに分がある。
腕に力を込めて塵外刀を押し返して、左掌を開いてヌマセイカへと向けた。
「食らえッ!!!」
奔る黒雷。本来ならば抵抗の少ない場所を通るために電気はジグザグに空気中を進む。
しかし、ブドーの黒雷はその自然の摂理を無視した。
一直線にレーザーのように突き進んでくる一閃。
「塵外刀“釵ノ型”『飛水』っ!」
対するヌマセイカの選択肢は迎撃。普通は回避を選択しそうな所だが、そこで塵外刀の特性だ。
ぶつかり合う、刀身と雷撃。
「…………その刀、絶縁体か」
「ご明察。まあ、止めれるかは微妙なところだったがな」
会話をしながらもその動きが止まることはない。今度は接近戦だ。
手数で言えばブドーに、一撃の破壊力では、ヌマセイカにそれぞれ軍配が挙がる。
「噴ッ!!!」
埒が空かない。というわけで、ブドーは全身からの放電、というか空に黒雲が立ち込め、そこから雷が落ちてきた。
正に間一髪。勘に従って離脱したヌマセイカだったがコートの翻った裾が消し炭にされてしまう。
「…………っ!塵外刀変化─────」
両手で柄を掴み力を込める。
「───────型式“鍬形”!」
それは今までで一番の変化にも見える。
柄の中程で塵外刀が分裂し柄頭に少し小振りな太刀ほどのノコギリ鍬形の顎のような刃が形成された。
もとの刀身も少し短くなり、同じく鍬形の顎のような形へと変化する。
「二刀流か…………」
ブドーは油断無く構える。嫌ってはいるがその実力は認めているため侮りはしない。
そしてそれはヌマセイカも同じだ。
「…………フッ!」
再び先手はヌマセイカ。左の太刀を投擲する。
この太刀は間を鎖によって繋がれており、飛んでそのままという事態にはならない。
難なく、一刀を上空に弾いたブドー、その眉がピクリと動いた。
ガゴォンと響く鋼の音
上下に構えられた両腕によって防がれた二振りの凶刃。
「ありゃ?仕留めれると思ったんだがな」
「手品ごときに遅れをとる私ではないッ!!!」
この戦い、初めてのクリーンヒットがここで出た。
ブドーの蹴りがヌマセイカの腹へと突き刺さったのだ。
ギシリと肉体が軋み大きく吹き飛ばされる。
盛大に粉塵を巻き上げて彼の姿は壁の向こうへと消えた。その際に武器を手放さなかったのは流石と言える。
さて、ここで補足だ。先程の型式は単に二刀流になるだけではない。
鍬形の特性は顎の特性。すなわち一定距離離れると自動的に刃が挟むように動くのだ。
だからこそヌマセイカは一刀を投擲し弾かせた。まあ、結果は逆に一撃もらうことになったのだが。
「おー、イテェ」
瓦礫から出てきたヌマセイカ。その表情はまだまだ余裕だ。
元より、彼の体は危険種の攻撃ですら耐え抜く。何より
「…………」
グッと握られる拳。そこに宿るのは────
「塵外刀変化─────」
小細工ではない。だからこそ、ここからは正面切って戦う。
「──────型式“揚羽”」
漆黒の刀身と、周囲に浮かぶ多数の黒丸。
第二ラウンドである。
▲▽▲▽▲▽
降り注ぐ大量の雷達。それらにぶつかるのは掌大六角形の薄いプレート。
そしてその中央では
「さっさと死にやがれ!!」
「ヌォオオオオオ!!!」
辺りに血飛沫を撒き散らしながら剣劇の嵐を産み出す猛者二人。
互いに打撃痕や切り傷、火傷痕や刺傷など全身至るところに出来ている。
「塵外黒鱗刀ッ!!!」
ドゴン、と音が響きブドーの巨体が後ろに吹き飛ばされていく。
そこを追撃するのは防御に回されなかった黒丸の残り。これは見た目を球状に纏められているが、変幻自在。
正直な話、彼女のメインは戦争ではなく、待ち人とのデートなのだ。
その瞬間を狙われた。
空から降る雷によって黒丸は地面へと叩き落とされる。
だが、
「オラァ!!」
「グォオオ!?」
ブドーの鳩尾に突き刺さるヌマセイカの飛び蹴り。
彼の口から血反吐が舞う。更に追撃。
仰向けに倒れたブドーに向けて塵外刀を振るったのだ。
「…………チッ」
漏れるのは舌打ち。
漆黒の刀身は両手の白刃取りによって止められていた。
直後、
「ッ!ガァアアアアアッ!?」
降ってくる雷。防御も間に合わずヌマセイカは諸に食らってしまう。
黒焦げになり、空を向いた口からは黒煙が上がっていた。
「ぬんっ!!」
ゴッ、と完全に沈黙していたヌマセイカの腹部に拳が刺さり殴り飛ばす。
力無く飛んでいくその体。
だが、地面に中る直前に宙返り何とか靴底を磨り減らして止まった。
「“大黒丸”」
突き出された左手の前に集まる鉄の鱗粉達。それらは集り、人の頭より更に大きな黒丸を形成していた
「こいつはオレの奥の手の1つだ」
ゾワリ、とブドーの背を悪寒が駆け抜けた。
それは黒だった。それはあまりにも歪で禍々しかった。
それはヒトの身に纏うにはあまりにも、狂っていた。
「“黒鱗天具”」
肉食獣の頭部のような見た目の頭部パーツ。全体的に刺々しく、目元は亀裂のような赤い裂目が二筋左右に入るのみだ。色は漆黒。
圧倒的な存在感。ブドーは油断無く構える。
「…………ブッ!?」
だが、気付いたときには顔面に拳がめり込み殴り飛ばされていた。
ぐにゃぐにゃと歪む視界。壁にめり込んでいたブドーはその体を起こすと痛む顔面に手を添える。
全く反応できなかった。いや、それどころか消えた瞬間すらも気づかなかった。
「ゼアッ!」
後ろ廻し蹴り。その一撃が、ブドーの脇腹を捉え蹴飛ばす。
更に吹き飛ぶ彼を追撃して、ヌマセイカはラッシュを連続で叩き込んでいく。
タコ殴りである。
「~~~~ッ!ナメるなぁ!!!」
紫電が駆け抜けた。
両手を前に突きだし、ブドーは突っ込んでくる漆黒へとその照準を合わせる。
「“ソリッドシューター”!!」
奥の手発動。まあ、単純に言って電磁砲だ。その破壊力は今までの雷をはるかに上回る。
だが、
「あたらねぇよ」
それは悪手だ。
ブドーの側頭を掴み、ヌマセイカは彼を投げ飛ばす。
壁に叩きつけられ、ぐったりと動かなくなってしまった。
「……………………」
これで終わるとは思えない。念のため、とヌマセイカは塵外刀を片手に鎧を解かずにブドーへと歩み寄る。
直後、
「ッ!これは…………」
極光に思わず目もとを手で庇う。
何と倒れていたブドーへと一際大きな雷が落ちたのだ。
「────ここまで追い込まれるとは、な」
ブドーは立ち上がっていた。その全身に雷を迸らせ、オーラのような発光を放っている。
「私のもう一つの奥の手“羅刹招来”。これで貴様を屠ってやる」
「…………上等だ」
黒と金が夜空でぶつかる。
▽▲▽▲▽▲
さて、話は変わるが、この二人、それぞれの帝具(片方は違うが)には弱点がある。
塵外刀には許容限界は無いがその代わりにストックという有限性が、アドラメレクには充電量というのがそれぞれあった。
「アアアアアアアア!!!!」
「オオオオオオオオ!!!!」
ぶつかり合う黒と金。空気が弾けるに合わせて、処刑場の観客席が粉砕され、その原型を無くしていた。
ブドーの速度は雷速であり、加えて反射神経も強化されておりすべての動きが反射で行われている。
ヌマセイカは身体能力が強化され、更に鎧というその形状から防御力も上がっている。
勝負はほぼ互角。広場に降り立つとほぼ中央、インファイトで殴り合う。
百発を越えた辺りでどちらも渾身の拳をぶつけ合って離れた。
「…………何故、刀を使わない」
「その場のノリって大切だろ?」
そう、ヌマセイカは先程から塵外黒鱗刀を背に負うのみで振るおうとしない。
「手を抜くならば構わん、が」
バチリ、と消えるブドー。同時にヌマセイカの背後に現れ、振りかぶっていた拳を振り抜いた。
受け止めたヌマセイカだったが、踏ん張る前に足を払われ、流れで蹴り飛ばされた。
「死んでも知らぬぞ?」
そんな言葉を聞きながら、ヌマセイカは空をぼんやりと見上げた。
別に彼としてもそんなノリ程度でこんなことはしない。これは確認なのだ。
帝国二枚看板。その実力は殆んど伯仲。手札の量的にエスデスが勝る程度である。
ヌマセイカが知りたかったのは将軍クラスの本気の実力。
過去のエスデス戦ははっきり言って時間稼ぎが主だった為にお互いに6~7割り程度の力しか出せていなかった。
そして、十分に底が知れた。ブドーよりもエスデスの方が一枚上手。何よりブドーは体が鈍っている。
「…………よっこいせ、と」
結構軽快なハンドスプリングで起きたヌマセイカは漸くその手に塵外黒鱗刀を握った。
勝負は一瞬。交差も一瞬。
剛拳と迅剣が互い違いに擦れ違った。
火花が散り、鮮血が世界を彩る。
「これにて茶番は終劇だ」
鎧が解け、平行に塵外刀を振るって血を払ったヌマセイカは少しだけ振り向きつつそう、宣言した。
背後では袈裟斬りに胴体が離れ息絶えたブドーの亡骸が転がっている。
「…………はぁ………超疲れた」
元に戻った塵外刀を地面に置き、ヌマセイカは大きく息を吐いてへたり込んでしまった。恐らくダメージの総量でいくと歴代3位には入る。因みに1位と2位は塵外刀が完成する前に戦った超級危険種だ。どちらも死にかけた。
「そういや、帝具はどうするか」
アドラメレクは強力だ。それこそ破壊力という面で見れば帝具の序列でも指折りの位階にあるだろう。
暫く考え、決断する。
徐に立ち上がったヌマセイカはブドーの亡骸へと近付き、そして───────
戦闘描写が難しいです。正直な話、本当に表現できているのか判別がつきません
黒鱗天具は見た目イメージ、狂○士の甲冑ですね。原作のカブト虫は、ちょっと…………
何はともあれ、ブドーを撃破したヌマさん。これで彼は完全に帝国のブラックリストに載ることとなりました。
では、皆様次のお話でお会いいたしましょう