勇者が断つ!   作:アロロコン

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なんというか難しい
いっその事、書きたいところだけ書いてしまおうかと思う今日この頃




「待てゴラァアアアアア!!!」

『ギーーーッ!?』

 

 切り立った山道をバカみたいにデカイ刀を片手に駆け回る蛮族、もといヌマ・セイカ。

 彼の視線を一人占めにして死に瀕しているのは、四足歩行で尾の長い、全身に鱗がある、犬と蜥蜴を混ぜたような奇抜な生き物。

 

「死ねェ!」

 

 横薙ぎに振るわれる一閃。当たる、と思われたが、空振りし、鋭い刃は山道に接した岩壁を鋭利に切り裂く。

 何と、この生物体を縮めたのだ。二メートル程の体長が、一メートル程まで縮み、その結果斬殺の未来を回避していた。

 

 二級危険種 拡縮獣

 

 名前の通り、体を大きくしたり小さくしたり出来る骨格の持ち主である。

 ただし、その範囲はだいたい一メートルといった所。元の体格が二メートル程度であるため、危険種の中では小型であり、凶暴性はそこまででもない。まあ、肉食であるため人を襲うのだが。

 そんな肉食獣が逃げ出すほどに今のヌマ・セイカは蛮族っプリを発揮していた。

 エスデスが生まれながらの捕食者ならば、彼は磨きあげられた殲滅者といったところか。目がマジである。真剣と書いてマジと読む程度には本気であった。

 何故ここまで本気なのか。それは彼がこのフェイクマウンテンを訪れて経過した時間に由来する。

 現在、彼がこの山を訪れて2日が経過していた。

 そう、二日である。当初の予定は半日であった筈が、まさかの二日である。

 原因は彼の携えた塵外刀にあった。というのも、この刀の製作には多数の危険種が絡んでいる。帝具もそうだがその中には素材となってその後、帝具へと加工されても生きているモノが少なからず居るのだ。

 そして、塵外刀にはそれら危険種の命の残滓が根付いていた。その副作用として彼以外の者が触れると全身から血を吹いて死に、その場に在るだけで言い様の無いプレッシャーを辺りに振り撒いている。

 このフェイクマウンテンには幾らかの危険種が生息しているが、塵外刀の素材となったモノ達と比べれば5枚ほど格が落ちるのも事実。

 野性動物に最も必要なのは強さと危機察知能力であり、塵外刀のプレッシャーは屈指の強者のモノ。擬態する種は、その擬態を解くこと無く、その他の危険種は近づく前に逃げ出していく。

 それを失念していたヌマ・セイカは一日を棒に振り、二日目で山を駆け回る羽目となっていた。

 そして、今、運良く件の危険種を発見した彼は死物狂いで追い掛けていた。脳裏に浮かぶは自称飼い主を名乗るドS。

 

──────ノコ挽き晒し首は勘弁だ…………!

 

 その一心で塵外刀を振るいながら、駆け抜ける。

 故に気付かなかった。いつのまにか、その頬を濡らす雪の結晶の存在に気付かなかったのだ。

 

「オオッラァ!」

 

 ザンッと振り下ろされた塵外刀。その刃は漸く拡縮獣の肉体を捉えた。

 

「太秦は神とも神と聞こえ来る───────常世の神を討ち懲ますも」

『ギィイイイイイ!?』

 

 独特の調子で唱えられた唄に塵外刀が呼応する。その刀身に血管のような模様が浮かび上がり、まるで生きているかのように脈動し始めたのだ。

 同時に拡縮獣の肉体に刀身と同じような血管のような線がそこかしこに浮かび上がる。

 そして、あろうことか刀身に獣の肉体が取り込まれていくではないか。

 その様は木が水を吸い取るように、土に水が染み込むように、塵外刀は生きたまま拡縮獣を吸収してしまっていた。

 刀身に変化はない。

 

「…………いけるか?塵外刀変化──────」

 

 呟きながら柄に力を込めた。

 

「──────型式“変獣”」

 

 グニャリと塵外刀がその形を歪ませる。

 見た目には変化はない。だが、その大きさは大きく変わっていた。

 刀身凡そ2.5メートル、柄凡そ1.5メートル。全長は四メートル、だいたい、元の大きさの半分といった所だ。

 

「ちっと軽いが…………ま、振りやすくはなったか」

 

 ヒュンヒュン風を切り、一頻り振り回すと満足げにヌマ・セイカは首肯く。

 問題点が在るとすれば、変化の重ね掛けが出来ない点か。

 まあ、その他は関係無い。切れ味、強度、その他、問題無しだ。

 確認を済ませたヌマセイカ。そこであることに気がついてしまった。

 

「ここ、何処?」

 

 辺りを見渡し、首をかしげる。

 いつの間にか切り立った山岳地帯を抜けて、雪降る荒れ地へと訪れていた。

 

「周りが見えんのも考えものか。やれやれ」

 

 他人事のように肩を竦め、ため息をつく。

 とりあえず、道、それから人でも探そう、と決め彼は一歩を踏み出すのだった。

 

 

 ▲★■★▲

 

 

──────そん…………な………

 

 愛用の槍を斬られ、腹部にも浅くない傷を負ったスピアは目の前に迫る絶望をぼんやりと眺めることしか出来ない。

 自分を含めて護衛は全滅。

 

「アハハ!お姉さんキレイな顔だよねぇ」

 

 目の前に膝をおった、声色からして少年は何に使う気なのか懐からダガーを取り出した。

 スピアは彼が何をするのか分からなかった。ただ、その瞳に宿る嗜虐の色が悪寒を誘う。

 

「キレイに剥ぎ取ってあげるから安心してね?」

 

 ゾッとした。血の気が一瞬で引き、言い様の無い悪寒が全身を駆け巡るのを彼女は感じていた。

 鼓動が早まり、冷や汗が流れ、早まった血流のゴウゴウと流れる音が耳にも聞こえるような気がする。

 時間が驚くほどにユックリだ。ダガーナイフの鈍いきらめきが酷く目につく。

 そんな世界だったからだろうか。普段なら気付くどころか知覚することすら不可能であろうモノに気付くことができた。

 

「ッ!?な、なにっ!?」

 

 少年が焦った声をあげて慌てて飛び退く姿がスローな世界に映っていた。

 一秒掛からず、その場が粉砕される。

 

「う…………っ…………?」

 

 あまりの衝撃にダメージを負ったスピアは踏ん張ることが出来ずに吹き飛ばされうつ伏せに倒れてしまった。

 ボヤける視界。辛うじて見えたのは巨大なナニか。

 それを最後に、彼女の意識は暗転するのだった。

 

 

 ▲★■★▲

 

 

 ヌマ・セイカがその場に居合わせたのは単なる偶然であった。

 北方出身の彼は大将であると同時に切り込み隊長でもあった為に目が良い。

 最初彼はその一団を見つけた際に自分の幸運に感謝していた。上手く行けば帝都に戻れるだろう、と。

 だが、忘れてはいけない。この世にはフラグが存在するということを。

 常人でも視認できるであろう距離まで近づいた所でそれは起きた。

 なんと、頼ろうとした一団を何処かで見た覚えのある三人に惨殺されたのだ。正確には、大柄な一人に、だが、とにかく惨殺された。

 その光景に珍しく、彼はブチッといった。

 無言で塵外刀の柄を分かれさせ、全力で刀身を投擲するぐらいには、キレていたのだ。

 少しでもずれていれば生き残りも殺していた可能性がある一撃だったが、今のヌマセイカにそこに気を配る余裕は、無い。道路を粉砕した刀身を引戻し今度はダッシュしながら再び投擲、そしてその上に飛び乗った。

 

 釵ノ型 飛水“二ノ矢”

 

 それがこの技の名前だ。因みに先ほどの投擲は通常の飛水。

 ゴウゴウと風を切り裂き、ヌマ・セイカは翔んだ。

 そして、気絶した少女の前へと降り立った。

 

「ヌマ・セイカ…………」

「あん?リヴァのオッサンじゃねぇか。何してんだこんなところで」

「それはこちらの台詞だな。お前こそここで何をしている」

「道に迷ったのさ。生憎とここらの地理は頭に入れてないからな」

 

 必要ないし、と肩を竦めヌマ・セイカは塵外刀を肩に担ぐ。

 その化物刀が最初に見たときよりも小さいことにリヴァは気付く。同時に不機嫌だった主の言葉も思い出した。

 

「エスデス様がお前の帰還を心待ちにしている。さっさと帝都へと戻るのだな」

「オッサンはオレの話聞いてないな?迷ったって言ったろ?」

「この道を真っ直ぐ進め。何れ着く」

「こりゃ、ご親切にどうも」

 

 煽るようなヘラヘラとした笑いを浮かべて、彼は自身の後ろで倒れる少女スピアへと近付き、首根っこを掴んで持ち上げ、肩へと担いだ。

 そのまま自然な動作で去ろうとする。

 

「…………邪魔だぞ、経験値バカ」

「人の獲物横取りしといて何言ってんだテメー」

「そのお姉さんの顔剥ぐんだから返してよ」

「ウルセェ顔剥ぎ小僧。自分のモノなら名前でも書いてやがれ」

「その娘を置いていって貰おうか。こちらも仕事なのでね」

 

 いつの間にか囲まれていた。

 彼らは三獣士。それぞれが帝具使いであり、エスデスの懐刀を務めている。

 

 二挺大斧 ベルヴァーク

 軍楽夢想 スクリーム

 水龍憑依 ブラックマリン

 

 大柄な男がダイダラ、顔剥ぎ小僧と言われたのがミャウ、髭のダンディがリヴァである。

 彼らは理由は違えど同じ主であるエスデスを敬愛する者達だ。

 そんな彼らにとって目の前の男ヌマ・セイカはあまりにも目障りであった。

 ここで消せれば、再びエスデスの目は自分達に向くはず。

 それぞれが自分の持つ帝具へと手を伸ばし

 

「止めときな」

 

 その一言で止められた。

 先程、スピアがミャウと対面したときのような悪寒が百戦錬磨の三人の背を駆け抜けたのだ。

 彼らは失念していた。いや、目をそらしていた。目の前の男が、最強と言っても過言ではない自分達の主と殆ど同格である、という事実を。

 そもそも、塵外刀を殆ど使わずに槍一本で帝国の北伐を抑えていたような化物である。

 そんな男が、人一人抱えたからといって衰える筈もない。

 

「念のためもう一回言おうか。止めときな、無駄死にするもんじゃないぜ?」

 

 いつも通りの死んだ目のまま、ニヤリとニヒルに笑い、彼は今度こそ去っていった。

 同時に崩れ落ちる三人。寒冷地であるはずが、汗が止まらない。

 ダラダラと滝のような汗を流して、荒い呼吸をどうにか収めようと苦心する。

 そして、理解した。アレは自分達とは立っている地点が違うのだと。

 久しく忘れていた感情の荒波の中で彼らは理解したのだ。

 

 

 ▲★■★▲

 

 

「お前は、何かを拾う癖でもあるのか?」

「いや、帰ってくるまでに起きると思ったんだがなぁ…………えっきし!」

「どうした?寒いのか?」

「首から下が凍ってて寒くないわけねぇだろ」

 

 ジト目を向けるヌマ・セイカだが、向けられた側であるエスデスはそれらを黙殺。ベッドに眠るスピアへと目を向けたままだ。

 帝都に戻ってきた彼を待っていたのは涙目のエア達と、要塞都市も裸足で逃げ出す冷気を全身から立ち上らせ部屋の八割を凍結させたエスデスであった。

 反論のはの字も許さず、問答無用で首から下を氷塊に囚われこの有り様である。因みにノコ挽きはどうにか取り下げてもらっていた。

 

「まあ、お前の拾い物は中々に面白い。あの娘達も筋は悪くないからな」

「なんだ、手解きしたのか?キャラじゃないことはするもんじゃないぜ?」

「フム…………ここにノコギリが…………」

「すみませんでした。先ほどの言葉は戯れ言ですのでどうかお聞き流しください」

「棒読みは気に食わんが…………まあ、良いだろう」

 

 文字通り首の皮一枚で繋がった彼の命。

 今日も今日とて彼の一日は何かしらの不幸に見舞われるのであった。

 

「…………本格的に手足の感覚、無くなってきた」




釵の型の釵の字が違う、という指摘がありそうですが単に変換できないのでこの文字を充てています
気になる方は脳内補填でお願いいたします
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