勇者が断つ!   作:アロロコン

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皆様のうれしい感想に心洗われる今日この頃。年末も近付き、仕事が殺しに来ている時分如何お過ごしでしょうか
私?私は課題とバイトに追い立てられ、こうして現実逃避をしているところでございます、はい

落ち込む挨拶はここまでとして、本編を、どうぞ




「……………………」

 

 チラッと後ろを振り向くヌマセイカ。

 

「…………ん?どうした?」

「あ、いや…………何でもない」

 

 どうかしてるのはお前だろ!?という絶叫を飲み下し、彼は再び前を向く。そして再び背後からネットリとへばりつく様な視線が襲ってきていた。

 昨日、中々にヘヴィな話題を終えてから、エスデスは今まで以上にネットリとした視線を向けてくるようになった。

 ハッキリ言ってそれは捕食者の目である。常人が向けられ続ければ発狂しかねないほどの、ドロリとした視線である。

 とはいえヌマセイカのメンタルは常人ではない。つまりは発狂することは、無い。のだが、居心地が悪いのは確かであった。主に心臓やらに悪い。

 従者と弟子に助けを求めようにも、四人ともエスデスの覇気にやられる可能性を考えて逃がしていた。今はその選択を後悔している。

 因みに、その中でスピアが少し渋ったのだが、実力差が分からないほどの愚者ではない。最後は三人に引き摺られる形でこの場を後にしていた。

 止まない視線、キリキリと痛む胃、メンタルを鷲掴みしてくる視線、リバースしてきそうな胃の中身。

 磨耗しきった前世にも覚えがないほどのストレスフルである。というより鷲掴みされているのはメンタルではなく胃ではなかろうか。しかも、料理的にではなく、物理的にである。

 仕方なく、目をそらしてカップに注いでいた黒々とした液体を飲む事へと意識を集中させるしかない。

 カチ……コチ……と一定のリズムで揺れる時計の振り子が嫌に耳につく。

 何かもう、視線というよりもこの空間のせいで発狂しそうである。

 気不味い沈黙が永遠に続くかと思われた──────が、それは唐突に終わりを告げる。

 

「…………ふむ、時間か」

 

 パチリ、と懐中時計の蓋を閉めエスデスは身を預けていたソファより立ち上がる。

 

「行くぞ、ヌマセイカ。これを被れ」

「…………は?」

 

 

 ▲★■★▲

 

 

 帝都とある一室。そこでは重苦しい空気が充満していた。

 

 覆面上半身裸のガチムチ

 お菓子を一心不乱に貪るセーラー服少女

 正義大好き少女

 オカマ

 磯臭い田舎者な青年

 柔和な笑みを浮かべ、何処か腹黒そうな青年

 

 この六人がその部屋には居るのだが、濃い。主にキャラ密度的に物凄く、ただひたすらに、濃い。

 そして沈黙がこの部屋を占拠していた。6人で座っても広々と使えるテーブルでありながら、座る者達が一人も口を開かないからだ。

 更にその六人がその沈黙に関して一人を除いて特に何とも思っていないのが質が悪い。協調性、というか、空気を読むとか、苦手なのだろう。

 そんな気不味ーい空間に一石を投じる来訪者。

 

 仮面を着けた青髪の軍服女

 鉄製の鬼の仮面にどこぞの野菜人のような腰まであるボリューミーな髪のアホみたいに大きな剣を持った恐らく男

 

 やっぱりキャラが濃かった。

 田舎者な青年は思わず白目を向いて内心で突っ込みが止まらない。

 

「貴様らァ!ここで何をしている!」

「シュコー…………シュコー…………」

「あ、いや俺たちは…………ガッ!?」

 

 青年が何かを言い切る前に軍服女は彼を蹴り飛ばす。

 

「Aaaaaaaaruaaaaaaa!!!」

 

 鬼の男がその剣を逆手に持つと、力任せに暴れ始めた。その動きは正に獣である。

 突然の事態。しかし、変人揃いでも彼ら彼女らは戦士として申し分無い実力を持ち合わせているのだ。

 緊急事態と判断したのかそれぞれが帝具を発動する。

 正しく、激闘。

 

「コロ!行くよ!」

『ガウッ!』

 

 橙の髪をした少女がその顔を凶悪に歪め軍服女へと襲い掛かる。

 

 魔獣変化 ヘカトンケイル

 

 縫いぐるみの子犬のような姿のそれは生体型帝具と呼ばれるモノだ。

 その剥き出しの牙をもって、敵を食い千切らんと主と共に襲い掛かる。

 

「背後からの一撃。ふむ、中々の鋭さ、だが殺気を出しすぎだな」

「カッ!?」

『……!……!』

 

 飛び掛かると同時に腕を掴まれそのまま床へと叩き付けられる。更にヘカトンケイルの方は顔面を氷で塞がれジタバタとしていた。

 その隣では荒々しい戦いとなっている。

 

「シュコー…………Aaaaaaaa!!!」

「隙だらけ…………!」

「GAAAAA!!!」

「ッ、馬鹿力…………」

「あーら、ヤダヤダ。スタイリッシュじゃないわねぇ」

 

 制服少女が刀を振るい襲い掛かるが、獣の動きでありながら鬼の男は的確にその巨大な剣で捌いている。

 少女はチラリと自身の帝具へと視線を送る。

 

 死者行軍 八房

 

 切り捨てた対象を屍人形として最大8体操ることが可能となる。そのスペックは生前と同じレベルであり、所有者の実力が高ければ高いほど強力な屍人形を有する。

 問題点は相手が自分より強ければ、切り捨てる事など出来ないことだ。

 それほどまでに鬼の男は強かった。粗いくせに隙は無く、仮にあってもそれは誘い。

 

「Aaaaaaaa!!!!」

 

 思いっきり横薙ぎに振るわれた一撃によって少女は弾き飛ばされ。そして一ヶ所に六人は集められてしまう。

 この状況では下手すれば斬り殺されかねない、が

 

「良い動きだったな。少なくともお前の拾い者達よりは上のようだ」

「歴戦の帝具使いと、素人に毛が生えたレベルの奴等を比べるんじゃねぇよ」

 

 二人は追撃すること無くその顔に着けていたも仮面へと手を掛けた。

 露になる二人の顔。その内片方は有名人である。

 

「エスデス将軍!?」

 

 青年が声をあげて目を剥く。

 更にその隣に立つのは

 

「北方の勇者、ヌマ・セイカ………」

「悪かったな、お前ら。試すような真似しちまって」

 

 尊大にふんぞり返るエスデスとその隣で片手たてて苦笑いしながら謝るヌマセイカ。

 まさかの二人だ。特にヌマセイカは先程までの荒々しい獣の動きからは考えられないほどに理知的な動き。

 特に戦っていた少女はその無表情を歪めて、微妙な表情だ。

 

「お前達の実力を少々試させてもらったぞ。まあ、及第点と言ったところか」

「いやいやいや、十分強かったろ。これで及第点とか帝具使いってのは化物揃いらしいな」

「ほざけ。実力の半分も出さずに遊んでいたお前は後で罰を与えよう」

「はぁ!?ザッケンナ!こちとら、お前が勝手に書類こさえたせいでやりたくもない仕事しなきゃならんのだぞッ?」

「騒ぐな。力あるものは戦う。これが世界だ」

「そんな世界滅びてしまえ」

 

 軽快なやり取りを繰り広げる二人。特にヌマセイカは死んだ目が更に腐敗して腐るのではと思われるほどに淀んだ瞳をエスデスへと向けている。

 そしてその視線に晒されるエスデスの頬には何故か赤みが差しており、何処か恍惚としているような雰囲気だ。

 ネタバラシだが、恋愛感情ではない。繰り返すが恋愛感情ではない。大事なことで二回言いました。

 仮に恋愛感情を向けられている、とヌマセイカに伝えれば、多大なストレスによって彼の胃が限界を迎えて吐血する。

 彼女の反応は自身の闘争欲求が鎌首をもたげてきているせいであった。とんだ変態である。

 

 

 ▲★■★▲

 

 

「どうだ?先程の趣向は中々のモノだったろう」

「まあ、部屋ひとつ潰しちまったがな」

「それはお前のせいだヌマセイカ」

 

 上司もやべぇ…………!それが青年、ウェイブの感想であった。

 現在、変人二人を加えた、合計8人の、やはり変人集団はスーツに着替えていた。

 

「つーか、お前帽子好きすぎね?」

「髪を纏めることにちょうど良いからな。お前も被ってみれば、その良さが分かるだろう」

「…………そういや、最近は髪切ってなかったな」

「なんだ、切るのか?」

「だいたい、いつも纏めてバッサリ小刀で…………」

「ふむ、ならば私が切ってやろう」

「お前に切らせると毛根が死にそうだから却下。エア達にでもやらせ───────」

「私が切ってやろう」

「人の話聞けや」

 

 ガルルル、と睨むヌマセイカだがコントはそこで一旦終わりを見せる。

 そこで口を開くのは、オカマ、スタイリッシュであった。

 

「それより、エスデス様。アタシ達のチーム名とか決まってるのでしょうか?」

 

 その問いに全員の視線がエスデスへと向けられる。

 彼女はフッと微笑み、帽子のツバに少し触れ

 

「我々は独自の機動性を持ち、凶悪な賊徒を狩る集団となる。故に────」

 

 一度、そこで言葉を切り振り向く。

 

「特殊警察、イェーガーズだ」




ヌマさん、バーサーカーモード発動(-_-;)
これは型月世界に呼ばれること待った無しですね!
…………実際、このヌマさんどのクラスで呼ばれるのか…………何だかキャスター以外は適正がありそうな予感がしますね、はい

因みに投稿に関しては、不定期ですので気長にお待ちくださいませ

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