勇者が断つ!   作:アロロコン

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皆様、クリスマス・イブは如何お過ごしでしょうか

私?私はバイトですよ!(白目)クリボッチですよ!(迫真)

ま、まあ、はい、本編を、どうぞ




 皇帝との謁見という名の挨拶を終えた特殊警察イェーガーズの面々。

 隊長であるエスデスの意見により、ちょっとしたパーティを行うこととなった。のだが

 

「料理してる面子がおかしいだろ!?」

「あ、ウェイブ君魚の処理、終わったよ」

「ウェイブー、サラダ終わったゾー」

「あ、はい…………じゃなくて!ここは普通女の子がやる所じゃないんすか!?」

「ウェイブ、忘れんな。ウチに居るのは暴食と正義厨と戦闘狂とオカマだ。誰が作っても悲惨なことになるのは目に見えてる」

「けど…………ヌマさん!俺は納得いかないっすよ!」

「まあまあ、二人とも落ち着いて。あと、ウェイブ君ほうれん草はもう少し後に入れてね?直ぐにしんなりしちゃうから」

「不味い飯作れば、そこの窓から吊るされるぞ?」

「怖い!?しかも、あり得そうだから余計に怖い!ボルスさんお願いします!」

「ふふっ、腕によりをかけるからね」

 

 厨房に立つのは野郎三人だ。距離も近く、むさ苦しいものである。

 

「というより、ヌマさん料理出来たんですね」

「ハッ!彼女居ない歴=年齢をナメるなよ。掃除洗濯何でもござれだ」

「理由が悲しい!…………まあ、俺もなんですけどねぇ…………」

「ボルスはどうなんだ?」

「私は、一応既婚者です」

「「嘘だろ!?」」

 

 まさかである。覆面、上半身裸のガチムチは彼氏彼女ではなく、まさかの既婚者であった。

 

「マジで?マジで…………?」

「ヌ、ヌマさん、語彙力失せてます」

「いや、えぇー…………?マジで?新婚か?」

「もう、かれこれ6年目かな。娘が一人居て」

「マジかー…………」

 

 ヌマセイカ、語彙力を一時的に消失するほどの衝撃を受ける。何というか、何だろう。とにかく負けた気がする。

 

「女遊びはしたことあるんだがなぁ…………」

「マジすか、ヌマさん…………」

「お前は、チェリーかウェイブ」

「さ、ささささあ?」

「狼狽えすぎだろ」

「う、うるさいやい!勝ち組は黙っててください!」

「真の勝ち組はボルスだろ。性格よくて、妻子持ちとか勝ち組トップじゃね?」

 

 軽快な会話を繰り返す二人。最後にはアメリカンジョークのような乾いた笑いが木霊した。

 そんな中で、ボソリ、とボルスの呟きが響く。

 

「私は良い性格じゃないよ。それに優しい人でもない」

 

 それはまるで血でも吐くかのような苦渋の声。

 ボルスが所属していたのは焼却部隊だ。

 この部隊は名の通り、対象を焼却することを目的としている。そしてその対象は問われない。

 結果として多くの命を奪うこととなった彼は、誰かがやらねばならない、という強固な意識のもとで今まで生きてきた。

 その決意が伝わったのか隣のウェイブは唾を飲み込む。

 重い沈黙がこの場に降りる。

 

「くっだらねぇ」

 

 ただ一人、ヌマセイカは特に同情することはない。

 二人、とりわけウェイブは少々険の有る視線を彼へと向けた。

 

「死人に一々拘るな。そもそも戦争やってる時点で善人なんて居ねぇんだよ」

 

 スルスルとリンゴの皮を向きながら、ヌマセイカは呆れた様な物言いだ。

 性善説と性悪説ならば圧倒的に後者を選ぶ彼は、この場においても揺るがない。

 

「だいたい、焼却部隊の仕事は何も焼き殺すことだけじゃないだろ。疫病の感染を阻止したり、危険種の死骸から発生する有毒物質を消したりするための面の方が強いんだ。人殺しの感覚を忘れろとは言わねぇ。けどな、お前の両手も背中もそこまで広かねぇんだよ。背負っても持ち上げても、絶対何処かで取り零す。だったら自分の命とテメーの家族の命だけ背負いやがれ」

 

 そこまで言い切ると更に切り分けたリンゴを乗せて、ヌマセイカは他の面子が揃う部屋へと足を向ける。

 そして、厨房を出る前にボルス背に叩くようにして平手をぶつけた。

 

「忘れるな。お前が大切にするべきなのは、過去に殺した奴等じゃない。今のお前が手にしてる奥さんと子供の事だ。それを第一に考えろ。自分が死ねばどうなるかを考えろ。いざとなったらオレでもウェイブでも良いから丸投げしとけ、何とかしてやるよ」

 

 2度、背を叩き振り返ること無く後ろ手に手を振り立ち去る背中。

 男二人はその背をぼんやりと見送るのだった。

 

 

 ▲★■★▲

 

 

 ところ変わって料理のできない面々はというと

 

「恋をしてみたいと思っている」

「こい…………?」

「鯉こく、おいしい」

 

 ガールズ?トークに勤しんでいた。

 

「こい…………鯉…………恋?…………恋!?」

 

 橙色の髪をしたセリューは暫くエスデスの言葉を吟味し、やがて正しく変換できるとその頬にカッと赤みが差していく。

 その反対側ではセーラー服のクロメが無表情でお菓子を貪っていた。彼女の脳内変換は恋を鯉として、そして鯉こくへと変換されている。とんだ食いしん坊である。

 

「た、たたたたた隊長!そ、それはつまり恋愛をしたい、と言うことですか!?」

「ふむ、そうだな。俗な言い回しだがそういうことだ」

「おぉー!ち、因みに好みなどは…………」

「とりあえず、強い者だな。弱者を育てる事も良いだろう。だが、軟弱な者では私の扱きには耐えられんからな」

 

 恋ばなであるはずが何というか色気のない殺伐とした内容である。

 そも、好みのトップが性格や顔ではなく強さ、それも物理的な強さ、というのはどうなのだろうか。

 第一、その時点で選択肢が今のところ二人しか居ないと思われる。

 一人はブドー、そしてヌマセイカだ。オッサンと死んだ魚の目をしたMADAOである。

 

「えっと…………副隊長、ですか?隊長の好きな人は」

「いや、ないな。断言できる。アイツは私が育てる必要はない。そう、言うなれば好敵手、というやつだ」

 

 むしろ狩猟対象であろう。

 とにかく、ヌマセイカは逃げられない。

 そこで、同じテーブルについていた文官のランが読んでいた本をパタリと閉じた。

 

「強い者を求めておられるならば、武芸大会は如何でしょうか?」

「武芸大会?それが、どうした?」

「今の帝国では上に登り詰めるためにはそれ相応の評価が必要となります。ですが、下士官の中には上司に手柄をとられ昇級できないものも少なからず居るのです。そこで武芸大会を大々的に開き、在野の者や下士官から強者を探されてはいかがでしょうか」

「なるほど…………アイツよりはマシな拾い者もあるか。人はどう集める?」

「賞金を提示しましょう。観客も、帝都の民達は娯楽に飢えています、集まりも良さそうですね」

「……………………よし、良いだろう。ラン、その件の書類を纏めておけ。私はオネストの面にその案を叩きつけてきてやる」

「お願いですから手渡してください。纏めた私も怒られるじゃありませんか」

 

 どうやら男が苦労するのは、この隊のお約束らしい。

 

「何の話してんだ?」

 

 そこにやって来るのは、切り分けたリンゴの一切れをシャクシャクと咀嚼する苦労人1号。

 ギラリと光る捕食者の眼光、ゾクリと震えるパンピーの背すじ。

 

「……?………??」

 

 突然の悪寒に首をかしげながらヌマセイカはリンゴの皿をテーブルへと置き、空いた席へと腰掛ける。

 

「んで?何の話だ?」

「隊長のお相手探しですよ」

「へぇー、結婚でもするのか?このご時世に変り者だな」

「このご時世だからこそ。この人は、という方を探すのでは?」

「生憎と結婚とか興味なくてなぁ…………」

「副隊長もまだまだお若いんですから。枯れていては今後に差し支えるのでは?」

「お前に枯れてるとか言われたくねぇよ」

 

 盛り上がる野郎二人。だが、その光景にセリューは気が気ではない。

 理由は簡単、ヌマセイカが来たタイミングで振り向いて背を向けてしまったエスデスにある。

 

「……………………」

 

 ゴゴゴゴと後で文字が威圧してきそうなほどのオーラを噴出していた。軽く冷気も零れている。

 クロメはいち早くその動きを察知し、壁際でお菓子を貪り、その傍らにはスタイリッシュがスタイリッシュな姿勢でスタイリッシュしていた。

 

「…………ん?あれ、冷凍リンゴとか持ってきたか?」

「あ、あはは……………………」

「どうした、ラン。そんな蛇に睨まれた蛙みたいな面しやがって」

(むしろどうしてプレッシャーの1つも感じ取れないんですか貴方は!セリューさんも顔真っ青ですよ!?クロメさんとDrスタイリッシュは既に逃げてますし…………)

「まあ、リンゴでも食えよ。ほら、風邪の時とかすりおろしが旨いって言うだろ?食ったことねぇけど」

(ヘラヘラ笑ってられるメンタルが羨ましいですよ‼)

 

 ラン、内心でキャラを投げ捨てて絶叫中である。というより、もはやデスメタルレベルのシャウトである。

 

「ヌマセイカ」

「ん?お前もリンゴ食うか?」

「私は肉の方が好きだが?」

「たまに食物繊維をとらないと、クソ詰まるぞ」

 

 ダメだ、この男。今日はいつもと違って色々とネジが緩いらしい。普段言わないようなことが口からペラッペラと溢れ出している。

 結果、

 

「“エイスデアケーフィ”」

 

 突如現れた氷塊。

 中でリンゴを食べる体勢で閉じ込められたヌマセイカ。

 ドン引きのイェーガーズ。

 

「貴様はそこで暫く固まっていろ」

「………………………………」

 

 フンス、と鼻を鳴らしたエスデス。

 補足すると殺すつもりは無いため、氷の強度もまちまちだ。

 故に

 

「……………………寒いっての」

 

 一瞬。ほんの一瞬だったが氷漬けにされていたヌマセイカの肉体が膨張し、氷は粉々に砕かれるのだった。

 

「頭は冷えたか、この大バカ」

「良いじゃねぇかたまには暴れたって。ここ最近ストレス溜まってんだよ」

「ならば、気晴らしに私が付き合ってやろう。光栄に思うことだな」

「お前が原因だっての!」

 

 食い付くヌマセイカ、サラリと流すエスデス。

 そしてイェーガーズの面々は再確認した。

 

 隊長、副隊長に刃向かえば死ぬ。帝具関係無く殺される、と

 

 勇者もドSもどっちも化物。ハッキリ分かんだね




ヌマさんが私の中で槍ニキと化している今日この頃
そして意外に反応の良かった型月世界の話

感想に関しては時折返します。というか一通り目を通しております

今度、このヌマさんの型月風ステでも載せてみますかね

では、次のお話でお会いしましょう
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