捻くれぼっちの筈の彼の死は、何人もの心を締め付ける。 作:あなさ
ごゆっくりどうぞ!
死亡
【小町 高校三年】
時がたつのは早いもので、小町ももう高校三年生、といっても、今日が卒業式なんだけれどね。
いつものようにお母さんにたたき起こされ、みたいなことは無く朝早くに目を覚まし、グーーッと背伸びをした。
朝の伸びはやっぱり気持ちがいいなぁ。
そうやって制服に着替えて、少しロングに伸ばした髪と伊達めがねをかけて、ご飯を食べに下に降りる。
そこには、親の姿は無かった。
まぁ、仕事に行っただけなんだけどね。
お父さんは学校に向かったけど……
はぁ……
小町「相変わらず小町に甘いなぁ」
正直、ちょっとウザい。
そして、のそのそと朝食を食べ、歯磨きをして鞄をもった。
そして、日課の仏壇に向かう。
線香にひを付けて灰に差し込み、三回チーンと鳴らして
南無阿弥陀物と唱えて一礼をする。
小町「おじいちゃん、おばあちゃん、小町ももう卒業です。結衣さんと雪乃さんにアドバイスもらったこのロングとメガネ、似合うかな?」
小町は、見せつけるように髪をかきあげ、眼鏡をくいっと上げる。
何だか呆れられた気がする……
さてと、次はーー
小町「お兄ちゃん、小町もう卒業するんだよ?総武の奉仕部もついで、お兄ちゃんみたいに過ごせたかな?あ、でも小町ぼっちじゃないや。……あれから二年もだったけど、まだ小町は寂しいなぁ……。あと、向こうでぼっちじゃないかも心配。それじゃ、行ってきます。」
そう言って、立ち上がった。
その時、何となくだけど、『おう、いってこい』って、お兄ちゃんの声が聞こえた気がした。
小町は、誰も居ない家に、その空耳に答えるようにーー
小町「うん、いってくるであります!お兄ちゃん!」
満面の笑みで、そう言って、玄関をあけて、学校へと向かったーーー
─────────────────────────
【二年前】
それはーー突然だったーー
比企谷八幡は、世界中で最愛の妹、比企谷小町とららぽーとに買い物に(強制的荷物持ち)出掛け、その帰りの最中だ。
今も、どーしようもない下らない話をしながら帰っているのだ。
小町は、口を開けばやれあの二人とはどうだー、とか、やれこれだからごみいちゃんは、とか。
八幡の方もやれなにいってんだ、とか、うぜぇ、だとか、捻くれた返答しかしていない。
だが、それが二人にとっての心地良い距離感で、この先も続くと思われていた。
だからこそ、この後に起こった事は、全くの予想外なのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー【八幡side】
8/1、月曜日。
学校も終わり、夏休みの本番に差し掛かった今日この頃。
時刻は夕方六時、朝の七時に叩き起こされてから今の今まで買い物につき合わされていたなんて、マジ最悪。
まぁいっか、小町だし。
戸塚だったらむしろWelcome、いや、foreverでもかまわねぇわ、うん。
てな訳で今俺は、大事な、本当に大事で大切な休日を、小町の買い物の荷物持ちという役割によって潰されている。
ったく、休日も外に出るとか、どこの社畜ですか俺は。やっぱ専業主夫最強だな、QED,証明完了。
働きたくないでござる。
てか、両手が重い……
なに?今の女子中学生ってそんなに買い物好きなの?俺から見たら頭悪そうな本とか何が面白いの?って感じなんだけど。
小町「お兄ちゃん、重くない?代わろうか?」
八幡「え?マジで?サンキュ小町」
流石小町、俺のことを良く分かっていらっしゃる。
小町「はぁ、これだからごみいちゃんは…そこは『いや、全然大丈夫だ。心配かけてごめん、ありがとうニコッ』って言う所だよ?ま、そんなお兄ちゃんも好きだけど~。あ!今の小町的にポイント高い!!」ニヒッ
と思ったら全然そんなこと無かった。
小町ちゃん、お兄ちゃんはそんな事言わないよ、て言うか言えないよ。何で俺がそんな事言わなきゃあかんのや。葉山か。
八幡「うぜぇ……ま、んなこといわねぇけど、ま、持つのは任せとけ。」
小町「お?捻デレ発動ですなぁ!」ニヤニヤ
何?その呼び名定着してんの?
ちょっと、お宅の娘さんどうなっているの?あ、妹か。
八幡「何だよその謎言葉。コナン君の事件の暗号なの?馬鹿なの?死ぬの?てか、デレてねぇし、呆れただけだし。」
小町「何でコナン君にそんな言葉が出てくるのさ?それに小町馬鹿でもないし、お兄ちゃんの目みたいに死んで腐るのもまだ先だよー。」
八幡「おい、絶対一言余計だろ。」
小町「フン!小町は知らないのです!……時にお兄ちゃん、最近結衣さんとか雪乃さんとかとはどうなのさ?」ワクテカ
来たよ、何でかコイツはあの二人をやたらと気にかける。何故だ?あれか?兄がいつもお世話になっております的な?その割にはやたらと恋愛方面に関する事なんだよな。まさか、あの二人……!
でも、八幡強い子。勘違い、ダメ、ゼッタイ。
八幡「は?何であいつらが出てくんだよ。特に何もねーし、何か有ってもそれは偶然で、勘違いをしてはいけないんだ。そもそもーーー」
小町「あーもー分かった、はぁ、これだからごみいちゃんは……小町はお二人が不憫で仕方ないよ」ヨヨヨ
うざっ。
でも小町可愛い。戸塚と二人で大天使コンビ組んでくれねぇかな?トツカエルとコマチエルで。
小町「お兄ちゃん?今絶対失礼な事考えてたよね?」
うわなにこいつ、エスパーなの?テレパシストなの?
コマチストって呼ぼうかな。
……いや、止めておこう。もしそんな事したら地に着いている俺の好感度が、マントルまで到達しちゃうよ。あらやだ怖い。
ま、適当に言い訳するか。
八幡「ふ、小町よ、俺がそんな事考える奴に見えるか?お兄ちゃん傷つくぞ?」
小町「え?違うの?」キョトン
コイツ、本気でキョトンとしていやがる。
このガキャァァ……でも、可愛いから許す!
俺達は、こんな会話のキャッチボールならぬドッチボール(主に俺が被害者)を繰り広げながら家路を進む。
もう日の暮れる時間で、夕方の夕日が俺達を照らして、小町の顔がいつもよりも赤く見える。俺の顔も、夕照りしてさぞかし赤くなっているだろう。
これは妹じゃなかったら惚れてますね、はい。
ーだが、そんな幸せな時間は、長くは続かなかったー
家の数百メートル先、曲がり角を曲がった所で事件は起きる。
何百メートルか先に、こちらに向かってくる影が見える。
いや、それだけならまだいい。
だが、明らかに様子がおかしいのだ。挙動不審で、妙に殺気立っていて、足取りも覚束ないようだ。
不意に、ピタッと目があってしまった。俺は、恐らくこの人生の中で、ここまでの悪寒を感じたことは無いだろう。まるで、自分の中の何かが、最大限の警告音を発しているかのようだ。
こっちくんなよな……こないよな?
しかし、願いも虚しくその陰はこちらに向かってくる。
猛スピードで、おそらく、全力疾走で。
小町「ヤバい、何か分かんないけどヤバいよお兄ちゃん!」
小町も、異常を感じ取ったようだ。ま、誰でもきずくわな、そりゃ。
そして、段々とその姿が見えてくる。
黒いコート、黒のニット帽、サングラスにマスクをつけて、典型的過ぎんだろ……ん?今手元が光ったような‥?
まさか!!
気付いた時には、時既に遅し。その男は、もうすでに数メートル先までちかずいてきていた。
その目線は俺ではなく、小町をとらえていた。
マズい!!
どうする?我が身かわいさに見捨てるか?
いや、そんな事したら俺は自殺する。
なら助けるか?
痛いのが、傷つくのが怖いか?恐ろしいか?
今更だ。
なら、決まりだな。
八幡「小町ぃぃ!!」
男に背を向ける形で、小町の前に立ちふさがり、突き飛ばす。そしてーー
男『ちぃっ、邪魔するなぁ!!』ブンッ
八幡「っあ……!逃げろ!!小町!!」ズブリ
逆上した男の手に握られたナイフが、俺の身体を貫いた。
こんな時なのに、意外と俺は冷静で、激しい痛みが身体を襲う、だが、ここで倒れたら、小町も死ぬ。
俺みたいなゴミが死ぬのは構わん、だが、小町は駄目だ!
小町「きゃっ……え?」
八幡「早くしろ!!死にたいか!!」
小町「でも、お兄ちゃんが!!」
こんな時でも俺の心配か。優しいな小町は。やっぱり俺の最愛の妹なだけはある。あ、今の八幡的にポイント高い。
だが、ここは何としてでも逃がさないと、何とか、…よし。
八幡「大丈夫だ…」
小町「……でも……!」
八幡「小町……必ず後を追う、だから、行け。」
小町「ッ……うん、絶対だよ?」
ーーーいいんだ、これでーーー
八幡「ああ、約束だ」
ーーーこれで、小町は助かるんだーーー
ーーーたとえ嘘をついてでもーーー
ーーー俺の大嫌いな欺瞞を使ってでもーーー
小町「っ」ダッ
男『待て!』ダッ
八幡「それは、こっちの台詞だ。」ガシッ
さて、逃がさないようにしないとな。
俺は、男のズボンの裾を握り締め、引っ張る。
男『離せっ!クソっ!!』
そうこうしてると、小町の姿は見えなくなっていた。
もう大丈夫だ。
これが正しいんだ。
ーーー死んでも誰も傷つかない、俺が死ぬべきだーーー
ーーーほら、簡単だろ?ーーー
八幡「誰も傷つかない世界のーーー完成だ」
男『クソがぁ!!』
ーーー8/1、くしくも誕生日の一週間前、俺、比企谷八幡の17年は、ぷつりと、死に際だけはカッコつけて、幕を閉じたーーー
どうでした?
面白かったら評価お願いします。
それでは、どうぞご贔屓に~