捻くれぼっちの筈の彼の死は、何人もの心を締め付ける。 作:あなさ
これは、八幡が三年生になった後の話です。
小町はある程度逃げた所で、近くの交番に駆け込んだ。
目を真っ赤に腫らして、泣きじゃくりながら。
【小町side】
ーーーー八幡が死んでから3分後ーーーー
何だろう、さっきから妙な胸騒ぎがする。
心の奥が森林になったみたいに、ザワザワって。
早く、早く助けなきゃ!
【交番】
小町「助けてハァ…さい!!おハァ……んが、死んじゃ……!」
早く、早くお兄ちゃんの所へ!!お兄ちゃんが死んじゃう!!
お巡り「どうしたんですか!?一回落ち着いて下さい!!」
あーもー、落ち着いて何てられないよ!!このアホ!
まどろっこしい説明なんてしてたら遅いよ!
小町「とにかく来てください!!」グイッ
小町は、お巡りさんの手を掴んで走り出します。
お巡り「え!?え!?ちょ、え!?」オドロキ
小町「急いでください!!」
キョドりすぎてるけど気にしないのです。
そんな事よりもお兄ちゃんが……
お巡り「は、はいっ!」
小町(お兄ちゃん……生きてて…)
気が付いたら、いつの間にか小町の頬に涙が伝っていました。
小町はやっぱり、お兄ちゃんが大好きなんだなぁ、と自覚するとともに、今までの不安が更に重く感じました。
大好きな人が死ぬって、考えただけでも心が握りつぶされそうです。
お巡り「あのぉ……」
警察の人が聞き辛そうに申し上げてくる。
あぁもう、うじうじしないでよ!!
小町「何ですか!?早くしないとお兄ちゃんが……」
お巡り「私、まだ連れ出された理由を聞いていないので、職務上色々聞かないと……連絡する必要も有りますし……」
あ、本当だ、小町説明してない。
いや、厳密に言えばしてるんだけど、息切れして上手く話せなかったし、それどころじゃなかったし。
小町「走りながら返事するので端的にお願いします!」
お巡り「はい、では、理由を」
小町「お兄ちゃんが……不審者に私を庇って刺されました」
あっ、と声に詰まる警察の人の声が聞こえる。
でも、すぐにコホンと咳払いをして続ける。
お巡り「では、その時の状況、場所をお願いします。」
小町「買い物の帰り、刺されそうになった私をお兄ちゃんが突き飛ばして逃がしてくれました。場所は家の近くの曲がり角!住所は○○○~▼▼▼~◇です!」
あれ?小町街中で大声で住所言っちゃってるけど大丈夫でしょうか?
いや、気にしたら負けだよ!
お巡り「あなたのお名前は?」
小町「比企谷小町!」
お巡り「あなたのお兄さんの名前は?」
小町「比企谷八幡!」
お巡り「分かりました。ご協力、感謝します。」
そう言うと、警察の人はおもむろにトランシーバーを取り出します。
多分、さっき言っていた応援を呼ぶのだろう。
何だかドラマのワンシーンみたいです。
……本当に、ワンシーンだったら良かったのに。
そんな事を考えて走ること五分、さっきの場所が見えて来ました。
小町「………お兄ちゃん!!」
小町は、警察の人の手を離して走り出します。
小町(お願いします神様………お兄ちゃん……どうか無事で……!)
後はこの曲がり角を曲がればお兄ちゃんが……
そこまで来た所で、小町の足が止まってしまいました。
さっきまでの勢いを追い越されて、八分前の情景が蘇ってきたのです。
刺された時のお兄ちゃんの苦悶の表情、滴り落ちる血液、血走った目でこちらに睨みを効かせてくる男の顔、
リアルに何度も頭の中に蘇って、脚が竦んでしまったのです。
でも……それでも…
小町「…………っ」
小町は、一歩踏み出しました。
ゆっくりと、顔を曲げてーーーーーー
小町「………お兄………ちゃん?」
小町はーーーーー
小町「あ、……あぁ……」
その目に入れていまいましたーーーーーーー
小町「あぁぁ……」
背中にナイフが刺さっていて、チャームポイントのアホ毛がだらしなく垂れ下がった、お兄ちゃんの姿を。
小町「いやぁぁぁぁああああ!!!ああああああああああああああああああああ!!!!!!あ」
プツリ
と、小町の中で何かが切れる音がした気がして、そこからの記憶は有りません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
気が付いたら、小町はベットに横たわっていた。
視界がぼんやりと霞む中でーー
ーー何だ、夢だったのか。
そう思い、むくりと身体を起こす。
でもー
親父「小町!」
母親「小町!?目が覚めたの!?」
涙に顔を歪めた両親と、ツンとくる消毒の匂い、白い壁とピンクのカーテン。
それを目視して、あぁ、此処は病院か、と認識する。
置いてある日めくりカレンダーは、8/2になっていた。
どうやら、丸一日も寝ていたらしい。
その思考と並行して、お兄ちゃんの事が頭に浮かんでくる。
何となく、答えは分かっているけども、それでも、聞かずにはいられなかった。
小町「ねぇ……お兄ちゃんは…?」
そう、問い掛けた。
やっぱり、二人は首を横に振った。
分かっていた、分かっていた。
この返答は分かっていた。
でも、分かったからと言っても、受け入れることは容易ではないのだ。
心が、締め付けられた。
小町「う、うぁ……ぁぁ…」
ポロリと、大粒の、一滴の涙が、小町の瞳から、零れ落ちた。
小町(小町のせいで、お兄ちゃんが……小町が、お兄ちゃんを無理矢理買い物になんか連れて行ったから………)
小町(あれ?もしかして、お兄ちゃんを殺したのってーーーーーー小町?)
そう考えたら、涙は、もう、止まらなくなっていた。
その涙には、兄の死に対する悲しみ、拒絶、兄との十六年間の思い出、もう兄と一緒に居ることが叶わなくなった現実に対する絶望も含まれていた。
だが、最も小町の涙腺から涙を溢れさせたのは、兄の死は自分のせいだ、という強く、重く、圧してくる、罪悪感からだった。
小町「う、うぁぁぁ……あああ……!ぁああ……お……にいちゃ…ん…おにいぢゃん……おにいぢゃんおにいぢゃん……あぁぁぁ……ぅぁ……っ」
それから、ひとしきり泣いた後、兄との会話の最中に出て来た二人の顔が浮かんできた。
そう、由比ヶ浜結衣と、雪ノ下雪乃だ。
ぼっちで卑屈だった兄、比企谷八幡を、受け入れ、歪んだやり方しか出来ない兄に真っ向からぶつかって、逃げないで、兄の求める〖本物〗に、最も近い場所、奉仕部の部員だ。
小町も受験に受かって、お兄ちゃんとあの二人も三年生になって大学受験に向かって勉強してたから、活動してたかどうかは知らないけど、少なくとも、家でその話題が出ていたし、関わりはあるのだろう。
ならば、学校で知らされる前に、あの二人には伝えておこうと、そう思った。
小町「電話、しなきゃ……」
小町は、震える手で鞄から携帯を取り出して、電話帳のアプリから二人の名前を探して、まず、最初に見つかった結衣さんのほうに電話をかける。
二コールもせずに電話に出た。
結衣『小町ちゃんやっはろー!!』
相変わらずのハイテンションで、何だかいつもと変わらない日常みたいだ。
小町(でも、小町には、いつもどうりに返す気力はないです)
小町「こんにちは結衣さん……あの、大事な話があるんです……」
それを聞くと、結衣さんも何となく分かってくれたみたいです。
流石に空気を読むのが得意と言っているだけはあります。
結衣『なにかな?小町ちゃん』
軽く深呼吸をしてーーーー
小町「あのーーーーー
お兄ちゃんが、死にました。」
結衣「…………え?」
どうでしたか?
指摘があれば、遠慮をせずにコメントして下さい。
何分あまりなれていないものでして。
それでは、どうぞご贔屓に~