捻くれぼっちの筈の彼の死は、何人もの心を締め付ける。 作:あなさ
実は最近充電がうまくいかないことが多々ありまして…
言い訳のようなんですが、信じてくれると嬉しいです。
これからは、父の機嫌を損ねて投稿の遅れることのないよう、気をつけたいと思います。
それでは、本編です。
私と姉さんが泣き始めて、どれくらいの時が経ったのかは分からないけれど、私はようやく落ち着いて思考を巡らせることが出来るようになってきた。
何となく、誰に見られている訳でもないのだけれど、なんだか姉さんと抱き合っているのが気恥ずかしくなって、ゆっくりと密着した身体を離した。
こんな状況でも羞恥心は働くのかと、素直に驚いている。
姉さんの顔を覗くと、スゥスゥと寝息を立てていた。
何時も何時も完璧な、背中ばかりを見ていた私の姉の顔は、相変わらずの美貌に、涙の跡と隈が浮かんでいた。
泣くなど慣れないことをして、身体的に疲れて寝てしまったのかしら。
それに、今日はお母様からの呼び出しもあったようだし……
それにしても…
雪乃「姉さんが泣くだなんて、とても意外だったわ……」
彼のことは、精々面白いオモチャ程度としてしか扱っていなかったと思っていたのに…
いや、だからこそ泣いたのかしら?
…そんな子供じみた理由で姉さんが泣くわけもないわ。
雪乃(姉さんが起きたら聞いてみましょう……)
むくりと身体を起こし、立ち上がった。
ヨロリ
しかし、急に立ち上がったせいか立ち眩みしてしまい、小指の先をテーブルの足にぶつけてしまった。
雪乃「キャッ!!……私としたことが、少々ドジを踏んでしまうなんて…比企谷君に笑われてしまうわね…」
はぁ、と溜め息をつく。
幸い、誰も見ても聞いてもいないので、恥を書くことが無かったのが幸いーーーー
結衣『キャッ!!って、ゆきのんもそんな声出すんだね~、確かに、ヒッキーが聞いてたり見てたりしたら、笑われちゃうね?』
……え?
まさかと思い携帯をみると、未だに通話が切れていなかった。
雪乃「わ、忘れて頂戴……」
ま、まさか由比ヶ浜さんに失態を見せてしまうなんて……
うーんと、唸り声が聞こえた後に、由比ヶ浜さんがしゃべり始めた。
結衣『やだ、忘れない。だって初めて聞いたゆきのんのドジった声だもーん!』
雪乃「あなたねぇ……」
はっ、と。
そこまで言って、私は思った。
なぜ彼女は、こんなにも明るいの?と
彼女は大切な人を失ってすぐに立ち上がる事が出来るほど強いとは思えない。
まぁでも、それも私の推測なのだけれど。
それでも、彼女の事は全てとは言わないまでも、それなりには理解しているつもりではいるわ。
それを用いて考えても、やはりこの答えしか思いつかなかった。
由比ヶ浜さん、あなたーーー
雪乃「……無理をしているの?」
私のために?
結衣『……っ…あ、あはは~、そんなことないよ~ゆきの~ん』
由比ヶ浜さん、一瞬言葉を詰まらせたわね…ということはやはり当たっていたのね。
雪乃「……はぁ、図星のようね。あなたが私を知っているように、私もあなたを理解しているつもりよ?少しは信用して欲しいわ……」
結衣『う、うん…でも、何で分かったの?』
雪乃「そんなの簡単よ。一つ、比企谷君のことが有ったのに、あなたがそんなに明るい訳ないから。二つ、私の問いかけに対し、一瞬言葉を詰まらせたから。そして三つ目はーー」
…まさか私がこんなことを言うことになるとは、思いもしなかったわね。
こんな性格で、高飛車で、友達なんて出来るはずもないいじめられっこだった私が、言うはずは無かったもの。
こんな、葉山君みたいな恥ずかしい言葉。
でも、やはり言わなければいけないと思った。
誰かに聞かれるわけでも無く、言わなければ今後の私の人生にそれほど大きな障害が残るわけでも無いけれども。
ただ、後悔したくないから。
恥を捨てて、正直な気持ちを、伝えるべきだと思ったから。
…なんだか、昔興味本位で手にとって、あまりの馬鹿らしさに二度と読まなくなった恋愛小説みたいね、私。
私は、二、三度深呼吸をして、伝えた。
雪乃「その、私はアナタのことを、友人だと思っているから。」
……恥ずかしいわ。
覚悟していたつもりだけれども、いざ言葉にすると予想を遥かに上回ってくるわね。
……そういえば、由比ヶ浜さんさっきから黙っているけれど、どうしたのかしら……
雪乃(ま、まさか、そう感じていたのは私だけで、私が
あんなことを言ったせいで)
結衣『へ?何言ってるの?ゆきのん』
雪乃「え?」
結衣『あたし達が友達な訳ないじゃん』
………そうだったのね。
私、舞い上がってしまっていたのかしら?
初めて私とまともに喋ってくれて、拒絶しないでくれた由比ヶ浜さんの優しさを、友情だと勘違いしてしまっていたのね。
そうよ、よく考えれば分かることじゃない。
……本当、滑稽ね。
結衣『友達じゃなくて、親友じゃん!』
雪乃「……は?」
結衣『あんなに本音が言えて、楽しくて、喧嘩もしたけどまたくっついて、こんなの、親友じゃなきゃなんなんだー!って話だよ!!
ゆきのんは、優美子よりも姫奈よりも隼人君よりもとべっちよりもいろはちゃんよりも、ずーーっと仲のいい親友だよ!』
由比ヶ浜さんは、力強く、耳が痛くなるくらいに、大声で叫んだ。
途端に、耳まで身体が熱くなるのを感じた。
ああ、そういうことだったのね。
さっきまで自分を卑下していた自分に寒気が走るわ。
初めてね。
嬉しさで顔が緩んでしまうのは。
比企谷君を亡くしたショックが無くなることは無いけれども、彼女のおかげで少し和らいだわ。
それにしても親友…私に親友……
雪乃「…ふふっ」
結衣『あー!ゆきのん笑ったー!!』
あ、
雪乃「あ、いえ、その、これは…その、」
こ、この私がしどろもどろになってしまうなんて…
羞恥心とは恐ろしいわね…今日二度目の辱めを受けてしまったわ。
こ、こんな時はなんて言えば良いのかしら?
こんな経験は無いから分からないわ…
結衣『あ、そーだゆきのん、お願いがあるんだけど…』
雪乃「え、ええ、何かしら?由比ヶ浜さん」
結衣『あたしのこと、名前で呼んでくれない?』
雪乃「…は?」
何故かしら?何故由比ヶ浜さんは突然こんなことを…
結衣「だめ…かな?」
雪乃「いえ、それは良いのだけれど…理由を聞かせてもらえるかしら?」
結衣『いやぁ、せっかくゆきのんと、お互いに親友同士って確認出来たんだしさ、この際名前呼びの方が良いなぁって思ったんだけど…さ。』
なる程、そういうことだったのね。
それでは由比ヶ浜さんの期待に応えなくてはいけないわね。
だって、他でもない、私の唯一の親友だもの。
雪乃「おほん、それでは……ゆ、結衣…」
結衣『うん!宜しくね、ゆきのん!』
……何で今日はこんなにも辱められなければいけないのかしら。
もしかして比企谷君の陰謀かしら。
せっかく収まった身体の火照りがまたぶり返して来てしまったじゃない。
今頃幽霊にでもなって笑っているのでしょう。
根拠もないのに腹が立つなんて、あなたすごいわね、比企谷君。
というか……
雪乃「あなたは名前呼びでは無いのね…」
結衣『私のは愛称だからいいの!』
雪乃「そういうものなのかしら」
結衣『そういうものだよ!』
こうして、数十分前とは打って変わって、私の凍てついた心は、ほんの少しだけ、温もりを取り戻すことが出来た。
どうでしたか?
次回は、出来れば小町の事情聴取、もしくは戸塚&材なんとかへの伝達にしたいと思います。
それでは、今後とも、どうぞご贔屓に~。