【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
プロローグ~日常
悲鳴が聞こえる。それに被さるようにけたたましい機械の駆動音と銃声も。その中で『彼女』は自分を包んでいた『何か』から這い出てきた。呆然と目線を上げる。見渡す限りの辺り一面の建物から黒煙が出ていた。少し目線を落とせばそこは高速道路の上。自分の周り中の車から炎が昇っていた。『彼女』は痛みを覚える。右の頭部を抑えるとそこには滑りつくような真っ赤な血が付いていた。そして、『彼女』は改めて辺りを見渡す。
「お…とうさん………。おかあさん………?」
そして、背後を振り返り………見てしまった。自分を包んでいた…守ってくれていた既に肉塊と化した家族の姿を。他にも無惨な真っ赤な姿を晒している人だった物の姿を。大破したバスだった物の惨状を。
「い…いやぁぁぁああああああああああああッ!!」
『彼女』の………まだ6歳になったばかりの少女の悲鳴が木霊する。それをかき消すように、戦闘の激しい音が辺りを包んでいた。
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ガバッ!!
「はぁ………はぁ………ゆ、夢か………。」
ベッドの上から起き上がり、少女は額の汗をぬぐう。おぞましき悪夢。あの幼い『彼女』は誰だったのだろうと少女は思う。
「嫌な夢、見ちゃったな………。」
そしておもむろに机に置かれた時計を見る。時間はもう本来起きるべき時間を当に過ぎていた。
「遅刻しちゃう!!」
ベッドから飛び起きると急いで着替えを探す。こうして、14歳の少女………関裕美(せき ひろみ)の朝は始まった。
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関裕美は平凡な女子中学生である。特徴があるとすれば茶髪がかった長い癖ッ毛と後………本人が地味に気にしているが目付きの悪さであろう。中々自然な笑顔が出来ない裕美はその事にコンプレックスを抱いていた。
自室のある2階から降りて来て居間のテーブルで朝食を取る。ふと、目の前のテレビの画面が目に入った。そこには今流行りのアイドル達が踊っていた。
裕美はパンを頬張りながら、それを見つめる。地味で陰険な自分とは縁の無い世界。いつかあんな華やかになれればいいなと思う事も有るが、無理な話だろう。
ふと、センターに立っている子に注目する。綺麗な顔立ちのセミロングの黒髪の少女だと思った。ただ、違和感が有るのは、アイドルなのに頭にタオルを巻いて踊っているからだ。髪も綺麗だと思うのに、これでは勿体ない。だが、それ以上に、何らかの既視感を覚えた。
(アレ?この子って………。)
「凄いわよね、この子達。アイドルなのに日本の最前線を守っているパイロットだもの。」
キッチンから顔を出してきた母が呟く。
そう、このアイドル………『シンデレラガールズ』はただのアイドルグループでは無い。何と二足歩行ロボを駆り、勢力を拡大している『新アメリカ帝国』から日本の領土を守っている名パイロット………。
機密事項故、裕美を始め一般の人々には詳細は伝えられてないが、そういう少女達であるらしい。先程思い浮かんだ事が消えて、本当に自分と縁の無い世界の人々だと思った裕美はパンを一気に頬張ると席を立ちあがり………。
『臨時ニュースをお知らせします。』
そこでテレビの画面が切り替わる。何事かと母と共に見ると、そこには二足歩行ロボに守られながら行進をする軍隊の姿が映っていた。
『つい先ほど、『中華共和国』が『新アメリカ帝国』に降伏したと情報が入ってきました。』
「ええッ!?」
裕美は驚く。『中華共和国』は旧中国を始め、韓国、北朝鮮などが合わさった国だ。大国として名を馳せていた国であり、日本との交流はまずまず。新アメリカ帝国との徹底抗戦を訴えていたのだが………。
「日本の周りが完全に無防備になったわね………。」
母が難しい顔をする。新アメリカ帝国は日本にも降伏を迫っている。これからは東だけでなく西の方にも注意を払わないといけない。軍事的にそれが大変なのは裕美も理解出来た。
「……………。」
「不安そうな顔をしないの。………とりあえず、そろそろ学校よ。」
「はい………。」
裕美は暗い顔をしながら家を出た。
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スクールバスには時間ギリギリではあったが何とか間に合った。他の子達が今朝のニュースについて語る中、彼女は1人バスに揺られて考える。これから日本はどうなるのだろうと。あのシンデレラガールズの子達も今まで以上に駆り出されるのだろうかと。そう思っている内に、彼女に声が掛かった。
「ひ、裕美ちゃん、おはよう………。」
「お、おはようございます………。」
そこには不安そうな顔をした2人の少女がバスに乗り込んでいた。
「ほたるちゃん、乃々ちゃん、おはよう。」
彼女達は裕美の友達でありクラスメートである。
1人目は、白菊ほたる(しらぎく ほたる)。紫がかった短めの髪が特徴的であるが、何処か裕美とは別の意味で自信が無さそうな少女だった。というのも彼女はどういう訳か不幸体質で周りに不幸を呼び込むのではと言われている事が有るからだ。学校ではそれで友達が出来ない、小馬鹿にされるなど、あまり境遇は良く無い。
2人目は、森久保乃々(もりくぼ のの)。栗色の裕美以上の長い癖ッ毛を持っており、リスのような小動物的な態度をする少女である。おどおどしていて目を合わせられないのが特徴で、こちらもほたると境遇が似ている。
そんな2人だが、裕美はその自信の無さが自分に似ているというのも有り、すぐに打ち解ける事が出来た。自分は目付きが悪いから一緒に居ればイジメられる事も少なくなるかもしれないとも思っている。
「裕美ちゃん、今朝のニュース見た………?」
「うん、見たよ。何か怖いね………。」
ほたるの質問に裕美は答える。自分達の国がいつ脅かされるか分からない状態になっている。そう考えるだけで寒い物を感じてしまう。
「しぇ、シェルターの位置を把握しておかないといけないですね………。」
ほたるの後ろに隠れながら乃々も同じような気持ちだろう。時折震えているのが見て取れる。そんな彼女達の後ろで………。
「だーいじょうぶだって!」
「ひいいッ!?」
いきなりバシンと肩を叩かれ乃々は素っ頓狂な声を上げる。そこに居たのは黒髪を後ろ髪で縛った活発そうな少女。
「美羽ちゃん?」
彼女の名前は矢口美羽(やぐち みう)。誰にでも明るい少女で黙っていれば美少女なのだが、何故か下手にギャグに走ろうとして滑る事が多い、いわゆる残念美人だ。とはいえ、裕美達にしてみれば、自分達にも明るく接してくれる美羽の存在は好意的に映っていた。………今回のようにいきなり驚かされる事も多いが。
「新アメリカ帝国がどこから攻めて来ても私達には無敵のシンデレラガールズが居る!」
「そ、そうなのかな………?」
ほたるが不安そうに声を上げる。裕美も正直同感だ。実際に彼女達が戦っている所を見ていないのだから当然と言えば当然であろう。いや、そんな所を実際に見るのはゴメンではあるが………。しかし、それにしても美羽は何でそんな自信満々にシンデレラガールズの事を信頼出来るのだろうか?
「シンデレラガールズってそんな強いの?」
「それはもう、みんな強いに決まってるよ!日本の要だもん!」
「ど、どうしてそう言い切れるのですか………?もりくぼには理解が………。」
「え!?………あ、いやまぁ、ほら、私の直感が告げてる感じかなぁ?」
盛大に目を泳がせ始めた美羽に3人は揃って首をかしげる。そんなうちに、スクールバスが学校に着く。
「あ!ほらほら!降りないと!!」
「み、美羽ちゃん?」
こうして彼女達の日常が………始まるはずだった。