【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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依田芳乃

「敵がいっぱい………。本当に大丈夫かな………。」

『案内した時も言ったけれど、今回は武装をちゃんと整えたから大丈夫だよ。』

 

 陽炎に乗り込んだ裕美は、美世の言葉を聞く。不安を押さえるように、芳乃にまじないを掛けてもらった手の平をギュッと握りしめる。

 

『今回は、基本は射撃戦で後方支援に回って下さい。陽炎が前に出る必要はありません。』

「分かりました。」

『そなたとは、わたくしの『雪風』がバディを組みましょー。だから安心するのでー。』

「宜しくお願いします。」

 

 肇や芳乃の言葉に答えた裕美は次々と発進されていく機体を見る。やがて、肇の時雨、巴の霞、愛海の吹雪、芳乃の雪風も出撃して………。

 

「えっと………関裕美!陽炎、発進お願いします!」

 

 カタパルトへと移動させられた裕美の陽炎はそのまま勢いよく発進していく。フットペダルを踏み込んだ裕美は空へと飛び立っていった。

 

――――――――――

 

 裕美の初戦闘が市街戦だった事もあり、空中戦は初めてだ。コックピットはなるべく重力を安定させる作りになっているが、それでも周りの景色を見ると浮遊感を感じてしまう。

 

『うかうかするなよ。敵は上下左右色んな所から来るぞ。』

「はい!」

 

 晶葉の通信に裕美はキーボードを弄り、武器の選択項目を開く。その中から『手持ち型ビームキャノン』を選ぶと右腰にマウントされた銃器を陽炎は右手で取り出す。晶葉の授業ではIDOLの中に備わった無尽のジェネレーター出力を活かす事に成功した武装だと聞いたが、いまいちピンと来ない。とりあえず、習った通りターゲットスコープを降ろすと先頭で突っ込んできたイーグルを狙った。

 

「えっと………射程は………もう入ってる?じゃ、じゃあ………!」

 

 裕美は息を吸うと右レバーのトリガーを押した。

 

ズギュゥゥゥウウウウウウウウウウンッ!!

 

「ッ!?」

 

 裕美は驚く。手持ちサイズの射撃武器からオレンジ色の極太のビームが勢いよく発射されたのだ。それは、イーグルを易々と貫通し、更に射線上にいた後方のダックも抉る。一瞬遅れて2つの爆発音。

 

「……………。」

『ほう、いきなり2枚抜きとはやるのう!』

『むー。射撃戦では負けてられないのでー!』

 

 巴や芳乃の言葉が聞こえるが裕美は口をあんぐり開けてしまっていた。そして悟る。これは強力過ぎると。

 

『感心するのはいいが、敵は待ってくれないぞ!もっと撃て!』

「は、はいぃ!」

 

 裕美の陽炎は敵に向かって更に手持ち式ビームキャノンを撃っていく。流石に敵も最初の一撃で警戒したのかなかなか当たってくれなかったが、それでも5体は落とした。また、避けた敵も、その隙を狙った芳乃の雪風の両肩に備わった『レールキャノン』で次々と撃ち落とされていく。彼女は倍の10体の敵機を破壊した。

 

『さて、うちもやるぞ!』

『ビームばら撒きまーす!』

『とりあえず当たれば………!』

 

 やがて距離が更に詰まって来た中で前線に出ていた巴の霞、愛海の吹雪、肇の時雨、更には如月の部隊も射撃戦を始める。

霞は右腰に据えた『連射式マシンガン』を撃ちまくり、吹雪はその丸い球体の胴体が開かれ『ジェネレーター展開式ビーム砲』と呼ばれる拡散ビーム砲を周囲にばら撒く。時雨は『パルスレーザー砲』を左腰に据えて発射。この他如月の部隊は『ホーミングミサイル』を撃っていた。

無論、相手も負けていない。ダックはほとんどが砲撃型で『ホーミングミサイル』を。イーグルも同じミサイルを立て続けに放ち、弾幕を作っていた。あちこちで爆発が起こり、敵味方の様々な機体が散っていく。

 

『4機撃破じゃ!………今日はいまいちじゃな。』

『こっちは6機ですよー!』

『0機です………。』

 

 各パイロット達が戦果を報告する中、乱戦になる。

巴の霞は連射式マシンガンをしまうと、『速射式二丁拳銃』を構え、バーニアを吹かす。狙おうとした敵機の攻撃を次々とかいくぐると次々とコックピットに正確に当てていく。

 

『うちの本領はこっちじゃ!』

『あたしも負けてられませんね!』

 

 その後ろから愛海の吹雪が続く。彼女は垂れ下がった両腕を振るうと、何とそれが伸びた。伸縮性の『ロングクロー』が2機の敵機のコックピットを貫く。

 

『もっと射撃で戦果を上げられれば皆さんの苦労も減るのに………。』

 

 肇がため息を付きながら時雨の『展開式ビームブレード』を構える。目の前に飛来したイーグルが『速射式ビームガン』を撃つが、それをビームの刃で弾くと、驚いて固まった敵機を斬り捨てる。

そんなIDOL達の奮戦を後ろで眺めながら、裕美の陽炎は手持ち式ビームキャノンをしまう。

 

(これじゃ、味方も巻き込んじゃう!)

 

 彼女は左腰にマウントされた『ビームマシンガン』を取り出す。近くにいるダックにその銃口を向け、左トリガーを押すと、緑の連射式のビームが飛び出し、その装甲を破壊する。

 

「これなら大丈夫………。」

『来るぞ!』

 

 晶葉の言葉と共にアラートが鳴る。陽炎の左下に回り込んだイーグルがホーミングミサイルを放ったのを見て、裕美はフットペダルを踏み込みバーニアを吹かす。

 

『回避行動は練習したな!』

「はい!」

 

 飛来するミサイルを、機体を右上に飛行させながら次々と回避していく。上手く出来たとホッと一息付いたのもつかの間、背中に何かが当たり、振動した。

 

「み、ミサイル!?後ろ!?」

『囲まれているので気を付けるのでー。』

 

 芳乃が通信と共にレールガンで陽炎に纏わりついてきた前と後ろの2機の機体を撃ち落とす。

 

「な、何か、私の所にどんどん来ているような………。」

『IDOLとは多対一で挑まなければ落とせない物ゆえー。その中でも実力の低いそなたを真っ先に狙うのは必然かとー。』

「うぅ………辛口。」

『安心するのでー。その分、そなたを狙う敵機をわたくしが狙いやすいのですからー。』

「私は囮ですか!?」

 

 思わず叫んだが事実なのだからしょうがない。裕美は何とか体勢を立て直すとひたすらビームマシンガンを連射する。

 

『大丈夫なのでー。裕美の安全はわたくしが保証するのでー。』

「ほ、本当に宜しくお願いします………!」

 

 360度全てを殲滅する力はまだ裕美には無かった故に、後ろとかは素直に芳乃に任せる。とにかく必死にモニターを睨みつけていた裕美は………。

 

「ッ!?」

 

 自分に向かって飛来する黒い黄色の模様の機体と青い派手な模様の機体………前の市街戦で遭遇した機体を見た。

 

――――――――――

 

「大将機ですか………。」

 

 肇の時雨は2機の前に立ち塞がる。裕美も前回に比べ遥かに実力を上げたとはいえ、まだこの2機を相手にするのは無理だと思った。肇は展開式ビームブレードを構えると突撃する。

 

『大尉!新型はあたしに任せて下さい!』

『いいわ、ここは私の『ピーコック』が請け負うわ。』

 

 そう言うと、青い派手な模様の『ピーコック』と呼ばれた機体は孔雀のような羽を展開させるとそこから『ウイング内臓拡散ビーム砲』を放つ。肇の時雨は展開式ビームブレードでそのビームの雨を遮断するが、その隙にキャシーの『ヒルマイナ』に突破されてしまう。

 

「芳乃機、裕美機を頼みます!」

『了解なのでー。』

 

 肇はそう通信をすると、素早く突進し、剣をピーコックに振り被った。ピーコックは右腰から板を取り出すとそれを広げビームを纏わせる。

 

「あの時の扇子………ビームも纏いますか。」

 

 敢えて名前を付ければ『ビームファン』と呼べる武装だろう。青い派手な外見といい、目の前の機体は洒落ている。

 

『貴女には特別に教えてあげる。私はヘレン。世界レベルの女よ!』

「ッ!?」

 

 しきたりなのか、マイクでヘレンと名乗った女性は左腰からも同じ板を取り出し、振るって来た。まさかの二刀流。

 

(不味い………!)

 

 展開式ビームブレードは威力こそあるが、その巨大さ故に取り回しは重い。ヘレンと名乗った女性は次々と斬撃を叩き込んでくる。その苛烈で隙の無い攻撃に、肇は防戦一方になる。

 

『もっと私を熱くさせなさい!私を熱く!熱く!!』

 

 手数の分、ヘレンのピーコックが僅かに時雨のバランスを崩した。そう見るや否やヘレンは左右の『ビームファン』を重ね、大上段から振り下ろす。

 

「くっ!」

 

 展開式ビームブレードを水平に構えてそれを受け止める。しかし、ビームの刃が交差する瞬間にピンポイントで出力を増大させたのか、剣に切れ目が入り、ヒビが広がる。肇は咄嗟に時雨の右足で敵機を蹴り距離を離すが展開式ビームソードは爆散する。

 

『もっと熱くッ!!』

 

 再び距離を詰め、ビームファンを両脇から振るってきたヘレンのピーコックを見て、肇の時雨は腰のポケットに入った物を取りだし、両手に逆手に構え斬撃を防ぐ。

 

『あら、貴女も二刀流なのね。』

 

 咄嗟に『ビームダガー』の二刀流で防御した肇の額から汗が流れる。目の前の女性はかなりの強敵だと悟った。

 

――――――――――

 

「こ、こっちに来ないで!」

『逃さないよ!あたしはIDOLに勝てるって示すんだから!』

 

 キャシーのヒルマイナが迫ってくるのを見て裕美の陽炎は逃げながらビームマシンガンを連射する。しかし、一向に当たる気配が無く、それどころか時々放たれる芳乃の雪風のレールガンもひらりと避けている。

 

『ジャマはしないでよね!』

 

 ヒルマイナは雪風に向かってホーミングミサイルを発射。それを見た芳乃は自分自身もホーミングミサイルを放つ。正面からぶつかり合って爆発するミサイル。

 

『裕美ー!飛び込んでー!』

「は、はい!」

 

 雪風に注意が向いた隙を狙い、陽炎はビームマシンガンを持った左腕で腹を守りながら右腕を振りかぶり、ヒルマイナに突撃する。だが、まだ裕美に仲間と『連携』をする程の腕は持ち合わせていなかった。あっさり、ヒルマイナが取り出した『ビームソード』で防御されてしまう。

 

『やっと興味を持って貰えたね!』

「だ、誰が好き好んで………!」

 

 マイクで遠慮なく喋ってくる相手を睨みつけながら、裕美は離れる。ヒルマイナは左腕に『ビームガン』を携え、距離を取ろうとする陽炎のコクピットを撃つが、予め左腕で防御しておいた御蔭で弾かれる。

 

(怖い………怖い………!)

 

 思わず目をつぶりそうになるがそうしたら死ぬ。裕美は恐怖と戦いながら必死に祈る。生き残らないといけないと。自分の大切な人達の為に。

 

『このままでは埒があかないのでー。裕美ー。わたくしの言う事をよく聞くのでー。』

「よ、芳乃さん………?」

 

 裕美の精神状態が限界に近い事を悟ったのか、芳乃が通信で話しかけてくる。その内容を聞いた裕美は不安になる。

 

「で、出来るのかな………。」

『後はそなたがわたくしを信じてくれるか否かですー。』

「私………。」

『大丈夫ですー。そなたはわたくしが守るのでー。』

「……………。」

 

防戦一方になってきた陽炎を動かしながら裕美は前に巴から言われた言葉を思い出す。

 

(出来る、出来ないの問題じゃない。やる、やらないの問題じゃ。)

 

 やる、やらない………。それしか選択肢が無いのならば。

だから裕美は覚悟を決める。信じようと。自分に生きるまじないを掛けてくれた芳乃を。

 

「行きます!」

 

 裕美は陽炎のバーニアを吹かすと一直線にヒルマイナに向かって突撃する。

 

『勇ましいね!でも………えッ!?』

 

 ロングソードで防御しようとしたキャシーは驚いた。陽炎の周りを抜くようにホーミングミサイルが飛来してくる。躱そうと思ったがミサイルの軌道がずれている事にキャシーは気付く。

 

『まさかッ!?』

 

 ミサイルはキャシーの目の前で爆発する。これでは突進してくる陽炎の姿が見えない。

 

「うあああああああああああああッ!!」

『目隠しとは!でもそれくらいで!』

 

 煙の中から出て来た陽炎の左腕の『アームハンマー』の一撃に対し、敢えて左腕で防御する。嫌な音共に左腕は粉砕されるが、これで隙が出来る。

 

『トドメ!』

 

 残った右腕でに持っていたビームソードを突き出す構えを取るキャシー。それで陽炎のコックピットを狙えば防御する右腕の装甲越しに陽炎を………裕美の命を奪えるはずだった。

更に陽炎の奥から影が出てこなければ。

 

『いッ!?』

 

 咄嗟にそのビームソードを持った手首を捻り防御しようとするヒルマイナ。だが、煙の中から陽炎の左肩の越しに突き出されたビームを纏った槍はビームソードを破壊し、そのままカメラアイを貫く。

それは、芳乃の雪風に備え付けられた『トライデント型ランス』。ホーミングミサイルを放った後、陽炎に隠れ雪風も突進してきたのだ。

 

「このおおおおおおおおッ!!」

『ここは逃げるが勝ち!!』

 

 右腕を振りかぶった陽炎を咄嗟に蹴り飛ばしたヒルマイナはそのまま一直線に戦線を離脱する。それを見た裕美は荒く息を吐きながら通信画面を見る。

 

「う、上手く………いった?」

『そうみたいでー。………裕美ー。』

 

少し笑みを浮かべた芳乃を見て、裕美は首を傾げる。

 

『信じてくれて、ありがとうなのでー。』

「……………。」

 

 その言葉に裕美は心に温かさを感じた。

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