【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
その日の夜、シャワーを済ませ寝間着を着た裕美は、割り当てられた部屋の窓から外を見ていた。そうすると色々な事が頭の中に浮かんでくる。
恐らく今頃家で心配している両親の事。
あの後どうなったか結局分からずじまいだった乃々とほたるの事。
明日行われる作戦の事。
そして………変わり始めた自分の事。
「私は………。」
「裕美ちゃん、夜分遅くにこんばんは!明日別れる前にその慎ましいお山をフゴォオオオオオッ!?」
部屋の扉を開け突撃してきた愛海が吹っ飛ぶ。裕美が後ろ手で顔面を殴り飛ばしたのだ。
「ひ、酷い、裕美ちゃん。あたし先輩なのに………あんまりですぅ………。」
「だって巴ちゃん達から遠慮なく撃退していいって言われてるから………。後、慎ましいのは余計。」
14歳だからこれから膨らむ余地はあると思っている裕美は憮然と振り返る。愛海は顔を起こすと、むーっと膨れながら前かがみになり愛らしく言う。
「大丈夫ですよ。お山に大小優劣無し!あたしは構いません!」
「みんなが構うと思うけれど………。」
本当、愛海のバイタリティには感心させられる。これで自分と同い年なのだから裕美は信じられなく思う。尚も名残惜しそうに指をワキワキさせる愛海に彼女はふと浮かんだ疑問をぶつけてみる。
「ねえ、愛海ちゃん。」
「何ですか?お山、やっぱりOKとか!?」
「愛海ちゃんはIDOLに乗って戦うのは怖く無いの?」
「はい?」
愛海は一瞬キョトンとした顔をし、そして裕美の言葉の意味を理解したのか、少し真面目な顔をし、腕を組む。
「うーん、多分裕美ちゃんが考えている事と一緒だと思います。『怖かった』が正解でしょうか?」
「『怖かった』?」
「あたしは、裕美ちゃんや美羽ちゃんを除けば一番最後にプロデューサーにIDOLにスカウトされたんですけれどね。最初の内はそりゃ、怖くて仕方なかったですよ。何せ、日本を守る為に超兵器の生命体に乗って死線を繰り広げろって言われたんですからね。」
「そうだよね。最初はみんな………。」
寂しそうに笑みを浮かべる愛海に裕美は同調する。この少女も………いや、他のみんなも元はと言えば、自分と同じだったのだ。無理矢理運命に巻き込まれて戦う道を選ばされて、そして順応してしまっている。
「………これ、話していい事なのかな?」
「え?」
「実は、IDOLのパイロットは、あたし達が『初代』では無いんです。陽炎のパイロットが美羽ちゃんから裕美ちゃんに代わったように、あたしの吹雪を含め、他の機体も先代のパイロットがいたらしいんですよ。」
「えぇッ!?」
コソコソと話してくる愛海の衝撃的な事実に裕美は驚愕する。その口をしっと塞ぐようにしながら愛海は話を続ける。
「IDOLが頑丈と言っても、乗ってるあたし達は人間です。コックピット付近の被弾でIDOLが無事でもパイロットが死傷する事はあったらしいんです。だから、新規パイロットの開拓は欠かせない事なのだってプロデューサーは教えてくれました。」
「そ、そんな事が………。」
確かに言われてみれば、IDOLは発掘されてからずっと戦線にいるのだ。今の15前後のパイロット達の年齢を考えれば、『先代』がいても全然おかしくは無い。以前、巴も自分用に霞の色を塗り替えてもらったって言っていたし、乗り継ぎは起きていたのだ。
「機密事項なので先代のパイロットの事は少なくともあたしは何も教えてもらえませんでした。でも、吹雪に乗った時に思ったんです。『あの子』には、青春を謳歌出来ないで散って行った子の想いが籠っているのかなって。」
「散って行った人の想い………。」
「そうです。裕美ちゃんにとっても美羽ちゃんと同じです。」
愛海は顔を上げる。その顔は普段見かけないような真摯な感情が籠っていた。
「あたしは考えました。先代の子の分も、青春を謳歌しなければならないのかなって。そう思うと、嫌だった戦いにも出るようになりましたし、アイドルとしてライブにも出れるようになりました。」
「アイドルの………ライブ………。」
「あたしが裕美ちゃんに勧めたのは………美羽ちゃんの事もあったからなんです。」
「あ。」
裕美は気づく。ライブのレッスンは美羽も受けていたのだ。人を笑顔にする事が好きな彼女は、軍の上層部の指示とはいえデビューする事を楽しみにしていただろう。その為に、必死に努力していただろう。
でも、それは叶わなかった。『シンデレラ』としてデビューできなかった。
「美羽ちゃんは………。」
「これはあたしの我儘です。あたしは巴ちゃんとは違う意味で、裕美ちゃんに美羽ちゃんの想いを引き継いでもらいたいと思っています。シンデレラガールズとして、舞台に立てない美羽ちゃんの努力を無駄にしないでほしいと。」
「愛海………ちゃん………。」
愛海の真剣な言葉に裕美の心は揺り動かされる。
散って行った者達の為に、今いる者達が出来る事。そこまでこの目の前の少女は考えているのだ。
だが、自分はどうだ?友達にウソを隠している罪悪感と自分に対する自信の無さだけでそれを踏みにじってしまっている。
「私は………。」
「後は、裕美ちゃんの心のままに従って下さい。自分の心にウソは付かないで。それじゃ!」
愛海は笑顔を浮かべ、部屋を後にする。残された裕美はしばらく考えていた。
自分の心が本当に望んでいる事を………。
――――――――――
『何!撤退するだと!?』
石川基地の指令室に怒声が響く。ヘレンを脇に伴った提督は部屋で上層部と連絡を取っていた。
「戦闘記録はご覧になったでしょう?あの『アルフォンシーノ』1隻ではあの戦艦とIDOLが攻めてきたら歯が立ちませんよ。」
『敵前逃亡は銃殺刑だぞ!貴様はそれを望むのか!?徹底抗戦をしろ!』
尚も声を荒げる上官の言葉に提督は内心ため息を付く。現場を分かっていない人間に状況を分からせる方が難しいのかもしれない。
隣県の福井と富山は前回の戦闘の影響で部隊を整えるのに必死になっていてとても防衛に余力を残せる状況では無かった。このまま戦闘をしても部隊を無駄に消耗するだけだろう。
ならば中華共和国まで遠征してきた部隊を出せばいいと思うかもしれないが、実は長期の戦闘により、流石に補給や修理の問題が生じてきていた。その為か、前回の戦闘で大破したキャシー・グラハムのヒルマイナも実は修理が間に合っていない。
「最悪、日本どころか中華共和国から攻め直す事になりますよ?」
『お前は私に歯向かう気か!?』
分かってくれないのは辛い物だと思った提督はヤレヤレとヘレンにジェスチャーを送りながら、話を切り出す。
「電撃戦で日本を落とすのは失敗でしたな。」
『貴様!?』
「ですが、現戦力でまだ日本に大ダメージを負わせる方法はあります。」
『何!?』
ニヤリと笑った提督は上官に話を切り出す。それを見ながらヘレンは………。
(世界レベルじゃないわね。)
そう、肩をすくめていた。
――――――――――
IDOLと人型戦闘機械を乗せた武蔵が出撃する。艦橋で東京の街並みを見下ろしながら裕美はまだ考えていた。
(私の………ホントの心か………。)
愛海が語った内容をいつまでも思い浮かべていた。
第5話 完