【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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第6話 「スタートアップ」
北信越奪還戦


 陽光が煌めく中の空を裕美は陽炎に乗って出撃する。

もうすぐ石川の首都金沢。佐藤心の事前の予測だと、ここが戦場になる可能性が高いとの事だった。だが………。

 

「何も………いない?」

『妙だな。イーグルの1機も飛んでこないのか?』

 

 それどころか金沢の街並みは穏やかで所々荒れた所も無い。

つまり、最初の奇襲でも、街は破壊されて無かったと言う事になる。

 

『敵の司令官はバカか?』

「でも、街が戦場にならない分、いいじゃないですか。この前の東京みたいにならないんですから………。」

『お前の意見は普通だよ。でも、戦争なんだ。街でも人でも利用できるものは何でも利用しないといけないのが普通の軍人なんだよ。残酷でもな。』

「そう………なんですか。」

『軍ではな。だけど、これだと敵の司令官は首都の東京は致し方なしだったが、他の街はなるべく被害を出したく無かったという甘ちゃんだという事になるぞ。そんなヤツがもしも味方にいたと考えろ。そいつの我儘に付き合わされる周りの奴らはたまった物じゃない。』

「……………。」

 

 淡々と呟く心の言葉に裕美は複雑な想いを抱く。

見境ない襲撃で美羽を失った裕美にしてみれば、なるべく街で戦闘をしないに越した事は無いと思っている。だが、心の意見も筋は通っている。が、人道に反している気もした。

 

『単純にはぁとは嫌な予感がするんだよ………。もしもその司令官がただの『甘ちゃん』じゃ無かったとしたらと考えるとな。』

「その予感って………当たります?」

『当たる時もあれば外れる時もある。………だから一層油断できないんだよ。』

 

 今回の心は総司令官という立場だ。だからこそ、石橋を叩いて渡るくらいの感情を抱いているのかもしれない。自分には到底できない大役だと裕美は思う。

やがて、武蔵を始め、舞台は金沢の街の上を通過し始める。

 

『裕美ちゃん、下見てみるといいッスよ。』

「下?」

 

 先行していた『如月』部隊の隊長である荒木比奈から声が掛かる。パイロットスーツに身を包んでいる時は邪魔になるからか彼女は眼鏡からコンタクトに変えていたが、それでも相変わらず眠そうな顔をしていた。

とりあえず、裕美は街を見下ろしてみる。

そこには………人の群れが至る所で湧き上がっていた。

 

「こ、この人達は………!」

『持っているプラカードをよく読んでみるッス。『頑張れ!』、『IDOL万歳!』『石川を取り戻してくれ!』とか書いてあるのが分かるはずッス。』

「ホントだ………。」

 

 カメラをズームにして色々なメッセージを読んでみる。彼らは自分の県を新アメリカ帝国に占領されている人達なのだ。不安な日々を過ごしていたに違いない。だからこそ、領土を取り戻そうとする武蔵の部隊を歓迎していた。

 

(あの人達は、みんな私達に期待してるんだ………。)

 

 裕美の心がズキンと疼く。悔しくても何もすることが出来ない普通の人達。だが、裕美はそうでは無い。大切な人の仇を討ち、大切な仲間の命を守る超兵器を扱う力を手に入れている。だから、みんな託すのだ。裕美達に。

ふと、昨晩の愛海との会話を思い出す。彼女は裕美にホントの心のままに従えと言った。自分が彼らに出来る事………いや、『やる』べき事があるとすれば………。

 

(ううん、まずは領土を取り戻す事を考えよう。)

 

 裕美は首を振り、この後起こる戦闘に意識を集中させる。優先事項を選ぶならばまずはそれだ。だから裕美は、前を向いた。

人々の期待を受けながら、金沢の街を武蔵が過ぎていった。

 

――――――――――

 

 敵部隊が出てきたのは本当に港に面している石川基地に近づいてからだった。相変わらず大量の『イーグル』と『ダック』の群れが飛来して来る。だが、新アメリカ帝国の飛行戦艦『アルフォンシーノ』は武蔵と基地を挟んだ海上を浮遊しており、また、基地から数隻のイージス艦が出港準備を整えているのも見えた。

 

「逃げ腰なのかな………?時間を稼ぐために出てきたのならば無理に倒さなくても………。」

『いや、戦艦はともかく人型戦闘機械は一戦交える覚悟はあるみたいだぞ。』

 

 心の言葉に裕美は下を見た。見れば、地表を灰褐色で覆われた機体が群れとなって進んでくる。その背中には大型の大砲を背負っておりこちらに狙いを定めて来きていた。晶葉達の授業で習った知識が確かならば………。

 

「地上走行型………『サンドバイパー』!?」

『実物を見るのは初めてだがな。気を付けろ、射程はこちらの長距離武器とほぼ互角だ!』

 

 それを示すようにサンドバイパーは一斉に背中の大砲………『大型キャノン砲』を撃ってきた。裕美達は回避行動を取り、巨大な弾を躱すが、近くにいた如月の内の1体が回避しきれず翼を貫かれ落下する。パイロットはパラシュートで脱出したが、墜落した機体は地面にぶつかり爆発を起こす。裕美は思わず背中に寒い物を感じるが、黙ってやられるわけにはいかない。

 

「応戦します!」

 

 『手持ち式ビームキャノン』を取り出すと地面に向かって撃つ。鈍重な機体という事前情報通り、回避行動を取れぬままコックピットを撃ち抜かれ1体のサンドバイパーが動きを止める。裕美はそのまま何発も連射し、次々とサンドバイパーを破壊していく。

 

『空中のイーグルとかはわたくしにまかせるのでー!』

 

 芳乃の雪風はそう通信を送ると二門のレールキャノンが伸びる。今回新設された装備で、より長距離を狙える狙撃モードに移行する事が出来るようになったのだ。だが、芳乃はターゲットスコープを使わず、そのまま目視で豆粒のようなイーグル達を狙っていく。

 

『発射なのでー!』

 

狙いは百発百中だった。放たれた『レールガン』が空中の敵を次々と落としていく。

 

『流石は芳乃ちゃん。爪の垢を煎じて飲みたいものです。』

 

 肇の時雨は、今回は最初から射撃戦はしなかった。『展開式ビームブレード』を構えるとそのまま地上のサンドバイパーに向かっていく。相手は『ミサイルランチャー』を撃ってくるが、円を描くようにそれを回避し、地上に降り立つと次々と斬り捨てていく。サンドバイパーは装甲も硬かったが、それでもレーザー刃の大剣の前には無力であった。

 

『いいッスね。流石IDOLッス。………さて。』

 

 戦況を見ていた荒木比奈の目が変わった。彼女は如月の『マシンガン』を携えるとイーグルの1機を狙う。敵は後ろに飛びずさりながら『速射式ビームガン』を撃ってくるが、比奈機はフットペダルを自在に踏み込み機体を捻り、最低限の動きで回避をする。そして、あっという間にイーグルに近づくとマシンガンをコックピットに打ち込み爆散させる。

低性能の量産機とは思えないその動きに裕美は驚愕した。

 

「す、凄い………!」

『うー………、久しぶりに本気出すと酔いそうッス………。とりあえず裕美ちゃんはサンドバイパーを頼むッス………いや………。』

 

 比奈はそこまで言うと、垂直に飛び上がり、飛来するビームの雨を回避する。

 

『さて、今日、私を楽しませてくれるのは誰かしら?』

『ヘレンさんでしたっけ?………流石にあの機体は如月じゃキツいッスね。』

 

 そこにはヘレンのピーコックがイーグル部隊を従え『ビームファン』を構えながら腕を組んで浮かんでいた。

 

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