【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
「キャシー、貴女達は如月を狙いなさい。今回はヒルマイナじゃないから特に無茶しちゃダメよ。」
『了解です。ヘレン大尉。申し訳ありません。自分の力不足で。』
「何度も謝るのは世界レベルじゃないわ。行動で示しなさい。」
『ハッ!』
ヘレンの言葉にキャシーを始めとしたイーグルの部隊は散開する。ヘレンは新型………裕美の陽炎を見ると、『ウイング内臓拡散ビーム砲』を撃った。
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「来る!」
裕美は左腕をかざすと、キーボードのボタンを押す。すると、ブゥンという音と共に腕から青白い光が展開される。それは、陽炎に新しく備え付けられた『エネルギーフィールド』。そのIDOLの持つ無尽蔵のジェネレーターを活かしたバリアは収束して飛んできたビームを全て遮断する。
『前より腕を上げたみたいね。恐怖の感情が少なくなっているように感じるわ。』
「貴女は………。」
わざわざマイクで喋るヘレンの声を聞きながら裕美は陽炎を左に動かす。その影に隠れる形だった芳乃の雪風がレールキャノンを放つ。しかし、まるでそれを見透かしていたかのようにピーコックは上半身を傾けるだけで躱す。
『何者でしてー?』
「分からないです………!」
追い打ちを掛けるように裕美は『ビームマシンガン』を左腕で取り出し放つがこれも軽く回避されてしまう。
更に、今度は最初から『ビームダガー』を二刀流で携えた肇の時雨が突っ込んできた。
『裕美機は芳乃機の援護を受けながらサンドバイパーの数を削って下さい!』
「1人で大丈夫なんですか!?」
『前のようには行きませんよ。それに、1機にIDOLが3機も手玉に取られては形勢が不利になります!硬いサンドバイパーが相手では火力の弱い如月では不利です。頼みます!』
肇の言葉に裕美は悩んだが、比奈達の事も心配だったし、彼女を信じようと思い、その場を離脱する。芳乃の援護を受けるとそのままサンドバイパーを撃破していく作業に従事した。
――――――――――
「なぁ………マキノちゃん、志希ちゃん。お前らが新アメリカ帝国の司令官だったらどう攻める?」
「まず、サンドバイパーの部隊は金沢の市街地に展開します。遮蔽物を盾にしながら大型キャノン砲やミサイルランチャーを放つだけでも厄介になりますからね。」
「街中なら過剰出力の陽炎の手持ち式ビームキャノンは使えないからあっさり撃破させられることも無いよねー。」
「だよな。そして、新兵も混じっているとはいえ、IDOL3人を手玉にとれる実力者もいる………。」
心は戦況を見つめながら顔をしかめさせていた。前回の戦闘よりも状況はいいのに、その表情は厳しい。何かが引っかかっていた。
「裕美ちゃんじゃないが、何で相手は逃げ腰の陣形を取った?あのヘレンって言う女の機体を中心に市街戦を挑めば数段戦況は変わったはずだぞ。」
「バカだから………という考えでは済まない『何か』がある気がするのですね。」
「うーん、もしかして『IDOL全員で来る』と思っていたから予め逃げる準備をしてたのかも?」
何かを考えるように顎に手を当てるマキノに相変わらず猫みたいな笑みをこぼす志希。2人の意見を聞きながら心は色々考えていた。敵指揮官の目的を。もしかしたら………。
(仮にそうだとしたら………いや、だからと言って今のはぁと達に対応できる事でも無いぞ?)
心はこの不安が的中しない事を願った。
――――――――――
『うわああああ!中尉ーーーッ!』
「クッ………前回の如月達とは違う!」
撃ち落とされる仲間を横目で見ながら、キャシーは苛立ちが募るのを感じた。キャシーのイーグル部隊に対峙する如月部隊は連携が取れていた。それだけでなく、単体の『技量』もこれまで対峙した如月とは明らかに違っているのを感じた。
「あたしはまだ未熟ってか!!」
そうマイクで思わず叫ぶが相手の方は叫び返してくれる程、ノリがいいわけでは無いらしい。彼女は速射式ビームガンで目の前に迫った如月を狙う。
「当たれ!!」
その気迫のこもった一撃は如月のカメラアイを貫いた。よしっと思ったのもつかの間、アラート。見上げて迎撃しようとして、思わず顔をしかめる。
(太陽の中から!?)
日光をバックにした機体から蹴りが放たれる。速射式ビームガンを取り落としたキャシーは思わず左腕でコックピットを守った。御蔭で直後に放たれたマシンガンで死ぬ事は無かったが、左腕と翼が破壊されてしまう。そのまま落下する機体を別のイーグルが抱え、撤退していく。
『大丈夫ですか、中尉!』
「チクショウ!ヒルマイナが無ければあたしは如月にも勝てないのか!」
思わず両手でコンソールを叩いたキャシーはしばらく項垂れていた。
そして、キャシーを撃退した如月………比奈は………。
『吐いたら怒られるッスよね………。気持ち悪いッス………。』
いつも通りに呟いていた。
――――――――――
『ヒルマイナとの戦闘記録とライブの音声を照合させて貰ったわ。貴女、藤原肇って言うのね。』
「把握していましたか………。貴女とはこれで3回目になりますね。」
ビームダガーとビームファンをぶつけあいながら肇はヘレンのマイクに初めて答える。
ライブをしている以上、IDOLのパイロットの素性は明らかになる。だから、敵に名前を覚えられることには慣れていた。
「貴女は戦いを楽しんでいるのですか………?」
『ええ。楽しまなければ損でしょう?人生は輝かせる物よ!』
「その感覚は、理解できないですね………!」
僅かに怒りの感情を込めながらビームダガーの出力を上げる。ビームファンを押し返そうとするが、相手も負けじと押し返して来る。
『連れないわね。貴女、さては『10年前』の悲劇を経験した身かしら?』
「ッ!?何故、それを!?」
『女のカンよ。』
「そんなもので………!」
明らかに怒りの感情を言葉に込めた肇は、時雨で頭突きを食らわせる。これには流石に予想が付かなかったのか、距離が離れる。
ビームファンを構えなおしたピーコックに向けて時雨は握っていた右手のビームダガーを投擲する。それは、ピーコックの右手のビームファンを破壊する。
「もう1つ!」
『甘いわ!』
更に左手のビームダガーも投擲するがこれはビームファンに弾かれ爆散。ヘレンのピーコックはそのままファンを振るう。
『さぁ!どうするかしら!?』
「こうします!」
肇の時雨が拳を合わせるようにして垂直に下ろされたファンを挟み込む。ヘレンはその拳がスパークするのを見て、ファンを離した。すると、すぐさま爆発する。
『『炸裂ボルト内臓ナックル』と言った所かしら!?』
「落とします!」
時雨に新設された腕部装備『炸裂ボルト内臓ナックル』を使った肇は、そのまま背中にある『ビームソード』を引き抜く。それを振るってトドメを指そうとしたが、ピーコックは何と右の素手でそれを掴む。すると、今度はその右手の中が輝き、ビームソードが爆散した。
「『掌底ビーム砲』………!?」
『肇!貴女との戦いは楽しいけれど、そろそろ時間ね。じゃあ、また会いましょう!』
「クッ………!」
後ろに飛びずさるピーコックに『パルスレーザー砲』を放つが当たるわけが無い。海上のアルフォンシーノに撤退していく。
「私は………もうあの悲劇を………。」
肇はタオルに覆われた右頭部を押さえながら唇をかみしめていた。
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戦闘はもう雌雄を決していた。飛行戦艦でイーグルやダック。そしてイージス艦でサンドバイパーを回収した提督達は、そのまま石川基地を後にする。後悔の感情は抱いていなかった。何故ならば自分の役割は十分『果たした』からだ。
彼は艦橋に戻ってきたヘレンを迎える。
「どうだ?IDOLと戦った感想は?」
「久々に熱くさせてもらったわ。でも、キャシーは力不足を痛感しているみたいね。」
「その感情がより彼女を成長させるさ。だが、今回来たIDOLは3機か。意外と日本軍も慎重だな。」
「でも、東京に残ったのは2機よ。『あの娘』に任せるには十分じゃない?」
『ヘレン、アタシこれでも少将だから、子供扱いはして欲しく無いわ。』
通信で別の声が聞こえてくる。モニターに映ったのは金髪碧眼のツインテールの少女だった。
「やあ、メアリー・コクラン少将。そちらの状態はどうだい?」
『言われた通り順調よ。『ソル・カマル』の準備も整っているし、やってやるわ。』
「ああ、期待しているよ。」
手を振るメアリーに対し、提督はニヤリと笑みを浮かべた。
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「終わったんだ………。」
『石川基地攻略はな。』
撤退していく敵を見ながら裕美は呟く。通信で答えてくれた心は喜んではいなかった。裕美も何か今回は出来過ぎた気がしていた。前の時のほどの恐怖を感じなくなったのもあるかもしれない。だが、それを除いても今回は少し拍子抜けていた気がした。
『それじゃ、アタシ達第三部隊は福井基地に行くので。』
『シンデレラガールズもこのまま富山基地攻略に向かう。行くぞ、お前ら。』
「了解………。」
何か違和感を抱えたまま石川基地を後にしようとした裕美はそこで基地から人が沢山出てくるのを見た。捕われていた石川基地防衛の兵士達だろう。彼らはあらんばかりの力で裕美達に手を振ってくれた。
「肇さん、芳乃さん。昨日、愛海ちゃんに言われました。私がやりたい事をやればいいって。」
『決まったのですか………?』
肇の言葉に裕美は首を縦に振る。美羽、巴、愛海。思えば色々な人が自分にアドバイスをしてくれた。
美羽は死ぬ間際自分が優しくて守れる人物だと言ってくれたし、巴は出来る出来ないではなく、やるやらないと決めるべきだと叱咤してくれた。そして、愛海は自分の心に従えと言ってくれた。
正直、まだまだ不安な側面もある。だが、そういう信じてくれる人達に自分が出来る事があるのならば………。
「私は、私を見守ってくれている人達の役に立ちたいです。」
『じゃあ、貴女は………。』
「私は、『アイドル』になります………!」
裕美は顔を上げ、ハッキリと言った。