【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
ソル・カマル
太平洋上にイージス艦『モーレイ』が数隻並んでいる。この部隊は新アメリカ帝国のハワイ諸島から派遣された部隊で一直線に東京を目指していた。
そして、その中心となる………つまり今作戦の指揮を行うモーレイの通路を、司令官の『少女』が1人の女性を連れ添いながら歩いていた。
少女の名はメアリー・コクラン。若干11歳にして少将の称号を手に入れたサンフランシスコ出身の娘だ。彼女は敬礼する自分よりも下手したらダブルスコア、いやトリプルスコアも年上の兵士達に手を振りながら通路を進んでいく。
「相変わらずウソが好きな兵士達ネ。アタシが少将なのが納得いかないのならば、堂々と言ってくればいいのニ。」
「言ったら罰則で腕立て伏せ100回でしょう?」
「当然デショウ?アタシは少将だもノ。名ばかりの踏ん反り返っているだけの叔父様達とは違うのヨ、クラリス。」
クラリスと呼ばれた女性は若干困ったような笑みを浮かべた。彼女もメアリーと同じく長い金髪の女では有るが、こちらは成人している。見るからに慈母であるような安らかな表情を浮かべており、しかし何故かその目はずっと閉じられていた。ちなみに階級は大佐でこの船ではメアリーの次に偉い。彼女の任務はメアリーの色々な意味での補佐であった。
「確かに貴女は行動派です。でも、貴女が2人を迎えに行く必要は無かったのではないのですか?命令してくれれば私が行きましたよ。」
「こういうのは総司令であるアタシから改めて言わないといけないコトヨ。どんな立場であれ、敬意は忘れちゃいけないワ。」
そう言っている内にある部屋の前に来た。その前に銃を背負って待機していた兵士達が敬礼をする。メアリーは他の兵士達に対して取ったように手を振ると部屋の中に入った。そこには、2人の少女が簡易型のベッドにパイロットスーツを着て座っていた。
「ご苦労様ネ、ライラ、ナターリア。」
「あ、どうもメアリーさん。」
「ナターリア達も出撃なのカ?」
遠慮のない言葉に銃を持った兵士達が訝しむがクラリスがそれを制する。メアリーは特に気にした様子も見せず、2人に近寄る。
ライラと呼ばれた少女はメアリーと同じ金髪碧眼で、長いその髪は下ろしていた。ナターリアの方は黒髪を靡かせており、ライラに比べスタイルがいい。
そして、2人共褐色の肌を持っていた。
「今回の作戦は『ソル・カマル』の2人にも出てもらうワ。上層部は貴女達のコト『当て馬』にしか考えていないみたいだけれど、アタシは期待してるから宜しくネ。」
「あー………それは俄然やる気が出てきますがライラさん、褒美にアイスが欲しいのですよ。」
「ナターリアは日本に上陸で来たら『スシ』を食べたいネー。」
「ハイハイ、上手くいったらアイスでもスシでも何でも奢ってあげるから本気だしてネ。」
どう見てもメアリーに対し、少将の扱いをしていない2人に、遂に後ろの兵士達の沸点を超えたのか、思わず銃を構える。
「き、貴様ら!『属国』の民の分際で!!」
「ハイ、貴方達、腕立て100回。」
「しょ、少将!?しかし!?」
思わず声を荒げた兵士達を睨みながらメアリーは言う。
「属国でも何でも、今回の作戦の要はこの2人ヨ。彼女達が本気を出してくれなければ作戦の成功はおろか、この船が沈む可能性だって高いワ。新アメリカ帝国の兵士ならば、些細な感情で指揮を下げようとしないでよネ。」
そう言うとメアリーはそれ以上構わず、クラリス、ライラ、ナターリアを連れ立って部屋を後にする。残された兵士達は唇を噛み締めながら床で腕立て伏せを始めた。
――――――――――
10年前に名前を変えてから、新アメリカ帝国の影響力は拡大していった。世界中のありとあらゆる国に侵攻を開始し、様々な国を属国に変えていった。ライラの属するアラブやナターリアの属するブラジルもその影響を受けた国である。
彼女達が物心をつく頃には新アメリカ帝国の兵士達が街を我が物顔で徘徊していた。そして、学校の授業ではシミュレーターが導入されていた。
領土の拡大に伴い、属国で見つけた優秀なパイロットを強制的に働かせるためである。それだけ新アメリカ帝国の力は増していたのだ。
その国の歴史を支配する立場であるメアリーはあまり宜しくは思っていなかった。
「ちょっと質問しても宜しいでしょうかー?」
「何、ライラ?」
行きよりも更に周りから奇異の目を向けられながらメアリー達は格納庫へと向かう。その視線を感情の無い顔でキョロキョロと見渡しながらライラは言う。
「あまり、ライラさん達が今回の作戦に参加する事を好んでいる方々がいるように感じませんが、それを無視しなければならないほど状況は切羽詰まっているのですか?」
「プライドの高い上層部は中華共和国を占領した勢いで、日本もいい加減占領したいのヨ。でも、新しい5体目のIDOLが出て来てしまっタ。敵を調子に乗せるのが大嫌いだから今回の作戦で決めたいんでしょうネ。だから、本来ならば嫌うはずだった貴女達のようなパイロットにも頼る方針を固めたワケ。」
「ナターリア達が頼られるのも複雑だナ。」
「時期が間に合えば『復讐者』達を使う案すら出ていたほどだものね。」
『復讐者?』
ライラとナターリアが揃って首を傾げる。クラリスが少し寂しそうになる。尋ねられたメアリーは少しだけ目を伏せながら答える。
「とある名前を捨てた『提督』のトラウマヨ。今後会う事にもなるかもしれないわネ。」
「どんな人達なんだろうナ。ナターリア気になるゾ。」
「まあ、今の所は、貴女達は自分の身の安全と、故郷のリオとドバイの安全だけを考えてイナサイ。」
メアリーはそう言うと格納庫へと2人を案内した。
――――――――――
「来たか。………ここら辺予想通りじゃな。」
『あたし達が残っていて正解でしたね。』
東京湾から出港した、『阿武隈(アブクマ)』と呼ばれる最新鋭のミサイル等を搭載した護衛艦の内の一隻の格納庫で霞に搭乗した巴が隣で吹雪に搭乗した愛海と会話を交わす。IDOL達が分散するという事で(保身には長けている)上層部の指示が行き渡っていたのか、いつでも交戦出来る準備は整っていた。
『いい?今回の任務は敵の人型戦闘機械を東京に上陸させない事。だから、敵のイーグルを中心に片っ端から撃ち落として行って。』
今回、巴達の上官となる海上防衛部隊の第一部隊隊長の兵藤レナから通信が来る。前回の東京襲撃は反対側の陸からの攻撃だった故に迎撃が間に合わなかったが今回はそうではない。正面からぶつかればこちらにも十分勝機のある戦いだった。
………しかし、故に巴達は何か引っかかった。
「敵の配備はイーグルやダック中心じゃろ?それだけでIDOLを含む部隊に勝てると思っていたのかのう………。」
『舐められていたって事になりますよね?それともIDOL達はみんな石川に行くと思ってたとか?』
『………まあ、敵の目論見が外れたというのならば、それに越した事は無いがな。』
今回、阿武隈で巴と愛海のサポートをしてくれる晶葉も納得がいかない様子だった。
やがて、発進の合図が出る。
(とにかく、やればいいだけの話じゃよな。)
巴達は船上に出ると、次々と飛び立っていった。
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海上で日本の如月と新アメリカ帝国のイーグルとダックがぶつかり合う。遠方からの射撃戦から始まり、乱戦に繋がる様子はいつも通りの光景だった。
「愛海、後ろには通すな!」
『合点承知!』
巴の霞は『速射式二丁拳銃』を構えると次々とイーグルの群れを射抜いていく。愛海の吹雪も腕を伸ばしながら『ロングクロー』で敵を落として行く。
レナの第一部隊と松山久美子の第二部隊も、如月を駆り、『マシンガン』や『ホーミングミサイル』で敵を少しずつ削り始めた。
「晶葉!敵の様子はどうじゃ!?」
『特に変化は無いぞ?これでは無駄に戦力を浪費しに来た物じゃないか?新アメリカ帝国はバカなのか?』
『油断をして痛い目を見てるとか?』
『だといいが………いや待て!アレは何だ?』
晶葉の言葉に巴は見た。中央に位置するイージス艦モーレイに、青と白、黄と緑の2機の機体が並び立っていたのを。
――――――――――
『では、『パラキート』、出撃をお願いします。』
『狙いはIDOLダケ。それ以外は無視していいカラ。』
クラリスとメアリーの通信を聞いたライラ達は『パラキート』と呼ばれる機体の腕を器用にガシガシと動かし、準備運動をする。
「ナターリアさん、どちらを狙いますです?」
『ナターリアはあの丸いのにしようかナ?』
「じゃあ、ライラさんはトゲトゲのにしますです。」
ライラはコクピットの中で思いっきりノビをする。
モーレイの中は正直窮屈だった。メアリーやクラリスのように分け隔てなく接してくれる者もいるが、基本は周りの人から見れば、自分達が奴隷のような物だ。故郷の価値観を奪われ、こうして新アメリカ帝国の兵器に乗って戦う事を強要されている。
今の自分達に残った故郷の要素と言えば、この『名前』と『ソル・カマル』というユニット名くらいだ。だからこそ、ライラもナターリアも、互いの事は大切にしたかった。
「生きて戻りましょう。」
『ライラもネ。』
そう軽く会話をして拳を合わせると………バーニア出力を全開にして飛び立った。