【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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崩れ去る平穏

 中華共和国………いや、旧中華共和国海上のイージス艦にて金髪の青年の男が女を執務室へと呼んだ。入って来たのは長い黒髪を靡かせた女性。小柄ではあるがそれを感じさせない大物のオーラを纏っていた。

 

「何かしら、『提督』。次の作戦の指示?」

「そうだ。これより石川県に強襲部隊を派遣。日本軍を殲滅させた後一気に上陸させ、そのまま東京まで侵攻する。」

「随分、人使いが荒いわね。日本軍がそう簡単に倒せると思っているのかしら?」

「厄介なのは東京に居座る『IDOL』だけだ。量産機の『睦月(ムツキ)』は所詮、我々の『人型戦闘機械』の前にはほぼ無力だ。」

「基地を攻略しようとすれば迎撃が来るわよ?犠牲は避けられないと思うけれど。後、燃料の補給はどうするの?」

「補給は今回長距離遠征用機体『ダック』の外部ユニットに燃料タンクを装備した物を使用する。」

「アレ、装備が十分じゃないわよ?近接型か砲戦型か選ばないといけないじゃない。それならば、一旦石川基地を占拠して体勢を立て直した方がいいんじゃない?」

「石川基地攻略は、他の船から通常機体の部隊も同行する。………上層部は電撃戦で日本の出鼻を挫くのが好みだそうだ。」

「現場を知らない人達の身勝手ね。」

「だから大尉、今回は君のような優秀な指揮官に任せる。………その『ヘレン』の称号、伊達では無い事を証明して貰おう。」

「フッ………日本に世界レベルを見せつけろってわけね。」

 

 ヘレンと呼ばれた女性は『提督』と呼ばれた男性の言葉に応じる。

 

「とにかく今回の作戦で石川を始め、北信越は確実に貰う。東京はそのついでだ。『IDOL』達に頼りきった日本に泡を吹かせてやれ。」

 

一見すれば敵中心部に特攻を掛けるような無謀な作戦。しかし、それに臆する事の無い実力者達がこの船には揃っていた。その筆頭がこのヘレン。

 

「やってやるわ。他は?」

「キャシー・グラハム中尉を連れていけ。最近メキメキ実力を上げている。」

「あら、あの娘が?私もうかうかしてられないわね。」

 

 そう言うとヘレンは髪をかき上げ執務室を後にする。外に出るとすぐに金髪ショートの少女が敬礼をしていた。ヘレンと比べるとかなりの身長差が有るように思える。

 

「ヘレン大尉、ご同行宜しくお願いします。」

「キャシー、貴女の機体は私と同じ近接戦闘仕様だったわね。砲戦用装備を積めない中でIDOLとやり合う自信はある?」

「お任せ下さい。ニューヨーク生まれの実力、見せてやります。」

 

 にやりと笑うキャシーにヘレンも笑みを返した。

 

――――――――――

 

「終わったー。」

 

 学校の下校時間になり、校庭に出た裕美はノビをした。色々あって集中できなかったからか、今日の授業は非常に長く感じた。それだけにこの開放感はひとしおとも言えた。

 

「これからどうしようか?」

「時間があるなら………何処かアイスクリーム屋にでも寄って行く?」

「も、もりくぼもそれで………。」

 

 左右にはほたると乃々もいる。彼女達の言うアイスクリーム屋は美味という事で学校の噂で持ち切りだ。裕美もそこのアイスは大好きだった。

 

「うん。行こう、行こう。何か今日は朝から色々あったし………。」

 

 そこで気付く。教室に宿題を一部忘れてきた事に。提出期限は明日まで。取ってこなくてはいけないだろう。

 

「ついて無いな………。」

「ご、ゴメンね………私のせいで………。」

「ほたるちゃんのせいじゃないよ。ゴメン、取ってくるけれど今からだともうバス出ちゃうから2人は先に帰っていて!」

 

 手を合わせて2人に謝罪すると、裕美は教室へと走って行った。

 

「アレ?美羽ちゃん?」

 

 戻った裕美は驚く。そこには何やら真剣そうに自分の机の中を漁っている美羽がいた。

 

「あ、裕美ちゃん!………もしかして裕美ちゃんも忘れ物?」

「そうだけれど………美羽ちゃん、それ何?」

 

 裕美は美羽の握っている物に着目していた。恐らく今机の中から見つけた彼女の忘れ物だろう。だが、それはアクセサリと言うには大きく、楕円形で、真ん中に埋め込まれている緑色の何かが光っている物だった。

 

(なん………だろう?)

 

 何故か胸騒ぎがした。あの光を見ていると、何かに吸い込まれそうな気がしてくる。今までの自分の価値観が崩れてしまうような………。

 

「え?あ?い、いやゴメン!何でもないの!!」

 

 一方美羽は慌ててそれを背中に隠し、そして後ろを向いてポケットの中に入れる。その態度が怪しくて、先程の光と合わせ、裕美の中に疑念の感情を抱かせる。

 

「美羽ちゃん………?」

「あはは!アクセサリと言うにはほら、何か不格好な物買っちゃったからさ!ほら、そんな怖い目で見ないでって!」

 

 美羽は作り笑いを浮かべると手をぶんぶん振って見せる。彼女はウソが下手だから、アレが『アクセサリ』では無いのは裕美にも分かった。だが、この場合、だったら何だろうという事になってしまう。

 

「何か今日の美羽ちゃん、変。」

「ご、ゴメン………何ていうか、今日は記念日だから舞い上がっちゃっていて。」

「記念日?」

「そう!あ、プライベートな事だから詳しくは言えないけれど………。」

 

 指で何かを示すように描きながら笑みを浮かべていた美羽とそれに首を傾げる裕美。その時………、

 

ゥウウウウウウウウウウウウッ!!

 

『ッ!?』

 

 警報が鳴り響いた。

 

――――――――――

 

 校舎の外に出た2人は度肝を抜かされた。北西の空に幾つもの『群れ』が見えたのだ。最初、裕美は鳥だと思ったが、鳥にしてはゴテゴテしており、翼もはためいていない。更に高速接近するその物体を見るとそれは機械だという事が分かった。

 

「な、何………?」

「艦長!何が起こったんですか、艦長!!」

「え?」

 

 声に反応してみれば、美羽がいつもの様子からは考えられないような切羽詰まった形相で携帯端末を使い電話をしていた。相手が誰だかここからでは分からないが、少なくとも裕美の中で『艦長』とあだ名を与えられている人を知りはしない。

 

「いきなり実戦か………。」

「み、美羽ちゃん………?」

「裕美ちゃん………シェルターに避難して。」

「避難って、何が起こったの!?」

「新アメリカ帝国が攻めてきた!アイツら、石川基地を突破して山を越えて飛んできた!」

「ええッ!?………って、何で美羽ちゃんがそんなこと知ってるの!?」

「とにかく避難して!事情は後で話すから!」

「話すって………美羽ちゃんは!?」

「ゴメン!私行かないといけない所あるから!!」

 

 それで強引に会話を止めると美羽は走り出す。その方角はシェルターとは真逆の方向だった。ビックリした裕美はどうしようか迷う。すると、何処かで爆発の音が起こる。戦闘が始まったのだ。

 

「み、美羽ちゃん!待って!!」

 

 結果的に裕美は美羽を追いかけてしまった。………これが、彼女の運命のターニングポイントになると知らずに。

 

――――――――――

 

「コンディションレッド発令。コンディションレッド発令。パイロットは順次発進して下さい。」

 

 アラートが響き渡る中、東京基地は慌ただしさを増していた。黒色の二足歩行ロボが次々と出ていく中、1人の頭にタオルを巻いたパイロットが藤紫の機体へと乗り込み、通信を繋ぐ。

 

「マキノさん、敵機の構成は?」

『新アメリカ帝国の長距離遠征用機体『ダック』の近接型と砲戦型で構成されているわ。ただ、専用の指揮官機らしき機体が2機見受けられている。石川基地を攻略してその足でここまで来る猛者だから、余程のバカか凄腕よ。』

「ありがとうございます。」

 

 マキノと呼ばれた女性の言葉を聞き、パイロットの『少女』は考える。指揮官機を先に狙うか否か。指揮官機を失えば、敵の戦意を削ぐことは出来るが、同時に自棄になって特攻してくる可能性もある。難しい所だった。

 

『肇ー。敵は砲戦型でも市街地で暴れまわるでしょー。ならば、住民の被害を考えればそれらの数を減らすのが得策なのでー。』

「そうですね………。」

 

 住民の被害という言葉で彼女の眉間にしわが寄る。自分達が一番招いてはいけないのは一般市民の犠牲だ。それに全力を尽くすべきだろう。………もう、『あの悲劇』は招いてはいけないのだから。

 

『しかし、運がいいのか悪いのか。美羽の歓迎会をするから、うちらIDOLのパイロット達が偶然基地に集まっていたが、そうじゃなければどうしたんじゃろうな。』

「この幸運には感謝しないといけませんね。」

『あたしは早くこの戦いを終わらせて美羽ちゃんのお山登りたいなー。美羽ちゃんのお山♪お山♪………うひひッ!』

「不謹慎ですよ………。」

 

 ある意味いつも通りの仲間達の姿に安堵を覚える。遂にこの東京の街中を襲ってきた新アメリカ帝国に対し、内心緊張している部分もあるだろう。だが、今まで日本の海を守ってきたのだ。市街戦という面倒な立ち位置にはなったが、これくらいで臆してはいけない。悲劇を繰り返さない。だから自分はIDOLを受け入れたのだから。

 

『肇ちゃん、発進準備出来たよ!あたし達も後から『睦月』で出るから!』

「ありがとうございます、美世さん。………藤原肇、『時雨(シグレ)』参ります!」

 

IDOLの一番槍として………現隊長として、藤原肇(ふじわら はじめ)は勢いよく発進した。

 

――――――――――

 

「IDOL4機全機発進しました。『睦月』部隊も続々と発進。次々と街中に展開しています。」

「既に交戦している部隊の状況はどうだ?」

「第一部隊から第五部隊まで『ダック』部隊と交戦してますが………相手の砲戦機がお構いなしに『ホーミングミサイル』を発射している模様。被害が拡大しています。」

「面倒だな、オイ。」

 

 一転して東京基地のとある司令室。マキノと呼ばれた女性の情報分析を聞いた女性は苦虫と噛み潰したような顔をする。女性としては子供っぽく、栗色にツインテールという一見すれば幼い風貌だが、背丈は高く実はとっくに成人している。

 

「IDOL達は砲戦型から破壊するように命じていますが、近接型が妨害を行っているみたいです。戦略の基本とはいえ、これに対して上層部はどう命令が来ています?」

「戦線を維持し、可能な限り早期に敵を殲滅せよ………だとよ。」

「ありきたりですね。具体性が全くありません。」

「とにかく、被害を抑える事に注力!シェルターだけはやらせるなよ!」

「了解、心艦長。」

「はぁとと呼べ。」

 

 そう、佐藤心(さとう しん)は不機嫌そうな顔をしたのに対し、マキノは逆に問いかける。

 

「そう言えば、5機目のIDOLはどうなっています?恐らくまだ存在は知られてはいないとは思いますが………。」

「美羽が向かっているらしい………出る気だぞ、アレ。」

「あそこには『プロデューサー』もいましたよね、確か。」

「厄介な事が起こらないといいんだがな………。」

 

 心はそう言うと、膠着した戦線に目を向けた。

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