【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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先代

 被害が出てから数日後、富山基地から武蔵に乗って東京に戻ってきた佐藤心はプロデューサーと共に司令部の会議に参加していた。その場は重苦しい雰囲気に包まれており、心は正直苦手だと思っていた。

 

「今回の新アメリカ帝国の襲撃により、この司令部にも被害が出た。見渡せば分かると思うが亡くなった司令官もいる。」

(そういうことじゃないだろ、オイ。)

 

 やっぱりそうなるかと思いながら、心は内心無言で苛立つ。

司令部に集まっているのは戦争をする覚悟が出来た者だ。それよりも、その防衛に睦月の機体を割いた為に被害が出た都民の事を第一に心配しろと思う。そんな中でも会議が続き、それを纏める長官の言葉が心に向いた。

 

「さて、この一連の被害………。どう『責任』を持つつもりかね、佐藤心大佐。」

(やっぱ来たよ、面倒だな。)

 

 心はヤレヤレと思い、心の中でかぶりを振りながら立ち上がる。

この一連の会議の本題は、責任を何処にぶつけるかだ。そして、ここに居る者達は、ハッキリ言って全員それを被るのはゴメンなのだ。だから彼らは真っ先に心を………『シンデレラガールズ』をその対象に選ぶ。

 

「お言葉ですが、我が部隊は北信越の基地を奪還しました。海上の防衛に出たIDOL達も敵指揮官機を押さえ、撤退にまで追い込みました。そこまでの戦果を含めて『責任』を押し付けられるのは心外ですが?」

 

 珍しく真面目な口調で話した心。

隣に座っているプロデューサーは無言だったが、心の発言を否定しようともしなかった。こういう場ではこの男は唯一の味方だ。

 

「IDOLとは、文字通り『一騎当千』の活躍をしてくれる超兵器だ。その兵器を任されている以上、『1機』相手に苦戦している現状はおかしくはないかな?」

「新アメリカ帝国も研究を進めています。対策も進んでいます。もう昔のような『一騎当千』は難しくはなってきています。」

「弱腰な発言だ。だから今回のような被害を出しても許されると言いたいのかね?私にはそれが理解できないな。」

「司令部の守りを重視するあまり、市街地の被害を顧みなかった方の言葉とは思えませんね。」

 

 事実を述べながらも心は強気だ。元々の性格もあるだろう。だが、それ以上に日本にとってはなんだかんだ言ってIDOLの力が無ければ防衛できないという現実がある。それが分かっているからか、長官もこれ以上追及してはこなかった。

 

「これ以上はいつもの通り、平行線か。新アメリカ帝国も電撃戦で落とせなかった以上、しばらくは準備期間を設けるだろう。その間に失われた司令官やパイロットの補充、睦月や如月の量産を行い、バックアップを強化する。君達を支援する体制を整えなければ私達の命もいつ消えるか分かった物じゃないからな。」

「早期の実現をお待ちしています。」

 

 心はそう言うと着席する。長官は無表情で隣のプロデューサーに視線を移す。

 

「さて、名無しの少将殿は何か意見があるかね?」

「軟禁されている2人の一般市民はどうするのですか?」

 

 立ち上がり呟いたその言葉に心は複雑な想いを抱く。

それは、睦月に乗って戦闘に参加してしまった森久保乃々と白菊ほたるの事だ。2人は今、司令部の一室で過ごしていた。プロデューサーと呼ばれるこの男が現状況を芳しく思っていない事を心は『理解できた』。

 

「2人の一般市民?1人の一般市民と1人の『軍人』の間違いではないかね?」

「一般市民です。少なくとも『今』は。」

「『こないだ』までだよ。森久保乃々元少尉は、階級をはく奪されたにもかかわらず、再び人型戦闘機械に乗り込んでしまった。」

「乗るしか無かった状況であったとしても………?」

「偶然とは恐ろしい物だ。だが、それを合法的に解決する手段を君は知っているだろう?」

「………貴方達は関裕美少尉と同じ運命を担わせろと言うのですか?」

「本音を言えば別にそこまで望んではいない。彼女はもう『輝きを失った原石』なのだからな。」

「……………。」

 

 プロデューサーが普段は見せないような威圧感を放つのが心には分かった。

心は他の『シンデレラガールズ』のメンバーよりも年を取ってしまっている分、このプロデューサーが森久保乃々に拘る理由を理解していた。故に、この男が暴発しないか気がかりであった。というか、今は心のままに暴発して欲しい気もしたが。

とにかく、そんな視線を真正面から受けながらも長官は涼しい顔をして言う。

 

「少将。君がどう思おうと、私は『事実』しか言えないよ。君に恨まれようと、呪われようともね。それが立場なのだから。」

「そうですね。」

 

 プロデューサーは座る。会議は他にも色々話し合われ、そして終わった。

 

――――――――――

 

 裕美達は、部屋の一室で会議が終わるのを座って待っていた。

正直、裕美にしてみれば信じられない事柄に思った。戦いに2人の友達が巻き込まれた。それだけならまだしも、その内の1人、乃々の方は人型戦闘機械を駆ったというのだ。

その事実は裕美が救出作業を行っている間も。

無事に避難してくれた両親と再会し、抱きしめられている間も。

クラスメイトの一部に被害が出てショックを受けている間も。

ずっと心の中に引っかかっていた。

 

「一体、どうして………。」

「裕美ー。落ち着くのでー。」

「ゴメン、芳乃さん。私、落ち着けない………。」

 

 芳乃が裕美の手を取ってくれたがそれでどうなる物でも無かった。ただ、今願っている事は1つ。軟禁されているほたると乃々を解放して欲しかった。

 

ガチャ。

 

 裕美が見上げる。扉が開くとプロデューサーと心が疲れた顔をして入ってきた。そして、彼らは集まってきた物言いたげな裕美達を見ると話し始める。

 

「裕美、まず聞きたいが、君はIDOLのパイロットに『先代』がいる事を知っているか?」

「あ………。」

 

 裕美は愛海と顔を合わせると、少し迷った挙句、頷く。それを見たプロデューサーは特に責める様子もなく、話を続ける。

 

「IDOLが日本で発掘され始めたのが丁度10年前からなのだが………お前の知った通り、その時から見つかったIDOL達には初期は別のパイロットが乗っていた。」

「あ、あの、まさかとは思いますけれど………。」

「森久保乃々は、初代の『雪風』のパイロットに選ばれた子だ。」

『雪風の!?』

 

 裕美と芳乃の言葉が重なる。

プロデューサーの説明によれば、時雨、霞、吹雪、雪風の順番に発掘されたらしく、当時4機あった内の最後の機体に選ばれたのが、プロデューサーが見つけた幼い乃々だったらしい。

 

「乃々ちゃん、そんな昔からパイロットやってたんだ………。私と同じ14歳なのに………。」

「じゃが、おかしくないか?そんな熟練のパイロットであったのならば、何故今はもう『シンデレラガールズ』におらんのじゃ?」

 

 巴の疑問に一同は考え込む。確かにパイロットとして活躍出来る実力を今でも持っているのならば現役で戦っていてもおかしくないはずだ。なのに、裕美はおろか巴達もその存在を知らないでいた。

 

「乃々を知っているのは私と当時オペレーターをやっていた心くらいだ。IDOLが当時新アメリカ帝国の侵攻にも耐えられるだけの兵器となっていたのはみんなも周知の事実だろう。だが、それでも長期の戦いは精神を疲弊させるし、睦月や如月がまだ十分に整っていなかった日本の戦力は今以上に厳しい物があった。だから………当然と言えば当然だが、戦死者が出た。」

 

 そこまで言ってプロデューサーは一旦、目を伏せた………ように見えた。

 

「浅利七海(あさり ななみ)………。最初に見つかったIDOLで肇の前の『時雨』のパイロットだ。彼女が最初の犠牲者だった。戦闘中に乃々を庇ってコックピット付近に被弾してな。基地に戻った頃には手遅れだった。」

「そんな子が………。」

 

 思わぬ時雨の歴史に肇が呟く。勿論、その名前を耳にするのは初めてだった。機密事項でずっと隠されていたからだ。

 

「その事件で乃々は精神的にダメージを負ってしまってな。IDOLでの出撃も怖がるようになり、上層部から無理やり脅される日々が続いた。そして、やがて乃々に変化が起こった。」

「変化?」

「IDOLの『ユニットコア』が………反応しなくなってしまったんだ。」

「え?」

 

 ユニットコアが反応しなくなった。それはつまり、IDOLとしての適性を失ってしまったという事になる。無論、そんな現象裕美は勿論、他のメンバーも知らなかった。

 

「その後、何度もIDOLに乗せようとしたが、起動せず。………軍の機密事項を知ってしまっていた乃々は長期間軟禁される羽目になり、当時の『シンデレラガールズ』のメンバーの懇願によって、ようやく彼女は解放される事になった。………使うだけ使っておいて使えなくなったらお役御免ってわけだ。」

「そ、そんな酷い!」

 

 裕美は思わず叫ぶ。それが事実ならば乃々が教室でユニットコアを恐れたのも当然だと思えた。アレは彼女のトラウマを抉る物なのだ。自分もうかつだったと裕美が俯く中で、愛海が恐る恐る手を上げ呟く。

 

「あ、あの、残されたメンバーは………。」

「七海含め、君達が加入する前のメンバーは3人共戦死した。美羽も含めれば4人。」

「………んで、この男は自分がスカウトしなければこんな事にはならなかったと死ぬほど後悔して名前を捨ててしまったんだと。」

「……………。」

 

 最後の心の言葉にプロデューサーは黙る。

確かにこんな事になれば誰だって自分を捨てたくなるだろう。この男が裕美達と距離を取っている理由が分かった気もした。

 

「とにかく、私と心は乃々達の所に向かわなければならない。裕美、付いてきてくれ。」

「はい………。」

 

 裕美は答えるとプロデューサー達に付いて行った。

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