【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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第9話 「友達」
バラバラな3人の心


 2時の方向から茶色の敵機、『イーグル』が迫ってくるのが分かる。その機体は『速射式ビームガン』を右手に構え、撃ってきた。

 

「き、来た………!」

『落ち着いて、落ち着いて。回避行動だよ。』

 

 志希の通信に『如月』に乗り込んだ白菊ほたるは習った通りにフットペダルを踏み込む。かなりオーバー気味に機体は旋回したが、それでも何とかビームを躱す事が出来た。

 

『避けたら敵機を正面に相対させてー!』

「こ、こうですか!?」

 

 言われた通りにしようとするが、なかなか上手くいかない。そうしている間に敵機は『ホーミングミサイル』を放ってきた。

 

『『マシンガン』で撃ち落とす!』

「は、はい!」

 

 言われた通りマシンガンを放つが、機体が斜めを向いていた上に、止まってしまった為、飛来するミサイルを落としきれず、右足が被弾してしまう。

あっという間にコンソールに浮かぶ『右足損傷』の文字。傾く機体。

 

「わ、わ!」

『敵、迫ってくるよ!』

「え!?」

 

 気付いた時には『ビームソード』をほたるにいるコックピットに向けて振り下ろす敵機の姿が目に入って………『自機撃墜』の文字が画面に浮かんだ。

 

「……………。」

『はい、お疲れー。旋回の時にもたついちゃダメだね。後、ミサイルはこっちをロックしてるんだから、マシンガンは後ろに下がりながら撃つか、思い切って飛び込むかしないと当たっちゃうよ?』

「はい………。」

 

 志希のアドバイスに項垂れて返事をしながらほたるは『シミュレーター』から出る。外では晶葉が腕を組んで立っていた。

 

「戦闘訓練は慣れたか?」

「正直………。」

「まあ、それが一般市民の普通の意見だ。」

 

 紆余屈折の末『シンデレラガールズ』の一員になったほたるであったが、IDOLの適性が無くてもやる事は裕美達と一緒だった。勉学に基礎体力向上、そしてこうしてシミュレーターによる実戦訓練。当たり前だが体内時計が破綻しそうになるのは裕美と同じ道だった。

 

「ほたるちゃんご苦労様!あたしがそのお山をマッサージして労わって………!」

「天才パーンチッ!!」

「ウゲェエエエエエエエエエエッ!?」

 

 そのほたるの背後から襲おうとした愛海を晶葉が右ストレートで迎撃する。

相変わらず新人に対してこの過剰なスキンシップを欠かさない愛海の精神は流石ではあったが、それを見事に迎撃する他の面々の的確さも見事であった。

 

「うぅ………晶葉ちゃんもあんまりですぅ………。」

「言いに来たのはそれだけか?」

「いえ、ほたるちゃんのセンスはどうかなって思って。」

「今の所、完全な初心者の物でしかない。」

 

 晶葉がため息をついていると、志希がマキノを連れ添ってやって来て会話に交じる。

 

「『睦月』も『如月』も試したけれど、正直まだ実戦では使えないねー。」

「裕美のようにはいかんのか?」

「彼女は『陽炎』の戦闘能力に助けられていたわ。今でこそ体が対応してぐんぐん成長してきているけれど、ほたるはまだその領域に達していない。」

「こんなんで次実戦が起こったらどうするんだ?オペレーターの人員を増やす方針で考えた方がいいんじゃないのか?」

「ダメだね。上層部は前の戦いで減ったパイロット不足解消したいから。シンデレラガールズは元々少ないから、いい機会だって言ってるよ。」

 

 ピシャリと答えた志希の言葉に、晶葉は頭をガシガシと掻く。

それを聞いていたほたるには分かっていた。これが使い捨ての駒の扱いだという事を。確かにここら辺の事は授業で習っていた。

元々シンデレラガールズのパイロットは少ない。場合によってはメカニックの美世達が乗り込まないといけないほどなのだ。だが、彼女達も死に物狂いで修練を積んでやっと睦月という陸上用の人型戦闘機械を一般兵士並に動かせるようになるくらいの操縦の難しさであるのが現状である。そんな中で新人のほたるが無双出来たのならば、それはそれで異端でしかないだろう。

 

「負荷を掛けているという自覚があるのならば、もっと何とかしてもらいたい物だ………。」

「仕方ないわ。何だかんだ言って日本の軍備自体の余裕が無くなっているのよ。前回の奪還戦と防衛戦でそれが浮き彫りになっただけ。」

「いっそIDOLがもっと発掘されて、みんながパイロットになれればいいのにねー。」

「それこそ夢物語だし、仮に実現出来たとしても別の問題が出てくるだけだろう。」

 

 晶葉は眼鏡を上げ、ほたるを見てきた。

 

「どうする?パイロットが本当にダメならば、上にその事をしつこいくらいにプロデューサーに進言してもらうという手も最終手段だが………。」

「えっと、その前に聞いていいですか………?」

「何だ?」

「私が戦場に出て………誰かが不幸にならないでしょうか?」

「またその話題か………。」

 

 晶葉達が微妙な顔をするのが分かる。ほたる自身や裕美からここ数日何度も説明をしたが、ほたるには何故か他の人に引かれるほどの『不幸体質』が備わっている。

それはおみくじがほとんど凶だった事に始まり、黒猫が目の前を通ったり、持っていた植木鉢を割ってしまったり、メールの送信失敗だったり………とにかく多種多彩であった。

 

「何度も言うけれど貴女の考えすぎなんじゃ………。」

「でも、私のせいで皆さんに迷惑が掛かったら………。」

「だ、大丈夫ですよ!私達には芳乃さんがいます!彼女に祝福してもらいましょう!」

 

 マキノや愛海が話しかけてくるが、ほたるは自分の運命が偶然でここまで傾いているとは思えなかった。そして、これからも自分がいるせいでみんなに迷惑を掛けるかもしれない。それが怖くて仕方なかった。

 

「にゃはは、ほたるちゃんの考える事は何かずれているね?」

「そう、でしょうか………?」

「そうだ。まずは自分の身を心配しろ。後回答しておくが、初戦闘で周りに迷惑を掛けないヤツなんていない。裕美もそうだった。だから、まずは生き残る事だけを考えろ。」

「は、はい………。」

 

 不幸がどうしたと仲間達が色々元気づけようとするが、ほたるの不安はぬぐえなかった。

 

――――――――――

 

「こ、これが乃々ちゃんの乗る機体………なの?」

 

 格納庫では、珍しく美世が引いていた。

次の出撃に際し、熟練パイロットである乃々には新機体が配備された。と言っても、それは『睦月』を黒から緑に塗り替えたもので、元々の脆弱な装備に加え、色々な強力な砲戦装備が搭載されているものだった。これは乃々が元々遠距離支援型の『雪風』に乗っていたからであろう。敢えて機体に名前を付けるならば『睦月・重装備型』と言えばいいだろうか?しかし………。

 

「これは酷い………。バランスが悪すぎるっすよ………。」

 

 沙紀も思わず不満を口にしてしまう。

搭載の都合を無視したこのワンオフ機は装備のバランスが非常に悪かった。とにかく重い。それなのに、増加装甲は無く、装備の都合上盾も取り外されてしまっていた。一応、バーニアを増設はしているが、それが一層バランスの悪さに繋がっている。それもそのはず、上層部がありとあらゆる試作装備を積み込んだのがこの機体の実情だったからだ。

 

「こ、こんな機体、扱えるの、乃々ちゃん………?」

 

 由愛の不安そうな言葉にジッと機体を見ていた乃々はしばらく黙り呟く。

 

「まあ………やれって言うのならばやるしかないですけど………。」

「何じゃ。こんな機体を扱う自信が有るとは何だかんだ言って実力者じゃな。」

「もりくぼは戦えと言われているから戦うだけです。………ほたるさんを人質に取られていなければこんな事しません。」

「そうか………。」

 

 機体に興味があったのか、格納庫を覗きに来ていた巴が話しかけてくるが、乃々は目を合わせない。

というか、元々誰に対しても目を合わせられないのが乃々の性格だ。それは筋金入りで裕美やほたるにも滅多に視線を合わせる事ができないでいる。

 

「もりくぼはシミュレーターでこの機体の操作性を確認します。セッティングお願いします。」

「乃々!」

 

 後ろを振り向き去って行こうとする乃々に巴が叫ぶ。

 

「………裕美が心配しとったぞ。落ち着いたら話しかけてやれ。」

「……………。」

 

 その言葉に乃々は答える事ができなかった。

 

――――――――――

 

「裕美が気難しいヤツじゃと思ってたが、それ以上がいるとはのう………。」

 

 去って行った乃々の後姿を見ながら巴は呟く。

当然と言えば当然だが、煮え切らないその様子は哀れを通り越していた。

 

「………家族とはどうだったんじゃ?」

「ほたるちゃんもそうっすが、やっぱり揉めたらしいっすよ。特に乃々ちゃんはまた軍の事情に巻き込むのかと親が激昂したとプロデューサーから聞いたっす。まぁ、当然っすよね。」

 

 沙紀の説明に巴は深くため息をつく。確かに2回も軍の身勝手に巻き込まれ振り回されれば親がキレるのも当然だろうと思えた。あまり親しく話してはいないが、今回ばかりは交渉の場に付いたプロデューサーに同情してしまう。

 

「親ってのは………気苦労ばかり掛けてしまうものじゃのう。」

「普通はそうっすよ。アタシ位の年でも、両親と兄貴は心配してるっす。巴ちゃんも………。」

「そうじゃな………。」

 

 沙紀はそれ以上言うのを止めた。彼女は巴の事情を知っている。だから、深入りはしなかった。

 

「うちや肇は………少し羨ましいかもしれん。」

 

 巴は最後に誰にも聞こえないように呟いた。

 

――――――――――

 

 肇と芳乃とダンスレッスンをしていた裕美はリズムに合わせてターンを決める。苦手だった踊りも少しずつではあるが、上達し始めていた。

 

「大分慣れてきましたね。」

「はい、皆さんの教えがいいからです。」

 

 裕美はタオルを受け取るとそれで汗を拭った。成長期の体は本当に凄いなと感心してしまう。

 

「でもー、ビジュアルレッスンはまだまだぎこちないのでー。それは、単純に苦手だからじゃないでしょー?」

「はい………。」

 

 芳乃の言葉を裕美は否定しなかった。ここ数日、彼女の周りの環境は目まぐるしく変化した。

まず、学校では美羽以外のクラスメイト達にも被害が出た。クラスは悲しみに包まれ、そして普段話しかけないような人達がIDOLになった裕美を頼ってきた。

友達の仇を討ってほしいと。

みんなを守って欲しいと。

IDOL乗りを頑張ってほしいと。

その声は、別のクラスから………場合によっては別の学年からも届き、裕美を大いに驚かせ、困惑させた。

 

「私達の背負っている物の大きさを、改めて実感させられました。そして、力が無い人達の悲しみも………。」

 

 人によっては自分もシンデレラガールズに入って一緒に戦うと言ってのけた人がいたほどだ。

裕美はそれを聞いた時、それだけはダメだと必死に説得した。ほたるのようにどうしようもない事情があるならまだしも、まだ軍の思惑に巻き込まれていない人達を戦わせる道を選びたく無かったのだ。だが、それ故に消沈したその生徒の顔を忘れられないでいた。

 

「みんな、心の底では悔しいんだと思います。何も出来ない自分が。だから、私達はその想いを受け継がなければいけない。」

 

 裕美はそう言うと『ユニットコア』を取り出した。その緑のコアはまだ光を放ち、裕美を適合者だという事を示している。

IDOLとして活躍する度に自分を支えてくれる者達が増えてきた。美羽や両親、シンデレラガールズのメンバー、故郷のみんな、そして学校のみんな。

 

「私はみんなを守りたい。いえ、守る為に戦うんです。」

 

 裕美はそこまでハッキリ言って、急に元気無くしたように目を伏せる。

 

「だから、乃々ちゃんやほたるちゃんの事も心配なんですが………。」

「まだ、話しかけられないのですか?」

「はい………。」

 

 訓練メニューの関係で、軍ではなかなか話しかける機会が無いのもある。学校では有名人になってしまったために、まだ存在を隠している2人とは休み時間も話す機会が無いのもある。3人揃ってプロデューサーに送迎されている間はある意味論外だ。

 

「あれ以来、ほたるちゃんはともかく、乃々ちゃん壁を作っているように見えて………。」

「そなたはどうすればいいのかわからないのですねー。」

 

 事情が事情故に、無理やりこじ開けるわけにもいかない。乃々との隔たりを裕美は修復したかった。だが、その方法が思い浮かばない。

 

「こればかりは、貴女達でどうにかするしかないですからね………。」

「わたくし達は、見守っているしかないのでー。」

「ごめんなさい、心配掛けちゃって。レッスン再開しましょう!」

 

 忙しい内は考えなくていいからと、裕美は訓練に没頭していった。

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