【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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大人達の葛藤と助言

「おら、飲めよ。」

「別に要らない。」

「付き合い悪いな………。」

 

 その日の夜、居酒屋にて心はプロデューサーを連れて飲みに来ていた。いつもは美世を連れ立って行くのだが、彼女は、今日は遅くまで睦月・重装備型の整備に勤しんでいた。

 

「私以外にも、レナ少佐や久美子少佐、比奈少佐がいるだろう?」

「メール送ったけれど全員ダメだったぞ。部隊再編で忙しいんだと。」

 

 正直、最近軍上層部の無茶な意見で心のストレスは溜まっていた。だから、こうして酒を飲んで愚痴りたかったのだ。その相方としてこの不愛想な男を連れ出したのは、この男も内心ではストレスが溜まっているからだと理解していたからだ。

 

「飲まないとやってられないぞ。………というか飲めよ。」

「七海の件以来、禁酒を決め込んだんだ。」

「そんな我慢してあの子が喜ぶと思ってるのか?」

「……………。」

 

 黙るプロデューサーを尻目にジョッキいっぱいに入ったビールを飲み干す。日本酒や洋酒も良かったが、こういう日はやっぱりビールだと思った。アンチエイジング?ストレス発散が先だ。

 

「裕美の時もほたるの時も、そして乃々の時も何でそう自分で全部背負いこもうとするんだ?素直に私は何とかしたいんですとか言えばいいだろうが。」

「それは卑怯者の言葉だ。既に十分劣悪な私が言っていい言葉では無い。」

「度の過ぎた自己嫌悪は余計に嫌われるぞ。」

「だが、言ってどうしようもない事を言った所で事態は変わらない。変えられない。」

「本当、お前は変わってしまったよな………。」

 

 心は呆れたように赤く火照った顔を手で抱える。

この男は元々熱意が有り、日本の為に、人々の為に、皆を笑顔にする事を望んでいた。だから、IDOLのスカウトという困難な任務も進んで挑み、色々な子をスカウトしていった。だが………。

 

「みんなを不幸にしていけば、嫌でも変わるさ………。」

 

 その手を取った子は、七海達のように死ぬか、乃々のように地獄を見るか、裕美達のように苦難を強いられてしまった。

自分が死神でしか無い事を悟ったこの男は、プロデューサーという歯車でいる事を望むようになってしまった。

 

「私は軍の上層部じゃないからお前の功績とか責任とかがなんたらとか言わねえよ。でもよ、自分の感情を吐き出せなくなったらそれで壊れてしまうぞ。それを、本当に乃々達が望んでいると思っているのか?」

「………今の私は、それすら分からなくなっている。」

 

 付き合いの長い心の前だと多少は本音を言えるのか、プロデューサーは俯き言葉を紡ぐ。

今まで不幸にしてきたIDOLパイロット達の心がもうこの男には見えなくなっていた。いや、五里霧中の状態だからこそ、逆に唯一の生き残りである乃々を守る事に没頭してしまっているのかもしれない。どちらにしろ心にしてみればやりきれない思いであった。

 

「まあいいや。とりあえず、飲まないならば何か食え。こんな美女と2人で食事する機会もなかなか無いぞ?………というか美女だと言えよ。」

「……………。」

 

 プロデューサーは黙りながら食事に手を付ける。この男の闇は、簡単には消える事は無かった。

 

――――――――――

 

 就寝前、裕美は歯を磨きに自室から居間に降りてきた。そこには新聞を見直し、改めて世界情勢を確認している父と、明日の洗濯物の用意をしている母がいた。

 

「ねぇ、お父さん、お母さん。」

「どうした、裕美。」

「お父さん達は、友達と会話しにくくなった事ってある?」

「友達か………。」

 

 父はおもむろに新聞を降ろすと腕を組んで考え込む。

考える時間が長くなったのは裕美の立場故だ。彼らは何か僅かでも変化の兆候があれば、それを感じ取れるように気を付けている。それが、大きなうねりに巻き込まれた娘の為に唯一してあげられる事だったからだ。そして………それを感じたのか、母が呟く。

 

「ほたるちゃんや乃々ちゃんの事?」

「うん………。」

 

 こうしてIDOLになる前は家にほたると乃々を家に招いた事もあったのだ。そして、軍からの定期報告として、プロデューサーはほたると乃々も軍の事情に巻き込まれた事を説明していた。乃々が昔、IDOLのパイロットだった事も。

 

「プロデューサーから聞いたよ。ほたるちゃんや乃々ちゃんの両親とも揉めたって。特に乃々ちゃんは昔、色々あったみたいだから………。」

「親だからな。当然だ。」

「うん、それでね。友達に………特に乃々ちゃんに………話しかけられないんだ。」

「……………。」

 

 致し方ない事情があったとはいえ、彼女達に黙ってIDOLになってしまった。しかも、その内の片方にとってそれは、過去の凄惨なトラウマを抉られるような物だったのだ。恨まれているかもしれない。呪われているかもしれない。そんな思いも裕美は抱えてしまっている。

そんな彼女の想いを察したのか、母が裕美の前に歩いてきて話す。

 

「裕美は………その子達の事、もう友達だって思ってないの?」

「そ、そんな!友達だよ!今も………少なくとも私は………。」

 

 でも、相手がどう思っているのか分からない。どう切り出していいのか分からない。だから踏み出せないでいる。そう俯く裕美の両肩に母が手を置いた。

 

「じゃあ、貴女のその想いを正直に伝えなさい。」

「え?」

「友達なんでしょう?たとえ嫌われていても、貴女が勇気を出してそれを言わなければ、乃々ちゃん達も貴女に嫌われていると思っているわよ。」

「お母さん………。」

「母さんの言う通りだ。」

 

 父も立ち上がり、裕美を見る。

 

「友達を守ってあげたいんだろう?だったらまずはその友達を『友達』と認識してあげなくてどうする?」

「お父さん………。」

 

 両親の言葉に裕美は考える。確かにそうだ。自分は守りたい人達を守るって決めたのだから。その人達の『想い』も守れなければ意味は無い。逃げたら、ダメなのだ。

 

「ありがとう、お母さん、お父さん。私、やってみる………!」

「気にするな。私達はせめて、お前の『想い』は守ってやりたいのだから………。」

 

 父は少しだけ寂しそうに笑顔を浮かべた。

 

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