【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
対面の機会は次の日訪れた。
休憩時間に自動販売機の所まで歩いた所で、乃々と、そして別の所からやってきたほたると偶然出会ったのだ。
「あ………。」
「乃々ちゃん………!」
一瞬裕美の顔を見た乃々は逃げ出そうとした。そのままだったらここでの遭遇は意味なく終わってしまっただろう。だが、ほたるが咄嗟に乃々の腕を掴んだのだ。
「ほ、ほたるさん………!?」
「乃々ちゃん。」
ほたるに心の中で感謝しながら裕美は乃々の顔を真剣に見つめる。
「話そう!」
そして、3人はその場に座る事になった。
――――――――――
座る順番は端から裕美、ほたる、乃々であった。乃々は相変わらず………いや、いつも以上にこちらに目を合わせてこなかったが、それでも良かった。
(巴ちゃん、前言ってくれた話題借りるね!)
心の中で巴に頭を下げると、裕美は話題を切り出す。
「ねぇ、乃々ちゃん。」
「………なんでしょうか。」
「七海ちゃんってどんな子だったの?」
「え………。」
一瞬だけ目を合わせ乃々は………少し悩んだ挙句、言葉を紡ぎ出す。
「七海さんは………もりくぼにとっての先輩パイロットで………海のようなきれいな髪と瞳を持っていました………。でも、性格はその、正直おかしかったと言いますか………『れす~』という語尾が特徴で、とにかく元気でした………。」
「元気………何か美羽ちゃんみたい………。」
乃々の手を握りながら呟いたほたるに裕美も同感だと思う。何となくだが、美羽とその七海という子は共通点が多いように思えた。
「釣りが趣味だって言っていました。もりくぼにも、いつか一緒にしようって言ってくれましたね………。」
「釣りが趣味………肇さんと一緒なのかな?」
「肇さんは沢釣りが趣味だって言ってたかと………。七海さんは海釣りが好きだったんです。」
「海釣りかー………。」
やっぱり変わった子だったんだなと裕美は答えながら思う。そして、その子を乃々は………。
「慕ってたんだね………。」
「はい………。もりくぼにとっては都さんや清美さんと共に、頼れる先輩でした。………だから、もりくぼは油断してしまったんです。」
「……………。」
乃々の手がギュッと握られる。プロデューサーから聞いた通りの話だ。彼女を庇って七海は死んでしまった。
「本当は、もりくぼはプロデューサーの事言えないんです………。もりくぼは七海さんを殺しました。そして、都さんや清美さんも見捨ててしまいました。もりくぼは逃げ出した弱虫です………。」
「乃々ちゃん………。」
「そんな事………無いよ。」
「え?」
裕美は乃々を真っ直ぐに見る。
「乃々ちゃんは、ほたるちゃんを守る為に再び戦う勇気を持った。」
「偶然です。そうしなければ、もりくぼも死んでいたので………。」
「でも、乃々ちゃんは友達を守り抜いた。多分、その七海ちゃん達の想いも受け継いで………。だから、これからも守るって誓ったんだよね?」
「……………。」
裕美は知らない。七海が最期に遺した言葉を。乃々に大切な人達が出来たら守ってほしいと言い残した事を。それでも、乃々の姿から何かしらの想いを背負っている事は理解出来た。自分が当初、美羽の言葉を支えにしたように。
「私、そんな乃々ちゃんの想いも守りたい。ほたるちゃんと一緒に守って行く。そう決めたんだ!」
「こんな………もりくぼを………ですか?」
思わず見つめてきた乃々に裕美は頷いた。
「だって、乃々ちゃんも、ほたるちゃんも私の大切な友達だから!」
――――――――――
気付けば涙が出ていた。乃々はこんな薄暗い自分はもう嫌われているかと思っていた。当然だ。自分は鬱屈した感情を持っている。仲間に庇われ、その仲間を見捨てて、自ら失ってしまった。そんな自分なんかを今更慕ってくれる人がいるとは思ってはいなかった。
だが、裕美は違った。そんな自分を友達だと言ってくれた。そして………。
「あの………私も、まだ友達だと思ってくれる?」
恐る恐るでは有るがほたるも握る手に力を入れる。
彼女も自分の身勝手な事情に巻き込んでしまったのに。今、一番死に近い位置にいるのは彼女なのに。それでも、それを招いた自分を責めずに………。
「もりくぼは………もりくぼは、まだ2人に友達だと思ってもらえるんですか?」
「うん!」
「もちろんだよ!………乃々ちゃんは?」
「もりくぼは………もりくぼはまだ2人と友達でいたいです!」
そういうと乃々は立ち上がり、自分からほたると裕美の手を握っていた。その手が優しく握り返されるのを感じた。
「ずっと友達でいよう。私達………。」
「うん。私も、頑張るから………。」
「はい………。」
そう、2人との絆を確認した時………
『うわわわわわわわッ!?』
通路の奥で人が一斉に倒れ掛かる音が響く。見れば、肇、巴、芳乃、そして愛海がその順番で下から倒れ込んでいた。
「み、皆さん………。」
「ご、ごめんなさい………。その………。」
「いつまでも来んから気になっての………。」
「そしたらいつの間にかこうなってましてー。」
「本当にゴメン!」
4人それぞれが謝る様子を唖然と見る3人。気付けば、もう次の訓練の時間は始まっていた。
「みんな、私達を見守ってくれてたんですね。」
「見守ってたというよりは、やぶへびじゃがな………。」
みっともないと思った巴が寝そべった状態で情けない顔をする。
その言葉に他の3人も苦笑いを浮かべる。それを見ながら笑みを浮かべる裕美。そんな彼女と見比べながら、乃々は過去を思い浮かべる。自分を見守ってくれていた仲間達を。
『乃々ちゃんは優しいれすね~♪』
『乃々さんは私の推理にも付き合ってくれますからね!』
『これで乃々さんも、風紀を守る事に従事してくれるといいのですが………。』
今のIDOLのパイロット達のように個性的だった仲間達。彼女達はどういう想いでこの状況を見ているのだろうか。それは乃々にも分からない。だが、あの愉快な仲間達が、いつまでも鬱屈した自分を見ているとは今は思えなかった。
「裕美さん、ほたるさん、それに皆さん………。」
「乃々………ちゃん?」
覗き込むほたるに対し、乃々はほんの少しだけ………しかし確かに笑みを浮かべながらこう述べた。
「これから、もりくぼを宜しくお願いします。」
――――――――――
ハワイ諸島にて、イージス艦『モーレイ』に乗り込んだメアリー・コクランは指令室でクラリス、ライラ、ナターリアを伴って、ある人物が来るのを待っていた。
「いよいよ会えるのですか。その『復習者』に。」
「『復讐者』だゾ、ライラ。ナターリア、気になるナ。」
やがて、指令室の扉が叩かれ、1人の少女が中に入ってくる。
少女は黒髪だった。七三分けの髪が印象的で、太眉が特徴的だった。
その姿を見たライラとナターリアは目を見開く。何故ならばその少女は………。
「松尾千鶴(まつお ちづる)少尉、お待ちしていました。」
「宜しくお願いします。」
『日本人』。敵対しているはずの日本人が、新アメリカ帝国の兵士としてそこにいた。驚いている『ソル・カマル』には構わず、クラリスの案内を受けた千鶴は敬礼する。メアリーはそれに、厳かに答えた。
「ようこそ、歓迎するワ、1人目の適合者………『復讐者(リベンジャー)』。」
第9話 完