【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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突然の出会いと別れ

「待って!美羽ちゃん、待って!」

 

 裕美は街中を疾走する。敵と言えばいいだろうか。飛来する機体はお構いなしにミサイルを発射しており、辺り中黒煙が上がっている。それこそ、今朝の夢を思い起こさせるような風景だった。

 

(何でいきなりこんな事に………!)

 

 今の裕美に答えが見つかるはずもない。ただ、縋るように前を全力疾走する美羽を見失わないように追いかけていく。やがて、彼女も知らない区画へと彼女は突入していき、何かの工場が並んでいる地帯へと進んでいく。

 

「美羽ちゃん!ここに何があるの!?美羽ちゃん!!」

 

 声を張り上げても聞こえないのか、美羽は一直線に走って行く。やがて、ひときわ大きな建物が見えたところで………。

 

「ッ!?」

 

裕美は気づく。左に敵の機体が飛来してきたのを。そして、その機体がミサイルを放ったのを。

 

「危ないッ!美羽ちゃん!!」

 

 警告は遅かった。裕美の眼前が爆風で発生した凄まじい風で薙ぎ払われた。

 

――――――――――

 

「………うっ、ううっ。」

 

 埃が舞い散る中で裕美は起き上がる。辺り中建物の瓦礫が散乱しており、酷い有様だ。意識が飛んでいたのは一瞬なのかそれとも永遠なのか。とにかく何が起こったのか裕美は分からないでいた。

 

「美羽………ちゃん?」

 

 ふと、自分の前を走っていた少女を思い出す。彼女はどうなったのか?そう思い見た先に、少女が倒れていた。

 

「美羽ちゃん!」

 

 どうやら自分は奇跡的に怪我が無かったらしい。慌てて近寄り、そして青ざめる。美羽は脇腹などに破片が刺さっており、制服が赤く染まっていた。更に口から血を吐いている。

 

「ゲホッ、ゴホッ………。」

「しっかりして!美羽ちゃん!」

 

 血で汚れるのも構わず美羽の脇腹を抑えようとした裕美は………そこで自分の手の中が緑色に発光するのを見た。見れば、破れたポケットからあのアクセサリもどきが出て来ており、それが裕美の手の中に入っていた。

 

「何………これ………。」

「裕美ちゃんも………『アイドル』なの………?」

「美羽ちゃん!?」

 

 力なく呟く美羽の言葉に裕美は声を掛ける。言っている事がよく分からないが、このままだと美羽が危ないのだけはよく分かった。

 

「………まさか、美羽の他にも『アイドル』の素質がある者がいるとは。」

「だ、誰!?」

 

 ふと正面の方向から掛かった声に裕美は顔を上げる。すると遠くにスーツを着た男が立っていた。背丈は高いが前髪が長く、顔はよく見えない。

 

「『プロデューサー』さん………。」

「すまなかった美羽、間に合わなくて。」

 

 美羽の呟きにプロデューサーと呼ばれた男は頭を下げ、そして裕美を見る。

 

「君は『アイドル』になる。」

「な、何言って!?それより救急車を!」

 

 その時だった。裕美達とプロデューサーの間に立っていた建物が先程のミサイルの爆風の影響か、崩れてきた。思わず美羽の体を覆った裕美は音が静まり返ると見上げる。そこには白銀に赤や橙の模様があしらわれた機体が寝そべっていた。機体の丁度向こう側にいたプロデューサーと呼ばれた男の姿はもう見えない。

 

「これは………。」

「『陽炎(カゲロウ)』………。」

「え?」

「これって………こういう………運命なのかな………?」

 

 そういうと美羽は右腕を上げ、陽炎と呼んだ機体の胴体部分を指した。

 

「あそこまで、連れて行って………。」

「何言って………!早く救急車を………!」

「この状況じゃ来ないよ………。あそこ………安全だから………。お願い………。」

 

 懇願する美羽の言葉に裕美は悩み、そして美羽を抱えながらその機体まで進んでいく。そして、胴体によじ登ると、美羽が何やら右腕だけでパネルを開き、何かを入力する。すると、ハッチが開いた。

 

「こ、これって、コックピット………って、きゃあ!?」

 

 美羽に半ば押し込まれるように中に入れられた裕美は、後から這いずるようにして入ってきた美羽を受け止める形になる。美羽は更に中央の部分に先程の緑のアクセサリを入れる。すると、何かが起動する音が聞こえた。

 

「な、何………?」

「裕美ちゃん………お願い………この子動かして。」

「え?」

 

 美羽はコックピットを閉じると役割を終えたと言わんばかりに壁に寄りかかり、そのまま力なく寝そべる。慌てて裕美はハンカチを取り出すが美羽はそれを制した。

 

「私はもういいよ………。プロデューサーの言った通り、手遅れみたいだから。」

「そ、そんな!?」

 

 しかし、裕美は理解してしまう。美羽の傷口からは血が溢れておりもう彼女の生命力が残り僅かだという事を物語っている。だが、理解しても納得出来るほど、まだ彼女は大人ではない。

 

「そんな事………言わないで!」

 

思わず涙が出る。内気な自分達と仲良くしてくれた数少ない友達の1人なのだ。その子がいきなり起こった戦いによって失われるなんて、展開が急すぎる。思わず俯き美羽の手を握った。こうすれば命は失われないと言わないばかりに。

 

「裕美ちゃん………今から言う事を聞いて。」

「美羽ちゃん?」

「この機体はね、IDOLと言って特定の僅かな人にしか扱えないの………。そして、裕美ちゃんにはその力がある………。だから、この子を動かして、みんなを守って欲しいんだ………。」

「う、動かせって………!?そんな、私………ロボットの操縦なんか!?」

「大丈夫、みんなからアドバイスを貰えば思ったより簡単に動かせるから………。まずはこの通信を開いて。そして………ゴホッ!」

「美羽ちゃん!………ダメだよ!私なんかにそんな事出来るわけが………!」

「私知ってるから………。裕美ちゃんはほたるちゃんや乃々ちゃんを守れるほどの優しさを持っているって………。だから………。」

「美羽ちゃん………私は、私………!」

「だか…ら………、後、宜しくね………。」

 

 美羽の体から力が抜けた。裕美は思わず美羽を見る。彼女は穏やかに眠っているようだった。だが、もう彼女は目を開けない………。

 

「う………うぅ………。」

 

 裕美は泣いた。だが………。

 

ズシン!

 

 おもむろに振り向く。そこには、青と白で構成された敵の機体が降り立っていた。アイツ等が美羽の命を奪った。友達の………命を!

 

『こちら、原田美世(はらだ みよ)!美羽ちゃん!?………じゃなくて、君は?』

「美羽ちゃんは………みんなの為に戦おうとして死にました。私には、『アイドル』という才能があるらしいです。」

 

 そう言って、裕美はこれまでにない形相で『敵』を睨みつけた。

 

「教えて下さい!美羽ちゃんの………仇を討つ方法を!!」

 

 関裕美の『IDOL』としての初戦闘が始まった。

 

 

 第1話 完

 


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