【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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第11話「捨てられた者達」
存在を消された者達


 東京基地に帰還した裕美達はブリーフィングルームに集まっていた。

全員の表情は重い。IDOL5機が翻弄された。それだけならともかく、新アメリカ帝国もIDOLを開発したというのだ。それが嘘ではないという事は、千鶴の『クウェイル』の戦闘力を見れば明らかだった。

 

「『復讐者』じゃったか………。あのライラやナターリアって奴らだけでも厄介じゃって言うのに更に面倒な敵が出てきおった………。」

「その上、あの者はまだ仲間がいると言っていたのでー。だとすれば、今後は更に複数の『敵IDOL』と戦っていかないといけなくなりますかとー。」

 

 巴が憤然と腕を組み、芳乃が前で手を組む。

日本が新アメリカ帝国に対抗できていたのはIDOLの無尽蔵な力があったからだ。だが、それが新アメリカ帝国側にも備わると言うのならば、物量で劣る日本が今後不利になるのは目に見えた。

 

「あの、プロデューサー。あのパイロットは降伏しろと言ってましたけれど………。」

「あの上層部がするわけがない。徹底抗戦だ。無論、最前線を担うのは君達IDOLになる。」

「………ですよね。」

 

 裕美は予想していた通りのプロデューサーの回答に項垂れる。

故郷が降伏する姿はゴメンだが、その為に自分達に責任をほぼ全て押し付けられるのも心外ではある。とはいえ、戦闘結果を見る限り、IDOLに対抗できるのはやはりIDOLしかいないのが日本の現状なのだ。こればかりは仕方ない。

 

「実際に戦ってみてのパイロットの感想を聞きたい。」

「武装をもっと強化してほしいのでー。」

 

 真っ先に意見を言ったのは芳乃。

彼女の『雪風』と巴の『霞』は実弾装備ばかりだ。だが、前回の戦闘で敵IDOLの『エネルギーフィールド』の前には無力である事が証明されてしまった。それどころか、『ビームヘッド』での突撃を得意とするライラとナターリアの『パラキート』にすら策が無くなってしまっていた。

 

「このままじゃ、うちらは足手まといじゃ。そろそろビーム兵器が欲しいが………。」

「プランは色々練っているが、上層部に申請が通らないのが現状だ。今は『睦月』と『如月』の量産で忙しいというのが回答だが、実際の所はどうなんだか………。」

「今更睦月と如月を量産した所で、束になってもアイツらには敵わんじゃろ………?何を寝言言っとるんじゃ………。」

 

 晶葉の説明に、実際に『ホーミングミサイル』を全部塞がれた所を上層部は見てなかったのかと巴は頭を抱える。

 

「実戦で使えるビーム兵器を備えているあたしや肇さんはまだマシですよね。でも、防御面では、あたしの『吹雪』の腕でもあの出力は防ぎきれなかったですし、肇さんの『時雨』も『展開式ビームブレード』壊されちゃいましたし………。」

「一番頑張ったのは裕美ちゃんの『陽炎』ですよね。」

 

 愛海の呟きに肇は頷く。

振り返ってみれば、『手持ち式ビームキャノン』や『零式パイルバンカー』、エネルギーフィールドと言った最新の装備を備えた陽炎が一番敵IDOLに効果的だったのだ。

 

「だとすれば、武装が強化されない内は、裕美の陽炎を中心にフォーメーションを形成していかないといけないな。」

「え?え!?」

 

 総括したプロデューサーの言葉に裕美は驚く。

自分がこの熟練のメンバーの中のキーパーソンになると言われてしまったのだ。正直、裕美自身はまだそこまで実力を持っているとは思えなかった。だが………。

 

「裕美ちゃん。貴女はこの短期間で随分実力を付けました。前回の戦いで私を守ってもくれましたし、もっと自信を持ってもいいんですよ?」

「で、でも狙撃は芳乃さん程上手く無いですし、射撃戦は巴ちゃんに負けますし、接近戦は肇さんに敵わないですし、愛海ちゃんのような柔軟さも無いですし………。」

「ですが、機体性能も合わせて考えれば今わたくし達の中で一番対応出来ているのはそなたでしてー。」

「じゃな。前の戦いでうちらも見習わなければならない所はあった。」

「裕美ちゃん、十分トリッキーな戦い方も出来ますし、反応も良くなったし、正直頼りになります!」

 

 他の各IDOLパイロット達は裕美の成長を素直に喜んでいた。

周りから見れば、今の裕美は陽炎に乗り込んだ当初の彼女よりも数段逞しく映っているだろう。それだけ裕美は強くなったのだ。本人にはまだ自覚は無いが。

 

「わ、分かりました。そういう事ならば、私は皆さんの期待に応えられるように頑張ります。………あの、それで、プロデューサー、ちょっと聞いていいですか?」

「なぜ、あのパイロットが自分達の事を『復讐者』と呼んでいるかについてか?」

「はい………。」

 

 それを言われたプロデューサーは何故か肇と巴の方に顔を向けた。

彼女達はその意味が分かったのか、一瞬、躊躇ったような顔をして………しかし頷く。それを確認した上で、プロデューサーは話し出す。

 

「10年前、当時アメリカ合衆国と名乗っていた国が新アメリカ帝国と名乗るようになった。その時に、友好国だったはずの日本は突然の攻撃を受けた。」

 

 何故、肇と巴に確認を取ったのか分からなかった裕美であったが、プロデューサーの言葉に耳を傾ける。

確かにここら辺、彼女も両親から聞いた事がある。被害が出て、場所によっては悲惨な物であったと。確かその地方は………。

 

「その攻撃を機に、日本と新アメリカ帝国は敵対関係になった。だが、そうなると、必ず弊害を受ける人々が出てくる。それが誰だか分かるか?」

「え、えっと………。」

「『在日アメリカ人』と『在米日本人』だ。」

 

 プロデューサーの言葉に裕美はハッとする。両国はそれまで友好国だったのだ。お互いの国に移住する人達も多くいたはずだ。

 

「当時の『在日アメリカ人』は選択を迫られた。日本に帰化するか、早々に日本を去るか。新アメリカ帝国の政治体制を甘く見ていた日本は、大抵の場合、後者の選択を強いた。日本から故郷の者達が無事に帰ってくれば、新アメリカ帝国も態度を軟化させてくれると。だが………。」

「だが………?」

「『在米日本人』は帰ってこなかった。」

「え?」

 

 プロデューサーの言葉に裕美は一瞬固まる。それが意味する事は………。

 

「悲しいかな。新アメリカ帝国は彼らを『人質』に取る選択を選んだ。彼らの解放を条件に、無条件降伏しろと日本政府に迫ってきた。」

「ま、待って下さい!そんなニュース聞いた事無いですよ!?」

「国民の感情を刺激しないように報道規制が強いられていたんだ。そして、更に悲しい事に日本政府は彼らを『見捨てる』事を選んだ。」

 

 そこで裕美達はハッとする。あのパイロットが日本政府に言っていた事を。自分が『見捨てられた日本人の生き残り』だと言っていた事を。

 

「以後、彼ら『在米日本人』の存在は抹消された。彼らがその後どうなったかは分かってはいない。だが………あのパイロットの話を聞く限りでは………。」

「……………。」

 

 裕美は黙る。他のパイロット達も。

彼らが敵国の地でどんな扱いを受けたのかは想像が付かない。それでも敵国の中で10年間育っていれば、日本に対する『復讐心』が芽生えても不思議ではないだろう。あの日本人のパイロットは、それを言いたかったのだ。

 

「だから、断言する。恐らく今後出てくるであろう新アメリカ帝国の日本人の………IDOLのパイロットは手を抜いてはくれないだろう。戦うしか道は無い。戦うしか………な。」

 

 プロデューサーの呟きに一同は黙り込んでいた。

 

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