【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
祝福を貰って
結局、秋田基地への攻略編成は覆る事は無かった。一応、IDOL以外では肇達の機体を見る為に開発部門の晶葉が残る以外は、プロデューサーすら付いて行く事にはなっていたが、それでも戦力を考えれば裕美にかなりの無茶を強いられるのは確かだった。
「今回はー、念入りにー、念入りにー、祈りを込めるのでー!」
「よ、芳乃さん、心配してくれるのは嬉しいですがもう5分も経ってますよ!」
戦闘前にパイロット達に施す芳乃の祝福も、裕美に対してはかなり重点的に行っていた。手を強く強く握る芳乃に、裕美は思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「一応、乃々ちゃん達や比奈さん達もいるから大丈夫ですよ。それに、芳乃さん達の負担が増えるのも確かなんですから、自分の事を心配して下さい。」
「ですがー、何か悪寒がするのでー………。そなたの身に何かが起こったらと思うとー。」
「えっと、芳乃さんのそれは当たるのですか………?」
「割とー………。」
「あ、ははははは………。」
思わず裕美は乾いた笑みを浮かべてしまう。あの芳乃に不安だと言われると本当に不吉な事が起こりそうな気がした。
裕美の後ろでは、乃々が不安そうな顔をしており、ほたるに至っては私の不幸で………といつもの癖が出てしまっている。
「乃々殿ー、それにほたるー。裕美の事を頼みますー。今回わたくしの予感が正しければ、友達の存在がカギになるような気がするのでー。」
「と、友達ですか………?」
「私達が………。」
思わぬ言葉に乃々もほたるも考え込む。
しかし、乃々の『睦月・重装備型』は空を飛べないし、ほたるの『如月』も自分の身を守るだけで精いっぱいだった。『友達』として、何ができるのだろうか………?
「とにかく何かあった時は友達に頼って下さいー。昨日の夢で天啓を受けたので、何やら当たりそうな予感がしたのですー。」
「占いみたいな物ですか………。分かりました、芳乃さんの言葉ならば、私達、心に刻んでおきます。」
本当に心から心配してくれる芳乃に、裕美、それに乃々とほたるも真剣に応える。そうすると、芳乃は笑みを浮かべ乃々とほたるの手も掴み、裕美に重ねる。
「そなた達の絆が、この先も道を切り開いていきますようにー………。」
そう願いを込めると、芳乃は手を離す。
(アレ?)
そこで裕美は妙な物を感じた。何か一抹の寂しさを。それが何だか分からないが………何故か涙が出た。
「ひ、裕美殿ー。大丈夫ですよー。もしかして、わたくし余計に怖がらせてしまったでしょうかー?だとしたら申し訳ないですー。」
「う、ううん?何でもないです!多分、目にゴミが入っただけ!」
頭を下げる芳乃に慌てて手を振る裕美。そして、芳乃を始め居残りの仲間達を見ると、彼女は言った。
「東京の事、宜しくお願いします。私達も頑張りますから。」
そして、裕美達は武蔵に乗り込み、出港した。
――――――――――
「しかし、上層部も無茶を言ってくれる。秋田基地を占拠した上で、『あんな事』をしろと言うとは………。」
秋田基地で戦艦『アルフォンシーノ』の出港準備を整えていた提督はブリーフィングを行っていた。彼の前に並んでいるのはヘレンとキャシーに加え、新しく配属されたケイトとイヴ。彼女達4人がエースであり、今回の作戦のキーパーソンであった。
「どうだ、ケイト、イヴ。機体は扱えそうか?」
「私の『パァロット』はいい感じネ。」
「わ、私の『アルバトロス』も大丈夫ですよぉ。」
サバサバと答えるケイトと、何か心配そうに答えるイヴ。
こんな対照的な2人でも実力は伴っている。上層部は属国の民故に軽視していたが、提督はそんなプライドに縛られた者達を哀れに思っていた。そして、それはヘレンとキャシーも同じである。
「頼りにしてるわよ、ケイト、イヴ。」
「あたしも色々勉強させてもらうよ!」
出身や階級なんか関係なしにすっかり馴染んだ4人の様子を満足そうに見て提督は告げる。
「後は、日本の出方次第だな………。だが、私のカンが正しければ、一番いいパターンだ。」
「それ当たるの?」
「割とな。」
ヘレンの言葉に提督はニヤリと笑っていた。
――――――――――
秋田の市街地は以前の金沢の市街地と様子はほぼ同じだった。
街は荒らされておらず、軍が待機もしておらず、人々が応援のメッセージを必死に送っていた。
「やっぱり敵の司令官って優しいのかな?」
今度は前よりも心身的に余裕がある為か、『陽炎』の手を振り応える裕美。
しかし、そこに艦長で総司令官である心が釘を刺して来る。
『そう言ってた結果が前の東京の被害だ。何考えてるか分からないヤツほど、怖い物は無いぞ?』
「そう………ですね。」
確かに前回の悲惨な東京の姿を考えれば侮れない存在なのは明らかだった。今回の秋田基地占領も、それ自体が目的ではなく、何か別の目論見があると考えているのが心の今の心境なのだろう。
『絶対に油断はするなよ。』
「分かってます。………今回のIDOLは私1人ですから。」
そろそろ基地が近づいてくる。裕美は陽炎を加速させ、先頭に出る。
今回は前線で戦ってくれる肇の『時雨』がいない為、裕美がその役目を果たさなければならない。やがて、基地に近づくと敵の『イーグル』と『ダック』の群れが見えてきた。地上にはやはり『サンドバイパー』も並んでいる。
「比奈さん。今回、陽炎は最前線で戦います。『手持ち式ビームキャノン』に巻き込むといけませんから、私が抜かれた敵の対処を主にお願いします。」
『了解ッス。如月の主な役目はバックアップッスからね。部隊のメンバーには裕美ちゃんの射線を邪魔しないように最優先で対処するように注意するッスよ。』
戦闘が始まる。陽炎を中心とした如月部隊の後ろで武蔵から美世達の『睦月』と、乃々の睦月・重装備型が地上に降下するのが見えた。
『戦闘開始だ。裕美、頼むぞ!』
「了解!」
裕美の陽炎の手持ち式ビームキャノンが火を噴き、戦闘が始まった。