【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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花畑~矢口美羽

「こ、ここは………?」

 

 気付けば、裕美は花畑の中心に立っていた。空は青空が広がっており、何処までも色とりどりの花が広がっていた。思わず裕美は綺麗だと思った。

 

「私は………。」

「みうさぎ、ぴょーん!ぴょーん!」

「え!?」

 

 背後から聞こえた声に裕美は驚愕する。

振り向けば、そこには手を兎の耳のようにして頭に生やして跳ねている少女がいた。黒髪を後ろ髪で縛った自分と同じくらいの年のその容姿。忘れるわけがない、その娘は、間違いなく矢口美羽だった。

 

「み、美羽ちゃん!?」

「久しぶりだね、裕美ちゃん。また会えるなんて思ってなかった。」

「……………!」

 

 裕美は思わず美羽に抱き着き涙する。夢じゃない。夢なんかじゃない。そこには死んだはずの美羽がいた。本当は自分の代わりに陽炎のパイロットになるはずだった少女。沢山の人から彼女の事を聞いて、改めてその強さと頼もしさと明るさを感じていた。

 

「今まで私の代わりに陽炎に乗ってくれてありがとう。辛い事も多かったよね………。」

「うん、うん………。」

 

 裕美は感じた。美羽に会った事でそれまで心の底で抑えていた感情が噴き出すのを。一度こぼれた涙は抑えられず、思いっきり泣いてしまった。そんな裕美を美羽は、黙って抱き留めてくれていた。

 

「………ねえ、美羽ちゃん。」

「何?」

 

 ひとしきり泣いた後で、裕美は美羽の手を取りながら言う。その手は温かかったが、裕美は知っている。自分の目の前で美羽はこと切れたのを。

 

「美羽ちゃんは………その、死んだんだよね………。」

「うん………私はもう生きてない。それは事実だよ。」

「じゃあ、私も死んだのかな………。」

 

 意識を失う前の事を思い出す。自分は敵の網に捕えられ、コックピットを貫かれそうになった。だとすればもう………。だが、そんな裕美に美羽は首を横に振る。

 

「そうだね。裕美ちゃんはまだギリギリまだ生き残っているかな。コックピットが貫かれる直前で『走馬燈』みたいなのを見ている感じだから。」

「『走馬燈』?それって過去の記憶が流れるようなものだったような………。」

「裕美ちゃんは、IDOLが生命体だって事は知ってるよね?」

「え?」

 

 美羽は手を離すと、明後日の方向を見て腕を後ろに組んで空を見上げる。

 

「IDOLは生命体。つまり生きている。生きている者には『心』が宿る。心が有れば、人の『想い』も残る。私達と同じ人間のように。そして………。」

 

 美羽は振り向き裕美を見る。

 

「私はそのIDOLの心の中に残っている『想い』なんだ。」

「……………。」

 

 裕美は唖然とする。IDOL生命体なのは晶葉達から散々聞いた。だが、その中に想いが込められているなんて話は聞いた事が無い。だが、美羽の言っている事が正しければ………。

 

「もしかして美羽ちゃんは………私が死にそうになったから………。」

「えへへ。………今から一発大逆転の秘策を教えてあげる。」

 

 美羽は裕美の後ろの方に歩き出す。すると、上空から何と陽炎が降下してきた。その陽炎は美羽を見ると、手を差し出し、彼女の差し出した手と重ねた。

 

「『オーバーロード』。IDOLの中の潜在能力を引き出す、切り札的な力。」

「え?そ、そんなのどうやって………?」

「私のように陽炎と手を重ねて。そして、『私達』を信じて。」

 

 美羽とそして陽炎は裕美を見る。

一瞬裕美は躊躇った。オーバーロードなんて言葉も、聞いた事が無いからだ。だが………。

 

(私を助けに来てくれた美羽ちゃんと、私の『愛機』の陽炎………。)

 

 信じない理由が無かった。裕美は恐る恐る………しかし確実に陽炎と美羽と手を合わせる。美羽の方を見る。彼女は微笑んだ。裕美も………微笑んだ。

そして、世界が光に包まれた。

 

――――――――――

 

 変化は唐突に起こった。

陽炎の白銀の機体が黄金に染まると、エネルギーを発した。それは電磁ネットを粉々に吹き飛ばし、拘束していた3体の専用機や迫っていたヒルマイナを弾き飛ばす。

 

「な、何!?何が起こったの!?」

 

 いきなりの敵IDOLの変化に驚愕したキャシーは陽炎を見つめる。黄金色に輝いた機体は、かつて無いほどの威圧感を持っていた。

 

「あの機体………危険だ!」

『待ちなさい、キャシー!?』

 

 キャシーの中のアラートが鳴り響く。彼女はヘレンの警告を無視し、フットペダルを踏み込みバーニアを最大にすると陽炎へと突進した。

 

――――――――――

 

「来る………!?」

『落ち着いて!右腕を振りかざして手刀を作る!』

「うん………!」

 

 電磁ネットのダメージでクラクラとする中裕美は、通信の………『美羽』の言う通りに手刀を振り上げる。

 

『そして念じて!陽炎に!!』

「お願い………!陽炎!美羽ちゃん!!」

 

 すると、陽炎の手刀から、膨大なエネルギーのビームが………もはやビームソードと呼ぶには大きすぎる刃が形成された。

そして、それを迫るヒルマイナに向け、一直線に横に振るう。

 

『必殺!ヤグチソード………じゃなくて、『オーバービームソード』!!』

「てやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 

 巨大な艦すら真っ二つにする刃がヒルマイナに向けられた。

 

――――――――――

 

 キャシーは敗北を悟っていた。

もしも日本に神がいるのならば、その逆鱗に触れてしまったと。それくらい、目の前の機体は神々しく、畏怖が有った。

 

『キャシー!』

「申し訳ありません、ヘレン大尉。楽しかったです………。」

 

 キャシーは光の奔流の中に消えていった。

 

――――――――――

 

 オーバービームソードの刃はヒルマイナとその後ろにいたイーグルやダック達を巻き込み、かき消した。その姿を見たヘレンは思わずコンソールを叩く。

 

「何てこと!?」

 

 だが、すぐさま陽炎の左手も手刀を構えると、巨大なビーム刃が飛び出し、今度はヘレンを狙って上から振り下ろされる。

 

「クッ!?」

 

 とても『ビームファン』2本じゃ受け止められない光の奔流を何とか回避するピーコック。だが、今度は地上にいたサンドバイパーが数機巻き込まれた。

 

『撤退しろ!!』

 

 珍しく提督の焦った叫びが聞こえた。

 

「キャシーの仇は………!」

『あの力を振るわれ続けたら全員死ぬのは目に見えているだろう!?すぐに引け!!』

「………了解!」

 

 ヘレンのピーコック、ケイトのパァロット、イヴのアルバトロス、そして、イーグル、ダック、サンドバイパーが皆撤退していく。彼らは秋田基地を放棄すると次々とアルフォンシーノや『モーレイ』に乗り込み撤退していった。

 

――――――――――

 

 その逃げっぷりを眺めながら黄金に輝いた陽炎は浮遊していた。

裕美は朦朧とした意識の中で、何とか自分が生き残り、大切な者達を守れたことを悟る。そして、意識を失った。

 

『大丈夫、裕美ちゃんは死なせないから。』

 

 最後に美羽の呟きが聞こえた気がした。

 

――――――――――

 

「なぁ………志希ちゃん………。」

「無いよ。あんな装備、あるわけ無い。増してやあんな発光するからくりなんて………。」

「では、あの力は一体………。」

 

 武蔵の艦橋では心、志希、マキノが陽炎の起こした力を目の当たりにして言葉を失っていた。彼女達はあんな陽炎の姿を知らない。一体何が起こったのかまったく見当もつかなかった。

ふと、そこで陽炎の発光が収まり、白銀の機体に戻る。すると、バランスを失い、落下し始めた。

 

「あ!?パイロット気絶!?墜落します!?」

「マズい!?」

 

 マキノが気を失った裕美に気付き、心が思わず叫ぶ。

だが、その機体が無残に叩きつけられることは無かった。落下の途中で陽炎がバーニアを吹かすと、浮遊し始めたのだ。

 

「………裕美ちゃんは?」

「気絶しています………。」

「じゃあ、アレは『誰』が動かしてる………?」

「分かりません………。」

 

 陽炎がこちらに………武蔵にゆっくりと戻ってくる。それを見ながら、志希は珍しく真面目な顔で呟いた。

 

「君は一体誰かな?陽炎?それとも………?」

 

 陽炎は答えない。ただ、一直線に裕美を守るように武蔵へと着艦する。

 

「それともまさか………。」

 

 飛行の僅かなクセを見抜いた志希は、頭の中にダジャレの好きだった少女を思い浮かべる。

陽炎は着艦し、片膝を付くと、裕美の眠るコックピットハッチを開き、そのまま動かなくなった。

 

 第12話 完

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