【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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緑の森~依田芳乃

「何とも圧倒的ではないか、我がIDOLは!!」

 

 アルフォンシーノに乗り込んだ中将は8門の拡散式ビットと共に敵を蹴散らして行く泰葉のクレインの様子を見ながら満足そうに腰かけていた。

この調子ならば、自分が東京基地を破壊するのも夢では無い。いよいよ輝かしい未来が迫っていると思うと気分が高揚するのを抑えられなかった。

 

「間もなく東京基地を射程に入れられます。」

「あの基地を破壊出来れば私の勝ちだ!準備しろ!!」

 

 中将の声が高らかに響いた。

 

――――――――――

 

『何なの、あのビット群は!?愛海ちゃん以上の使い手が帝国側にいるなんて!』

『如月部隊も港の睦月部隊も被害が出ているわ!これ以上押し込まれると!』

 

 レナや久美子の悲鳴を聞きながら芳乃はマズいと思っていた。このまま前線を押し込まれると東京基地がアルフォンシーノの『主砲』の射程に入ってしまう。そうなると、周りに被害が出るのは必至だった。

いや、そうでなくても、東京が陥落すれば、都市の人々達に被害が出るのは目に見えていた。このままだと裕美の両親等も守れない。

 

「やらせは………しないのでー!」

 

 後退していた芳乃がレールキャノンを連射する。だが、それが泰葉のクレインにも8門の拡散式ビットにも当たらない。多くのビットを制御しながら自機も制御するなんてとんでもない使い手だと改めて思った。

 

「何としても戦艦の砲撃だけは防がないとー………!」

 

 芳乃は雪風を飛ばし、アルフォンシーノの艦橋を狙いに行く。レールキャノンの威力ではエンジンブロックを射抜くのは無理だった。だが、そこにクレインが立ち塞がり、手持ち式ビームキャノンを撃ってくる。それを回避する芳乃の雪風。しかし、そこに更に8門のビーム砲塔が雪風を集中して狙ってきた。

 

「ッ!?」

 

 『トライデント型ランス』を構え、コックピットへの被弾は避けようとした芳乃。だが、その努力も空しく、ランスは破壊され、至る所で爆発が起きる。飛び散る破片。雪風は煙を吹きながら港へと墜落した。

 

「わ、わたくしは………。」

 

 芳乃は自分の手を見る。真っ赤だった。

パイロットスーツには破片が刺さっており、血が出ていた。口の中に苦い物を感じる。

 

(わたくし………。)

 

 ここまでなのか?と思った芳乃の視界が暗転した。

 

――――――――――

 

「芳乃さん!?」

「え………乃々ちゃん?」

 

 秋田基地にいた乃々は急に芳乃の気配がした気がした。

東京で戦っていると情報が入っているはずの芳乃の。当然、ベッドで身を起こしていた裕美はその意味が分からない。だが………乃々は確かに聞こえた。芳乃の声が。そして………。

 

「!?」

 

 乃々の周りの世界が変わった。

 

――――――――――

 

 芳乃は緑が綺麗な森の中に立っていた。正面には驚いたような顔をしている森久保乃々が立っている。

 

「………乃々殿なのですかー?」

「芳乃さん………何で………ここは一体………?」

 

 動揺する乃々を前に、芳乃は出撃前に晶葉達が言っていた事を思い出す。

IDOLには戦死した先代パイロットの想いが宿っていると。しかし、雪風はそうでは無い。何故なら乃々は生きているからだ。その乃々がそうして目の前に現れた。その意味は………。

 

「成程ー。ようやくわたくしにも理解できたのでー。」

「芳乃………さん?」

 

 微笑みを見せる芳乃に訝しむ乃々。

芳乃は乃々に近づくと、その手を取る。そして、いつものように呪いを掛ける。

 

「そなたにー、祝福をー。」

「な、何言ってるんですか………。」

 

 反射的に何かを悟ったのだろう。

乃々が首を振る。だが、芳乃はそれに構わず乃々に言葉を紡ぐ。

 

「後は、任せましたのでー。」

「止めてください………!芳乃さんは雪風のパイロットでしょう!?芳乃さんがいなくなったら………!」

「心配せずともー、乃々殿がその役目を継ぐことは出来ます故ー。」

「もりくぼは雪風にはもう乗れません!本当に止めてください芳乃さん!それじゃあ、まるで………!」

 

 芳乃は俯く乃々の頭を撫でると呟く。

 

「わたくしはー、どうやら『向こう側』の役割を果たすのが啓示らしいのでー。乃々殿の為に道を切り開くのがー、わたくしの役目ー。」

「そんな物かなぐり捨てて下さい!今与えられている事を勝手に放棄しないで下さい!!もりくぼに………もりくぼなんかじゃ………!」

「ごめんなさいー………。背負わせてしまってー………。」

 

 芳乃は屈み、俯いた乃々を見上げる。彼女は泣いていた。多分、芳乃も乃々も本能が告げているのだろう。もう芳乃自身は………。

 

「大丈夫ー。わたくしは、いつでも皆を見守っていますからー。乃々殿の優しさが有れば、きっとー。」

「止めて………芳乃さん、止めて………!」

「そろそろ………時間ですねー………。」

「!?」

 

 一瞬だけ笑顔を見せた芳乃は立ち上がると、真剣な顔で後ろを振り向く。そこには雪風が手を伸ばしていた。

 

「そなたならばー、できるのでしょー?」

 

 雪風は頷く。芳乃はその手を取る。

 

「では、今一度だけ………わたくしにも、その力をー!」

「行かないで!芳乃さーーーん!!」

 

 背後から乃々の声が響く中、森は光に包まれた。

 

――――――――――

 

 破損して墜落したはずの雪風が黄金に輝いた。

レールキャノンが狙撃モード以上に伸び、アルフォンシーノを狙う。それに反射的に悪寒を感じたのだろうか、中将が慌てて通信を送る。

 

『しょ、少尉!?あの機体を撃破しろ!?』

『クッ………!』

 

 泰葉のクレインが手持ち式ビームキャノンを向ける。

だが、芳乃はもう構わなかった。レールキャノンの狙いを変えずに、呟く。

 

「そなたのー、言う通り名づけましょー。『オーバーロード』………『ギガブラスター』!」

 

 芳乃のレールキャノンから、構造上有り得ないはずのビームのエネルギー粒子が放射状に飛び出し、空中に浮かんでいたはずのアルフォンシーノをかき消す。

そして、僅かに遅れてクレインの放ったビームキャノンが………雪風のコックピットを貫き爆発させた。

 

――――――――――

 

「芳乃………ちゃん?」

 

 ようやく追いついた肇が見たのは、雪風が爆発する所だった。

パイロットの芳乃はどうなったのか?そんな事、もう分かりきっていた。

 

「う………うぁあああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 

 肇は咆哮した。多分、誰もこんな彼女の姿を見たことは無いだろう。

だが、そんな周りへの態度などお構いなしに、肇は時雨のバーニアを吹かせ、クレインへと一直線に突っ込む。

泰葉はビット8門を展開するがその加速が予想外に速過ぎて目測が狂う。それでも展開式ビームブレードが破壊された。

 

「よくもぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 肇は涙を流しながら右の拳の炸裂ボルト内臓ナックルを力いっぱい叩き込む。クレインは左腕を構えるが、エネルギーフィールドでの防御は間に合わず片腕が吹き飛んだ。

 

『撤退するわヨ!ヤスハ!あんな『隠し玉』連発されたらたまったものじゃないワ!』

『はい………!』

 

 メアリーの通信に泰葉のクレインは撤退していく。

肇の時雨は思わず雪風の元へと駆けつけるが、コックピットは穴が開いていた。遅すぎたのだ。全てが。

 

「芳乃ちゃん………。芳乃ちゃん………!」

 

 泣き崩れた肇はその場を動けなかった………。

 

――――――――――

 

「芳乃さああああああああああああああああああああああああああああああああん!!」

 

 秋田基地の一室で乃々は泣き叫んでいた。あまりの取り乱した様子に、裕美は慌ててプロデューサー達を呼び寄せるが原因が分からない。

だが………その数時間後、彼女達は芳乃の殉職を知る事になる。

 

 第14話 完

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