【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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第15話「悲しみを背負って」
実験台


 イージス艦『モーレイ』に帰艦した泰葉は大歓声に迎えられる事になった。

『アルフォンシーノ』に乗った中将達は失ってしまった物の、今まで散々手こずらせてきた日本のIDOLを1体破壊する事に成功したのだ。その喜びは半端では無い。

 

「よくやってくれた!」

「流石我が国のIDOLだぜ!」

 

 いつもは日本人の泰葉に冷たい者達も今だけは彼女を心の底から称えていた。散っていった仲間達の無念を晴らしてくれたのだからそれは当然だろう。

だが、今の泰葉はその声援にこたえる余裕は無かった。

 

「千鶴ちゃん!?」

 

 彼女は集まる人々の波をかき分けると格納庫の端でライラやナターリアに支えられている千鶴の元へと駆けた。

千鶴は口元に手を当てて咳き込んでおり、時々血を吐いていた。ライラ達はその様子に医療班を呼ぼうとするが、千鶴はそれを制する。

 

「大丈夫です………。」

「で、でも血が出てるゾ!?」

「いつもの事ですから………。」

「どういう事ですか?」

 

 駆け寄ってきた泰葉とようやく身を起こす千鶴を見ながら呟くライラ達。

それを見て、泰葉と千鶴は何て言えば良いか迷う。そこに………。

 

「ご苦労サマ。早速だけれド、指令室で報告を頼むワ。」

 

 諸事情を察したメアリーとクラリスが彼女達を呼びに来てくれた。

 

――――――――――

 

『失敗作!?』

 

 メアリー、クラリス、ライラ、ナターリア、千鶴、そして泰葉の6人だけが入る事になった指令室。

周りに聞こえない静かな空間が確保された事で、千鶴は開口一番そう呟き、ライラとナターリアを驚かせた。

 

「千鶴ちゃん、それは言い過ぎ。貴女は失敗作なんかじゃない。」

「いいえ、私は泰葉さん達に比べれば失敗作よ。完全なIDOLの適合者じゃない物………。」

「ど、どういうことダ?チヅルはIDOLを見事に操っているゾ?」

「ライラさん達よりも操縦も上手いとは思いますです。」

「確かに私はIDOLには乗れます。………ただ、長時間の戦闘は体が耐えられないんです。」

 

 先程血を吐いた事を指すのだとライラ達は悟ったが、それはそれでこの千鶴の不安定な身体に疑問を持つ。

何故こうしてまで戦うのか。というか、何故こんな体になってしまったのか。その2人の心情を悟ったのか、苦しそうな顔で泰葉が言葉を紡ぐ。

 

「………私達『復讐者』が、元々日本に捨てられた存在だというのは知っていますよね?」

「チヅルが堂々と言ってたからナ。」

「もう大体想像は付いたとは思いますが、私達は、元々は色んな事情で当時のアメリカ合衆国に滞在していた『在米日本人』なのです。」

「あー………だから日本との交渉に使われて『裏切られて』しまったのですか。」

「はい。」

 

 そこまではライラ達も予測は出来るだろう。だが、泰葉は俯き言葉を続ける。

 

「その後、私達は帝国の『実験台』になりました。」

「じ、実験台なの………カ?」

「帝国は当時戦っていた日本のIDOLの戦闘データを元に、発掘・開発プランを整え始めていたのヨ。でも、開発を焦る余り、日本のを参考にしちゃったからカ、適性が『日本人』じゃないと受け入れてくれなくてネ。」

「じゃあ、帝国側は早急に適合者を探さないといけなくなるですから………。」

「捕えていた在米日本人達ヲ、無理やり『強化して』適性を与えようとしたのヨ………。」

 

 メアリーが引き継いでくれた言葉に、ライラ達が絶句するのが泰葉には分かった。

そんな彼女達に、千鶴が何処か遠い目で話しかける。

 

「いわゆる『薬物強化』でしょうか?何から取り掛かればいいか分からなかった為、最初はかなり無茶な事をしていたと聞きます。だから、真っ先にいい年をした大人が死にました。」

「………チヅルやヤスハの親もカ?」

「はい。ようやく実験のコツが掴めてきた所で残っていたのは私達『子供』だけだったらしいです。ですが、そう簡単に適性を得られれば苦労はしないわけで………クラスメイト達が次々と亡くなりました。」

「では、その中で生き残ったのが………。」

「僅かなIDOLの適合者とその予備軍。完全な適合者は5人と言われていますが、私は後遺症が残ってしまっているので正式には4人ですね。」

「5人です。………誰も千鶴ちゃんを仲間外れにはしません。」

 

 泰葉はあくまで千鶴を失敗作と見ないと決めている。

だから、本心では千鶴が自嘲するのも止めて欲しいとは思っていた。ライラがそんな泰葉に向かって聞く。

 

「………そんな中、どうやって耐えてきたのですか?もしかしてずっと泰葉さん達を捨てた日本を恨みながら過ごしたんですか?」

「そうですね。それくらいしか出来る事は無かったです。………これもある意味悲しい事なのですが、私達の担当だった『先生』は間違いなく『善人』でした。仲間が1人死ぬ為に墓を作り、泣き崩れるくらいには………。」

「だから、私達はその人を恨む事はできなかったんです………。」

 

 千鶴の言葉に、泰葉は思い出す。雨の日も、雪の日も、墓に謝罪を欠かさなかった男の後姿を。帝国の人間でありながら、優しすぎたその男は戦場には似合わないと思っていた。だが、その男は今名前を捨て、軍の最前線で指揮を取っているらしい。

 

「ゴメンナ………。ナターリア達の為に嫌な事思い出させテ………。」

「いえ、いいんです。ライラちゃんやナターリアちゃんが理解のある方で良かったです。」

「泰葉さんと千鶴さんは、帝国にいる仲間の為に戦っているのですね。」

「はい。私と千鶴ちゃんには、もうそれしか残されてませんから………。」

 

 『復讐者』としての暗い過去。それを心の底から共有できるのは同じ『復讐者』しかいないのだ。だから、泰葉も千鶴も、その仲間達を守る事に全力を尽くしたかった。もしも、これ以上仲間を失う事になったら後悔する。故郷が無くなった彼女達にとっては、それだけが世界の全てとも言えたのだから。

 

「守れるといいナ。その仲間達。」

「ライラさんも絆を守っていって欲しいです。」

「ありがとうございます。」

 

 泰葉はライラとナターリアに頭を下げる。

メアリーはその言葉を聞きながら、故郷の仕出かした罪に、心の底で悪態をついていた。

 

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