【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
東京へと帰還した裕美は悪い報告しか聞かなかった。
新アメリカ帝国との戦闘では、2体のIDOLを破損させた他、司令官の乗っているアルフォンシーノを破壊した。
その代わりに『雪風』が大破。『吹雪』も破損。そして何より………雪風のパイロット依田芳乃を失った。
「私達シンデレラガールズがライブを行っている以上、芳乃ちゃんの死は隠しようが有りません。きちんと報告をしなければならなかった為、世論調査での今後の不安の声も増えたと聞きます………。」
通路を歩きながら肇は語る。
その顔に涙は無い。だが、裕美と同じくもう枯れ果ててしまったのだろう。その顔は心なしか痩せこけていたように思えた。
「あのライブは私もテレビで見ました………。みんなが悲しそうで………。誰も喜ばないライブでしたね………。」
頼りになるIDOLが5人中1人死んだ。
それは曖昧にしか情報が伝わっていない国民にとっても、パワーバランスが傾いた事を把握する事ができるだろう。連日テレビ番組ではIDOLについてや今後の日本に付いて、専門家と呼ばれる者達が好き勝手に話していて、正直裕美は辟易していた。
「学校とかは大丈夫ですか?」
「えっと………やっぱり私は大丈夫なのか?って聞かれる事はありましたね。送迎の時にはテレビカメラも来てましたし………一応プロデューサーが全部シャットアウトしてましたけれど。」
「みんな同じようだったと聞きました。大変な想いをさせてしまいましたね。」
「あの、肇さん………。」
「はい?」
裕美は肇の声に抑揚が無い事に気付き、迷った挙句問いかける。
「もしかして最近眠れていないんじゃないんですか?顔色も悪そうですし………。」
「そうですね………。少し眠れてはいないです。一応リーダーという立場ですから、色々書類も書かないといけませんし………。」
裕美は言わないがプロデューサーから聞いている。肇はプロデューサーと一緒に芳乃の親族に殉職の報告と謝罪をしに行った事を。
多分、家族の方もある程度覚悟はしていたのだろう。責められる事は無かったが、それが肇の心を締め付けているように思えた。
「私の責任です………。」
俯いた肇が静かに呟く。
「私が苦戦したから………。私の射撃が下手だから………。私がIDOLを乗りこなせ無かったから………。」
絞り出すような声に、裕美は何て答えればいいか分からない。
肇の責任では無いと言えばいいのだろうか?それで本人が納得するのならばここまで悩んでいないだろう。
では、自分に肇を責める資格があるのか?そもそも戦いに参加で来てなかった自分がそれを言うのは間違えになる。
だから、裕美はこう言った。
「肇さんは………罰されたいのですか?」
「そうかもしれません。………いえ、そうなのですね、きっと。」
リーダーというのは、仲間が犠牲になった際にどうすれば良かったか考えてしまう物だ。もっといい手段は無かったか。もっといい戦略は無かったか。努力を怠っていたのではないか。杜撰な所があったのではないか………と。例え、それが全て後の祭りだと分かっていても。
「私は、リーダー失格です………。」
「肇さんが失格だったら、誰もリーダーなんて出来ないですよ………。」
「……………。」
裕美は、心の底から皆の事を思っている肇を、何とか労わりたいと思っている。だが、その言葉は肇にとってはどうしても重荷になってしまう。裕美にとっても、肇にとっても、仲間の死を受け入れるには若すぎた。
「今更ながらに昔の乃々ちゃんの気持ちが分かってしまいますね………。こんな苦痛を幼い頃に経験すれば、トラウマになるのも当然です。」
「肇さん………。」
肇の苦しみを分かち合えない自分を裕美は呪う。機体の操縦は上手くなったと感じたけれど、仲間の心を理解するには、まだまだ力不足であった。
「………止めましょう、自分を不幸に見せかけるのは。まだまだ私達には仕事が有りますから。前を向きましょう。」
「そうですね………。」
頬を叩き、気合を入れ直す肇に、裕美は何とか立ち直って欲しいと願った。
――――――――――
「大分傷が癒えてきたみたいじゃな。」
「うん。ゴメンなさい、巴ちゃん。助けてもらちゃって。」
「気にするな。仲間ならば当然じゃろう?」
医務室で巴は愛海の看病をしていた。
愛海の傷は幸いにもそこまで酷くは無かった。少々出血したくらいで、数日休めば戦線に復帰できるとの事だった。
「吹雪もメカニック班が急ピッチで修理をしておる。次の出撃までには間に合わせる意気込みじゃろうな。」
「うん。そうですね………。」
「………なんじゃ、随分としおらしいの?」
いつもならば、隙あらばお山を求めるのが愛海なのだ。その覇気が今日は無い。いや、怪我をしてからずっと無かった。
巴は注意深く愛海を見てみる。彼女は隙を伺っているわけでは無い。愛らしく振る舞っているわけでも無い。
「………愛海。」
「ねえ、巴ちゃん。」
「なんじゃ?」
「これから巴ちゃんはどうするのですか?」
「どうするって………そりゃ、芳乃の仇を討つに決まってるじゃろ。」
そう、帝国に討たれた芳乃の敵討ち。それが巴なりのやるべきことだと思っていた。だが、それを聞いた愛海の顔がますます曇る。
「じゃあ、巴ちゃんはあの機体にまた挑むんですか………。」
「あの機体って………芳乃を討った機体か。そりゃ、そうでもしないと………。」
「勝てないかもしれないのに?」
「何?」
愛海の言葉に巴は怪訝な顔をする。
みれば、愛海は俯き、毛布をギュッと掴んでいた。その表情は険しい。
「巴ちゃんも見ましたよね、あの白と黒の翼を生やした機体。あの機体、本気を出したらあたしなんか全然歯が立たなかったです。如月や睦月が群れになっても。芳乃さんが犠牲になって、その隙を肇さんが狙ってやっと腕一本だけだったって話だって聞きました………。」
「お前な………次はこうならないように作戦を練ればいいじゃろうが。」
「どうやって………?」
「そりゃ、みんなで考えて………。」
「また誰か死ぬかもしれないんだよ!!?」
「ッ!?」
いきなり顔を上げて大声を出してきた愛海に巴は思わず身を引いた。愛海は涙を流しながら巴を睨みつけていた。もう枯れ果てたはずの涙を流しながら。その体は………震えていた。
「お前………まさか、怖いのか?」
「怖いよ………怖いに決まってるじゃないですか………。あたし、後少しで死にそうになった………。運が悪かったら芳乃さんみたいに生きてなかった………。」
愛海の表情が青ざめる。奥歯をガチガチならし俯き目線が揺らぐ。体がぐらついた事で、慌てて巴が支える。
「変ですよね………。今まで普通に戦えていたのに………。あたし、何も考えずにバカみたいに飛び出していたのに………。芳乃さんが死んで………自分も死にかかって………急に怖くなってきて………戦うのが………命を賭けるのが………。」
「愛海………。」
「イヤだよ………死にたくないよ………逃げたいよ………あたし!あたし………!」
「愛海!しっかりせい!愛海!!」
錯乱し始めた愛海を何とかなだめながら巴は思う。
この調子では次の出撃、愛海は前に出したらダメだと。仲間にとんでもない爆弾を背負わせてしまったと内心唇を噛み締めた。