【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
「どうだ、美世。修理できそうか?」
「吹雪はともかく、雪風は根本から作り直すくらいの気持ちじゃないと無理だね………。上層部がそこまで許可をくれるとは思えないけれど………。」
格納庫で損壊した機体を見た晶葉は美世に尋ねる。
IDOLは元々発掘されるまで超合金の物質は発見されなかった。今でこそ量産が可能になったとはいえ、高コストの貴重品であることには変わらない。すぐに修理ができそうな吹雪はともかく、コックピット周りから完全に修復が必要な雪風に関しては時間が必要だった。いや、仮にすぐ修理出来たとしても………。
「もう雪風は乗り手がいない。吹雪は愛海ちゃんが、精神的に不安定になっちゃったんでしょ?」
「ああ………。」
巴の報告を聞いた時は駆けつけた晶葉も愕然とした。
子供のように泣きわめく愛海の姿は見たことが無かった。………いや、年齢を考えればあんな姿を見せても本来はおかしく無いのだろう。
「………今まで無茶をさせ過ぎたんだ。」
「それ言ったら晶葉ちゃんも同い年だけれどねー。」
「私は後方支援だからまだいい。」
同席していた志希の言葉に、14歳の晶葉はぶっきらぼうに答える。
前線で命のやり取りをしている以上、幼いパイロットの精神が、いつか限界に来る事は目に見えていた。だが、IDOLに頼りきった日本の現状が離脱する事を許さなかった。
「………愛海がダメだとして、他はどうだ?」
「肇ちゃんがいっぱいいっぱい。巴ちゃんも結構アップアップしてるんじゃないかな?もしかして一番安定してるの裕美ちゃんかも。」
「一番経歴が浅いからか………。それも皮肉だ。」
志希の的確な言葉に晶葉は頭をガリガリとかく。
このままでは、IDOLは文字通り使い捨ての駒になってしまう。上層部はどうにかする気は無いのかと思わず苛立ってしまう。
「そうそう、晶葉ちゃん。報告届いていると思うけれどさ、乃々ちゃんの事どう思う?」
「乃々………?そう言えば、芳乃の死ぬ瞬間に反応したって話だったな………。」
話を転換した志希の言葉に、晶葉は大破した雪風を見る。
乃々は雪風のパイロットでありながら、途中で適性を失ったという奇妙な経歴の持ち主である。その前後のゴタゴタで軍への不信とトラウマを抱える事になってしまったのだが………。
「反応しないはずの雪風に乗っていた芳乃の声が聞こえたんだったな。」
「何か芳乃ちゃんから託されてしまったって事も言ってたよー。」
「託された………か。適正が失ったはずの乃々が芳乃から………。」
それが意味する事とは?1つの仮説が晶葉にも志希にも浮かぶ。乃々はもしかしたら雪風に………。
「悪いけれど、それ、今の段階じゃ試す事は出来ないよ。」
その2人の考えを悟った美世がハッキリ言う。
雪風はコックピット部分を中心に完全に破壊されてるのだ。起動パーツの『ユニットコア』から作り直さないといけない。そして、上層部は今の段階ではそれを許してくれないだろう。
「………現状の3体でこの状況を打開する方法を模索する方が先か。」
「難易度高そうだけれどねー。」
重い現状に晶葉はため息をつき、志希は肩をすくめた。
――――――――――
乃々はシミュレーターでひたすら『睦月・重装備型』に乗りながら、『遠距離狙撃用対物ライフル』を撃っていた。黙々と、ただ黙々と。出現する『イーグル』を片っ端から撃ち落としていた。
集中している間は何も考えなくてもいい。そう思っていたからだ。しかし、頭の片隅でやはり芳乃のあの最後の微笑みが思い浮かぶ。思い浮かべたく無くても思い浮かんでしまう。
「クッ………!」
やがて『コンプリート』の文字にシミュレーターが強制終了する。
乃々は外に出ると、栄養ドリンクを持って待っていたほたると出会った。
「お疲れ様、乃々ちゃん。」
「お疲れ様です、ほたるさん………。」
ほたるも汗をかいている所を見ると、ずっとシミュレーターをやっていたのだろう。
ここの所、2人共、ずっと時間が有れば己の戦闘技術を鍛える事に時間を費やしていた。そうしなければ、心が潰れてしまいそうだから………。
「みんな大変だね………。芳乃さんが殉職して、愛海ちゃんが怪我して、一生懸命になっているし。」
「心さんやプロデューサー達も対応に追われていると聞きました………。この状態で次攻められると………。」
「で、でも敵IDOLを損傷させたから、少なくともあの2機は、しばらくは出られないって聞いたよ。『オーバーロード』の事もあるし、しばらくは帝国も慎重になるんじゃないかって。」
「だと………いいのですが………。」
乃々は戦争がそんな甘い物だとは思ってはいない。もしも他の『復讐者』の機体が完成していたら?もしも帝国が他にも『切り札』を持っていたら?そうなったらもう日本は守れない。
「もりくぼは………嫌な予感がするんです………。」
「嫌な予感………。」
「今回、芳乃さんが戦死し、雪風が破壊された事は帝国側には確実に伝わったはずです。その勢いのまま、何かをやってきそうで………。」
「……………。」
乃々の言葉にほたるも同感だと思ったのだろう。
手が震えているのが分かった。考えたく無くても考えてしまう。訪れるかもしれない最悪の未来。こちらに希望があるとすればオーバーロードという不可思議な力だけ。だけれど、それをコントロールできなければ意味は無い。
「私に………もっと力が有ればいいのに。」
「ほたるさん?」
「私の力じゃ、みんなを守る事すらできない………。不幸と嘆いてばかりで………何の役にも立たない。」
「仕方ないですよ、ほたるさんは、元々は一般人………。」
「違う。」
乃々は見る。ほたるは悔しそうに俯いていた。
「私はもう、一般人じゃない。『シンデレラガールズ』の一員だから、みんなの力にならないといけない。元が一般人だからとかそんなんじゃなくて、力になりたいの。なのに………自分の身を守るだけでやっとだなんて………。」
「……………。」
その言葉に乃々はズキリと胸を刺された。
無力を嘆いている友達に対し、自分は何か出来ているのだろうか?あの緑の森の中で芳乃に雪風の事を託された時も、乃々は首を縦に振れなかった。そんな自分は仲間達を守ると言う権利があるのか?そう思うと、やるせない想いがあった。
(もりくぼは………芳乃さん達を直視できない………。)
IDOLに立ち向かえない自分がいる。そう思った乃々は落ち込んでいた。