【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
ハワイ諸島に戻ってきた泰葉達は、そこでも大歓声を受けた。
皆、普段は異国の者に対して冷たいのにこういう時は単純だと思いながらメアリーに連れられ歩いていく。
「あ………メアリー少将、少しお時間を頂いてもいいでしょうか?」
「いいわヨ。………どうやら人数の方は揃ったようネ。」
泰葉達の元へ駆けてくる3人の少女を見ながらメアリーは呟く。
先頭で駆けてきた少女は泰葉と千鶴の姿を見ると、思わず飛びついた。
「泰葉さん!千鶴さん!無事で何よりですっ!」
「悠貴ちゃんも元気そうね。安心したわ。」
高身長の少女の背中を叩いた泰葉は微笑む。
この少女は乙倉悠貴(おとくら ゆうき)。黒髪のショートヘアが特徴の泰葉達と同じ復讐者の1人である。背丈は高くモデルのように細身であるが、実はまだ13歳で5人の中では一番最年少だ。
その後ろから、茶髪の右のサイドテールの少女と、同じ茶髪で腰まで伸びたポニーテールの少女がやってくる。
「響子ちゃん、智香さんもお元気そうで良かったです。機体も準備できたのですか?」
「もうちょっとだよ。でも、先に着任しろって言われて。」
「御蔭で少し早く5人揃う事ができたけれどね。」
千鶴の言葉に、2人は答える。
サイドテールの少女は五十嵐響子(いがらし きょうこ)。家事が得意な少女で復讐者の1人。戦争さえなければ男子から人気を博しただろう。
ポニーテールの少女は若林智香(わかばやし ともか)。5人のリーダー的な存在で復讐者では17歳の最年長だ。皆を盛り上げるのが得意で4人からも慕われている。
いずれも美少女と言える存在であったが、帝国にしてみれば、彼女達こそが日本攻略の切り札と言える存在であった。
「それじゃ、アタシ達は大将に今回の事報告しに行くカラ久々の再会を楽しんでチョウダイ。」
「いいのですか?」
「機体も揃えばすぐさま任務ヨ。それまで羽を伸ばすのも悪く無いワ。」
「ありがとうございます。」
お礼を言う泰葉に手を振り、メアリーはクラリスとライラ、ナターリアを連れて行く。
それを見送った泰葉達はどうしようか話し合う。とはいえ、ここはハワイ諸島。心の底では軽蔑してくる帝国の人間がいる所ではゆっくり羽を伸ばす事もできない。仕方なく、5人は近くの海へと行く事にした。
「うわぁっ!気持ちいいっ!皆さん来てくださいっ!波が冷たいですよっ!」
最年少の悠貴がはしゃぐ姿を見て思わず笑顔を浮かべる4人。
彼女達は浜辺に座ると会話を始める。
「響子ちゃん、弟さん達の様子はどう?」
「はい、時たま携帯端末で画像が送られてきますけれど、元気そうにしています。」
「大変ですよね。響子ちゃんは弟さん達を養いながら戦わないといけませんから………。」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、千鶴ちゃん。智香さんも、援助してくれてるから………。」
「そうなんですか?」
「うん。響子ちゃんは………言い方は悪いけれど、弟さん達の無事を保証する代わりに戦う事を誓っているからね。私も出来る事はやりたいって思って。」
「私も援助しようか?」
「泰葉さんにも頼ったら申し訳ないですよ………。」
最近の互いの近況についての話題。響子の弟達の話に始まり、たまにメールを寄せる『先生』の話、千鶴の体調の話、そして、日本のIDOLとの話にもなった。
「ライブの映像で確認したけれど、私が撃破したのは、依田芳乃っていう女の子だったんだって………。」
「そっか………。それにしても日本も狂ってるよね。IDOL達を戦わせるだけじゃなくてライブまでさせるなんて。」
泰葉の言葉に智香は腕を組み考える。
国民の心象操作を行っている事は明確だった。IDOL達が一騎当千の活躍をしていたから、彼らはそれを偶像として崇めようとしているのかもしれない。自分達の復讐者としての立場を考えれば、それは嫌な感じであった。
「向こうにも向こうの事情があると思うけれど、私はそうやって戦わされるパイロット達に同情しちゃうかも。」
響子も深くため息をつく。戦争だから仕方ないとは言えば仕方ないかもしれないが、上の身勝手で動かされる人達はいつ見ても哀れだ。尤も自分達の立場を考えれば同族相哀れむという感情を抱いているだけなのかもしれないが。
「どちらにしろ、私達は引けないんです。今度戦う機会が有ったら、その時こそ確実に仕留めさせてもらいます。」
「その時は、私も頑張りますっ!」
千鶴の言葉に戻ってきた悠貴もガッツポーズをして応える。
そんな仲間達を見て泰葉は思う。本当はこんな仲間達とは戦争では無いもっと別の所で一緒にいたかったと。でも、それは叶わない。日本によってその機会は幼少の頃から失われてしまったのだから。だから泰葉達は戦う道しか選択は出来ない。
(でも、この戦争を終わらせれば、もしかしたら………。)
一筋の希望があるとすればそれだと泰葉は思った。だから、彼女達5人は戦うと決めた。復讐者という名を与えられても。それが未来に繋がるかもしれないから。
(見ていて下さい、皆さん………それに『先生』。)
泰葉は青い空を見上げて思った。
――――――――――
「………何ですっテ?」
指令室へと戻ったメアリーは戦死した中将の上の大将との通信内容に顔をしかめた。
『言った通りだ。中将の功績を無駄にはできん。このまま君は準備が整い次第、日本の体勢が整わない内に再度進軍してもらう。』
「お言葉ですガ、大将。機体の整備が追い付きません。ライラ、ナターリアの『パラキート』はともかく、ヤスハの『クレイン』とチヅルの『クウェイル』は修復に時間が掛かりマス。他の3人の機体もまだ届いてないのデショウ?」
『だが、軍内部で功績を焦る輩が出て来てな………収拾がつかなくなってきているのだ。』
大将の言葉にメアリーはまた内心頭を抱える。
結局の所、この男も他の者に手柄を渡さない内に何とかしろと言ってきているのだ。当たり前だが、そんな無茶ぶりをされてもメアリーは対処できない。
「どう言おうト、こればかりは無理デスワ。IDOLがいないんじゃ、進軍しても返り討ちにあう事は目に見えているデショウ?それこそ大将殿の名に傷が付くだけヨ。」
『つまり、IDOL以外に『切り札』が有ればいいんだな。』
「………どういう事デスノ?」
メアリーの中で危険信号が発せられる。目の前のモニター越しの男は笑っていた。それも邪笑だ。
『私は常々思っていた。『復讐者』なんてIDOLに頼って、彼女達が日本への情を抱いたらどうするのだとな。』
「何が………。」
『私もバカでは無い。コレをハワイ基地に送っておいた。』
データが送られてくる。それを見て………メアリーの目が見開かれる。
「大将!?本気デスノ!?こんな事をしたラ………!?」
『もう1つ良い事を教えてあげよう。ハワイ基地にドバイとブラジルから招集した兵を送っておいた。』
『え?』
故郷の名前が出たことで後ろにいたライラとナターリアが驚く。
彼女達には、送られてきたデータの情報が映っていない。
「大将殿………彼らにやらせる気ナノ!?」
『故郷の名誉を守る為の行為なのだ。そこにいる2人も含め、躊躇する者はいないだろう?』
「貴方って人は………!」
睨みつけるメアリーの様子に、クラリスもただ事では無い事を察した。
しかし、大将は涼しげな視線でそれを受け入れるとメアリーに命じる。
『拒否権は無いぞ、少将。今すぐに部隊を再編し、東京攻略に掛かれ!』
「………ッ!」
通信が切られる。メアリーは送られてきたデータの画像を力いっぱい叩いていた。
第15話 完