【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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第16話「バックファイア」
強いられし民


「何?帝国がまた進軍を始めた?」

「ああ………。衛星が捉えたから間違いない。」

 

 ブリーフィングルームに緊急招集させられた裕美は、巴とプロデューサーの言葉に首を傾げる。

予想よりも次の攻撃は早かった。いや、早すぎた。前回攻められたこちらはギリギリ吹雪が修復できた所なのだ。日本まで攻めてハワイまで行き来している新アメリカ帝国の方は前回の戦闘で破損した2体のIDOLを直す余裕は無いのではないか?

 

「晶葉ちゃん、IDOLってそう簡単に直せる物じゃ無いよね………?」

「帝国の技術力を考えても特別な施設が無いと無理だ。だから、あの2体は、今回は出撃出来ないと見ていいだろう。」

 

 裕美の質問にキッパリと言う晶葉であるが、一同はそれで楽観視は出来ない。

ならば、猶更今回帝国が出てきた理由が分からない。確かに相手から見れば、芳乃の雪風は撃破したからこちらのIDOLは4体になっている。恰好のチャンスでは有るはずだ。だが、IDOL無しで、日本軍を倒せると思っているのだろうか?

 

「………新しいIDOLが完成したとか。」

「最悪なパターンはそれじゃな………。」

 

 俯きがちに愛海が応えるのを、巴は否定できなかった。

ここの所の愛海は精神的に不安定なのもあって、考え方がネガティブになってしまっている。シンデレラのムードメーカーがこうなってしまっているのは裕美達も大変心が痛んでいた。

 

「とにかく、『武蔵』を出して万全の態勢で臨む。レナ少佐を始めとした『如月』部隊も今回は揃っているから、戦力は充実しているはずだ。」

「シンデレラガールズは、敵陣へは、如月部隊の援護をもらいながら、私の『時雨』、裕美ちゃんの『陽炎』、巴ちゃんの『霞』で攻めます。愛海ちゃんの『吹雪』を始めとした面々は念のため、街への防衛線を守って下さい。」

『はい………。』

 

 プロデューサーと肇の言葉に一同が頷く。

裕美は落ち込んでいる愛海を見る。今回、愛海は前線に送るのは危険だと判断された。仕方ないとはいえ、やはり本人は責任を感じているのだろう。完全にしょげてしまっている。

 

「後ろからサポートお願いね、愛海ちゃん。」

「はい………。ご迷惑をお掛けします。」

 

 裕美が何とか励まそうとするが、そこにいつもの隙あらばお山を求める愛海は存在していなかった。

 

――――――――――

 

「こ、こんな作戦納得できるわけが無いじゃないですかっ!」

 

 イージス艦『モーレイ』の上で乙倉悠貴は司令官であるメアリーに思わず叫んでいた。

作戦内容を読んだ他の『復讐者』の面々も衝撃を受けており、唖然としている。

 

「ユウキ、貴女の言う事は尤もだけれド、従わなければドバイとブラジルがどうなるか分かった物じゃないのヨ。」

「それで、ライラさんやナターリアちゃんを脅していたんですか………?」

 

 メアリーの言葉に千鶴が険しい顔をする。

浜辺で遊んで戻ってきた時の2人の青ざめた顔が思い出しているのだろう。千鶴だけでなく、他の4人にも彼女達が故郷を盾にされている事は明白だった。

 

「や、止めさせましょうっ!メアリー少将っ!」

「少将の権限で大将を説得させられていればもう出港してないわヨ………。」

「じゃ、じゃあっ!私達『復讐者』がみんなでストを起こせばっ!!」

「キョウコの弟達の事忘れてどうするノ!?結局は貴女達が同じ状況に陥るだけヨ!」

「あ………。」

 

 悠貴は俯く。響子は弟達の身の安全を保障する事を条件に復讐者になっている。下手な意見を言って、彼女の立場を危うくさせてはいけないとメアリーは思っていた。

 

「御免なさい………。私の事情が無ければ………。」

「どちらにしろ、別の条件で脅されるのが目に見えているワ。ライラとナターリアは………いえ、アタシ達は腹を括るしかないのヨ。」

 

 メアリーは敢えて感情を殺していた。

無論、こんな作戦、メアリー自身もゴメンだった。だが、そうでもしないとどんな汚名を着せられるか分かった物じゃ無い。もしも、自分が出来る事が、軍に所属する者達を守る事だけならば………ライラやナターリアを含め、自分の手の届く全ての人々を守る事が為には、この作戦を遂行するしか道は無いのだ。

 

「『波状攻撃』は予定通り実施するワ。………悪いけれど、貴女達5人も『イーグル』に乗って援護に回ってチョウダイ。」

『……………。』

 

 返事をせず黙る5人の復讐者だったが、メアリーは責める気は全く無かった。

 

――――――――――

 

 モーレイの一室で、ライラとナターリアは簡易ベッドに向かい合って座っていた。

これから作戦が始まる。恐らく『史上最悪』の作戦が。

それを中心に行うのは故郷を盾に脅されているこの2人なのだ。だから、いつも明るい彼女達が黙ってしまうのも無理は無かった。

 

「………なあ、ライラ。」

「何ですか、ナターリアさん………。」

 

 ナターリアの問いかけにライラは答える。

 

「いいのカ、こんな事しテ。」

「あー………よく無いですね。でも、断ったら多分、ライラさん達の故郷が代わりに火の海になるです。」

 

 冷静に答えるライラにナターリアは唇を噛み締めるのが分かる。

メアリー達の優しさに触れていたからあまり意識はしていなかったが、これが本来の『属国』の扱いなのだ。故郷の為という言葉をかざされ、誰もやりたがらないような事をやらされる。その扱いに、ナターリアは思わず頭を抱える。

 

「やっぱり………ナターリアはイヤダ。」

「では、ナターリアさんは出撃を止めるです。」

「へ?」

 

 ライラの意外な言葉にナターリアは顔を上げる。

 

「この任務はライラさんかナターリアさんが出撃すればいいのです。ならば、ナターリアさんが無理に背負う必要無いですよ。」

「そ、そんナ!?2人で『ソル・カマル』なんだゾ!?ライラが出て、ナターリアが出ないのハ………!」

「でも、ライラさん分かりますです。ナターリアさん苦しんでるって。だったら無理に出なくてもいいのですよ。」

 

 敢えてライラは笑う。

大事なパートナーだからこそ、こういう任務には付き合わせたく無かった。きっと出撃したらナターリアは後悔するだろう。だが、そこでナターリアは怒る。

 

「ず、ずるいゾ!こんな時だけ年上ぶっテ!ライラだって苦しんでるのニ、ナターリアだけサボってられないゾ!」

「でも………。」

「決めタ!ナターリアも出るゾ!そして、ライラと一緒にまた戻るんダ!」

 

 ナターリアは決意したように立ち上がる。

仲間と一緒に戦い一緒に生きる。当たり前の事だがそれが一番の道だと踏んだのだろう。彼女はもう迷おうとはしなかった。だから、ライラもそれ以上は問いかけない。

 

「一緒にまた戻ってスシとアイス食べようナ。」

「はい。」

 

 そして心の中で思った。この少女は何としても守ろうと。

 

――――――――――

 

 戦艦武蔵から出撃した裕美達3人は敵部隊に向かいながら、やはり疑問を抱えていた。

敵部隊はイーグルと『ダック』の群れが中心。後は、指揮官機に青と白、黄と緑の『パラキート』………つまり、ライラ機とナターリア機だけだった。

 

「本当に………IDOL無し?」

『温存って可能性もあるが………何だろうな………どうしてこう嫌な汗が止まらないんだ?』

 

 心の通信に裕美も背筋に悪寒を感じる。何故か今回は戦場が近づくに連れ、嫌な予感がひしひしとしてきた。今までの戦闘には無い、薄ら寒い物が………。

 

『巴ちゃん、どうですか………?』

『罠とは………いや待て………ダックの群れじゃが………あのコンテナはなんじゃ?』

 

 『遠距離狙撃用対物ライフル』のターゲットスコープで見ているのだろう。巴の言葉に、裕美達も映像を拡大してみると、イーグルに連れられたダックはリュックのようなコンテナを背負っていた。

 

(なん………だろう?)

 

 秋田基地でトラップを仕掛けてきた機体もこんなコンテナを背負っていた。では今回は何が入っている?また『電磁ネット』?それとも………。

 

「嫌な………予感がする………。」

『私もです………。』

『うちも………なんじゃ、これは………?』

 

 冷や汗が止まらない。そして、その予感は的中する事になる。

 

――――――――――

 

「さて………始めるですよ。」

 

 ライラはいつもの無表情を保ちながら言う。

日本に恨みは無い。だが、故郷と天秤を掛けられれば、それは勿論故郷を選ぶ。とんでもないエゴだと思いながら、ライラは続けて淡々と作戦開始の言葉を継げた。

 

「『対人スライサーユニット』射出。」

 

 掛け声とともに、ダックのコンテナから複数の小型の回転する円盤が移出された。

 

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