【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
肇の時雨もダック達を狙い始めていた。
というよりは、近づく機体は片っ端から斬り捨てていっていると言った方が正しい。今の彼女はシンデレラのリーダーでは無く、1人の怒りに身を任せた乙女であった。
『我らが祖国の………!』
ビームガンを連射しながら突撃してきたダックがビームソードで斬り捨てられる。
ひたすらに迫る敵を倒す彼女には、誰が迫ってきてももう関係無かった。
『これ以上、仲間はやらせないネ!』
『ライラさん達が相手になるですよ!』
そして、遂に大将機である2機のパラキートが肇の時雨を見つける。
それを見た肇の中に、黒い物が渦巻くのが感じられた。
「大将機………貴女達がこんな非道な事を………。」
鬼すら裸足で逃げ出しそうなほどまでにトーンが下がった肇の言葉に、しかしライラとナターリアは怯む事なく『ビームヘッド』の突撃を時間差で繰り出してくる。
並のパイロットならば、その連携の前に沈むその攻撃ではあったが、肇は接近戦………動体視力に特化していた。
フットペダルを素早く動かし、ビームを纏った頭突きを左右に回避するとビームソードをしまい、『展開式ビームブレード』の大剣を引き抜く。
『射撃は苦手なはずですね!』
『だったら集中砲火ヨ!』
ビームガンを2丁で構えた2機はひたすら計4丁のビームを撃つが、肇の時雨はそのビームを展開式ビームブレードで弾きながら迫る。
振りかぶった一撃は空振り。左右に分かれるように避けた2機を深追いせず、肇の時雨は後退し、左右から併撃されないようにポジションを取る。
『意外と慎重ですね………。』
「貴女達は何があっても落としますから………。」
『氷の女王様みたいな声ネ………。』
ナターリアの言う通り、身も凍るような声を発する肇の神経は、アドレナリンが噴出されていた事で、限界まで研ぎ澄まされていた。
『でも、その強がりもここまでヨ!』
『行きますよ!』
ライラはビームソードを2本持つとビームヘッドの構えに入る。その横でナターリアはビームガンを慎重に2丁構えた。
ライラのパラキートの突撃を回避するか防御したら大きな隙が出来る。その隙をナターリアはコックピットを狙う事でIDOLに対処しようというのだ。息があったソル・カマルだからこそできる完璧な連携。
だが、肇は防御も回避行動もとらなかった。彼女は敢えて、剣を水平に構えるとパラキート目がけて突っ込む。
『自分から死ぬ気ですか!?』
「言いましたよね、貴女達は何があっても落とすと………!」
ライラのパラキートのビームヘッドが肇の時雨に迫る。
肇は僅かに左に身を捩らせると、胴体を抉られながらも、その脇を通り過ぎる。コックピットで爆発が起こり、肇の頭に巻いている手ぬぐいが吹き飛んだ。頭部から流れる血と共に、赤く染まった切れた跡が出る。
『は、肇さん!?』
「古傷が開いただけです!」
思わず通信をしてくる裕美。しかし、そのまま肇は時雨を駆り、ビームガンを構えていたナターリアのパラキートに迫る。慌ててナターリアは撃とうとするが、予想外の行動に目測を誤り外してしまう。飛びのいた時には脚部を斬られていた。
『ウ………ソ?』
「終わりです。」
肇の冷徹な声が響く。しかし………。
『ナターリアッ!!』
ライラの………今まで聞いた事の無い大声が響いた。彼女は反転すると、機体と体に無理が掛かるのも構わずビームソードを振るってきた。だが、その構えは無理な体勢を取っただけあり、大振り過ぎる。
肇は反射的に時雨を反転させ、そのコックピット付近に………ビームブレードを突き刺した。
『あー………。』
恐らく血だらけになっているのだろう。肇の耳に力の無いライラの言葉が聞こえてきた。
「何故………何故………民間人を巻き込んだんです!何故!貴女達は!こんな残虐な事を!!」
思わず叫ぶ肇にライラは何か上の空のように答える。
『ライラさんは………ドバイ出身なのですよ。………従わないと、故郷が………火の海なんです。』
「ッ!?帝国の民では無いのですか!?」
『今回の作戦に参加した人達は………、ほぼそうですねー。』
肇は見た。壊れたコックピットで………そのシートの上で血に染まった褐色の肌の少女が………自分と同じくらいの少女が力の無い目でこちらを見ているのを。その目に怒りや恨みといった感情は籠っていなかった。
「貴女は………。」
『でも、やっぱり罰は当たる物ですねー………。これも仕方の無い事でしょうかー………。』
ライラは空を見上げ、片手を伸ばした。
『ドバイのみんなは元気でしょうかー………。もう一度………故郷の景色………見た………かった………です………。』
ライラのパラキートのバーニアが力を無くし、時雨の手からビームブレードが抜ける。
落下したパラキートは、爆発を起こした。
――――――――――
「あ………あぁ………。」
ライラのパラキートが爆発する様をナターリアは2体のイーグル………泰葉機と千鶴機に支えられながら見ていた。
一緒に戦ってきた相棒が死んだ。自分を庇って。その事実が、ナターリアの心を締め付けていた。
「ライラが………ライラが!」
『ナターリアちゃん………。』
『撤退しましょう………。』
そのままナターリアのパラキートは連れて行かれる。
地上から昇る相棒の機体の炎を見つめながらナターリアは叫んだ。
「ライラぁああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
もう戻らない戦友の笑顔を思い描きながら。ナターリアは泣きじゃくった。
――――――――――
防衛線を無視してでも皆で対人兵器の破壊に従事したからだろうか、裕美達は何とか数百あったそれらを破壊する事に成功した。
だが、その為に出た被害は計り知れない。民間人の犠牲を考えれば過去最悪と言ってもいいだろう。
パワーバランスが傾いた事により、ようやく撤退していく敵を見ながら、裕美の陽炎は肇の時雨の元に来ると、彼女に向かって叫んだ。
「肇さん!大丈夫ですか!?どうしてあんな無茶したんですか!?肇さん!?」
『裕美ちゃん………。』
通信画面で頭から血を流す肇は虚ろな顔をしていた。
『私は………何の為に人を斬っていたのでしょうか………。』
「は、肇さん………?」
『無理やり戦わされている人達を怒りのままに殺して………。』
「な、なに言って………。」
裕美は見る肇は泣いていた。涙を流していた。
理由は分からない。だが、何かが肇の中で壊れていたのを裕美は悟った。
『力の無い人達を守りたかっただけなのに………力の無い人達を無慈悲に殺して………。』
そこで肇が気を失うのを裕美は見た。
咄嗟に陽炎の腕で時雨を掴み、落下するのを防ぐ。
『肇!どうしたんじゃ、裕美!?』
「巴ちゃん!医療班を!!肇さんが!!」
赤い血と炎が燃え広がる中、裕美は叫んでいた。
――――――――――
「そうか、戦闘は終わったか………。」
「み、民間人に多大な被害が出たと聞きます。このままでは………。」
「……………。」
東京を始め、都市の地下には大雨が降った時の為に、貯水用の広い施設が地下に備わっている。この空間は意外と広く、その気になれば色々な事に活用する事ができた。その地下に避難していた長官は、司令官の内の1人からの報告を聞き、静かに考える。
(世論の鬱憤はもう限界を迎えている。………タイミングは今だろうな。)
彼は貯水用の施設を歩くと、上を見上げる。
そこには、人型戦闘機械と呼ばれるロボットが多数備わっていた。色は緑に塗られており、両肩にキャノン砲のような物を備えていた。
「量産化は順調かね?」
「ハッ!ラインも本格的に乗りましたし、いつでもお披露目できます!」
高揚しているメカニックに笑いかけた長官はその緑のロボットに触る。
これからは、この機械が『日本の要』になると睨んでいた。
「期待をしている。量産化IDOL………『夕雲』。」
彼はそう呟き、愛でた。
第16話 完