【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
病院では両親との再会を果たした裕美が通路を歩んでいた。
シンデレラの現状を知った両親は、もう戦わなくてもいいと言ってくれた。それが親の願いなのだろう。裕美もそれに越した事は無いとは思う。でも………。
(これでいいのかな………。)
裕美はそう思いながら通路を歩き、外を見る。相変わらず病院の前には人の群れが集まっていた。
「外に出るのは止めといた方がいいぞ。………どうせ取材と悪態と色々かぶるだけじゃ。」
声に振り向けば、そこには巴がいた。
裕美は巴を見るが、何を呟けばいいのか分からなかった。だが、逆に巴から話しかけてくる。
「裕美………肇の頭の古傷に付いて気になった事は無いか?」
「古傷………そう言えば………。」
ベッドの上に座っていた肇は右の頭部に斬り傷を作っていた。これは先の戦闘で付いた傷では無いらしい。
「お前に、うちらの10年前の事を話さないのはいい加減不公平だと思ってな………。話しに来たんじゃ。」
「10年前ですか………?」
巴は静かに呟くと適当な席に腰かけ語る。
10年前『新アメリカ帝国』と名を変えた国が、日本の広島を中心とした地方で奇襲を仕掛けた事。
その襲撃で、巴の故郷の広島や肇の故郷の岡山で民間人を中心に沢山の被害が出た事。
肇はその際の襲撃で頭に傷を負い、家族達は惨たらしい死体と化した事。
「もう家族達のような悲劇を起こさない。それが、プロデューサーにスカウトされた肇の戦う理由じゃった。」
「巴ちゃんは大丈夫だったの?広島が襲撃されたんでしょ?」
「その時、偶然にもうちは東京にいた。じゃが、両親を失ってな………。いつか仇を討とうと思っていた。」
「そうなんだ………。」
至極妥当な理由だと裕美は思った。自分だって初戦闘は美羽の敵討ちが目的だったのだ。それを否定する権利は無い。
だが、巴にとってはあまりいい理由だと思わなかったのだろう。以前話した時に参考にしない方がいいと言っていた彼女の言葉の意味がようやく分かった気がした。
「仇討ちに走る為にIDOLのパイロットになったうちは、肇の戦う理由が頼もしくてな………。6つの時に悲惨な目にあったのに皆の事を考えるアイツの考えはうちも感嘆してな………。アイツがリーダーならば、付いて行こうって思えた。」
「そうですね、肇さんはリーダーとして………頼もしいですから………。」
一瞬過去形で言いそうになった事を裕美は後悔する。だが、そんな裕美の感情も分かったのか、巴は静かに呟く。
「のう、裕美………。うちは、『壊れてる』のか?」
「え?」
突然飛び出た言葉に、裕美は思わず巴を凝視した。
見れば、彼女は震えていた。いや、怯えていた。
「愛海も………肇も………戦いの重圧に耐えられず、壊れてしもうた。戦う意味も見い出せず、灰被りになってしもうた。………じゃが、そう思っているのはうちだけなのか?」
「そ、それは………。」
「肇の言っていた事は事実なんじゃ………。復讐に走る余り、うちは帝国の兵士達をぎょうさん殺しておる………。それ自体が罪なのに、まだ繰り返そうとしておる………。」
「巴ちゃん!」
「うちは………怖いんじゃ………自分の良心がもう無くなっているんじゃないかと………踏み止まっているのは愛海や肇の方で、うちはもうとっくの昔に壊れてしもうたんじゃないかって………!」
巴はいつの間にか泣いていた。あの巴がである。
気付けばそこにいるのは13歳のまだ幼い少女だった。裕美は思わず彼女を抱きしめる。
「しっかりして………巴ちゃん!」
「すまん………すまん………裕美!うちは怖い………!もうダメだって思うと………もううちは………うちは………ッ!」
「……………ッ!」
巴の抱きしめる力は強く、爪を立ててきたが裕美はそれに耐えた。
必死に己を保とうとするこの少女も、もはや感情が限界を迎えていたのだ………。
(どうすれば………いいの………。)
愛海、肇、巴………。仲間達がどんどん壊れていく中で自分がどうすればいいのか、裕美には答えを出せなかった。
――――――――――
『情けない戦果だな少将。何故、東京基地を落とせなかった?』
「大将が功を焦りすぎた結果デショウ?」
ハワイへと戻ってきたメアリーは、指令室で画面越しに大将と会話をしていた。
その表情は不満を隠そうとしていない。あんな惨い作戦をやらされた後なのだ。機嫌が悪くならない方がおかしい。
『随分反抗的だ。属国の民と一緒にいるとこうもなるものなのか。』
「その属国の民に非道を強いたのは貴方デショ?」
憮然としたメアリーの言葉に大将はまあいいと頷くと言葉を紡ぐ。
『東京基地攻略が果たせなかったのは残念だが、思わぬ結果を得る事ができたな。量産型IDOLか………。攻略前に情報を引き出せてよかった。』
「攻略前?大将自ら出向くのですノ?中将の二の舞になりますわヨ?」
『皮肉かね、少将。私だってなるべく前線には出たくは無いが、そうも言ってられない事情もあるのだ。大統領が五月蝿くてね………。』
「大統領の名前まで出てくるなんて光栄デスワネ。」
上には上がいるという事か。恐らく、『対人兵器』を消耗した事に対する苦情を押し付けられたのだろう。
いや、結果的に見れば東京攻略という功績を得たいこの大将の思惑通りなのかもしれないが。
「大将殿、貴方、いつか地獄に落ちますわヨ。」
『少将。戦争は綺麗事では出来ないぞ。非道と言える行為もやらなければ勝利は得られない。歴史がそれを証明している。』
「でも、アタシは『人間』であることを捨てたくはありませんワ。」
『成程、私はもう『人間』でないと言いたいのか。だが、この帝国内で戦っていれば、誰だってそうなる。』
「……………。」
大将の皮肉めいた言葉に、メアリーはやりきれない物を感じる。
帝国になってから色々な歯車が狂ってしまったように思えた。力を持ち過ぎた者達の末路なのか。だとしたら自分も生まれながらに壊れている者達の一員なのかもしれないとメアリーは思った。
「では、壊れた者同士話し合いましょうカ、大将殿。量産型IDOLに対して、どう攻めますの?」
『今、『アルフォンシーノ』の出港準備が整ったがその中に、若林智香中尉、五十嵐響子少尉、乙倉悠貴少尉のIDOLも積み込んだ。これで、5体のIDOLを攻略に回せるだろう。』
「日本出身のIDOLは信用してなかったのでは無いのデスノ?」
『私だって私情だけで戦争が出来ると考えてはいないよ。頼りにするしかない物が限られている以上は頼りにするさ。』
「攻略………できるのでしょうかネ?」
『君は意地悪だな、少将。向こうは量産化で有頂天になっているかもしれないが、こっちのIDOLには自慢の『盾』がある。あの機体を前線に展開させれば攻略も可能だろう。』
大将が笑みを浮かべる。相変わらずの邪悪な笑み。この男は自身が『悪魔』である事を当の昔に受け入れてしまったのだろうとメアリーは悟る。
『準備が整い次第、進軍開始だ。宜しく頼むよ、少将。』
「了解しましたワ、大将殿。」
悪魔の手を取るのも大変だとメアリーは思った。
第17話 完