【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
『悪意』と戦いながら
ベッドに少女が寝込んでいる。瞳からは涙を流し、苦しそうにしている。
「助け………て………。」
ベッドの前に立っていた男はその手を取る。だが、それだけで他に何も出来なかった。やがて少女はこと切れる。
場面が変わり、男は墓の前に立つ。少女の墓。周りでは様々な仲間達が泣いていた。
「うっ………うっ………。」
「なんで………なんで………。」
男は墓に献花する。少女の冥福を祈って。何百回目となる献花を。
場面が変わる。男は白い空間に立っていた。ただの真っ白な空間。周りを見渡した男の横を、人々が歩いていく。まだ子供である少年少女、立派に戦おうと決めた軍人達。その中には金髪碧眼の活発な背丈の高い少女の姿もあった。
思わず呼び止めようとするが、声が出ない。手を伸ばしても足が動かない。男は1人、その場に取り残された………。
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「夢………か。」
旧中華共和国に備えられた指令室の1つで、提督と名乗っている新アメリカ帝国の男は目を覚ました。隣には長い黒髪の女性、ヘレンが腕を組んで立っている。
「居てくれたのならば、起こしてほしい物だ。」
「気持ちよさそうに寝ていたから止めておいたのよ。」
「目覚めの気分は最悪なのだがな………。」
提督は顔をしかめる。あの夢は定期的に見る。そして、登場する人物はだんだん………犠牲者が出る度に増えていくのだ。
「キャシーも出てきたよ。私はどれだけの屍の上に立っているのか………。」
「あんまり思い詰めると頭が壊れるわよ?」
「心配しないでいい。私はもう壊れている。」
キッパリと言った提督に対し、呆れたように肩をすくめるヘレン。
それでも彼は気にする様子もなく指令室の画面に映っている画像を見る。それは今、日本へと侵攻している部隊の内の、メアリー少将率いる部隊の格納庫の様子であった。『イーグル』、『ダック』、1体になってしまった黄と緑の『パラキート』の他、5体の専用機………IDOLが映っていた。
「いよいよ全員出る日が来るとはな………。それまでに日本は落としておきたかった。」
「世界レベルじゃ無い戦い方をしても?」
ヘレンが言っているのは、対人兵器を使ったあの作戦の事だ。
提督は訝しむようにため息をつくと、こう答えた。
「あのような事を『教え子』達に強いてきた私に………『今』は非難する権利は無いよ。」
それだけを言うと、もうヘレンの様子を気にする事も無く、映像に集中した。
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東京基地では、新アメリカ帝国軍の侵攻が伝えられていた。構成は『アルフォンシーノ』1隻にイージス艦『モーレイ』が複数。
2回前の侵攻と一緒の構成だが、違う事が3つあった。
1つ目が、敵IDOLの数が不明だという事。
2つ目が、戦艦武蔵やIDOLと言ったシンデレラガールズがいないという事。
そして3つ目が、日本の中心となっているのが量産型IDOL『夕雲』だという事。
『何、この機体!?加速も出力も『如月』とは桁違いじゃない!?』
『久美子さん………事前にメカニックの人達から散々聞いてたじゃないッスか。』
久美子と比奈の通信が聞こえる中、ほたるは護衛艦『阿武隈』の1つから如月で飛び立っていた。
夕雲は量産型IDOLというだけあってバーニア出力が高く、飛行ができる。更に防御能力も高く、近接戦闘能力や砲戦能力もグンと強化されている。その為、今までのように、飛べない『睦月』との連携に頼らなくて良くなった事で、防衛線を海上まで上げても問題無くなったのだ。
「乃々ちゃんの出番、無いかも………。」
『そうだといいですけれど………。』
夕雲が全ての兵に回っているわけでは無いので乃々の『睦月・重装備型』は他の睦月と共に、港で防衛に回っている。
だが、夕雲の戦闘能力をパイロット達が十分に振るう事ができれば、そこまで防衛線が下がる事は無いと考えているのが上層部の考えだった。
ほたる達にしてみれば随分身勝手な物だという感情もあったが、実際スペックを考えればそれも確かかもしれないと思えた。
『でも、ほたるちゃんも乃々ちゃんもシンデレラガールズの解体を言い渡されても戦う道を選ぶなんてね。ビックリしちゃったわ。』
今回、ほたるの上官であるレナが通信で話しかけてくる。
一番一般人に近いほたるや軍にトラウマを持つ乃々が、IDOLパイロット達が意気消沈している状況の中で名乗り出てくるとは彼女達は思ってなかったのだろう。ほたるは少し迷った挙句、告げる。
「私が………乃々ちゃんに無理言っちゃったんです。」
『ほたるちゃんが?』
「はい。私、今まで自分が不幸を呼び寄せるってずっと思ってました。」
『その話は私も聞いたけれど………まあ、確かに色々あったみたいね………。』
ほたるは色々不幸を呼び寄せる。それ故にクラスでもイジメられるような立場で裕美に守ってもらうような存在だった。
だからこそ、ほたるはシンデレラガールズに巻き込まれたのは自分の不幸による影響だと思ってしまっていた。だが………。
「戦っている内に気付きました。本当の不幸は、そんな生易しい物じゃ無いんだって。」
『と言うと………?』
「芳乃さんが戦闘で亡くなって、日本の色んな人達に被害が出て、シンデレラガールズが追い込まれて………それだけの事が起こってやっと気づいたんです。これは不幸で片付けていい事じゃないって。」
自分の不幸のせいで被害が出るんじゃないか。そう思った事が無いと言えばウソでは無い。
だが、本当に不幸のどん底に陥ると、それは個人の持つ不幸体質1つで片付けられる物では無い。上層部の身勝手、新アメリカ帝国の非道、そこには確実に『悪意』があるのだ。
「いつの間にか、私は不幸だって言っている場合じゃ無い事に気付きました。足掻かなければ、自分自身と戦わなければ、みんなの役に立つ事なんてできないって。」
『………不屈の心ね。でも、厳しい言い方だけれど、その為に貴女が誰かを殺す事になるわよ?背負えるの?』
「分かりません………。」
ほたるは正直に答えた。
今まで誰かを殺してきた自分も他人から見れば『悪意』なのかもしれない。恨まれても当然の存在なのかもしれない。でも、もしもここで止まれば………。
「このままだと友達が………力を失った裕美ちゃんが死んでしまいます。私も人を守れるようにならないと、大切な人を守る事なんてできない。私は今まで裕美ちゃんや乃々ちゃんに守られてばかりでした。だから………私が今度はみんなを助ける番です。」
『ほたるさんの覚悟にもりくぼも付き合う事にしました………。もりくぼはもうIDOLは扱えないけれど………ここで止まったら七海さん、都さん、清美さん、そして芳乃さんに合わせる顔がありませんから………。』
「罪は後から背負います。今はみんなを守る為だけに………。それに………。」
『それに?』
乃々と共に覚悟を語ったほたるは、レナにハッキリ言う。
「私達、まだシンデレラガールズのみんなの事、信じてますから。」
――――――――――
モーレイの中の格納庫でパイロットスーツを着たナターリアは修理されたパラキートを眺めていた。涙は無い。部屋で数日泣きじゃくったのだから当然と言えば当然だ。
「無理に出撃しなくてもいいのヨ?あの大将が期待してるのはIDOL5人だけだし休んだって罰は当たらないワ。」
「メアリー………。」
後ろからメアリーに話しかけられナターリアは少し申し訳ない気持ちになる。
自分が落ち込んでいる間、部屋に食事を運んできてくれた千鶴達から、彼女も心配していた事を聞いた。今回も、わざわざ忙しい中、自分を心配しに来てくれたのだ。
「アリガトナ、メアリー。でも、ナターリア、戦いに出るゾ。」
「復讐の為?パラキート1体でIDOLとまともに戦えば貴女も死ぬわヨ。」
「復讐………確かにそれもウソじゃないナ。でもナターリア、別の理由があるんダ。」
「別の理由?」
首を傾げるメアリーにナターリアは体を向けハッキリと言う。
「ナターリアの故郷のブラジルと………ライラの故郷のドバイの為ダ。」
「そうネ………。確かに戦果を上げれバ、待遇も改善されるかもネ。」
ナターリアは思う。自分は属国の民である事を心の何処かで忘れようとしていたのではないかと。でも、現実は逃げてくれない。その結果があの作戦であり、ライラの戦死だった。
「ナターリアは1人じゃないんダ。故郷の人達の想いと、ライラ達の想いみんな背負ってル。だから、立ち止まれなイ。」
「分かったワ。じゃあ、止めなイ。………でも、功を焦って貴女まで戦死したらダメヨ。ライラの死、無駄にしたら許さないカラ。」
「オウ、ありがとナ、メアリー。」
階級が違わなければメアリーに抱き着きたいくらいだった。それだけナターリアはこの少女を始めとした異国の仲間達が気に入っていた。
だからこそ、自分は彼女達の為に尽くそう。彼女達を守ろう。そう思った。………ライラのように。