【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
病院では、通信で戦況が不利に傾きつつあることをプロデューサーや心達が知り、苦渋の表情を浮かべていた。こちらの戦力が上がる可能性があったという事は、相手側の戦力も上がる可能性があったという事だ。そこら辺、日本側は浮かれて見落としていたのかもしれない。
既に住民達の避難が始まっている為か、病院の外に報道陣や暴徒等はもう居ない。妙に静まり返っていたが、もうすぐここら辺も戦場となるだろう。病院内でもシェルターへの移動が少しずつ始まっていた。
「………どうするんだ、はぁと達は。」
「今の私達に権限は無い。何よりももう彼女達は………。」
「裕美!?どういう事なの!?」
俯いたプロデューサーの言葉が遮られる。見れば、近くにいた裕美の両親が驚いた様子で娘を見ていた。そして、プロデューサー達も驚く。裕美はパイロットスーツを着ていたのだ。
「まさか………戦うつもりなのか?お前はもう戦わなくてもいいと言われたのに………。」
「ゴメン、お父さん、お母さん。私、やっぱり大切な人達を守りたいの。例え誰に何と言われても、私は………。」
「うちらは、灰被りでもまだ舞台で踊り続けたいんじゃ。」
声に振り向いて見れば、そこには巴、肇、愛海が同じようにパイロットスーツに身を包んで立っていた。
「やっぱり裕美ちゃんが一番乗りでしたね。」
「みんな………怖く無いの?」
「正直あたしはまだ怖いよ。でも、あたしの居場所がここだって教えてもらったから。だから………裕美ちゃん達と戦いたい。」
「でも、私の取った道は………。」
「人を殺す狂った道なのは分かっとる。じゃがな、それでも付き合ってくれるバカは居てくれる。お前達もそうじゃし、それに………。」
「それに?」
「みんな、諭されましたからね。無様な姿をこれ以上見せるわけにもいきません。」
「そうですか………。」
プロデューサー達は見た。
裕美も、愛海も、巴も、肇も、みんな穏やかそうな笑みを浮かべているのを。
これから進んで死地に赴こうとしているのに、微塵もそんな気配を感じさせなかった。
「君達は………もう一度IDOLになるのか?」
『はい。』
プロデューサーの問いかけに、裕美達は答える。
綺麗な目をしていた。だからこそ、大人達は躊躇った。
「私は………私達は正直、君達をもう戦場に出したくない。」
プロデューサーは………心や裕美の両親達の想いを代弁する。しかし………。
「戦況はそうも言ってられないんですよね?」
「ああ、そうだ………。このままでは、乃々もほたるも、美世達も皆、危ない。」
裕美の一言でそれは今の状況では得策でないと諭されてしまう。
頼るしかない、彼女達に。それが身勝手だと分かっていても。
「肇、頼む。」
「はい………。少将、それに心大佐。これより藤原肇中尉、村上巴少尉、棟方愛海少尉、関裕美少尉はこれよりシンデレラガールズに復帰します。」
巴の言葉に、皆を代表して肇が宣言する。パイロット達が敬礼をする。
裕美の母が何かを言おうとして涙を流し、父に肩を抱きかかえられた。
心はただ無言で敬礼を返す事しか出来なかった。
そして、プロデューサーは………。
「………車を出す。まだ機体は倉庫に保管されているはずだ。」
そう言うと、4人の少女達を連れて行く。振り返る事は出来なかった。
――――――――――
智香のカナリーの盾の前に防衛線は港まで後退させられていた。
正面の防衛を担うレナ達の部隊はとにかく撃ちまくるが一向にカナリーを落とす事が出来ない。気付けば、カナリーの後ろには悠貴のアイビスと響子のフェザット、それに後から合流したナターリアの『パラキート』が居た。
「ここを突破されたら………。」
港で『睦月』達と共に防衛線を守る乃々の睦月・重装備型は、『遠距離狙撃用対物ライフル』でカナリーを何度も撃っていたが、こちらも効果が無かった。睦月達の『レール砲』も乱れ飛ぶがまるで意味が無い。
『その防衛線、突破させてもらうから!』
「ッ!?」
カナリーのバーニアが吹かされ、港に突撃して来たのを見た乃々は、咄嗟にフットペダルを前に踏み込み、思いっきり全速力で後退する。
広範囲拡散エネルギーフィールドを発しながら突っ込んできたカナリーはその巨大な盾で睦月の群れを次々と弾き飛ばす。
オモチャのように隊列を崩された睦月は、ある機体は建物に突っ込み、ある機体は爆発炎上する。
そしてその上を、アイビスを始めとしたIDOLと帝国の人型戦闘機械が一斉に通過していく。
「こちら森久保………!突破されました!美世さん達も気を付けて!」
『了解、IDOL達はやらせないから!!』
(また市街戦に突入する………!)
そう思った乃々は自分の力の無さを感じる。
こんな時、IDOLに乗れればどうだっただろうか?
そこまで考えると、やはり芳乃や七海の姿が思い浮かんでしまい、乃々の心を締め付けた。
――――――――――
「凄いナ、トモカの機体は。」
『守る事だけは他のIDOLの右に出ない自信はあるから!』
大抵は手をかざしながら突撃するだけでどうにかなるカナリーの姿を見ながら、遅れて出てきたナターリアは素直に感嘆していた。
これがIDOLの力なのだ。どの機体も凄まじい力がある。
『じゃあ、ナターリアちゃん。メアリー少将の言う通り、今のうちに日本のIDOLの破壊お願いね。』
「分かったゾ、とりあえず人型戦闘機械が守っている建物を調べていけばいいんダナ!」
『私は司令部を狙いますっ!あ、でも………その前に………。』
悠貴の通信にナターリアは見る。一機の夕雲が如月部隊を引き連れてこちらに飛んでくるのを。
――――――――――
『レナ少佐、無茶ですよ!港の様子見ましたよね!?あの盾、接近戦にも強いです!』
「でも、乱戦になったらビームキャノンの一斉砲撃はもう使えないわ。部の悪い賭けだけれど、接近戦の方がまだ………!」
ほたるの忠告に対し、レナはそう言うと、『ビームソードランス』を取り出す。比較的出力も射程も長く作られた夕雲の近接武装だ。如月に乗っていたレナは接近戦の経験があまり無いが、これを扱えなければ勝機は見えなかった。
しかし、そんな彼女達の前に、悠貴のアイビスが立ちはだかる。
『盾を破壊したければ、まず私を倒してみて下さい!』
「いい度胸ね………幼そうだけれど、容赦する余裕も無いわ!」
レナは双肩装備タイプ型ビームキャノンを挨拶代わりに撃つ。悠貴はそれを左手の盾で受け止めた。
『ビームキャノンを受け止めるなんて………!』
「『エネルギー強化シールド』ね。夕雲にも備わっている装備だからよく分かるわ。」
悠貴のアイビスは更に右手でボウガン状の兵器を構える。見れば砲塔が孔雀の羽のように広がっていた。
「全機回避行動!」
それを見たレナが叫びながら『エネルギー強化シールド』をかざすが、守れたのは後ろにいたほたるの如月のみ。後の機体は、『拡散ビームボウガン』の餌食になり、街中に墜落していく。
レナは舌打ちしたが、更に相手のボウガンの中心の砲塔から威力の高い『収束エネルギーボウガン』が撃ちだされ、ほたると共に回避に専念する羽目になる。
「このIDOLも厄介ね………!」
『支援します!』
ほたるがホーミングミサイルを放つが、アイビスのシールドで守られる。しかし、その隙に間合いを詰める余裕が出来る。
「行くわよ!」
レナが夕雲を駆り、ビームソードランスを振り上げる。ぶつかる勢いで繰り出した突きは盾を弾く。
「追撃!」
『させませんっ!』
「!?」
だが、悠貴のアイビスのシールドからクローが伸びた。
『攻防一体展開式クロー』だとレナが悟った時は既に遅く、悠貴は弾かれた勢いで振りかぶり、そのままクローを振るう。
ビームソードランスの追撃は間に合うはずもなく、距離を取るのも遅れたレナの機体がクローで浅くだが切り裂かれる。
コックピット付近で爆発が起こった。
「きゃぁあッ!?」
『レナ少佐!?』
バランスを崩し墜落するレナの夕雲を追いかけるほたるの如月。
それを見届けた悠貴のアイビスは司令部へと進軍を始めた。