【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ 作:擬態人形P
ウソだけを込めて
裕美の家の居間は厳格な空気に包まれていた。テーブルには父と母。向かいあった先に裕美とプロデューサーが座っている。当然といえば当然だが、父と母の顔は険しい。
「そちらの事情はよく分かりました………。」
プロデューサーから話を聞いた父は腕を組んで答える。
「ですが、貴方達が裕美をこれ以上拘束するのは間違っているのではないでしょうかね?」
「IDOLの適合者は非常に限られています。見つけた以上、手放すわけにはいかないのが上層部の考えです。」
半ば睨みつけるような視線に対してもプロデューサーは真正面から受け止め、返答する。今度は母が口を出す。
「だから裕美を………戦争の道具に仕立て上げようと考えているのですか?」
「そう受け止めてもらっても私は言い返せません。」
プロデューサーは真実だけを告げる。裕美はその会話を聞きながら俯いていた。
「………その上層部の命令に背けば?」
「貴方達家族の命は無いでしょう………。」
「それでも子供を守るのは親の役目です。」
「お、お父さん!?」
裕美は驚く。父は軍に逆らってでも裕美を守ると言っているのだ。見れば、母もそれに同調している。
「だ、ダメだよ!そんな事したら………!」
「裕美、お前はまだ14歳の娘だ。そんな子を戦争の道具にさせたくはない。」
「そうよ。どうして貴女が戦わなければならないの?」
「……………。」
裕美は思わずプロデューサーを見る。何となくだが、この男が心の底から裕美の戦争への参加を望んでいるとは思えない。勿論、裕美自身も戦いなんて嫌だ。叶うならば解放して欲しい。何とかして欲しい。
………しかし、この男はそれが出来る立場では無い。
「もしも、私が貴方達の報告を上層部に報告すれば、次は誰が派遣されるか分かりません。貴方達を殺して無理矢理裕美さんを連れて行く可能性もあるでしょう。」
「軍とは卑怯な物なのですね。」
「はい。」
父も母もプロデューサーが悪人で無い事は分かっているのだ。だが、だからと言って大人しく従うわけにもいかない。それが親としての務めであるのだから。でも裕美にしてみれば、そんな両親を失う選択肢はゴメンだった。
「私………戦う理由ならば………持っている………。」
「裕美!?」
母が叫ぶ。とても顔を合わせる事は出来なかった。それでも裕美は言葉を紡ぐ。
「友達が………美羽ちゃんが殺された………仇を討たないと………ほたるちゃんや乃々ちゃん………みんな………守らないと………。」
「ウソでしょう………。」
「ホントだよ!!」
母の言葉に被りを振って、裕美は立ち上がる。そう、今言った事は本当だ。戦いたくないと思っていても、友達を奪った敵を許せないと思っているのは事実。ウソの中にあるホントで裕美はこの状況をどうにかしようとしている。それは多分、美羽に失礼な事だ。だけれど………。
「私はみんなを守りたい!お父さんやお母さんも!だから、戦うの!戦うしか………無いの!!」
「……………。」
父が腕をテーブルの上に組み、深く頭を垂れたのが分かる。母はそれ以上、何も言えなかった。プロデューサーは立ち上がると一言だけ呟く。
「学校帰りから送迎はします。私も出来る限りのサポートはします。」
そう言うと、家を後にする。居間が静寂に包まれた。
「……………。」
母が無言で立ち上がり、裕美の所にやってきて抱きしめる。その温もりを感じながら裕美はただただ泣いた。
「私達は………無力だ。」
父が、そう呟くのが聞こえた。
――――――――――
放課後の学校の教室も悲しい空気に包まれていた。美羽の机には花が多数添えられている。彼女の死に関しては、新アメリカ帝国の攻撃の流れ弾で亡くなった事だけが伝えられていた。
仲の良い子達も多かっただけに、ショックを受けている子も多いだろう。
「まさか、美羽ちゃんが………。」
「悲しいですよね………。」
「そうだね………。」
その中の2人、ほたると乃々の言葉に裕美は同調するように答える。だが、裕美の中は罪悪感でいっぱいだった。友達である2人に隠し事をしてしまっている事と、美羽の死を、両親を守る為に自分が戦う理由にしてしまった事と。
「美羽ちゃん、無事に天国に行けるといいですよね………。」
「もりくぼも、それを願うばかりです………。」
「……………。」
裕美は思う。自分は美羽から呪われる事をしたのだと。そして、多分真実を話せばこの2人からも嫌われてしまうのだと。戦争に加担してしまった自分をこの2人は受け入れてくれないだろう。いや、美羽を含め3人共事情が分かれば受け入れてくれるかもしれないけれど、裕美はそれを話すのが怖い。とても、怖い………。
(嫌な女………。)
自分で自分を嫌いながら裕美は横目で正門を見て、息を吐いて片づけをする。そこには黒い車が止まっていた。プロデューサーが迎えに来たのだ。
「ゴメン、私もう行かなきゃ………。」
「裕美ちゃん、最近何処に行ってるの?」
ほたるの言葉に立ち上がった裕美は固まる。友達とも目を合わせられなくなった自分が恨めしい。でも、どうする事も出来ず、結局適当な理由を述べてしまう。
「習い事始めたんだ。それでバス乗れなくなっちゃって。」
「裕美さん………?」
乃々が何かを伺うが裕美はそれを振り払うように手を振って立ち去った。
――――――――――
「災難だったな。」
運転席に座っていたプロデューサーは、裕美が車の後部座席に乗り込むなり、そう言う。
「見て………たのですか?」
「こう見えて目はいいのでな。………あの2人は君の友達なのか?」
多分、ほたると乃々の事だ。裕美はしばらく俯いた後、呟く。
「そうです。………本当の事を話したら、嫌われると思うけれど。」
「大切に思っているのならば、絶対に巻き込むな。」
「え?」
前を向いたまま話すプロデューサーの語気が気のせいか強まっている気がした。
「俺が知る内はまだ隠せる。その範疇を超えたら………どうなるか分からないからな。特に、あの栗色の髪の子………いや………。」
プロデューサーは言葉を切り、車を発進させる。
(どうして乃々ちゃんが?)
裕美は疑問を抱えたが、プロデューサーは黙ったままだった。