【デレマス×ゼノグラシア】アイドルマスターゼノグラシア・sideシンデレラガールズ   作:擬態人形P

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村上巴

 訓練は、裕美の思っていた物よりもずっとハードで多岐に渡る物だった。

シミュレーターを使った戦闘訓練は勿論の事、肇を中心にランニング、腕立て、腹筋、背筋などと言った体育の授業でやるような基本トレーニング。

更には晶葉やマキノによる軍やIDOL、戦術等に関わる筆記と試験。身を守る為か、拳銃の扱いまでさせられた。

これを大体19時までやらされて家まで送られるのが20時頃。そこから学生の本来の本業をやらないといけなかった為、裕美の体内時計はいきなり破綻しそうになった。

 

「アクセサリ作りがしたい………。」

 

 射撃訓練で的を盛大に外しまくった後、防音用の耳当てを外し、ゲンナリした顔で裕美が呟く。

 

「何じゃお前。それが趣味か?ちなみにうちは将棋を指したくなる。」

「あ、巴さん。」

「巴でいい。後、敬語も使わんでいい。」

「じゃ、じゃあ………巴ちゃん。」

 

 巴が赤髪と汗を払いながらやって来たのを見て、裕美はしどろもどろになる。人見知りである上に参加理由が理由で有る故、まだ、シンデレラガールズのメンバーとは中々打ち解ける事が出来ないでいた。

 

「本当に気弱なヤツじゃの。それじゃあ、『チャカ』も臆病になる。もっと敵に向かって叩き込むような威圧感を持たないとダメじゃ。あんな風にな。」

 

 巴は自分の的を裕美に見せる。見れば、ほとんどが的の真ん中に近い所に当たっていた。

 

「す、すごい………。」

「芳乃はもっと凄いぞ。全弾真ん中じゃ。」

「え?」

 

 見れば、射撃中の芳乃は小柄な姿にも関わらず本当に全弾、的の真ん中に命中させている。スナイパーの言葉が似合うような腕の良さに裕美は思わず呟く。

 

「神がかってる………。」

「ちなみに一度目隠しをして撃ったことが有ったが、ほとんど結果は変わらなかった。」

「ええッ!?」

「アイツは神にでも祝福されてるんかの?あ、ちなみに一番のドヘタは肇じゃ。」

「ウソッ!?」

 

 反対側を見てみれば、裕美以上に肇が盛大に的を外していた。弾が明後日の方向に飛んでいっており、本人は時々訝しむように拳銃を見ている。

 

「肇さん、凄い頼りになると思ったのに………。」

「近接戦闘の才能は凄いがな。射撃戦はからっきしなんじゃ………。」

 

 呆れたように言う巴は休むように裕美に言う。一見勝気で一本気な気がするこの少女ではあるが、周りを気遣う余裕を持っていた。裕美は躊躇したが、本当に疲れていたので素直に射撃室の端の席に座る事にした。

 

「どうじゃ?大分慣れたか?」

「正直………まだ………。」

「じゃろうな。」

 

 恐らく巴の耳にも裕美の事情………両親の説得に関する事は入ってるのだろう。いまいち煮え切らない様子の裕美を彼女は否定しなかった。だが、やはりそれが裕美の罪悪感を締め付ける。

 

「私………色んな人にウソを付いてる。」

「守る為じゃろ?うちは、お前のその勇気に感服した。」

「勇気じゃないよ。逃避だよ………。」

「それでもじゃ………。」

 

 裕美は巴を見る。その穏やかな表情にウソは無かった。自分よりも年下のこの娘がこんな真っ直ぐ見る力を持っているのが羨ましく感じた。

 

「私、巴ちゃんに嫉妬するかも………。」

「うちは参考にせんほうがええぞ?あんまり偉そうな理由で戦ってるわけじゃ無い。」

「え?」

「………まあ、結局はうちも最初はお前と同じ巻き込まれた形だったってわけじゃ。」

 

 少し寂しそうにかぶりを振る巴に裕美は首を傾げる。

こんな巴も自分と同じだった?最初は何かに巻き込まれる形で………。でも、これまで日本の領土が新アメリカ帝国の攻撃に巻き込まれる事は無かったはず。ならば何処で………。思い当たる節があるとすれば………。

 

「少し前にの。シンデレラガールズにバカがいたんじゃ。」

「へ?」

「矢口美羽って名前のバカがな。」

「!?」

 

 話題を変えた巴の言葉に、裕美の頭の中は完全に書き換わる。本来は陽炎の正規パイロットになるはずだった美羽の話。そう言えば、訓練で忙しく、まだ誰にも聞いた事が無かった。

しかし、バカとは………。

 

「プロデューサーが偶然見つけたらしくての。シンデレラガールズに憧れを抱いて入って来たんじゃが、どういうわけか、キャラがブレブレでの………。黙っとれば美人なのに、何故かギャグに走ったり、みんなを笑わせようとしたり、そんな事ばかりしておった。」

「……………。」

 

 いや、確かに否定できないかもしれない。裕美の知っている学校での美羽もそんな感じの子だったのだから。思わず黙ってしまう裕美に巴は言葉を続ける。

 

「正直、うちは呆れておったの。何の為にシンデレラガールズに入ったのかと。お笑いを極めたければ別の所に行けばいいだろうと言った事もあった。才能も正直あんまりあったとは思えなかったしな。けれども………。」

 

 巴はにやりと笑みを浮かべ裕美を見る。

 

「アイツは『努力』の才能があった。」

「え?」

「どんなに非難されても、どんなに呆れられても、アイツは自分の道を曲げようとはしなかった。いや、キャラは曲がり切ってはいたが、それでもみんなを元気づけようとする意味ではアイツは決して自分を曲げようとしなかった。」

「確かに、美羽ちゃん学校でも………。」

 

 冷静に考えればこんな訓練を受けている中でそれを隠しながら学校の授業も(成績の良し悪しはともかく)受けていたのだ。その精神力は只者では無い。

 

「気づけば、うちは負けていた。美羽のしょうもないギャグで笑っている自分がいた。………何だかんだ言ってアイツはシンデレラガールズの癒しとして欠かせない存在になっていた。だからじゃな………うちは未だに悔しい。美羽を失った事が。」

 

 巴は視線を落とす。裕美はシンデレラガールズの中に置ける美羽の存在の大きさを知った。彼女は強かったのだ。実力とかそういう意味では無く、精神的に。

 

「私は………。」

「裕美。うちは別に、お前に美羽の代わりになれとは言わん。だが………少しでもアイツの想いを感じてくれてるのならば、その精神だけでも引き継いでやってくれ。どんな逆境でも前を向く精神をな。」

「巴ちゃん………。」

 

 少し寂しそうに笑った巴に裕美の心は複雑になる。どうしても何かを言われる度に、自分に出来るのだろうか?と思ってしまうのだ。

 

「出来る、出来ないの問題じゃない。やる、やらないの問題じゃ。」

 

 その裕美の心の内を読んだように巴は真剣な顔で裕美を見る。今までどちらかと言えば流されるままに生きてきた裕美にしてみれば、これはとても難しい問題だと思った。でも………。

 

「これだけは………『やりたい』。美羽ちゃんの想い、しっかり引き継ぎたい………。」

「今はそれだけで十分じゃ。その想いが後に力になる。そして、うちらと同じ場所に立てるようになったら………チェストーーーーーッ!!」

「ギエエエエエエエエッ!?」

「ッ!?」

 

 巴の腕が裕美の後ろに振りかぶられる。見れば、愛海が裕美に飛びかかろうとしており、それを顔面から迎撃する形になっていた。転がった愛海は顔を押さえながら可愛らしい声で言う。

 

「あうううううぅ………。巴ちゃん酷い!」

「黙れ!お前は遠慮が足りなすぎるわ!!」

 

 先程の雰囲気は何処に行ったのか、いきなり論争を始める2人に思わず裕美は笑みをこぼす。それを見た2人は驚いたような顔で裕美を見る。

 

「え?どうしたの?」

「何じゃ裕美………。お前、いい笑顔するの。」

「とってもかわいいですぅ!ちょっとあたしも意外でした!」

「え?えぇッ!?」

 

 裕美は思わず真っ赤になって手を正面でバタバタさせる。滅多に笑えない裕美にしてみれば、笑顔を褒められるのはほとんど無いのだ。

 

「わ、私なんかよりみんなの方が………。」

「楽しんでいるようだが、少しいいか、みんな?」

 

 別の声に振り返ってみれば、そこには池袋晶葉が立っていた。

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