ソードアート・オンライン 〜少年よ〜   作:ちゃーもり
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EP.6 ボス戦

扉が開くと、暗闇の中二つの小さな紅い光が灯る。

その光が揺らめき、ボス部屋に明かりが点く。

ボス部屋の奥には玉座が置かれており、その玉座に鎮座するはこの第一層の暴君──────『イルファング・ザ・コボルドロード』。

その王は左腕には円盾(バックラー)を装備し巨躯に鎧を纏った獣人。王はゆっくりと立ち上がり、プレイヤー達の前に立ちふさがる。それを合図に王の周りに取り巻き(ルイン・コボルドセンチネル)が現れた。

そして王は腰から斧を取り出し雄叫びを上げる。

 

「グオオオオ!!」

 

「戦闘開始!!」

 

雄叫びを聞いたディアベルはボス戦メンバーに号令を叫ぶ。

 

『うおおおおお!!!』

 

それを合図にボス戦メンバー達と取り巻き達は互いの武器を交差させた。

 

◇◆◇

 

戦闘は作戦通り順調に進んだ。各隊がディアベルの指揮の元それぞれの役割を果たしながら、ボスのHPを削る。

 

セイジ達F隊も、取り巻きをボスと戦っている本隊に近づけないように的確に処理していた。

基本2人1組で取り巻きを倒していく。セイジとレイ、キリトとアスナ、そしてフランとリザ。

 

レイはもう初心者とは思えない短剣裁きで、セイジがコボルドの攻撃を弾いた所を攻撃する。

キリトは経験を積んできた戦士のようにコボルドの攻撃を躱し、いなし、弾く。そこをアスナの洗練された無駄のない鋭い細剣の一撃が貫く。

フランはβテスターとしての経験をフルに活用し、徐々にHPを削りながらも隙を見せないように豪快かつ繊細に動き回り、攻撃を弾く。その一瞬をリザが片手剣で切り裂く。

自分のパーティーには手練が集まり、それに負けてられないという対抗心を僅かながらセイジは抱いていた。

 

そして、戦闘が始まってから数十分後、王が再び雄叫びを上げた。気がつけば、王のHPは最後の一段をレッドゾーンまでとなっていた。

ここまでは作戦通り。だがこの順調さが逆にセイジに不安を覚えさせた。

 

(このまま何事もなければ………)

 

ボスは手に持っていた斧と盾を投げ捨て、腰の後に手を伸ばす。それは武器を持ち替えるという証拠。ここまでは情報通り。だが、ここまではの事だった。

 

「下がれ!俺が出る!」

 

今まで指揮を執っていたディアベルが前へと出る。その時、ディアベルはちらりとセイジ達のパーティーにを目を向ける。その行動の違和感にセイジを始め、キリトとフランがいち早く気づいた。

 

(なぜこのタイミングで……?ここは全員で攻撃するのがセオリーの筈だぞ?)

 

ディアベルは剣にライトエフェクトを纏わせる。それはソードスキルを発動させる予兆。ディアベルがソードスキルを放つと同時に王は腰から武器を引き抜く。それはガイドブック載っていたタルワール────ではなかった。

 

「あれは!?」

 

((野太刀!?βテストの時とは違う!))

 

βテスト時及びガイドブックとは違うことに気づいたのはF隊の6人だけ。他の隊はちょうどボスの武器が死角になる位置にいるため、誰一人としてそのことに気づかない。

 

「ダメだ!!全力で後ろに飛べ!!」

 

「そいつは危険だ!!さがれぇぇ!!」

 

その武器の危険性を知っているキリトとフランが全力で叫ぶが、ディアベルにその声は届かない。ソードスキルをの軌道に乗っていたディアベルだが、ボスが高く跳躍した事により、その攻撃は当たることがなかった。ボスは柱を足場に使って天井を飛び回る。その情報外な行動にディアベルは動きを追うことが精一杯で、気がつけば、ボスの斬撃がディアベルの身体を抉った。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ディアベルの身体が吹き飛ばされる。だがその程度で王の反逆は終わらない。ボスはディアベルに狙いを付けたまま、刀スキル《浮舟》を発動し、それを獲物に叩きつける。

 

まともにソードスキルを喰らったディアベルがF隊の所まで吹き飛んでくる。その間も、ボスは他のプレイヤー達へと、次はお前らだと言わんばかりに迫る。

 

 

「ディアベル!!何故あんな無茶を!?」

 

キリトがポーションを手に、HPが尽きかけているディアベルのところまで駆け寄り抱き起こす。キリトのあとを追ってフランとセイジも駆け寄る。

 

「君もβテスターなら分かるだろ?」

 

LA(ラストアタック)ボーナスか」

 

ディアベルの言葉の意味を一番に察したのはフランだった。ラストアタックボーナスとは、ボスに最後の一撃を与えたプレイヤーにのみ与えられる、いわばボーナスアイテム。LAボーナスともなればそれは強力なアイテムに違いない。それをディアベルは狙っていたのだ。

 

「キリト君………フランさん。後は頼………」

 

最後の言葉を告げ終わること無く、ディアベルの身体がポリゴン片と化し、宙を舞う。それはプレイヤーのHPが尽き、死んだという証。

 

「任せろ」

 

フランはそう言うと立ち上がり、両手槍を構える。

 

「立てセイジ、キリト。力を欲しはしたが、皆を導く為に戦った戦士に俺達はこの場を任せられたんだ」

 

「わかってる」

 

「やってやろうじゃないか」

 

フランを先頭にセイジとキリトが立ち上がる。その後にレイ、アスナ、リザも歩み寄ってくる。

 

「ちょっくら無茶をするが着いてこれるか?」

 

フランの力強い言葉に皆が頷く。そして、ボスの元へと駆け出す。

 

「グルルルルルル………!!」

 

敵意を感じとったのかボスは逃げ惑うプレイヤー達に攻撃を辞め、走ってくる6人に牙を向ける。

 

『はぁぁぁぁぁ!!!』

 

ボスは大きく武器を振り上げ、攻撃のモーションを取る。それを良しとしないセイジとフランが攻撃を二人がかりで弾く。

胴体ががら空きになったボス目掛けてレイがしなやかに身体を動かし、短剣で切り裂き、アスナが、目にも止まらぬ速さの連続突きを、リザが舞うように華麗に片手剣で切り裂く。

三人の攻撃によってボスのHPは目に見えるほど大きく減ったがそれでも、全損には至らない。

ボスは刀を薙払おうとするが、それをセイジが間に入って食い止める。

 

「ぐっ…………ぐあっ!!」

 

セイジとボスの鍔迫り合いになるも、ボスのパワーにより、セイジは剣諸共吹き飛ばされる。

 

「大丈夫!?セイ!」

 

吹き飛ばされたセイジの元にレイが駆け寄り、無理矢理ポーションを彼の口にねじり込む。

 

「ぷはっ!!問題ない。大丈夫だ」

 

「無茶しすぎたらダメだよ?」

 

「わかってるよ!」

 

HPが全回復したセイジは剣を握りしめて再びボスへと走り出し、それをレイが追いかける。

 

「グガァァァァ!!!」

 

ボスの猛攻は止むことを知らず、次第に6人は押され気味になってゆく。それほどボスが強力だということを6人はひしひしと味わう。

ボスの懐に飛び込もうとするセイジとキリト。それを妨害するように刀を薙ぎ払う。間一髪で二人は躱すが、次はアスナを狙って刀が振り下ろされる。

 

「ふっ!!」

 

その攻撃をくぐり抜けるようにアスナは避ける。そして彼女の顔を隠していたフードは刀により裂かれ、彼女の顔が顕となる。セイジ達男組は初めてそこでアスナの素顔を目にした。ハーフアップの腰まで伸びた栗色の髪と整った顔。その姿はレイの様な可愛らしいものともリザの様な大人の綺麗とはまた違った美しさだった。所謂美人というものだ。戦場に咲き誇った一輪の花は、がら空きになった胴体に向かって今まで以上に美しく強く鋭い突きを放つ。

その一撃でボスは体制を崩した。そこへキリトが突っ込み、ソードスキルを繰り出す。

片手剣二連撃ソードスキル《バーチカル・アーク》

 

ボスの右肩から入った剣は腹部を突き抜け、そこから軌道を変え、左肩へと切り裂いてゆく。V字型に切り裂かれたボスは断末魔のような雄叫びを上げながらよろよろと後退する。

 

「グオオオオオァァァア!!」

 

そして《イルファング・ザ・コボルド・ロード》の身体が光り輝き、ポリゴン片と化し爆散する。

 

 

《Congratulations》

 

上空に勝利を告げるシステムウィンドウが表示され、6人はほっと肩の力を抜く。

そして彼らをよそに他のプレイヤー達は歓喜の叫びをあげる。

 

「お疲れ様」

 

セイジの横から、後ろで手を組んだレイが顔を出す。

 

「レイもお疲れさま」

 

倒したという安堵と達成感に浸っていた6人の元へ大柄な身体の両手斧使い、エギルが歩み寄る。

 

「congratulations!こんかいのMVPはアンタら6人のもんだ」

 

「ははっ!そりゃあ光栄だありがたく受け取るぜ」

 

労いの言葉をフランが代表して受け取り、その場は歓喜に溢れていた。

 

だがしかし、それは長くは続かないものだった。

 

「なんでや!!」

 

その怒りの言葉がボス部屋全体に響き渡り、その場は静寂の場を

 

 

 








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