Fate/world end ~ソラノハテとリクノハテ~ 作:神駆
「やはり貴様であったか」
ウェイバーとライダーが冬木にかかる橋にさしかかったとき、橋の反対側にはアーチャーがいた。それに気づいたライダーは
そして、両者は橋の中央に歩み寄り、「聖杯問答」で残っていた酒を飲み干す。
「……最後の問答をしようと思っていたのだが……止めにしよう」
「いまさら何を言う。
「そうであったな。
お互いの真名を言い、両者は元居た場へ戻り、相対する。
ライダーが剣を掲げ、言葉を発する。
「今宵、我らが対するは原初の王! その威光を、我らが征服するのだ!!」
ライダーの呼びかけに答え、『
「行くぞ!
「「「AAaaaaLaLaLaLaie!!」」」
軍勢は声を上げながらアーチャーへと向かっていく。
一方のアーチャーは悠然と佇んだままその軍勢を見ていたが、ライダーが走り出すのを見て、手を掲げる。そして、その手には一本の鍵が握られている。その鍵こそ、『
それを天へ突き上げると、アーチャーの背後に樹形図のような幾何学的模様が現れる。それこそが、本来の『
その剣は異質であった。刀身は3つの部分に分かれ、それぞれが互い違いに回転し、風を巻き起こしている。
そして、それを見たライダーは未だ披露していなかった最後の宝具の名を叫ぶ。
「いざ行かん!!
そして、アーチャーも自らの宝具を開放する。
「目覚めよ、エア。…………さあ、仰ぎ見るがいい!
◆
「
「この程度!」
セイバーとキャスターの戦いは、互いに様子見から始まった。セイバーが知っているのは、倉庫街での一件とバーサーカーとの戦いである。それ以外の情報は、切嗣が見たステータス、それとキャスターが多用する空間転移だ。一方のキャスターは、セイバーの実力自体は知っているものの、対魔力のランクが分からないため、それを見極めようとしている。
キャスターが多種多様な魔術を放ち、セイバーがそれを避ける、もしくは剣で防ぐ。それが数十回に渡って行われていた。
「さーて、準備は終わったよ。行くよ!」
今までのような詠唱での魔術主体から足踏みなどの音を利用した陣魔術主体へと切り替えるキャスター。一つ一つの威力は詠唱時よりも僅かに劣るものの、その数が倍以上に増えている。それでも、セイバーの対魔力を突破することはかなわない。
しかし、既にキャスターは準備を終えている。その数が増えた魔術も、唯の牽制でしかない。
キャスターが一際大きく足を踏み鳴らすと、大小様々な魔術陣が空中に展開されていく。いや、現れていく。それはキャスターがこの大小様々な魔術陣を不可視にしていたからだ。
しかし、キャスターのスキルである陣魔術では、不可視に出来るのは一つだけ、加えて言えば、魔術陣という描かれた線のみであって、発動後の効果などは不可視に出来ない。それではこの状況とかみ合わない。セイバーはこのスキルを知っているので尚更混乱する。
だが、キャスターはそれを利用した。スキルを利用し不可視にした魔術は、唯一つである。そして、その魔術こそがこの状況を生み出したカラクリだ。今回キャスターが使用した陣魔術。それはその魔術陣よりも後方の光景を不可視化するものである。地面に使えば色が変わるため使えない。だが、今は夜。空に展開してしまえば黒い色をしたその魔術陣の
あとは、魔術を放った後の移動時の足音や、詠唱そのものを陣魔術の媒体として魔術陣をその後方に出しておけばいいだけである。もともと舌打ちですら発動できるのである。詠唱の声で発動することに何ら問題は無い。
そして、準備が整ったところで、キャスターはわざと詠唱魔術を使わずに、陣魔術のみで戦い、あたかもそれが突然出現したかのように見せかけたのである。
セイバーが混乱している間にも、魔術陣は繋がり合い、一つの巨大な魔術陣を形成していく。それは、倉庫街での一撃――。
これを見たセイバーは、宝具での迎撃をしようと、剣を掲げる。姿を現したその剣に、光が集まっていく。
そして、二つの技はほぼ同時に発動した。
「
「
二つの攻撃によって、辺りがまるで昼間のように照らし出される。
莫大な熱量で以って破壊を齎すキャスターの魔術は、神造兵器たる
しかし、上空の魔術に向かって放たれたため、キャスター自身は無傷である。セイバーは再び
「流石だね。でも、ここからはボク
そう言うと、キャスターは自らにかけていた魔術を解く。その姿が変わり、銀髪に紅い目に変わる。その姿にセイバーは驚愕するが、それだけに留まらない。
「いくよ、ソラ。『
間違いなく宝具であろう魔力の高まりにセイバーは警戒を強くする。
『さあ、行くよ!!』
キャスターの声が二重に聞こえる。セイバーが自らの直感に従い後方へ飛び退いた次の瞬間、今までセイバーが立っていた場所に、剣が突き刺さる。それを落ち着いて見る間もなく、次々と剣や槍が飛来し、セイバーは防戦一方である。
「くっ……これでは近づけない……。それにこの攻撃方法はアーチャーと似ている…………」
飛来する剣を避けながらも、セイバーは接近を試みる。最低限の動きで躱し、危険なもののみを剣で叩き落す。ある程度の距離まで進んだとき、不意に攻撃が止んだ。罠であることは間違いないが、進まなければ何もできないとセイバーは考え、魔力放出を使い一気に駆け出す。
何にも妨害されること無くキャスターのもとへ辿り着いたセイバーはキャスター目がけた一撃を繰り出す。しかし、そこに手応えは無い。
気配を感じ後ろを振り向くと、キャスターが二振りの剣を振りかぶっていた。
セイバーは振り向いた勢いのまま剣を振るう。
金属音が鳴り響き、お互いに間合いを取る。そこでセイバーはキャスターが持つ二振りの剣に見覚えがあることに気付いた。
「あれは、『
セイバーが驚愕しているが、キャスターは不満気だ。何せ、たった一撃競り合っただけで罅が入っているのだから。
『やっぱりうまくいかないか。まあ、いっか。次いくよ! リク!』
罅の入った剣を投げ捨てると、キャスターは手を用いて魔術陣を描き始める。その動きに合わせステップを踏みながら陣魔術による魔術も同時に放つ。
再び弾幕が張られ、セイバーは防戦一方に陥る。そこでセイバーは、キャスターが描いている魔術陣の完成を阻止するために、聖剣の真名解放を除いた中で唯一の遠距離攻撃を放つ。
「行け!! 『
聖剣を覆う『
『それは悪手だよ。
キャスターの持つもう一方の宝具、『
『ごちそうさま。さーて、続きといこうかな。哀れな王様』
キャスターはそう言うと先程とは違う魔術陣を虚空に描き始めた。それを見たセイバーは直感で宝具の前準備であると見抜き、それを妨害するために近づこうとするもより一層密度の濃くなった魔術の雨で中々突破ができないでいた。
◆
セイバーは何度も魔術陣の完成を阻止しようとしているのだが、出来ないでいた。既に3つの魔術陣が完成し、不気味に光輝いている。
『ほらほらどうしたの? 早くしないと完成しちゃうよ?』
「くっ……この弾幕さえ何とかなれば……」
『そーれ!
こうして魔術による弾幕の間にも、投影魔術によって形作られた紛い物の宝具がセイバー目がけて降り注ぐ。いくら使い捨て目的でつくられているせいでランクが落ちているとはいえ、元は宝具。当たればダメージは避けられない。
既に自らの聖剣にかけた
『よーし、あと少しで完成だね、ソラ』
『そうね、リク』
絶え間なく降り注ぐ魔術は、セイバーを精神的にも追い詰めていった。通常であれば冷静でいられるのだろうが、既にセイバーの精神の糸はギリギリまで張りつめられていた。しかし、あと少しで完成という言葉を聞き、遂にセイバーは自らの対魔力任せで強引に突破を始めた。
これを見て焦ったのはキャスターである。今描いている魔術陣は、最後の宝具を使うための絶対条件だ。一つでも破壊されてしまえば、十全な発動は出来ず、威力も下がってしまう。かといって、推定B以上と判断した対魔力を突破する魔術を放つのには、いくらかの詠唱が必要であり、この魔術陣を維持するための集中力が足りない。
そこで、キャスターは苦汁の決断をする。それは、不完全ながら宝具を発動するというものだ。
『しょうがない。発動するよ?』
『そうね。これ以上引き延ばせばやられるしね。大丈夫。8割位の出力は出ると思うから』
描いていた5つ目の魔術陣を消し去り、4つの魔術陣を繋いでいくキャスター。ギリギリでそれに気づいたセイバーは一旦静止し、改めて剣を構え直す。そして、自らの直感に従い、宝具解放の準備を始める。
『ねえ、セイバー。君の
「そうですが、それが何か?」
『人々の願い、この場合は“正の願い”かな。じゃあ、これからボクたちが取り出すこの剣はなんでしょう?』
「……まさか!?」
キャスターは生前において、守護者に殺されるほどの行いをした。“魔術”を徹底的に排除し、その為には無辜の民を消し飛ばした。
そんな彼は、いつしかこう呼ばれるようになっていった。
――
そう呼ばれていた彼のもとに、ある日、一本の剣が現れた。まるで、主を待っていたかのように。
その黒い刀身は、一切光を反射せず、全てを呑みこむ昏い輝きを放っていた。その剣は彼によく馴染んだ。数ある聖剣と同じく神造兵器であるこの剣は、決して剣術が得意でない彼でも容易に振るうことが出来、どんな物でも斬れぬものは無かった。
そして、彼は理解した。この剣の在り様に。
すべてを呑みこむ剣。これは、人々の”負の願い”の結晶である、と。そこに至って、ようやくこの剣の真名を彼は知ることになる。
曰く――
『
解放された宝具は、うねりながらセイバーへと向かっていく。それを見たセイバーは今日二度目の真名解放を行う。
「
二つの宝具は、丁度二人中間点で衝突した。
二人には、この均衡している時間が数分にも数十分にも感じられた。しかし、終わりはあっけなく訪れる。
やはり十全な発動でなかったのが災いしたのだろう。
当然、キャスターも巻き込まれ、ここら一体に張り巡らされていた結界も消失する。
『はは、負けちゃったね、ソラ』
『そ――ね、リク』
『あーあ。やっぱり戦略ミスかなー』
『―――』
「あれ? 効果切れちゃったのか。ま、あと十二時間も居られるわけじゃないし。それに」
キャスターはセイバーの方を向く。
「また、会いそうなんだよね。セイバーさん」
それに応えず、セイバーはマスターのいる冬木市民会館に向かって歩き出していった。