Fate/world end ~ソラノハテとリクノハテ~   作:神駆

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Phase.2

 

 

「ようこそ、少年少女。私は言峰綺礼という。君たちの名は?」

 

「衛宮士郎だ」

 

『桜卯琴音です』

 

 悠然と佇む綺礼に士郎は少し気圧されているように見える。対して琴音は毅然とした態度でいた。

 

「君たちが5番目と6番目のマスターだ」

 

「……ああ。だけど、俺はマスターになるつもりはない」

 

 この士郎の発言に誰よりも驚いたのが琴音だった。凛は前に聞かされているため動揺はない。

 

「衛宮士郎。聖杯とは願望器だ。それがどんな願いであれ叶える万能の願望器だ。マスターによってはそれを私利私欲のために利用するだろう。そうなればどうなる?」

 

「……それ……は……」

 

「さらに言うならば、聖杯戦争はこれで5回目だ。前回は10年前。あのとき、愚かなマスターの手によって、未曽有の災害がもたらされた」

 

「じゃあ、あの火災は!」

 

「さて、どうする衛宮士郎。もちろん辞退するのであればそれでも構わん」

 

「ふ……ざけるな! 俺は切嗣(オヤジ)のあとを継いで正義の味方になるって約束したんだ! 10年前の悲劇を繰り返させるわけにはいかない! そのためなら、マスターにだってなってやる!」

 

『……正義の味方……ねえ……』

 

 士郎の独白によって遮られ、琴音の言葉は誰の耳にも届かなかったが、その言葉には複雑な感情が込められていた。

 

「よろこべ少年。君の願いはようやく叶う」

 

 最後に綺礼が言ったその言葉は、士郎の中で反響していた。

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

 マスター組が教会に行っている間、サーヴァントは外で待機していたため、暇だった。マスター三人に対してサーヴァントが二人であるということは、一人いないということだが、キャスターは気にしていなかった。今頃そのサーヴァントは教会に向かって全力疾走しているところだろう。

 

「暇だね、セイバーさん」

 

「ええ。本来私たちは戦うべきなのでしょうが、マスターが戦いを望まぬ以上何もすることはありませんからね」

 

 時間を持て余してしまったセイバーとキャスターは特にすることもなく、時々教会を気にしてはまた当てもなくブラブラしているだけだ。

 

『お待たせ。もう用事終わったから帰ろうよ』

 

 10分後、ようやくマスターたちが出てきて、暇な時間は終わった。あとは帰るだけである。しかし、そうはいかなかった。

 

「初めまして、だね。お兄ちゃん、それにお姉ちゃん。私はイリヤスフィール」

 

 突如聞こえた声。聞こえた方を見てみると、10歳くらいに見える少女がそこにはいた。白銀の髪に紅い目。それは、紛れもなくアインツベルンのホムンクルスの出で立ちだった。

 

 この少女に心当たりがあるのだろうか、セイバーは目に見えて動揺している。キャスターはその姿を見て、なんとなく想像がついた。

 

「お兄ちゃん……?」

 

「気にしなくていいよ。どうせ皆ここで死んじゃうんだし」

 

 イリヤスフィールと自らを称した少女は、片手をあげる。すると、霊体化して控えていたであろうサーヴァントが姿を現した。

 

 2mはあるであろう巨体に、ただ石を削っただけに見える斧剣。威圧感を放つそのサーヴァントは強大に思えた。

 

「やっちゃえ! バーサーカー!」

 

「やらせません!」

 

 バーサーカーが剣を振り下ろしたのに合わせ、セイバーも自らの剣で迎え撃つ。一目見ただけでも分かるその破壊力を正面から受け止めるその剣技はまさしくセイバーの名に相応しい。しかし、魔力が行き渡っていないのか、剣を打ち合わせるたびにセイバーは徐々に押されていき、最終的には斧剣の横からの一撃によって吹き飛ばされてしまった。

 

「セイバー!! ……だったら俺が! 投影開始(トレース・オン)!」

 

「ちょ! 何やってるのよ! 衛宮君!」

 

『無茶をしないで! 士郎! Ego ventus eum reducunt(風よ、彼を引き戻して)! リク君、お願い!』

 

「OK! Ventus, conciderunt(風よ、切り刻め)!」

 

 バーサーカーではなくそのマスターを狙った一撃は、バーサーカーが片腕を伸ばすことで防いだ。しかし、その無防備な体勢を逃すセイバーではない。先ほど吹き飛ばされたセイバーが戦線に復帰し、袈裟懸けにバーサーカーを斬る。そして、その巨体は地面に倒れていった。

 

 明らかに死に至らしめるであろう攻撃を自らのサーヴァントが受けてなお、イリヤスフィールは余裕の笑みを浮かべていた。

 

「起きなさい、バーサーカー」

 

 彼女の掛け声に呼応するように、地に倒れ伏していたバーサーカーが何事もなかったかのように立ち上がる。既にセイバーに傷付けられた痕は無く、初めと変わらぬ姿だった。

 

「私のバーサーカーはね、ヘラクレス。古代ギリシャ最大の英雄よ。こんな程度では負けないわ」

 

 自らサーヴァントの真名を明かすイリヤスフィール。彼女の狙いは分からないが、真名を知ることによって対策は練ることが出来る。だが、厄介なのは、ヘラクレスの伝承だ。

 

 ヘラクレスはその伝承において12の試練を乗り越えている。それが忠実に再現されているとすれば、12通りのナニカがあるはずなのだ。

 

 しかし、考えている暇はない。こうして考えている間にも、バーサーカーは迫ってきているのだから。

 

 セイバーは再びバーサーカーと剣を交えるも、消耗が激しいのか、先ほどよりも動きにキレが無くなってきている。その証拠に、剣がぶつかり合う度に辛そうな顔をしている。

 

「加勢するよ、セイバーさん! Percipe terra quassatur(地よ、彼を揺るがせ)!」

 

 キャスターはバーサーカーの立っている地面を揺れ動かし、バランスを崩させる。急にバランスが崩れたせいで踏ん張りのきかなくなったバーサーカーをセイバーが押し切る。バーサーカーが一歩二歩と下がったところで、遠くから魔力を纏った矢が命中する。凛のサーヴァントであるアーチャーが狙撃したのだ。

 

 それでもバーサーカーは倒れなかった。単純に攻撃力が足りていないのだ。

 

 セイバーは魔力の関係で、既に立っているのもやっとの状態になっていた。アーチャーの狙撃は、狂化しているとは思えないような身のこなしによって大きな斧剣によって防がれていた。

 

 セイバーは懸命に力を振り絞ろうとするものの、魔力が尽きかけているため動くことが出来ない。そこにバーサーカーの一撃が迫ってきた。

 

 セイバーにバーサーカーが迫って行くのを見て、士郎は自らの得意とする魔術、投影を用い、バーサーカーに斬ってかかった。だが、サーヴァントであるバーサーカーにただの魔術師である士郎が敵うはずもなく呆気なく左の脇腹を切り裂かれてしまった。

 

『……ッ! Per aquam, et curabo eum(水よ、彼を癒して)!』

 

 それを見た琴音が士郎に回復魔術を掛ける。だが、回復する速さよりも出血のほうが早いらしく、すぐに血の海が出来上がってしまう。

 

『リク君! 力を貸して!』

 

「ごめん。ボクは回復系の魔術が使えないんだ……」

 

 自分の力では助けることができないとみた琴音は、自らのサーヴァントであるキャスターに助けを求める。しかし、当のキャスターは回復魔術が使えない。その間にも、バーサーカーは距離を詰めてくる。凛の放つ宝石魔術も悉く防がれ、立っているのもやっとなセイバーの剣撃、いつの間にか姿を現していた双剣使い(アーチャー)の攻撃も殆ど意味を為していなかった。

 

 直接的な戦闘手段に乏しいキャスターは、琴音や倒れている士郎を守るために強固な防御陣を敷き、来る衝撃に備えていた。また、一瞬の隙に転移を行うための魔術陣の敷設も同時に行っている。

 

 そして、隙は訪れた。

 

 それは、最初にキャスターがやったものと同じだ。バーサーカーではなく、そのマスターを狙うという方法。

 

 セイバーとアーチャーがバーサーカーをひきつけている内に、凛が宝石魔術をイリヤスフィールに向けて放つ。当然、それを防ごうとバーサーカーはその射線上に移動する。その一瞬の隙を、キャスターは見逃さなかった。

 

specificatur transitus(指定転移)!」

 

 敷地全体に敷設された魔術陣によって、キャスターが指定した対象を強制的に転移させることによって、バーサーカーとイリヤスフィールを残してキャスターたちは撤退することに成功した。

 

「ふーん。転移魔術なんて使えるんだ。帰ろっか、バーサーカー」

 

 残されたイリヤスフィールはそう呟くと、バーサーカーの方に乗ってこの場を去って行った。

 

 

 

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