Fate/world end ~ソラノハテとリクノハテ~   作:神駆

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ようやく完結へ。


Phase.15

 

 カイが突き出した剣はアーチャーに当たることはなかった。ギリギリでアーチャーが身体を逸らしたのだ。

 

「へえ、まだ動けるのか」

 

「貴様が戯言を喋っていたおかげでこちらも準備が整った。凛には申し訳ないが宝具を使わせてもらうとしよう」

 

 そう言ってアーチャーが手を振り上げる。

 

 そして、景色が一変した。

 

 どこまでも続く荒涼の大地。そして墓標のように地面に突き刺さる無数の剣。

 

「固有結界ね。ま、関係ないね」

 

 カイはまるで気にする様子なく離れてしまったアーチャーとの距離を詰めようとするが、その前に何本もの剣が上空から降り注いできた。

 

「チッ、めんどくさいな! redde(払え)!」

 

 カイは剣を掲げ魔術を発動する。キャスターが作った最高の媒体であるその剣を通じて何倍にも増幅された魔術が上空の剣を一掃する。

 

「次だ」

 

「またかよ! redde(払え)!」

 

 一掃しても次々に剣が生み出されキリがない。だから、カイは切り札を使った。

 

 剣を地面に突き刺し、詠唱を始める。剣を中心として結界が張られ、剣を通さない。だが、それもいつまでも保つわけではない。

 

Unus mihi magnus aqua fit initium(五大の一、始まりなる水よ), Laetatur in terra vitam meam, et glutiam(我が命を糧とし地を呑み込め)!」

 

 詠唱は速かった。過剰な魔力を供給することにより半ば暴走気味で発動したその魔術はまるで神話の洪水のようだった。地面に突き刺さる剣を押し流し、濁流と化していく。

 

 濁流はあっという間に地面を覆い尽くした。どこまでも広がっている荒野は今や海のように水に覆われている。

 

 しかし、地上の剣をすべて押し流したとはいえ、アーチャーは幾らでも剣を作り出すことができる。魔術行使の隙を狙った射出は確かにカイを捉えていた。

 

 事実、2本の剣はカイの左腕と右足を吹き飛ばしている。だが、その欠損箇所は瞬く間に元通りになった。

 

「貴様、何をした」

 

「わざわざ教える必要があんのか? オレの、いやオレたちを知ってるだろうに」

 

「やはりそうか。ならば跡形もなく消し去るだけだ」

 

 再びアーチャーは剣の射出を始める。その悉くがカイに命中するが、その度に欠ける部位も元通りになる。そもそもカイは自身の身を守る行動を一切していない。

 

 自身の身体の損失の一切を無視したカイは止まらない。あらゆる攻撃を身に受け、即座に元通りになっていながら治癒魔術を使っている気配はない。

 

「この程度じゃオレを殺し尽くせやしない。hastam()!」

 

 カイが叫ぶと周囲の水が槍の形をとり、アーチャーに向かって飛んでいく。

 

 それを冷静に見切り、空からの投影と手に持った双剣で叩き落とす。それらの槍は地に落ちると再び水に戻った。しかし、その僅かな時間でカイは一気に距離を詰めていた。

 

「これで終わりだ!」

 

 アーチャーは剣を振り切った体勢であり防ぐことは出来ない。投影をするにもカイの剣の方が早いだろう。カイは自身の勝利を確信していた。

 

 剣が振るわれ身体を切り裂く手応えがあった。現に血も吹き出ている。しかし倒れたのはカイだった。

 

「な……にが……」

 

 カイは地に伏せながらアーチャーを見る。アーチャーも傷を負ってはいた。しかし心臓を狙った袈裟懸けは身体をずらされ左腕を落とすに留まっていた。

 

 対するカイは核を貫かれていた。無限に再生するかとも思われたあの術も効果を示さない。当然だ。あの魔術は身体を水と同化させるもの。その魔術行使の核を貫かれたのだ。魔術は解け、地平線を満たしていた水も既にない。

 

「結局オレは何も出来ないってことか」

 

 固有結界が解け始めている。時期にもとの場所に戻るだろう。そうなればキャスターはカイの敗北を知るだろう。それが、どういう結果に繋がるかは分からない。ただ自分が居なくてもキャスターならば成し遂げるだろうことがカイには確信できた。

 

「…………」

 

 アーチャーは何も言わない。問い詰めたいこともあるのかもしれないが、それをせずに固有結界が完全に消えると同時に去っていった。

 

 一人残されたカイは白んできた空を見上げる。

 

「ま、オレは失敗しちまったが、リクなら大丈夫だろ。あー、やっぱ同族嫌悪ってやだね。まあ、アイツにも(呪い)は掛けてやったから後は任せたぜ……リク……ソラ……」

 

 

 

   ◆

 

 

 

 カイが倒れたとき、キャスターは聖杯降誕の準備をしていた。

 

「ん、カイは負けちゃったか」

 

 既に宝具『二人だけの絆(デュオ・タントゥム・ヴィンクーラ)』は解除しているため、声は二重には聞こえない。髪色と目の色はもう黒には戻していない。わざわざ魔術をかけていたのも正体を隠すためだ。次が最後になるだろう時にそんなことに意味は無いのだ。

 

「まあ、カイがいなくてもなんとかなるでしょ。結局、カイは自分のしたいことは出来たのかな?」

 

 誰に言うでもなく呟くキャスター。そもそも周囲には人影は無い。準備の邪魔になるため、琴音たちは一旦柳洞寺から出て行ってもらっているのだ。

 

「カイの魂は戻ってこなかったね。じゃあ、満足したってことか」

 

『そうなんじゃない? そもそもそういう約束だったからね』

 

「まあ、そこのところは本人以外誰にも分からないもんね。それより、術式に歪みは無い?」

 

『うん、大丈夫。接続式も問題なく作動してるし、結界も同じく。あとは英霊4騎分の魔力でしょ?』

 

「ううん。あと2騎で問題ない。思ったよりもバーサーカーの分が頑張ってくれたから」

 

『あれ? バーサーカーって3騎分もあったっけ?』

 

「ないよ。ボクの中にあるものを代用した。これであとはアーチャーとライダーの分を入れれば完成する」

 

 術式を追加しながら二人は会話する。彼らの計画が成功しても失敗しても、おそらく今日が最後。その身体の特異性からして、彼らは座に帰ることはない。

 

 そもそもキャスターが聖杯戦争に召喚されること自体が例外中の例外なのだ。人類の三分の一を単独で葬った悪であり、守護者に討伐された存在が一体なぜ召喚されたのか。いくら聖杯の中身がアレだったとはいえ、何処かに歪んだモノが働いている。そう思わずにはいられない。

 

 第四次聖杯戦争。キャスターが召喚されたのは偶然だったのか。あの時、確かに英霊を召喚する手順は完璧だった。血染めの魔法陣は正しくキャスターを召喚するための触媒足りうる。しかし、姿を現したのは全盛期ではない状態でのキャスターだった。

 

 思考回路も歪だった。目覚めたばかりの純粋な悪意と、長年の戦いで得た知識。それらがごちゃまぜになった状態が第四次聖杯戦争の時だった。

 

 後から考えてもその行動に全くの整合性がない。マスターがいなければ消滅するというのに真っ先にマスターを殺害。そして僅かの間でも現界できるようにマスターの魂を同化させた。

 

 読心術を使って安全に情報を得られたというのに英霊が出揃う中に現れたり。

 

 とにかくやっていることがめちゃくちゃだった。慎重なようで無鉄砲、子供のようで大人のよう。確かにその行動のおかげで動きは読まれることは無かった。それでも自身に対する不信感は拭えなかった。

 

 そして、敗北してからは何故か聖杯の中に留まっていた。普通なら座に還るはずなのに。

 

 キャスターは世界を観測する術を持たない。過去に何度かそれを望んだことはあるが、自身の願望は自身の器に反映されることは無かった。

 

 故に、今回の聖杯戦争でキャスターが望むのは、第二魔法。キャスターが真に望んでいるものを実現するための道具だ。

 

 魔術師には理解できないだろう。到達点ともいえる第二魔法を自身の願望の為の道具として利用しようというキャスターの考えは。

 

 だが、キャスターが望むのは、彼女との最初の約束を果たすためのもの。そのためならば、第二魔法すらただの道具となるのだ。

 

 

 

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