Fate/world end ~ソラノハテとリクノハテ~   作:神駆

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Phase.18

 

 

 儀式を始める。そう言ったキャスターの背後に祭壇が現れる。檀上には今回の小聖杯であるイリヤスフィールが寝かされ、護衛のようにセイバーとバゼットが両端に控えている。

 

「ああ、そうだ。セイバーとアーチャーは生かしておかなきゃいけないから魔力が足らないのか。……うん、取り敢えずライダーには死んでもらおうか」

 

 そう言ってキャスターは手を振りかざす。その動きに合わせるように無数のゴーレムが生み出されライダーに向かう。

 

 人間を模ったものから竜までその種類は様々だ。一つ一つではライダーには遥かに及ばない。それでもいくら倒しても無限といっていいほどに生み出されるゴーレムは着実にライダーにダメージを与えていく。

 

「パターンG、百腕の巨人(Ἑκατόγχειρ)

 

 地面に手を着けたキャスターが呟くと、次々に腕が地面から突き出して逃げ場を奪っていく。ライダーは自身から生み出された天馬に乗って空に逃げるが、そこにはゴーレムの竜がいる。それも一頭ではなく何十頭も。

 

 マスターである桜や凜も何とかしようとしているが、ソラが片手間で妨害しているためライダーの援護は出来ていない。

 

「ライダー! 宝具を使って!」

 

「分かりました。…………騎栄の手綱(ベルレ・フォーン)!」

 

 ライダーの宝具は、竜の軍団を吹き飛ばした。しかし、その残骸が集まり再び竜が作り出される。数は減っているが、それでも多い。火を噴いたりすることはないが、翼が鋭利でお互いがぶつかるのを気にせず突っ込んでくるため躱すのも精いっぱいだ。

 

「そろそろ終わりにしようか。Serpentium incidunt in terram(蛇は地に堕ちる)

 

 ライダー用に組まれた魔術がライダーを地に落とす。立ち上がる隙もなくライダーは自在に動く地面に捕縛された。力を込めて抜け出そうとするが、びくともしない。

 

「さようなら、ゴルゴンの三女」

 

 抵抗の甲斐もなくあっさりとライダーは首を落とされた。桜の手からマスターの証である令呪が消え、ライダーの存在は小聖杯に吸収される。

 

 勝ち目がないにも関わらずキャスターに攻撃を仕掛けようとする凜を軽くあしらい、キャスターは形を現しつつある聖杯に近づいていく。

 

「さて、あと一つ分はボクの中にある魂で代用しようかな。ま、一般人でも10万人分くらいあればいいよね」

 

 キャスターの身体から何かが抜け出て小聖杯に取り込まれていく。

 

 ついに準備の整った聖杯はその姿を表した。姿形こそ金色の杯だが、その存在感は圧倒的だ。この場にいる誰をも凌ぐ魔力、そして、それとともに感じられる()()の気配。

 

「何よこれ、こんなものが聖杯だっていうの!?」

 

「そうだよ。これが聖杯の正体。第四次聖杯戦争では街を焼き尽くした呪いの結晶。人の願いを破滅的な方法でしか叶えられない欠陥品。第三次聖杯戦争でアインツベルンの反則手によって汚染されてしまった聖杯。それが必死になって争ってきた魔術師が最後に見る絶望よ」

 

 凜の叫びにソラが答える。そしてその答えは最悪だった。

 

「最後に残ったのが魔術に長けた者じゃない限り聖杯は正常な機能を取り戻すことはできない。それを理解して、自分の願いでは全人類を滅ぼしてしまうと分かってしまったから衛宮切嗣は勝者でありながら聖杯の破壊を選んだの。でも、私たちは違う」

 

「どうするっていうのよ」

 

「聖杯の中にあるこの世全ての悪(アンリマユ)を引き抜いて消滅させる。その為にはきちんとした手順で聖杯を作り出す必要がある。加えて、世界に私たちの能力が縛られないように隔離する必要があった。ま、それは固有結界っていう形で何とかしたけど。もしアーチャーがカイに負けてたらソラの陣地で似たようなことをする予定だった」

 

「だからあそこまで厳重に結界を敷いていたのね。でも、引き抜くなんてこと出来るの?」

 

「出来るよ、凜ちゃん。リク君の真名知ってるでしょ?」

 

 凜の問いに答えたのは琴音だ。魔術の声ではなく、しっかりと自分の声で喋っている。

 

「琴音よね? そんな声だったのね。士郎は?」

 

 琴音は無言で自身の後ろを指さす。そこには士郎が倒れ伏していた。

 

「生きてるわよね?」

 

「当たり前でしょ。言葉で言っても分からなかったからちょっと……ね」

 

 傷跡は見つけられないが、恐らく琴音が治したのだろう。意識は失っているようだが。

 

「それにしても随分すっきりした顔してるのね……いや、今はそうじゃないわ。……確かに私はキャスターの真名を知ってるけど、それがどうして大丈夫ってことに繋がるの?」

 

「あ、そこまで詳しくは知らないのか。リク君はね、第三魔法の使い手なの。だから、聖杯の中に根付いた魂を引っ張り出すくらいなら出来るよ」

 

「そう。でも私にもリクにもこの世全ての悪(アンリマユ)を浄化するほどの力は出せない。というよりも、私たちの力はどちらかといえばあっちに近いから、対極の力が必要だった。それは、アーチャーでもライダーでもアサシンでもバーサーカーでもダメだった。ランサーは出来る可能性はあったけど、マスターがダメだった。それで残ったのが、セイバー。人々の願いの結晶である神造兵装を使うセイバーの協力が必要不可欠だった」

 

 こうして話しているうちにも徐々に黒い太陽という形で聖杯の暗黒面が現れていく。この世の全てを呪うかのようなそんな印象を与える不気味なものだった。微かに囁き声も聞こえるような気がする。

 

「凜ちゃん、それに桜ちゃんも。あの声を聞かないで。あれを聞いたら常人では耐えられないから」

 

 琴音の注意に声から意識を逸らそうとするが、言われたことで余計に気になってしまい先程よりも鮮明に聞こえるようになってしまう。その声は殺意に満ちている。その様子を見たソラは水を掛けることで強制的に意識を逸らした。

 

「ほら、しっかりしなさい。まだまだやることはあるんだから。その時になったら手伝ってもらうからね」

 

「手伝うってなにをよ。引っ張り出したらセイバーの宝具で片づけるんじゃないの?」

 

「そう簡単にいくならこんなに大仕掛けにはしないよ。さ、もうそろそろだよ」

 

 黒い太陽はその大きさを増していた。先程までは目測で握りこぶし大だったのが、今では何倍にも大きくなっている。それに伴って、何かの形をとろうとしているようにも見える。

 

「アーチャー、あなたにも手伝ってもらうから回復させておくね」

 

 ソラは魔術陣を展開し、アーチャーの左腕を修復する。一分も経つことなく左腕は元通りにくっついていた。

 

「何か問題はある?」

 

「特にないな。それで、君は一体何を危惧しているのだね?」

 

「あの呪いの塊がどう動くか分からない。中の意思は消滅を望んでるらしいけど、それは恐らく一つの側面に過ぎない。だとしたら、最悪今までの聖杯戦争でのサーヴァントが出てきて襲い掛かってくるかもしれない」

 

「ちょっと、そんなことになったらどうするのよ!? 私や桜なんか一分と持たないわよ!」

 

 凜の脳裏にはあのバーサーカーが複数いる場面が想像されていた。桜も似たような想像をしているのか顔を青くさせている。

 

「あ、私士郎起こしてくるね」

 

 琴音は気にすることなく士郎を起こしに行く。琴音は事前にそのことを言われていたので驚いてはいない。現実に目の前にしたときどうなるかは分からないが。

 

「ソラ! 構えて!」

 

 キャスターの緊迫した声が聞こえ、ソラが咄嗟に防御魔術を使うと竜巻にも匹敵しようかという突風が襲ってきた。同時に土煙も舞っているため視界もない。

 

 そして、視界が晴れた時、そこには最悪の事態が待っていた。

 

 

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