Fate/world end ~ソラノハテとリクノハテ~ 作:神駆
リク君と共に戦った第五次聖杯戦争から70年が経ちました。
正常な機能を取り戻した聖杯だったけど、再び聖杯が悪い目的で使われないように、私たちで分解しました。
その時に一悶着あったみたいですけど、凜ちゃんが何とかしたみたいです。方法は聞きませんでした。何かあくどい笑みを浮かべていたので。
そうそう。その凜ちゃんは時計塔で主席になりました。ルヴィアさんと最後まで主席の座を争っていたそうです。二人の喧嘩(?)はそれからもずっと続きました。たまに私が仲裁に入ることもありましたけど。
桜ちゃんは立派に間桐家の当主としてその務めを果たしていました。
結婚はしなかったみたいなので間桐家は桜ちゃんの代で終わりになっちゃいましたよ。でも桜ちゃんはそれでいいんだって言ってました。
バゼットさんはリク君から教えてもらったルーンのおかげで更なる活躍をしたそうです。あの聖杯戦争以降一回も会ってませんけど、凜ちゃんの話に繰り返し出てきました。
士郎は……やっぱりというか、そう簡単に正義の味方になることを諦められなかったのか、卒業したらすぐに外国に行っちゃいました。それでも前のように何も考えずに突進するような考えはなくなったので私の心配も少し減っています。
そして、私は慎二君と結婚しました。
子どもこそいませんけど、充実した毎日でした。私が家族を失ったということもあって、孤児院をしています。どの子たちも優しい子に育ってくれて、今でも時々訪ねてくるんですよ。
そういえば、ギルっていう子どもが来て、リク君から渡された本を読んで、それ目的で通ってくれるようになってから経営が良くなった気がします。あの子は一体誰なんでしょう? ずっと見た目が変わらないんです。
あ、魔術に関しては、実はあの聖杯戦争以降あまり使っていません。リク君がくれたあの本は何度も読み返してますけど、私が魔術を使う機会は50歳を過ぎてからはありませんでした。
そして、今。
もう凜ちゃんも桜ちゃんも士郎も慎二君ももうこの世にはいません。
私もそう永くはないでしょう。
悔いはありません。
でも、もう一度リク君に会いたいなぁ。
◆
琴音が開設した孤児院は元々不動産関係を手掛けていた間桐の家の人脈で冬木市郊外の小高い丘の上にある。
敷地内には緑が溢れ、四季折々の風景が楽しめる。
桜が満開になろうかという春。
自身がそう永くは無いことを悟った琴音は最期の時を孤児院で過ごすと決めていた。
毎日朝早くに起きて日の出を眺め、起きてきた子どもたちに挨拶をする。食事もみんなと共に摂り、時には先生役として教鞭をとることもある。
最近はそうしたことは出来なくなってきているが、たまにあの本に書かれている物語を読み聞かせたりもしている。
特に人気なのは『魔法少女と魔女の物語』だ。大切な願いをかなえてもらう代わりに街を魔女から守るその物語は、子どもたちが劇にするほどの人気だ。
その中の登場人物と知り合いだと言ったらどれだけ羨ましがるだろうか。
きっと大騒ぎするだろう。会わせてほしいと言ってくるだろう。
その様子が容易に想像できて思わず笑ってしまう。
「琴音さん、楽しそうですね」
声を掛けてきたのは遠坂静。遠坂凛の次女であり、今はこの孤児院を経営している。交流の続いている遠坂家からは他にも何人かがこの孤児院で働いている。静は遠坂家でありながら魔術に関しては全く関与していない。魔術の存在は知っているものの、教わってはいないのだ。
「ふふふ。子どもたちに『魔法少女と魔女の物語』の登場人物と知り合いだって言ったらどうなるのか想像したら楽しくなっちゃって」
「ああ、あのリクって人のことですか。写真でなら見たことありますよ。お母様が持っていましたから」
「あら、一体いつの間に撮ったのかしら」
「それにしても『魔法少女と魔女の物語』かあ。私はそれの大人向けの方を知ってるからちょっと微妙な気持ちですね。私としては『魔法使いの子供先生』の方が好きですけど」
「あら、静ちゃんはそっちの方が好きだったのね。ふふ。人それぞれ好みがあっていいじゃない」
二人の会話はとても穏やかで、琴音にとってとても心地よいものだった。
静は仕事があるので事務所に帰って行ったが、琴音は杖を突いて手入れの行き届いた庭に出た。
少し歩いた先には桜の木があり、そこからは冬木を一望できる。
桜の木の側にあるベンチに座り、琴音は昔を思い出していた。
――小学生の時、初めて魔法を知った。
――それから、切嗣さんに引き取られて大河さんと出会った。
――第五次聖杯戦争ではリクと共に最後まで戦って。
そうして昔を思い出している内に眠ってしまったのだろう。気づけば12時を少し過ぎていた。
昼食を摂った後、年少組が大部屋で昼寝をしているのを縁側からそっと見守る琴音。
「ねーねー、おばあちゃん。お客さんが来てるよ」
孤児院の中でもお姉さん的な立場にある楓が琴音に来客を知らせる。
誰かと約束したかしら、と思いながら琴音は杖をついて応接室に向かった。隣には楓も一緒に居る。
「お待たせしました。私が桜卯琴音で――――」
最後まで言い切ることが出来なかった。
何故なら、そこにいたのは――――
「やあ、琴音ちゃん。久しぶりだね」
これにて本編は完結です。
ご愛読ありがとうございます。
一応、あと一話、設定やらあとがきやらがあります。